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H.A.L.担当 川又利明
    
2019年5月15日 No.1540
 H.A.L.'s Special Installation - HIRO Acoustic Laboratory MODEL-C4CS 5月20日改訂

近年、日本語で「インストール」という言葉がコンピューター分野やネット関係でも
使用されることが多いと思いますが、これを英語に逆翻訳すると「Installation」となる。

そのInstallationの意味をネットで調べると原義は取り付け・据え付けの意で…

「現代芸術において、従来の彫刻や絵画というジャンルに組み込むことができない
 作品とその環境を、総体として観客に呈示する芸術的空間のこと。」

という解説が見つかった。正に我が意を得たりという心境であり、このような
事例を通じてHi-End Audio Laboratoryという名にふさわしい活動をしていると
いう報告を発信したいと考えました。長文ではありますがご一読頂ければ幸いです!

           -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

初めて来店されたのは2015年の12月、その時このようにお声をかけて頂きました。

「オーディオルームはどうやって作ればいいものなんですか?」という一言でした。

普通であればオーディオ製品そのものに対する問い合わせから会話が始まるものですが、
今思えば運命的な出会いと記憶に残る埼玉県三郷市 T.I.様との巡り合いは
このようにして始まったものでした。早いものであれから4年となりました。

今まで仕事も頑張って会社も大きくした、子供たちも一人前にして社会に送り出した。
さて、これからは自分の人生だ! 若い頃から憧れていたオーディオを思う存分楽しみたい。

そのためにはどこから手を付けたらいいのか、その素朴な疑問を最初に投げかけて頂き、
オーディオルームの設計施工とオーディオシステムのプランニングが同時進行で
始まったのが2016年春のことでした。

T.I.様の会社では建築関係との取り引きもあり信頼できる設計士とも付き合いがあり、
施主となられるT.I.様側の関係者と日本音響エンジニアリングの担当者を一堂に
集めて打ち合わせが始まったのも初来店から一か月程経った時のことでした。

「満足できるオーディオルームの広さはどのくらいあればいいのですか?」

こんな素朴な質問を頂きましたが、広いに越したことはありませんが音響設計なしの
広い部屋よりも、しっかり音響設計した狭い部屋の方が結果的に良い音になります。

私から逆にどのくらいのスペースが取れるものですか? とお尋ねした結果、
オーディオのために新築するのだから可能な限り広くしたいというご希望。

そこで私が当フロアーで試聴して頂いたセッティングが、そっくりそのままの
スペースで実現できますか? という方針を述べると、ではガレージの面積を倍に
して、その上にオーディオルームを作ろうという方向性が見えてきました。

都内の自宅と会社の中間地点にオーディオのために新築される第二のお住まいは
次第に設計が具体化され、先ずは大変ユニークな外観として姿が見えてきました。

ご自宅前に接する道路面から見た際の外観が下記の左側「東立面図」となります。
下側1/3でグレーの部分がガレージのシャッターということです。このガレージの
上がすべてオーディオルームということになります。
http://www.dynamicaudio.jp/file/20170614-ew.pdf

上記の「東立面図」の方向が道路側であり玄関がある位置関係となります。
「西立面図」は反対側からの外観となりますが総二階建の住居棟となり、本当に
個性的なのはオーディオが主役という構造です。まるでスタジオか映画館のような
外観の建屋がそっくりオーディオルームとして住居棟よりも全高が高くなっています。

住居棟とオーディオルームは二階にあるガラス張りの渡り廊下で結ばれていて、
ガレージの上で完全に独立した空間が実現されました。

当フロアーのサイズとほぼ同じくするスペースが確保され、更に素晴らしいのは
室内の天井高を5メートルとしたことです。そのために外観で解るように住居棟
よりも高さのあるオーディオルームとなったものです。

結果的に採用された設計プランは下記の平面図による構成となりました。この図で
「固定遮音層」というのが建屋の外壁となり、その中にもう一つの部屋を作ると
いう基本方針です。この図面にはSonusfaber Aidaがありますが、私の想定として、
その位置にMODEL-C4CSをセットしたかったのです!
http://www.dynamicaudio.jp/file/20170701_161726.pdf

