発行元 株式会社ダイナミックオーディオ
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H.A.L.担当 川又利明


No.309 小編『音の細道』特別寄稿 *第34弾* 
    「SONY SCD-DR1が聴かせてくれた意外な真実!!」

1.観察と特徴

昨年の11/7に持ち込まれたSONY TA-DR1のインプレッションは既に皆様に
お送りしているものであったが、このペアとなるトランスポートが開発
されているということは周知のことであったろう。
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/250.html

しかし、その開発は遅れ発売は今年の秋に延期されたという連絡があり、
私としても静観していたものだった。ところが、熱心なソニーの営業担当
者からアポイントが入った。「店長に例のものを試聴して頂きたいのです
が、お時間頂けないでしょうか? 」

わかりました、いいですよ〜。

と言いつつも、この段階では失礼ながらあまり期待していなかった(^^ゞ 
と言うよりも発売が待ち遠しいという心境になるためには、まず聴かな
いと情熱がわかないのでおっとりと構えていたのだろう(笑)

その証拠に「店長、今日は午後1時に伺いますから…」という電話を頂く
までついぞ忘れていたのであるから(^^ゞ さて、期待の初物を何で
鳴らそうか!? やはり最近のリファレンスは“NEO”のシステムだろう。
これまで強力なパワーアンプを使って存分に鳴らしてきたが、下記のよ
うにSONY TA-DR1でのドライブでも素晴らしい演奏が実現できたものだ。

http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/292.html

            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

さて、持ち込まれた実物がこれ。
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/op-pho/scd-dr1_front.jpg

フロントパネル右の大きなダイヤルは左右に回すと選曲が出来て、1プッシュ
するとプレイスタートとなる。慣れると使いやすいスイッチだが…!? そうだ、
私が使っているソニー・エリクソン製の携帯電話と同じじゃないか!! (笑)

次にトレーをオープンしてみるとこうなる。
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/op-pho/scd-dr1_tray.jpg

私はこれを見て直ちに質問したものだ。「このトレーやけに大きいですね? 」

すると、このトレーにはこれまでにないシカケがあるという。普通はトレーに
載せたディスクが引き込まれると下からクランパーが上がってきてディスクを
押し上げてホールドするのだが、今回のSCD-DR1では内部にトレーが入って
いくとディスクに接しているトレーの部分が沈み込むようになっているという
のである。つまり、ディスクのローディングを行うメカはシャーシーにしっかり
と固定されるという機械的な剛性を高めたものだという。う〜む、なるほど〜。

そして上から見ると奥行きはこうなっている。
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/op-pho/scd-dr1_top.jpg

W340×H140×D450mmということで、奥行きが大きいのだが脚部はかろうじて
zoethecusに載せることが出来るので問題はなかった。

最後にリアパネルなのだが、ここではちょっと説明がいくつか必要になる。
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/op-pho/scd-dr1_rear.jpg

まず両サイドとトップパネルの厚みなのだが、実際に表面に露出している
よりも厚みがあるアルミパネルとなっており、TA-DR1同様に重厚な仕上げ
にはメーカーの意地が見られるものであった。

また、すべての出力端子の上にはスライドスイッチでオンオフがあり、必要
とする出力だけをオンにして聴いて欲しいという設計者のこだわりがある。

向かって右からバランスデジタル、RCA、TOSリンクと各種のデジタルアウト
が装備されTOSリンクの下にiリンクの出力がある。これが後で大問題と
なってくるのだが。

その左のスイッチは上の二つがディスクをローディングした時の優先順位を
設定しておくスイッチで、2ch/multi、CD/SACDの切り替えを指定するものだ。
もちろん、これはフロントパネルでも出来るのだが、ディスクをローディング
する際の時間を短縮することが出来る。

その下にあるのが内蔵のクロック切り替えと、何とワードシンクの入力端子
なのである。内蔵クロックはクリスタル発振器のものだが、これをDACの内部
に配置したものとデジタルアウトの回路に配置した場合では音質が違うとい
うことで、単体のプレーヤーとして使用する場合とトランスポートとして使う
場合とで内蔵クロックを使い分けるというものだ。そして、私が狂喜したの
が外部のマスタークロックを受けられるワードシンク入力(44.1KHz専用)が
あるということだった。このポイントは大きい!!

