発行元 株式会社ダイナミックオーディオ
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H.A.L.担当 川又利明




2005年6月29日
No.354 「One point impression⇒聴きました!! KRELL Evolution One/Twoの音!!」
【1】スタジオ録音での感動

KRELL Evolution One/Twoが本日搬入され、セッティング完了しました。
TRANSPARENT  OPUS MMはバーンインがかかるスピーカーケーブルであり、
使用したCASTケーブルもつないだばかりということで、まだまだこれからという
ことなのですが、その第一印象には驚くべきものがありました。

               -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

さて、パワーアンプの Evolution Oneですが、以前のKASシリーズではリアパネル
に銅板のバスバーを使って電源部と本体をジャンパーしていましたが、今回のもの
は下記の写真のように電源部のトップパネルと本体のボトムパネルの両方に専用の
電源供給ラインの結合部が設定されています。
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/img/p_EVO_lg_PT.jpg

単純に積み重ねるだけでジョイントされるのでリアパネルはシンプルそのものです。

Evolution Twoはこの写真の一番右の端子が電源ラインであり、電源部と本体を
この端子間を結ぶ最低限の長さのケーブルでセッティングします。従って、電源と
本体を左右、または上下に離してのセッティングは考慮されていないようです。
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/img/p_EVO2_lg_B.jpg

しかし、実物を見ての第一印象は強烈な存在感です!!
Evolution Twoは電源と本体の四筐体をスタックして積み上げるセッティングが
前提のデザインであり、下側のコントロール部のトップパネルには上側に乗せる
電源部のフットがはまり込む穴が掘られています。

詳細な試聴レポートはじっくりとバーンインしてから、ということになりますが
ちょっとつまみ食いということで数曲聴きましたが…。


  -*-*-*-*- KRELL LAT-1000 & Evolution One/Twoの検証システム -*-*-*-*-

 ESOTERIC G-0s ■8N-PC8100   
      ↓
 7N-DA6100 BNC(Wordsync)×3本
      ↓
 ESOTERIC P-01 ■8N-PC8100
      ↓
 PAD DIGITAL YEMANJA XLR 1.0m ×2
      ↓
 ESOTERIC D-01 ■8N-PC8100
      ↓  
 PAD YEMANJA XLR 1.0m
      ↓   
 KRELL Evolution Two■PAD  AC DOMINUS×2
      ↓  
 PAD YEMANJA XLR 7.0m or CAST ケーブル
      ↓   
 KRELL Evolution One■PAD  AC DOMINUS×2
      ↓  
 TRANSPARENT  OPUS MM  Speaker Cable 2.4m *税別 410万円
 http://www.axiss.co.jp/whatsnew_transOPUS.html
      ↓
 KRELL LAT-1000

               -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

まずはQuincy Jones のベストアルバムでディスク:1から1.Setembro (Brazilian
Wedding Song) をちょこっと聴き始めたら!?

いや〜、参りました!!
「なんなの、これ? さっきまでのLAT-1000の低域はなんだったの? 」

メロディー重視の曲かと思っていたらとんでもない。ずっしりとドラムとベースが
こんな静か? な曲なのでこんなに入っていたとは!! この重量感の変化は何なんだ?

11.Rock With Youをかけたら再びびっくり!!
細身のLAT-1000にこんな低域が出るんだ、と驚きの第一印象でした。しかも、CAST
を使用しーていることも関係あるのか、スタジオ録音のくせに空間表現が左右に上
限に前後にと拡大しているのには驚いた。特に左右の広がりはテンスのラリーで
ボールを追う観衆の目つきのように私は思わず左右のLAT-1000の位置関係を確認
しながら、その両翼に展開していくシンセの音を追ってしまった!! これは聴かな
くてはわかりませんよー!!

「Thriller」もついでに聴いてしまいました!!

・Beat it
Van Halenのギターは更に深く、ひねり込むようにしてLAT-1000からほとばしり
出る。あ〜、この快感はなんと言うことだ!!

・Billiie Jean
イントロのドラムを聴いたら私は呆れてしまった。こんなにも重々しく、テンショ
ンは引き締まり、アタックのエネルギー感が私の体にプレッシャーを与えるからだ。
しかも、気持ちいい、ストレスは皆無、どんどんボリュームが上がってしまうのだ。

・Human Nature
いや〜、この展開には驚いた!! 重量感とスピード感がまったく異なる次元で叩き
出された後にシンセが交差する音場感がこんなにも拡張されるなんて!!