日本音響エンジニアリングの企業秘密もあり詳細は公開できませんが、施工中の
室内の様子をいくつか紹介しましょう。

RC構造の室内の内側に遮音層を作り、もう一つの部屋を作っていきますが、
上記平面図での「音響調整スペース」の枠組みが見られるのが下記の画像です。
http://www.dynamicaudio.jp/file/20181210-03.jpg
http://www.dynamicaudio.jp/file/20181210-04.jpg

低域の調整で重要な床と壁面の境目は下記のように構成され、この内部には
同時にケーブルを収納する配線ピットも作られていきます。
http://www.dynamicaudio.jp/file/20181210-05.jpg

アルミ支柱を配して天井に多量の吸音材を詰め込んでいきます。
http://www.dynamicaudio.jp/file/20181210-01.jpg

同様に各壁面には吸音材が詰め込まれていきます。
http://www.dynamicaudio.jp/file/20181210-02.jpg

一番の企業秘密である浮き床構造に関する画像はありませんが、上記の内装工事の
前に既に終了していたものであり、防振ゴムでフローティングさせた数トンの質量を
持つ第二の床が既に出来上がっていたという時期の画像です。

壁面にきれいに格納されるANKHをも同時に取り付けられていきます。
http://www.dynamicaudio.jp/file/20181210-06.jpg

次にインテリアデザインを進める上で日本音響エンジニアリングから内装色の
提案として下記の二つのパターンが提案されました。その第一案が下記です。
http://www.dynamicaudio.jp/file/20180708-RB.jpg
http://www.dynamicaudio.jp/file/20180708-FB.jpg

結果的にT.I.様が選択したのは下記の第二案の仕上げでした。
この時点でパースに描かれていたのはHIRO Acoustic MODEL-CCSでした。
http://www.dynamicaudio.jp/file/20180708-FA.jpg
http://www.dynamicaudio.jp/file/20180708-RA.jpg

黒い天井にダークブルーの壁で内装が仕上がっていく過程が下記です。
http://www.dynamicaudio.jp/file/20181210-07.jpg

私は以上のような本格的なスタジオ仕様と言えるオーディオルームの設計を何件も
手掛けてきました。プランニングから始まりどのように進行していくかという
経験を何度もしてきましたので、今では日本音響エンジニアリングの説明を代弁
出来る程になってしまいました。どうぞ何なりとご相談頂ければと思います。

そして、完成したオーディオルームが日本音響エンジニアリングのプロダクツ
レビューとして紹介されたのが下記のページです。
http://www.dynamicaudio.jp/file/20171013-44_16.pdf

上記のようにオーディオルームの設計段階ではシングルウーファーのMODEL-CCSでしたが、
施工が進行している時期に発表され、試聴したT.I.様が即決されたのがダブルウーファーの
MODEL-CCCSであり下記にご紹介したものでした。

HIRO Acoustic Laboratory MODEL-CCCS 遂に世界初オーナー現る!!
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/1401.html

その翌年の1月にT.I.様が試聴されたのが試作段階のMODEL-C4CSだったのです。

H.A.L.'s Special Release - HIRO Acoustic Laboratory MODEL-C4CS
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/1449.html

エポックメーキングなMODEL-C4CSの登場を私は次のように紹介していました。

H.A.L.'s One point impression!! - HIRO Acoustic Laboratory MODEL-C4CS!!
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/1457.html

同時にT.I.様は下記のアップグレードに関しても検討を開始されたのです。

HIRO Acoustic Laboratory MODEL-C4CSの予価が決定しました!!
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/1451.html

2018年はHIRO Acousticも色々なトライアルを行い、その潜在能力の素晴らしさを
現実に音として表現し、下記のようなマルチアンプシステムの音質もT.I.様は
当然体験されたものであり、今後の可能性を複数のケースで検討されたのでした。

H.A.L.'s One point impression!! - Very Exciting Sound by HIRO Acoustic and Accuphase
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/1482.html
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/1483.html

HIRO Acousticを上記のオーディオルームという素晴らしい環境にて聴きながら、
ご自身の分析力は知り合った頃のT.I.様に比べれば数段階の進歩があり、ここで
行った数々の実験試聴に対しても微妙な判定まで下されるほどに感性が磨かれてきた
ことはいうまでもありません。何をやっても敏感に反応されるのです。