そして、一番左が2chのアナログ出力であり、バランス出力は装備されていない。
私は、SCD-DR1は先に発売されたTA-DR1の専用トランスポートみたいなイメージ
で考えていたのだが、ところがどっこい!! 設計者は単体のプレーヤーとしての
開発が狙いであったと言う。では、このアナログ出力の実力はいかに!?



2.単体プレーヤーとして聴く

既にTA-DR1をセッティングしておいたのだが、設計者のアナログ出力に対する
熱意の入れようからすると先ずはプレーヤーとして試聴しなくてはと思った。

そして、ワードシンクの貢献度がどのくらいあるのだろうか? 設計者に質問
するとソニーでは自前でクリスタルのマスタークロックを製作して社内では
試聴してきたという。当然ここにあるG-0sやCs3というレベルのクロックには
つないだことはなかったと言う。


     -*-*-*-*-最初のリファレンスシステム-*-*-*-*-

Symmetricom's  Cesium Frequency Standard 3 (RELAXA2+)
      ↓
 7N-DA6100 BNC
      ↓   
 ESOTERIC G-0s(AC DOMINUS)    
     ↓
 7N-DA6100 BNC(Wordsync)
      ↓
 SONY SCD-DR1(STEALTH Cloude Nine)
      ↓  
 STEALTH Indra RCA Interconnect Cable 1.0m
      ↓  
 HALCRO dm8(AC DOMINUS)
      ↓  
 STEALTH Indra Balance Interconnect Cable 5.8m H.A.L.'s Special Version
      ↓  
 HALCRO dm68 ×2 (AC DOMINUS×2)
     ↓  
 STEALTH Hybrid MLT biwire Speaker Cable 5.0m H.A.L.'s Special Version
     ↓
 MOSQUITO NEO

            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

そこで、上記のような最近のリファレンスとなっているシステムに組み込み
早速試聴を開始した。とにかく当日のうちに持ち帰ってしまうというので
持ち時間もあまり多くはないので、要領良く進めなければならなかった^_^;

オーケストラは最近の定番でもあるセミヨン・ビシュコフ指揮、パリ管弦楽団
ビゼー「アルルの女」「カルメン」の両組曲から(PHCP-5276 廃盤)1.前奏曲 
8.ファランドール 10.アラゴネーズ 15.ハバネラ を聴くことにする。

ピアノが転がる様子を聴きたかったので、YPMレーベルから(YPM-005 )グリーン・
スリーヴスからは11.荒城の月を選曲した。
http://webs.to/ypm

最近紹介したばかりだが、このディスクは聴いて楽しめテストにも重宝する
ということがわかってきた。ハープのイントロで立ち上がりの質感を検証し、
ヴォーカルのアンビエンスのあり方をシンプルな録音から教えてくれる
「Pure The essence of Music」Primrose Pathより9.Fragile(Sting)を選曲した。
http://www.maxanter.nl/primrose.html

時間が限られているので、私が知りたいことを集約してテストするために
この3曲を選び試聴することにした。

            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

さて、私は試聴を開始するに当たり掟破りをやってしまった^_^;
いきなりCs3からセシウムクロックを入れてしまったのである。

1.前奏曲 「おお〜、いきなりこの弦楽器の質感はいいぞ!!」
8.ファランドール 「パーカッションの奥行き感と広がりはたいしたものだ!!」
10.アラゴネーズ 「木管楽器の描き方が細かい、美しい!!」
15.ハバネラ 「おお〜、このホールエコーは素晴らしい!!」

まずオーケストラの弦楽器で追い込みをしていた時期を思い出すと、何と
最初から“NEO”が上手く鳴ってしまうことに驚いてしまう。

いきなり合格点だ!!