               -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

たった今電源を投入したばかりだと言うのに、この圧倒的な情報量とパワー感は
なんと言うことだろうか!! 私は感動すると口元が緩み微笑んでしまうのだが、
自慢げに輸入元の担当者がどうですか〜、と聞いてくるので「うん、いいんじゃな
いかな〜」ととぼけていましたが、実はこれは相当なものです。(^^ゞ

あっ、ただしオーケストラの弦楽器にはまだ合格点はあげられません。^_^;
今夜システムエンハンサーでバーンインを行いますので、明日は大分違った世界が
聴けることでしょう。

それにしても凄いです。この私が驚く第一印象です、興奮しながらの速報でした!!


【2】KRELL  Evolution One/TwoはNEOに何をもたらしたか!!

1.NEOの足跡

私が初めてNEOを聴いてから14ヶ月、その間に幾多のコンポーネントでNEOを聴いて
きたことか…。

最初はHALCRO dm8とdm68がアンプでのペアリングで先陣を切り、フロントエンドは
まだESOTERIC G-0sとP-0s+VUK-P0であった。そして、dcs 974とElgar plus 1394と
いうシステムであったのだから、何と一年前の現在とでは隔日の感がある。当時は
ケーブルは発売になったばかりのESOTERIC MEXCEL Cableで統一していたことも
追記しておかなければならない。
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/280.html


その次には異色のペアリングとしてBrumester Pre-Amp 808 MK5とESOTERIC A-70
というカップリングを検証し、他のコンポーネントとケーブルは前回通りとして
アンプの相互関係による音質変化を克明に表現するスピーカーとして更に私の信頼
を深めたものだった。
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/282.html


さて、その次にはアンプをHALCRO dm8とdm68に戻し、CDシステムをそのままとして
何とESOTERIC G-0sとSymmetricom's Cesium Frequency Standard 3というマスター
クロックの比較を鮮明に浮き彫りにするという芸当も成し遂げたものだった。
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/283.html


今度は前回と同じシステムで二通りのマスタークロックを使用しながら、何と
J-1Project PPR-100をフロントエンドのコンポーネントに使用して電源環境の変化
を聴き取るという検証に大活躍してくれたものだった。
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/286.html


NEOの輸入元では私のレビューを英訳してMOSQUITOの皆さんにレポートを送るとい
うエピソードも生まれた。しかし、後日判明したところでは私の技術的な解説は
CONEX JAPAN株式会社の社長Eric CHARLERY氏には難しくて英訳が出来ず、一部内容
が抜け落ちていた。(^^ゞ
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/289.html


NEOを使ってのアンプの検証は何も輸入品ばかりではない。
TECHNICAL BRAIN  Monaural Power Amplifier TBP-Zeroと新進気鋭の高級ケーブル
メーカーSTEALTHもNEOが見事に検証してくれたのである。
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/290.html


アンプをHALCRO dm8とdm68に戻しケーブルをSTEALTHに変更して新境地を開きなが
ら成長するNEOは、ハードウエアだけでなく海外の貴重なディスクも紹介すること
になった。これは楽しめました!!
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/291.html
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/292.html
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/294.html
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/296.html
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/297.html


NEOのユニークな内部構造が明らかになり、更に演奏の音質に説得力が感じられる
ようになったエピソードも紹介していた。
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/298.html


このプライスの情報はNEOに対する親近感を深めました!!
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/299.html


2004.6.7-No.0933-で配信し、webでは未公開の情報としてSONY SCD-DR1の試聴も
NEOで行っています。国産の新製品のテストにも欠かせない存在となってきました。
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/302.html


そして、H.A.L.のリファレンスケーブルの座を長らく務めてきたPAD DOMINUSに
対して世代交代を告げるYEMANJA の登場にも立ち会ってきました。
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/305.html


ESOTERIC 8N Cuパワーケーブルという画期的な限定生産の電源ケーブルの誕生。
それを取り上げたのもNEOでした。そうそう、この時にはCDシステムにはESOTERIC
X-01を使用しています。理由は下記で述べております。(^^ゞ
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/307.html


SONY SCD-DR1にESOTERIC G-0sとSymmetricom's Cesium Frequency Standard 3とい
うマスタークロック・ジェネレーターを接続し、他では真似の出来ないレベルで
国産コンポーネントの評価にもNEOは貢献してきました。
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/309.html


電源ケーブルESOTERIC 8N-PC8100をすべてのコンポーネントに前面使用することで
こんなに大きな影響力があったとは!? NEOが明らかにしてくれた驚きと発見でした。
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/310.html