私が採用した新製品に関しても即座に判定を下されて導入し、素晴らしい環境の
オーディオルームにて音質に磨きをかけてこられたのでした。

遂に完成! HIRO Acoustic MODEL-C4CSの最終形態を速報!!
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/1527.html

H.A.L.'s One point impression!!-HIRO Acoustic Laboratory MODEL-C4CS Vol.2
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/1530.html

人の満足感は経験値によってレベルアップされるものであり、当フロアーでの
体験を所有システムに導入されていく過程にて、根本的なスピーカーのアップ
グレードに関して英断を下すまでに、そう長くの時間はかかりませんでした。

           -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

HIRO Acousticは完全受注生産のため、大変納期はかかってしまいましたが、
2019年4月末に無事にT.I.様に納品を完了することが出来ました。

かねてより私がイメージしていたポジションに設置したMODEL-C4CSの雄姿を先ずはご覧下さい!
https://www.dynamicaudio.jp/s/20190430210635.jpg

左右MODEL-C4CSのトゥイーター間隔は約2.8メートル、そこからリスニングポイントまで
約3.8メートル(ソファーのリクライニングの角度と姿勢により4.2メートルまで変化)と
いうトライアングルのセットアップであり、これは当フロアーでセットされている
状態がしっかりと実現できたものでした。

エレクトロニクス・コンポーネントとの位置関係は次のようになっています。
https://www.dynamicaudio.jp/s/20190430210809.jpg
https://www.dynamicaudio.jp/s/20190430210822.jpg

この写真でオーディオラックとスピーカー背後の壁面に至る床に接する巾木部分に
配線ピットが仕込まれており、その中には何と特注仕様のTransparent REFERENCE XL
/XLBL35(10.5m/205万円)という長尺のバランスインターコネクトケーブルがバイ
アンプ用として2セット仕込まれています。きれいに格納されて見えませんが、
私が推薦したこだわりをT.I.様は採用して下さったものでした。

私のこだわりを採用して頂いた内容は次の写真からもお分かり頂けると思います。
https://www.dynamicaudio.jp/s/20190430210759.jpg

地味なデザインですが下記のCAD GC3もしっかりラックに納まっています。

H.A.L.'s One point impression!! - Computer Audio Design Ground Control!!
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/1462.html

ちなみに、このオーディオラックはfinite elementeのMR-33-1+SR1120+cbs4という
特注仕様でお値段は252万円というこだわりです。

そのラックの下から二段目に何やら黒いものが4台並んでいますが、お分かりですか?

これも見えないところでのこだわりなのですが、スピーカーの後ろはこうなっています。
https://www.dynamicaudio.jp/s/20190430210650.jpg
https://www.dynamicaudio.jp/s/20190430210701.jpg

MODEL-C4CSのクロスオーバーネットワークはお判り頂けると思いますが、ラックの
中に4台並んでいたものと同じものが、ここにも左右で2台使用されています。
それは下記のTransparent OPUS Power Isolator(195万円/1台)です。

H.A.L.'s One point impression!! - Transparent OPUS Power Isolator
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/1332.html

そして、スピーカーケーブルも一緒に写っていますが、カーボンファイバー製の
亀の子のようなイメージのフィルター部がある極太のケーブルは下記の経験と
試聴によって採用して頂いたもので、Transparent OSC12(3.6m) OPUS speaker
cable(525万円)です。これを中高域用として使用されています。

バイアンプの低域用のスピーカーケーブルはTransparent REFERENCE XL/XLSC12
(3.6m/210万円)を妥協なく使用しています。

Transparent OPUSを完全使用したHIRO Acousticの最高音質とはこれだ!!
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/1362.html

それから電源ケーブルにも妥協なく、現在でも当フロアーのリファレンスとなって
いる下記のTransparent OPC2を合計10本使用されています。

Transparent OPC(OPUS Power Cord)がもたらす新世界の陶酔とは!!
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/1264.html

さて、次は別の角度からオーディオルームの様相が分かりやすいようにと二枚の
写真を撮ってみました。
https://www.dynamicaudio.jp/s/20190430210713.jpg
https://www.dynamicaudio.jp/s/20190430210724.jpg