11.荒城の月 「いや〜、見事に弾けるピアノだ。ワックスをかけたばかりの
 車のボンネットで水滴が転がっていくようだぞ!! 」

9.Fragile 「ヴォーカルのエコー感が深い、同時にハープのフォーカスが
 見事に決まっている。これはいいぞ!!」

正直に言って、この日聴きはじめたSCD-DR1の単体の音に私は注文を付ける
ところはなかった。いや、驚いた!! しかし、まてよ〜!?

ここで、本当の単体ということでセシウムクロックのワードシンクをオフに
してみたら…!?

「あら〜、やっぱり、こんなにも…」

当然と言っては叱られてしまうが、音像に見られるフォーカス感、エコー感
を見極めるために必要な輪郭の表現、余韻感がどこまでも浮遊していくよう
な空間表現のあり方。どれをとってみてもマスタークロックの物凄さを再度
聴かされたような第一印象であった。

では、内蔵クリスタルのクロックでの音質は評価に値しないのか? 

合わせて620万円になるマスタークロックと高価なケーブルを使用して再生音
が私を感動させてくれるかどうか、ということについては予想以上のインパク
トがあったことは事実であり、その後では内蔵クロックでの音質は影が薄く
なってしまったというのは正直な感想だろう。

しかし、大切なのはSCD-DR1という存在は磨けば光るということ、そして
光った結果としては私が唸るような素晴らしい再現性があるという事実だ。

ちなみに、SCD-DR1の予価は100万円とされていたが、こだわりの設計を
貫いた結果として120万円前後というプライスになるという。

お〜、何とESOTERICのX-01と真っ向勝負のライバルの登場である。
間違いない、単体のプレーヤーとして、この実力はH.A.L.レベルである。


3.トランスポートとして聴く

さあ、いよいよTA-DR1に接続しての比較試聴をしよう。トランスポートと
しての評価をするのにはやはりP-0s+VUK-P0と比べてみることにした。

     -*-*-*-*- 次のリファレンスシステム -*-*-*-*-

Symmetricom's  Cesium Frequency Standard 3 (RELAXA2+)
      ↓
 7N-DA6100 BNC
      ↓   
 ESOTERIC G-0s(AC DOMINUS)    
     ↓
 7N-DA6100 BNC(Wordsync)
      ↓
 SONY SCD-DR1(STEALTH Cloude Nine)
      or
 ESOTERIC P-0s+VUK-P0(AC/DC DOMINUS & RK-P0 & MEI Z-BOARD & PAD T.I.P)
      ↓  
 7N-DA6100 RCA
      ↓     
 SONY TA-DR1(AC DOMINUS)
      ↓              
 STEALTH Hybrid MLT biwire Speaker Cable 5.0m H.A.L.'s Special Version
    ↓
 MOSQUITO NEO

            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

前述しているようにTA-DR1の従属物という観点でSCD-DR1が設計された
わけでは決してない。であるからこそ、TA-DR1の可能性を追求するため
にも過去に私は最高と思われるトランスポートとマスタークロックを
使い、スピーカーにも難敵とされるもので検証してきたものだった。

随筆でも述べているように、メカニズムの強靭さということでESOTERICを
ずっと支持してきたわけだが、そのトランスポートとしての基本性能が
このような形で試されることになったわけである。

しかし、ここでちょっと確認をしておかなくてはいけない。PCMによる
CDをかけた場合のSCD-DR1のデジタル出力は44.1KHz 16bitというフォー
マットでしか得られない。とすれば、シリアルコードで送るPCMなので
ワードシンクの影響も顕著に表れるはずである。

この点においてはライバルとなるX-01でもRCA同軸のデジタル出力が
あるのだが、このフォーマットも同様な規格によるものである。しかし、
X-01ではSACDを再生する際には一切のデジタル出力は得られない。
ここで注目されるのがSCD-DR1のiリンク出力である。いや、正確に
言えば一方的な出力と言うよりはリンクするということだ。

http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/250.html

さて、ここで思い出してみると上記に述べているように、

「SCD-XA9000ESでSACDレイヤーをピックアップしたものより、P-0sから
 RCAデジタルケーブルでTA-DR1に入力した方が音が良かったという事
 実について、P-0sという完成されたトランスポートの存在はちょっと
 脇に置いておくとして、i.LINKでの暗号化とその復元処理については
 音質的に有利であるとは石田氏も考えておらず、むしろ通常のCDフォ
 ーマットの信号を、より高いクォリティーでTA-DR1に入力した方が良
 い結果になると言うのだ。」