UNIVERAL PREAMPLIFIER MIMESIS 24MEが登場するが、その画期的な音質を何で私は
チェックしたのか? GOLDMUNDを主宰するミッシェル・レバションもここでNEOを聴
き大変高く評価され、いわば公認となったNEOがGOLDMUNDの新機軸を聴かせたのだ!
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/312.html


やっとここで登場してきました(笑)ESOTERIC P-01 & D-01の開発の音質評価にも
リファレンスとしてNEOが活躍しています。これほど多くのハイエンドオーディオ
の製品開発と評価にNEOが関わってきたという事実をMOSQUITOの皆さんが知ったら
どう思われるでしょうね。(^^ゞ
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/314.html


H.A.L.のオリジナルとしてNEOの存在がありますが、またそれは他社がH.A.L.の
ためにオリジナル商品を開発してくれる音質基準としてもNEOが活躍しています。
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/315.html


このとき、初めてNEOはここから出て皆様の前に立ちました。イベントでも高い
評価を得たNEOはステージでこのように演奏されたのです。
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/318.html


Stillpointsのアンプベース新製品。このような小物・アクセサリーの評価もNEOが
活躍してくれました。
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/320.html


ESOTERIC X-03&UX-3の最終段階の音質を検証したのもNEOでした。フロントエンド
のプレーヤーの判定にはニュートラルでハイスピードなスピーカーが必要ですから。
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/321.html


新進気鋭のアンプメーカー、デンマークのVitusAudioの魅力を見事に開花させたの
もNEOでした。このペアリングは私にとってのfavoriteです!! 素晴らしいです!!
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/322.html


VitusAudioのSL-100とSM-100をそのままに、ケーブルをすべてPAD YEMANJAで統一
するという世界初の試聴でもNEOが必要不可欠な存在となっていました。
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/324.html


GOLDMUND TELOS 600が遂にやって来た!! この初登場でもNEOが当然リファレンス
となっています。なんと言ってもミッシェル・レバションのお墨付きですから。
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/328.html


世界的なプロの現場でビッグメジャーとなっているChord、その堂々たる新製品を
吟味するのもやはりNEOでした。後日談としてChord社の社長John Franks氏もNEOを
聴いてショックを受けていました。これ本当の話しです。
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/329.html


ここでNEOは新しい世界に飛躍します。ESOTERIC P-01とD-01を4台使用しての4ch
再生という新境地にNEOは主役としてパフォーマンスを発揮しました。
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/330.html
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/331.html
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/334.html
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/335.html
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/336.html
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/337.html
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/338.html
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/339.html


世界限定50台というGOLDMUND MULTIFORMAT PLAYER EIDOS REFERENCE(850万円)の
登場を祝福したのもNEOでした。
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/332.html


GOLDMUNDのイメージを大きく変えたTELOS 600を主軸とするシステムの検証にもNEO
は貴重な音質基準となった。いや、逆にNEOの潜在能力が更に発見されたのだ!!
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/340.html


その名は「 behold 」日本では未公開の新ブランドを迎え撃ったのもNEOでした!!
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/343.html
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/346.html


日本が誇る老舗ブランドLUXが80周年記念で開発したB-1000fもNEOが鳴らしました。
このアンプは素晴らしい!!それを私に知らせてくれたのもNEOだったのです。
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/344.html
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/347.html


世界中の数々のハイエンドマシンによって洗礼を受けたNEOは更に自ら進化します。
ユーザー・デマンドに多用なマッチングを引き出す新たなNEOの可能性。それは私
たちに更なる夢と魅力を提供してくれるでしょう!!
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/352.html


そして、2005年6月のこと、国内最速でH.A.L.が店頭公開した稀代の新製品、KRELL
Evolution One/TwoがまたもNEOに新しい可能性の光を当てたのである!!
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/event0506.html



2.モノラル化の本当の魅力とは

職業柄、実に多数のハイエンドオーディオを聴き続けている私だが、CDトランス
ポート以降でモノラルD/Aコンバーターを使用し、プリアンプも完全モノラル、
もちろんパワーアンプもモノラルという画期的なシステム構成は今回が初めて
ではないだろうか。

今回の取り組みとして上記のように実に多岐にわたりシステムの主軸を努めてきた
NEOをクレルシステムに組み込むに当たり、私の関心はこの徹底したモノラル志向
の構成がNEOによってどのように昇華してくれるのだろうかという期待感であった。