MODEL-C4CSは組み立てると約400キロになりますので、きれいなフローリングに
キズを付けずに組み立ててから所定の位置に移動するのにどうしたらよいかという
のが搬入前の私の悩みだったのです。

当然分解して室内に運び入れましたが、サイドパネルを取り付けたりという作業
スペースが必要となるため部屋の中ほどで組み立ててから移動させることに…。

そんな特殊な作業をしてくれるのが弊社と提携している池田ピアノ運送株式会社です。
https://www.seimitsukiki.jp/

具体的な作業内容は企業秘密ということで公開出来ませんが、私の悩みを見事に
解決し、ここだ! というポジションにセッティングすることが出来ました。

次は床用ANKH-VIのセッティングに関してもチューニングを行いました。
https://www.noe.co.jp/business/own-products/ags/lineup/ankh-6.html

先ずは最初にMODEL-C4CSとリスニングポイントの距離感で約1/3の位置でスピーカーの
手前に置いた状況を左右から見た場合が次の写真です。
https://www.dynamicaudio.jp/s/20190430211023.jpg
https://www.dynamicaudio.jp/s/20190430211035.jpg

距離感としては上記のようなのですが、左右の位置関係では次の写真のように
左右共にMODEL-C4CSのトゥイーターとミッドレンジユニットのラインがANKH-VIの
センターに位置するようにセットしました。この写真での距離感は同上です。
https://www.dynamicaudio.jp/s/20190430210959.jpg
https://www.dynamicaudio.jp/s/20190430211011.jpg

以上の写真ではスピーカーに近い位置にANKH-VIを置いていますが、数曲試聴して
この曲で確認してみました。

■UNCOMPRESSED WORLD VOL.1
http://accusticarts.de/audiophile/index_en.html
http://www.dynamicaudio.jp/file/100407/UncompressedWorldVol.1_booklet.pdf
TRACK NO. 3 TWO TREES

もう何度も使用している課題曲ですが、サックスとピアノだけを慎重に聴き分け
ANKH-VIをスピーカーとリスナーのちょうど真ん中まで引き寄せてきます。

音波は光と同様に入射角と反射角は同じなので、ミッドハイレンジの音波は音源との
距離の中間地点で最も大きな一次反射が発生するからです。

初期の設計で日本音響エンジニアリングのAGSから多数のANKHを採用しています。
これは後述する試聴インプレッションでも感じていましたが、設計段階で予測される
一次反射音の対策は床面以外では万全ですが、過日に私がANKH-VIをお持ちしての
実験試聴をした際にはMODEL-C4CSはまだありませんでした。

ANKH-VIが上記写真の位置で課題曲を聴き、そして手前にずらしてスピーカーとの
中間地点に移動し、再度聴き直すと…。

サックスの質感が変化します。音像は引き締まり音色には適度な湿度感が加わり
質感に滑らかさと透明感が発揮されるのですから見事に反応してくれたということです!

そして、ピアノが入ってくると残響成分の情報量が拡大し、打鍵のアタックが鮮明になり、
余韻感が充実し響きの領域が拡大されたことが確認出来ました。これでしょう!

これで搬入から基本的なセッティングまで完了しました。あとは目指した音質が
実現できたかどうか、多数の課題曲を聴きながらつめていくのみです!

           -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

当然のことながらT.I.様は下記にて公開したMODEL-C8CSを二回も試聴しに来られました。

私とてMODEL-C4CSにてHIRO Acousticとして一つの頂点を極めたという実感がありましたが、
その先にも更にMODEL-C8CSという可能性があるということをT.I.様はじっくりと聴き、
大変感動され納得された上でクロスオーバーネットワークを使用する最高位の
MODEL-C4CSを迎えようという気持ちになって頂けたものでした。

H.A.L.'s One point impression & Hidden Story - HIRO Acoustic Laboratory MODEL-C8CS
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/1539.html

マルチアンプ駆動という超豪華なラインアップでの上記MODEL-C8CSの試聴体験では
多数のお客様から下記のようにご感想を頂戴していました。

H.A.L.'s Hearing Report-HIRO Acoustic C8CS & ESOTERIC New Grandioso
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/fan/hf_hear.html
No.710からNo.715にて

そして、二日がかりとなってしまったMODEL-C4CSのセッティングでしたが、その第一声で
私が是非聴きたかった曲というのは上記MODEL-C8CSで何度も聴いていたこの曲でした。

Flim & The BB's / Tricycle (DMP) より1.Tricycleです。
https://www.discogs.com/ja/Flim-The-BBs-Tricycle/release/6194802

あまりにも広大なダイナミックレンジを有する曲であり、大音量で聴いてこそ
その醍醐味が味わえるという選曲。この4分41秒という一曲を最初に聴きたかった!