これはどういうことかというと、TA-DR1とSCD-DR1の両者を使用すると
SACDがセパレート方式のプレーヤーとして再生できるということなの
だが、私が注目したのは普通のCDをPCMでRCA同軸型のデジタルケーブル
でTA-DR1に入力した場合と、同じCDをiリンクでTA-DR1に送った場合に
以前と同じ結果になるかどうかということである?

言い換えれば、高級オーディオ用としてiリンクがどのくらいのパフォ
ーマンスをもっているものなのかということを、SCD-XA9000ESでの
同じ接続で試聴した過去の記憶と比較対照して評価することが必要で
あろうということなのだ。

            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

さて、それでは最初にSCD-DR1から7N-DA6100を使ってTA-DR1に接続
しての試聴を始めた。この時は内部クロックを使用して聴き始めた。

1.前奏曲から15.ハバネラまでを通しで聴いた。解像度も必要十分であり
SCD-XA9000ESで不満に思っていた質感が薄く希薄になる様子もなく、
これだけを聴いていれば何も不足はないほどに仕上がっている。

11.荒城の月 「ちょっと待てよ!! 」
9.Fragile 「イントロのハープを繰り返してみて、ちょっと待てよ!!」

オーケストラのいう大編成でインパクトの鮮明さよりは弦楽器を取り
巻くステージ上での調和という見方ではわからなかったが…!?

ここで、私は迷わずP-0s+VUK-P0に切り替えて同じ曲をチェックする。

11.荒城の月 「ピアノのアタックと輪郭の再現性はやっぱり凄い!! 」
9.Fragile 「ハープの弦が張り詰められているというテンションの凄さ
 とヴォーカルが発するエコー感はやっぱり一枚上手だよ!!」

随筆でも述べてきたメカニズムの完成度はさすがだ。通常のPCMにおける
伝送で全く同じデジタルケーブルを使用しながらの比較であり、この時の
質感の充実ぶりには比べると直ちにわかる実感がある。

でも待てよ…!?
あ〜、P-0sにはセシウムクロックがリンクしたままだった(^^ゞ

それでは、とTA-DR1の入力を切り替えて再度SCD-DR1にして、そして今度
はワードシンクを外部入力としてセシウムクロックを同期させた。

さあ、どうなることやら…?

1.前奏曲 「おお〜、弦楽器の群れが一人一人分離してきたぞ!!」
8.ファランドール 「あら〜、楽音が鮮明だ!!」
10.アラゴネーズ 「木管楽器の音像が更に集約されてるぞ!!」
15.ハバネラ 「おお〜、ホールエコーが更に伸びる!!」

オーケストラの全景がNTSCの画面からハイビジョンに変わってしまった
と言ったらオーバーだろうか。しかし、この時の各パートの変貌ぶりを
箇条書きにしたら大変な文書量になってしまうことが自分でも恐ろしい
くらいに身にしみてくる。何で、こんなに違うんだ!!

11.荒城の月 「思わず笑ってしまうほどの変化だ。ピアノのエッジが切り
 立つように一音一音をくっきりと分離させる。これは反則だ〜!! 」

9.Fragile 「ハープのテンションがピーンッと高められているのに質感は
 エコーをふんだんに含むようになっているので滑らかに消えていき心地良い。
 ヴォーカルのリヴァーブはEQのボリュームを一目盛り上げたように深い!!」

恐るべしSCD-DR1の潜在能力!! マスタークロックによってこんなに劇的な
変化をするということは、それ自体の完成度が高いということなのだ。

では、その完成度というのはどこまで行き着くものなのか?