  -*-*-*-*- KRELL Evolution One/TwoとNEOのコラボレーション -*-*-*-*-

 ESOTERIC G-0s ■8N-PC8100   
      ↓
 7N-DA6100 BNC(Wordsync)×3本
      ↓
 ESOTERIC P-01 ■8N-PC8100
      ↓
 PAD DIGITAL YEMANJA XLR 1.0m ×2
      ↓
 ESOTERIC D-01 ■8N-PC8100
      ↓  
 PAD YEMANJA XLR 1.0m
      ↓   
 KRELL Evolution Two■PAD  AC DOMINUS×2
      ↓  
 CAST ケーブル
      ↓   
 KRELL Evolution One
      ↓  
 TRANSPARENT  OPUS MM  Speaker Cable 2.4m *税別 410万円
 http://www.axiss.co.jp/whatsnew_transOPUS.html
      ↓
 MOSQUITO NEO


三夜にわたるウルトラ・システムエンハンサーのリピートで熟成させ、営業中は
音楽信号をずっと流しておくという徹底したバーンインでEvolution One/TwoとNEO
の状態を可能な限り高めておき、その検証がいよいよスタートした。

               -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

私は一年前のNEOとの出会いからオーケストラにおける再現性に大変大きなウエイ
トを感じるようになったものだが、今回もまずはマーラー交響曲第一番「巨人」
小澤征爾/ボストン交響楽団の第二楽章から試聴を開始した。すると…!?

「お〜!! とろけるような弦楽器ではないか!!」

冒頭の弦楽器群のアルコが展開し始めた瞬間に、私の耳は超一流のパティシエが
作り上げたパフェをほおばった口に変身してしまったようだ。その生クリームは
あっさりとしていながら濃厚さをたたえ、舌の上にのった瞬間から滑らかに溶け
始めるバニラの香り豊かなアイスクリームのような快感が口の中に余韻を残す。

音楽家の芸術性をスイーツのような食べ物の食感に例えるのは異例だが、前述の
ように実に多数のアンプとシステム構成でNEOを聴いてきた私だが、放熱量が大き
いKRELLのアンプであるがゆえに冷たいアイスクリームのとろけるような感触とし
て意外性ある驚きと感動を表現したかったものだ。

とろけるような、という比喩では各楽音が曖昧で混乱しているのでは、という誤解
も受けやすいだろうが、その輪郭表現は大変毅然としており私が述べたいところは
その中身というか質感の素晴らしさにあるものだ。

たった一言の「滑らかな弦楽器」という表現で終わらせたくないほどの美しく艶や
かな弦楽器を眼前にして例えようもない幸福感に囚われた私は聴き続けたいという
感情に圧倒されていたのである。とにかくNEOがこのような弦楽器を奏でてくれる
可能性を秘めていたとは驚きであった。

ヴァイオリンの質感は過去に記憶のないほどの魅惑的なものであるということが、
しばらくは私の気持ちを捉えていたのだが、管楽器や打楽器を含めてオーケストラ
すべてにおいて並々ならぬ臨場感がNEOの姿を包み隠し演奏だけが中空に漂う時間
を気が付くと楽しんでいた。しかし、このオーケストラには今までにない何かが
ある。しばらく聞き惚れながら考えていると…!?

「そうだ!! 左右チャンネルの発する残響をお互いのチャンネルが引き継ぎ、空間
 表現を左右両方のNEOが連鎖しながら演奏しているんだ!!」

これはどういうことかと言うと、左チャンネルで発生したヴァイオリンの残響成分
が右チャンネルのNEOに引き継がれ、余韻感の拡散範囲を広げながら消滅までの時
間軸を大変長く引き伸ばしているのである。と思うと右チャンネルでのコントラバ
スのピッチカートのデリケートな残響は左チャンネルのNEOがゆとりを持って引き
継ぎ、左方向へもホールの余韻感を引き伸ばして行くのである。

視覚的なイメージでは左チャンネルのNEOのトゥイーターからウーファーまでに直
線を引き降ろし、その両端を右チャンネルのNEOのミッドレンジを頂点として延長
するという三角形を形成し、左チャンネルで発生した楽音のエネルギーは時間と共
に減衰はしても右チャンネルのNEO更に右方向へも拡散していくほどにエコー感の
リレーを行っているのである。当然右チャンネルのNEOが形成する左チャンネルに
向けての三角形でも同様なリレーが行われていることに気が付いた。