確かに上記のHidden Storyではマルチアンプというコンポーネントの豪華さはあっても、
それに勝るとも劣らないT.I.様のオーディオルームという絶大な音響効果を持つ
空間で鳴らすことの意義を私の好奇心が体感し解明せよと訴えていたからです!

Flim Johnsonの五弦ベースが軽妙なリズムを刻み、Billy Barberのピアノが連動する
数フレーズを奏でてから数舜後にドラムとパーカッションを担当するBill Bergが
リードする最強の、まさに爆発と言える猛烈なエネルギーが炸裂した!!

「うわ!!なんだ!!このインパクトは!!」思わず内心で叫び声が上がってしまいました!!

前述のセッティングによるMODEL-C4CSからの距離感では約1/100秒で私に音波が到達する。

3ウェイのウーファーからトゥイーターまで、全てのスピーカーユニットが発した音が
完全に同期してダイレクトに私の体に叩きつけてくる音圧を私は耳と肌の両方で感じ取っていた!!

この強烈無比な大音量は実に爽快であり気持ち良く聴けてしまうのはなぜか!?
それには言わずもがなの二大要素がある!

先ず音源であるスピーカーの能力。
完璧に時間軸が統一された全帯域の音波が正にソニックブームの打撃音として私を襲う!!

特にバスレフポートによる低域の変調と遅れはなく、位相がずれた低音で音像が
膨らむということもなく、四発ウーファーによる低歪の衝撃が迫力を二乗する快感!!

MODEL-C4CSが発する超低域までフラットな再生音は音響空間のグレードを的確に表現し、
その環境はスピーカーの基本性能を白日の下にさらすという相互作用が露わになる!

■T.I.様オーディオルームにおけるHIRO Acoustic C4CS伝送周波数特性
 (資料提供及び測定者:HIRO Acoustic Laboratory廣中義樹)
  https://www.dynamicaudio.jp/s/20190507192715.jpg

ほぼ全帯域で±3dBという極めて良好な伝送周波数特性が確認され、しかも低域は
45Hzで0dB、40Hzで-1dB、更に30Hzにおいても-4dBという理想的な特性を示している。
(注:測定者によれば測定用ソフトウエアの性格で20Hz前後はあくまでも参考値)

スピーカーに近接した位置での測定ではスピーカーの設計通りの特性になるが、
実際のリスニングポイントでは室内の音響特性が関わってくるので、近接位置と
比較すると低域レスポンスの変化が顕著になってくるのが普通の事だというが、
信じられない程に素晴らしい伝送周波数特性が得られているというのが第一要因だ。

これは高性能なスピーカーと音響空間の両者による特徴と言えるが、T.I.様の
オーディオルームにかけた情熱と設計施工者である日本音響エンジニアリングの
技術レベルの高さを評価する測定値として私が重要視したのが残響特性であり、
下記の測定データによって確認出来たものがオーディオルームの音響特性として
力説しておきたい第二要因なのです。

■T.I.様オーディオルームにおけるHIRO Acoustic MODEL-C4CS残響時間特性
 (資料提供及び測定者:HIRO Acoustic Laboratory廣中義樹)
  https://www.dynamicaudio.jp/s/20190507192740.jpg

以上二種のHIRO Acousticによる測定は納品時の動作確認のためるの簡易的な測定であり、
廣中さんのこだわりからすると更に精度を高めた測定をじっくりと行う予定が近日中に
あるので、それが完了すればデータも差し替えるということでした。あくまでも私が
インプレッションを述べる際の参考にしたく現時点で掲載したということを追記します。