4.iリンクの勝利

私にもまだ完全に理解できないのだが、PCMを伝送するには時間軸の信号が
デジタル信号の中に含まれている。もしくはワードシンクという時間軸の
基準を外部から個別に受け入れてマスタークロックの支配下で正確なクロ
ックで各コンポーネントが動作する。

つまり、大変簡単に言えば今までのCDを再生する際のPCM信号の伝送には
絶えず時間軸の影響が付きまとってしまうものであり、逆にクロック精度
を高めることによって単体の設計ではかなえられなかった高い次元までパ
フォーマンスがは上昇していくものだ。

このクロックのデータというものは、例えれば高いところにある桶から
低いところにある桶にワードシンクというパイプを使って水を流し続ける
ように、絶え間なくデジタル化されたオーディオ信号といっしょに送り続
けなければいけないものなのである。

さて、ここで登場するのがiリンクなのだが、オーディオ用のデジタルケー
ブルに比べれば本当に頼りない見かけのケーブルである。しかし、ここで
PCMのデジタル伝送と根本的に違うところがiリンクにはあるということだ。
それを象徴的に例えればこういうことになる。iリンクにはワードシンクと
いう水を流すために必要なパイプ・導線が存在しないのである。

iリンクは接続された双方がデータのやり取りを双方向で行うことが出来る
コンピューター通信のために開発されたものであり、その原理というか規格
の細部にわたっても公開されている要素はまだまだ少ないという。前例を
繰り返せば、このiリンクでは水をたたえた桶ともう一つの桶に位置的には
高低差はない、つまり一方通行というものではないということだ。

今回のように自社規格によってSCD-DR1からTA-DR1に信号を送るということ
は、一方の桶から暗号化処理という“手桶”で一定の分量の水をすくい上げ、
それをもう一つの桶に移し変えるという作業に例えられるものなのである。

手桶一杯の水を注がれた他方の桶ではせっせと暗号の解読を行って、次の
一杯を受け入れてもいいという信号を送り、再度手桶で水をくみ上げる
作業が繰り返されるのである。

つまり二つの桶をつなぐワードシンクというパイプ役は必要ないのである。

SCD-DR1という桶からくみ出した一定量のデータを時間軸の流れに全く影響
されずにTA-DR1に手渡しするだけなのである。そして、TA-DR1の内部には
自分でクロックを作り出し、アナログ変換する独自の時間軸が一つ存在し
ているだけなので、他者のクロックとの関係でジッターも発生することは
ないということだ。

オーディオ信号をワードシンクというパイプの中を通じて送らなければ
ならないので、そのパイプが曲がっていたり中にゴミや汚れがあって水
の流れるスピードが変化するからジッターも発生するのである。

水を送り出す側のパイプの入り口、水を受け入れる側のパイプの出口にお
いて、その両者の水の流れが完璧に一致しない現象がジッターなのである。

しかし、不思議なことに前述のようにSCD-XA9000ESを使用してのTA-DR1
の再生では、PCMで送った方が好ましかったのである。これが今回はどの
ように再現されるのだろうか?

            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

繰り返しになるが、このテーマによる比較試聴の基準となるものは上記の
SCD-DR1に外部からセシウムクロックによるマスタークロックをESOTERIC
のケーブルで入力し、それを同じESOTERICのケーブルでTA-DR1に接続して
の音質との比較ということになる。比較前に再度リピートして、この音を
記憶に刷り込んでおいたということは言うまでもない。

さあ、TA-DR1の入力切替をiリンクにして、SCD-DR1との間でリンクが完了
するのに一瞬の待ち時間があるが、P-0sのワードシンクの同期に比べれば
何と早いことか(笑) 

以前の感触では、ケーブルの見かけ通りというiリンクの再生音に私は平
常心でスタートボタンを押したのだが…!?