この空間表現の素晴らしさ、残響成分の保存性の高さは何に起因しているものなの
か? 私の頭の中では推測が形となってきたものの、他のディスクでも確認しなけれ
ばと、ヴァイオリンを中心にしたオーケストラのSACDでこれをかけたみた。

http://www.universal-music.co.jp/classics/artist/akiko-suwanai/

諏訪内晶子/詩 曲(ポエム)より3トラック目の3. ラロ:ギター 作品28 である。

流麗な諏訪内のソロはアルコを繰り返し、その背後ではコントラバスとヴァイオリ
ンがピッチカートでステージを構成する。特にコントラバスのピッチカートは力強
く、その重量感をたっぷりと蓄えながらもエコー感はふーっと軽く広がっていく。
弱音でもエネルギー感が素晴らしくKRELLの魅力を違った切り口で聴かせてくれる。

ピッチカート各々の余韻感が素晴らしいので諏訪内の背景にオーケストラの存在感
を弱音の中から漂わせ、諏訪内の背後には右奥方向にタンバリンが一定のリズムで
鳴り響き、それが中空に浮かぶようにNEOの背景に余韻感を漂わせていく。

諏訪内のアルコは急激な切り替えしよりも流れを尊重するような展開で聴く人を魅
惑し、それがSACDの高密度な情報量に裏打ちされてNEOの姿をかき消してしまった
ようだ。バックではシャルル・デュトワの指揮でフィルハーモニア管弦楽団がゆっ
たりとした演奏をNEOの周囲から背後まで弱音の余韻で満たし、ピアノッシモの演
奏こそ美しい余韻感を残すものだと、ため息のうちに3分が経過した。

あと40秒少々で終わりを告げるという最後のフレーズで、一瞬フィルハーモニア管
弦楽団が二拍でのフォルテを盛大に描き出す!!

それを追うようにして諏訪内のピッチカートが締めくくり、その余韻感が美しい!!
私はしびれたように諏訪内の最後の一音がNEOのセンターで消え去っていくのを見
送っている自分に気が付いたのである。

「そうだ!! やっぱりそうだ!!」

http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/oto/oto50-01.html

私は、この随筆の中でもmarantzのプリアンプSC-7S1が左右チャンネルのセパレー
ションが大変素晴らしいスペックで設計されたこと、そして究極的には二台を使っ
て完全モノラル伝送したときのことを思い出していたのである。

チャンネルセパレーションが素晴らしいということは何に対して効果を発揮するも
のなのか? 右と左の音がくっきり鮮明に分かれます、などと単純なことではない。

他のオーケストラのディスクも一通り聴き、それらすべてが以前にもまして余韻感
が大変豊富に感じられることを確認した。そう、フル・モノラル伝送という構成は
左右のスピーカーを取り囲む空間に連鎖をもたらし、二つの音源で一つの空間を表
現するという当たり前のことの精度を極限的に高める効力を持っているようだ。

結局、私にしては珍しく、このアルバムを最後まで聴き続けてしまった。

               -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

とにかくオーケストラをはじめとするクラシックの楽曲に対して、NEOが持ちえる
潜在能力を更に引き出したことは間違いはない。その後もスタジオ録音の課題曲を
聴き続けたが、今まで一度でもここでNEOを聴いたことがある皆様にはぜひ再度の
試聴をお奨めしたいものだ。

エレクトロニクスの進歩に従って自らの可能性を伸ばしつつあるNEO。それが更に
Evolution One/Twoによって新しい時代に突入したのである。

時代によって更新されるのが“究極”という言葉なのだと、ここ数日のNEOの変貌
を見極めてしみじみと思うのであった。


【3】輸入元のweb更新よりも早い公式ファイル配信サービス!!

何と輸入元のweb更新に先駆けてアクシスが作成したKRELL Evolution One/Twoの
日本語版公式ファイルを送信サービス致します!!

両方共5ページに渡る詳細な情報です。これを見れば雑誌の記事の八割方は読んだ
も同然です(笑)  さあ、聴いてから読むか、読んでから聴くか!?

       << KRELL Evolution 公式ファイル応募方法 >>

今回のキーワードはH.A.L.'s Circle ReviewのバックナンバーNo.1102をご覧下さ
い。

               -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

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このページはダイナフォーファイブ(5555):川又が担当しています。
担当川又 TEL:(03)3253−5555 FAX:(03)3253−5556
E−mail:kawamata@dynamicaudio.jp
お店の場所はココの(5)です。お気軽に遊びに来てください!!

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