■T.I.様オーディオルームにおけるHIRO Acoustic MODEL-CCCS残響時間特性
 (資料提供及び測定者:日本音響エンジニアリング)
 https://www.dynamicaudio.jp/s/20190512110726.pdf

この日本音響エンジニアリングによる測定は下記のMODEL-CCCSを納品した当時の
ものであり、もう1セットのスピーカーとしてSonusfaber Aidaと共存していた
時期のものです。測定方法と環境の違いもあるので参考値として紹介しました。
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/1401.html

高い天井からステンドグラスを通して色とりどりの外光が降り注ぐ壮麗な建築物である
教会などでは残響時間は6秒から7秒ほどあると言われている。

オーケストラを中心としたクラシック音楽を演奏するコンサートホールは響きの
美しさ重要さで評価されるが、その残響時間は2.5秒から3秒程度は欲しいという。

人間一人で一坪くらいの面積の吸音体となり、実際に観客が入れば残響時間は
簡単に1秒ほどは短くなると言われているほどで、コンサートホールの設計には
響きを作るという目的が重要視されることは周知のことである。

では、オーディオ再生のためには残響時間はどれくらいが適正なのかというと、
コンサートホールの1/10くらい、0.2秒から0.3秒程度というのが目標値となる。
ちなみに録音スタジオの残響時間もほぼ同一レベルという事になる。

そして、肝心なことは残響時間特性に関しては周波数による変化量が少ないことが
求められ、全帯域でほぼ均等な残響時間であることが重要とされる。

低域側で残響時間が長い周波数帯があれば定在波や不要な一次反射、更に二次・三次と
いう反射音が発生していることになる。中高域で残響時間が長い帯域があれば、
室内壁面や床・天井などに顕著な一次反射音の発生要因があり、その反射面の材質に
より反射音の周波数に高低が発生しストレスを感じさせる再生音となってしまう。

ところが、上記のT.I.様オーディオルームにおける残響時間特性はどうだろうか!?

今回は測定者が異なる二種類の残響時間特性を資料として上記に示しましたが、
両者ともに共通するのは100Hzから500Hz付近という低音楽器の再生が行われる
帯域では0.2秒を下回る残響時間であるということです。

一般家庭において何も音響設計をしていない環境では、この帯域が0.5から1秒以上に
なってしまうケースもあります。数値で見ると大したことのないように思えますが、
実際に音を出してみると大変低音が膨らんでしまい、いわゆるブーミーな部屋と
いうことになってしまいます。

ちなみに当フロアーでは測定位置と対象スピーカーの位置関係などでも微妙に
異なりますが、250Hzから500Hzの帯域では大体0.25から0.3秒の残響時間です。

また、HIRO Acousticの測定では10KHz付近に長い残響時間が見られますが、これは
測定ソフトウエアによる影響と、一か所だけでの簡易測定であり次回の測定では
違う結果になるだろうという事でした。

その一点は差し置いても1KHz以上の帯域でも残響時間特性はオーディオルームとして
極めて優秀であり、特に低域の残響時間が見事に制御されているということが、
実際の演奏において私も過去に経験のない低音の分解能を見せつけられたのです!

           -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

■改訂開始箇所

さて、ここで上記のHIRO Acousticによる測定は納品時の動作確認のためるの簡易的な
測定データに対して、5月中旬に再度の厳密な測定を行ったということで報告がありました。

その測定結果を追加・補足記事として比較のために前例も提示して下記に紹介致します。

■T.I.様オーディオルームにおけるHIRO Acoustic C4CS伝送周波数特性
 (資料提供及び測定者:HIRO Acoustic Laboratory廣中義樹)★初期段階の測定値
  https://www.dynamicaudio.jp/s/20190507192715.jpg

■T.I.様オーディオルームにおけるHIRO Acoustic C4CS伝送周波数特性・最終報告
 https://www.dynamicaudio.jp/s/20190520163345.jpg

低域特性に関しては初期段階のデータとほぼ同傾向であり、むしろ再測定の方が
50Hz以下でのロールオフ特性がきれいに減衰しており、これから述べていく低域の
質感に関して素晴らしい解像度を保証する減衰カーブが確認できたことになる。

ほぼ全帯域で±3dBという極めて良好な伝送周波数特性が再測定では更に1KHz以上の
帯域でのレスポンスが滑らかになっていることに注目したい。これは素晴らしい特性です!