1.前奏曲 「ちょっと待ってよ!! この弦楽器の分離の仕方はさっきより
 いいんじゃないの? それに質感もしっとりとして好ましい!!嘘でしょ〜」

8.ファランドール 「えっ〜、管楽器の音像がきれい、時折入ってくる
 ストリングスのアルコの質感がこちらの方が上手だ!!」

10.アラゴネーズ 「木管楽器の余韻感って、こんなにあったっけ!!それに
 ストリングスのピッチカートの伸びのエコー感がみずみずしい、ほんと?」

15.ハバネラ 「まじですか〜!?、ホールエコーの情報量が違うでしょう!!
 こんな余韻の引き方は今日の試聴で最高じゃないですか!!」


11.荒城の月 「なにこれ!? ハンマーのヒットからシングルトーンがピンと
 張り詰めて立ち上がり、それが消えるまでの時間で次のアタックが入る。
 その際の重複した和音の鮮明さが違うと直ちに私の頭の中で答えが出た 」

9.Fragile 「イントロのハープから変わってしまったぞ!! そのテンション
 は更にピーンッと緊張感を高め、そして一音ずつの余韻感も豊富になって
 いるではないか。お〜、ヴォーカルのエコーは歌手の背後に反射板を置い
 たように一回り響きが上回っている。いいのか、こんなに違って!!」

あの華奢なケーブルからESOTERICのケーブルにも増して情報量が聴き取れ
るという大逆転は全く予想していなかった。戸惑いながら半分は呆れていた。

何に呆れていたかというと、昨年との対比でiリンクという伝送方式は同じ
であっても、送り出す側SCD-DR1のクォリティーが上がると、これほどまで
に情報量に格差が付いてしまうということにだ。私が体験してきたハード
ウェアーによるiリンクというのは、どうやらそのハードウェアー固有の
パフォーマンスであり、実際にはこんな可能性が隠されていたということ
なのだ。これには参った(^^ゞ

            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

では、上記のように言わば携帯電話のパケット方式のように、iリンクにお
ける信号の伝送にはワードシンクのように時間軸に追随した概念はないのだ
から、理屈の上ではSCD-DR1に対するセシウムクロックの供給をやめても
音質は変わらないはずだろう…!? ということで意地悪な実験をすることに。

「あれ!? 微妙に変化があるのはなぜだ!? 」

各課題曲ともに大勢に影響のない演奏が聴けるのだが、わずかに楽音の
輪郭にブラシで境目の線をぼかしたような解像度の変化が感じられる。
これは10人の人に試聴してもらっても7人くらいは見逃すかもしれないと
いう微妙なものだが、音像の周辺にエコー感と楽音のシルエットの混濁が
感じられるのである。まあ、これを問題として取り上げるかどうかは別と
して私の耳で感じた率直な印象として述べておくことにした。

            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

さて、iリンクの検証にはもう一つの課題がある。上記では通常のCDを同軸
のデジタルケーブルで伝送した場合と、同じフォーマットの信号をiリンク
を使って伝送した場合の両者を比較試聴したわけだが、肝心なことはSACDの
セパレート方式での再生がiリンクを使ってSCD-DR1とTA-DR1の両者において
可能になるというものだ。

それには…、この曲がふさわしい。Audio labの「THE DIALOGUE」から
(1) WITH BASS を集中して聴くことにした。
http://www.octavia.co.jp/shouhin/audio_lab.htm

そして、この実験ではSACDをiリンクで伝送することはもちろんだが、私の
リファレンスとしてP-0sでハイブリッド・ディスクのCDレイヤーをかけて
それとの比較ということで試聴することにした。ただ、CDの再生ではSACD
レイヤーの奥にCDレイヤーがあるために、反射効率がどうしても低くなる
というハンディキャップがあることを先に一言述べておきたいものだ。
また、この時の試聴ではセシウム・マスタークロックを再びオンとして
SCD-DR1とP-0sの両方に供給するという設定にしている。

さて、それではまずSCD-DR1とTA-DR1双方をiリンクとしてスタートした…!?

「お〜、これはいい!!」

今まで数え切れないほど聴いてきた曲だが、この時に表れたタムとキックの
切れ味の何と素晴らしいことか!! そして、最低音部のキックの打音にも正
確にエコー感が伴い、シンバルの輝きにも“NEO”の周辺一帯に銀色の微粒
子が飛び散っていくように光が見える。

ウッドベースが入ってくると、その輪郭の表現が“NEO”のウーファーに
よって拡大することなく、シルエットの面積は極小に絞り込まれて濃度の
高い低域が展開する。叩く低域とピッチカートの低域という制動感が爽快
にSCD-DR1とTA-DR1によって目の前で躍進する。アンプの価格を忘れてしまい、
いつもの大型セパレート・アンプでの演奏と同レベルの打撃音が迫力を伴い
刺激感を排除して見事なインパクトを叩き出す。文句なし!! これは凄い!!

前述しているが、弦楽器や声楽などの通奏楽音とは違って打撃音というのは
プレーヤー部のメカの出来栄えをチェックするには打ってつけであり、この
ような曲でこそP-0sの威力が感じられるものだ。さあ、今度はP-0sでTA-DR1
をPCMで鳴らすことにする。この時のP-0sでは88.2KHzのサンプリングに切り
替えて内蔵のD/Dコンバーターによって、より解像度の高いデジタル信号を
TA-DR1に送るように設定していた。さあ、どうなるか!?

「やや!! これは!? 」

前述の最低域のキックドラムの質感は若干だが重量感を増していることは
好ましく思えたのだが、タム、スネア、そしてキックやシンバルのすべて
において感じられるテンションは何とiリンクによるSCD-DR1の方が良い
ではないか!! 時間の関係ですべての曲層で幅を広げての試聴評価まで
出来ないのが残念なのであるが、このドラムとベースの聴きなれた演奏
で、ここぞというエッセンスとも言える要素を比較すると何とiリンクに
軍配が上がるのである。いや、正確に言えばSACDフォーマットそのものの
音質的な勝利ということになるだろう!! なんたることか!?

それでは、と素早くディスクをSCD-DR1に戻し再度SACDをiリンクで聴き、
SCD-DR1のフロントとスイッチでCDレイヤーに切り替える。これでトラン
スポート部をSCD-DR1共用として、今度はハイブリッド・ディスクのCD
レイヤーで聴きなおしたのだ。

「おお〜、これも中々いけるぞ!!」

P-0sと同じCDレイヤーをかけてみたのだが、ここではiリンクで伝送して
いるということで、P-0sとは条件が違ってくるものだ。しかし、先ほど
と同じようにキックドラムの重量感ということはP-0sに譲るとしても、
同じCDレイヤーで比較する打音の鮮烈さはiリンクが際立っていたのだ。

「そういうことか…!!」

今まで判断材料がなかったので、SACDが伝送できるというメリットがiリ
ンクにあったとしても、再生音を聴いた上での評価としては選択した上で
の優秀なデジタルケーブルを使ってTA-DR1を鳴らした方が良いという昨年
の記憶が根底から覆されてしまったではないか。iリンク恐るべし!!

いや、iリンクというケーブルにのみ着目してはいけないのだろう。そう、
SACDをダイレクトにセパレート方式という余裕のある設計のシステムでき
ちんと鳴らしてやるということは、これほどまでの可能性があったという
喜びと期待感を結論としなければならないだろう。

そして、iリンクを使ったCDでもSACDでも、TA-DR1とのベストパートナー
として明確なポジションをSCD-DR1が勝ち取ったということだろう!!

逆に言えば今回の試聴はすべてTA-DR1を通じて行ったということであり、
他社比較や他の組み合わせでは検証していないということだ。大いなる
可能性はあるにしても、時間をかけての本格的な分析は量産モデルが
入手できてからということなるが…。

しかし、やっとこれでSCD-DR1の発売が待ち遠しいという心境になってきた。

今回の私の体験を皆様に試聴して頂ける日はいつか? これが皆様にとって
待ち遠しいXデーとなることを最後に語っておきたいと思う。

ハルズサークルにご入会の上、このレビューによる続報にご期待あれ!!



このページはダイナフォーファイブ(5555):川又が担当しています。
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