■T.I.様オーディオルームにおけるHIRO Acoustic MODEL-C4CS残響時間特性
 (資料提供及び測定者:HIRO Acoustic Laboratory廣中義樹)★初期段階の測定値
  https://www.dynamicaudio.jp/s/20190507192740.jpg

■T.I.様オーディオルームにおけるHIRO Acoustic MODEL-C4CS残響時間特性・最終報告
 https://www.dynamicaudio.jp/s/20190520163335.jpg

そして、更にこの残響時間特性に関する再測定は大変有意義な結果をもたらした!!

先ず当初の簡易測定と再測定での比較では50Hzから400Hzまでは同一レベルとなり、
0.2秒という残響時間が低域再生において重要だと述べていたことが再測定においても
確認されたことになる。

そして、簡易測定において私も気になっていた400Hz以上の帯域において、残響時間が
0.2秒を上回るデータとなっていたことが再測定によって誤診であっことが確認された。

伝送周波数特性と同様に最も楽音の主流をなす帯域で最終報告として示された残響時間は
0.22秒程度の偏差にとどまり、理想的な残響特性であることが立証されたということです!

測定データが良いから音がいい、という考え方で以下の文章を書いたわけではありません。
私が聴いて判定した音質が素晴らしいということを測定データが証明してくれたと
いうことでご理解頂ければ何よりです。

■改訂終了箇所

           -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

Flim & The BB's / Tricycleの再生音で何が素晴らしいかと言えば、この残響特性に
よる音波の消滅が、音の立ち上がり同様に素晴らしい高速応答性があるということだろう。

ドラムのアタックが波動感となって物凄いスピードで襲いかかってくる。しかも、
その一瞬後には低い周波数の打音も強烈なシンバルの輝きも数百分の一秒という
時間軸で消え去り、軽妙なキーボードとベースの演奏が目の前の空間にふと表れ、
数フレーズのちに再度強烈なドラムが空気を震わせ、エンディング前には左右
スピーカーの中間に連打の嵐でドラムロールを展開するダイナミックレンジの
素晴らしさをこともなげに示し、ラストはベースが低い唸りを漂わせ消えていく!

この一曲目からして私でさえも経験のないHIRO Acoustic C4CSの醍醐味に感動し、
オーディオルームの威力に舌を巻き次の課題曲へと早くも興奮を引きずっていく!

■FIFTY SHADES OF GREY ORIGINAL MOTION PICTURE SOUNDTRACK
  3.THE WEEKEND / EARNED IT(TRADUCIDA EN ESPANOL)
http://www.universal-music.co.jp/p/UICU-1262

オーディオルームにも音響的トランジェント特性があるということを最初の一曲で
思い知らされた私は、HIRO Acousticのデビュー当時から使用していた定番の課題曲を
次に聴くことにした。この曲との巡り合いも下記にて紹介していたものです。
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/1539.html

前曲は録音レベルが大変低い。それも広大なダイナミックレンジのピークマージンを
確保するためのものだが、この曲は正反対に録音レベルは相当に高い。プリアンプ
ESOTERIC Grandioso C1のボリュームを約20dBほど下げる。この辺が適正値だろう。

爆発的なドラムが眼前で炸裂する前曲の低域とは違い、このEARNED ITでは重厚な
低域が広大な空間に拡散し展開するという冒頭部の音量感を当フロアーで長年に渡り
経験しているボリューム設定にてリモコンのスタートボタンを押した!

「あっ! 違う! サウンドステージが!」

重厚な低域が構成する音場感の造型が私のフロアーとは全くと言っていいほど違う!
私のフロアーH.A.L.での低域の質感と残響の広がり方が違うということを直感する。

現在でもH.A.L.には同じスピーカーHIRO Acoustic C4CSがあり、これで今までに
数え切れないほどの回数で聴いてきたわけですが、私はここで当フロアーにおける
低域の音場感に関して宿命的な特徴があったことに気が付かされたのです!

理想的には一室に1スピーカーということで音源はひとつということが言える。

言葉では分かっていても実際には比較試聴の必要性もあり、また売り場として展示
スピーカーが1セットしかなかったら商売にならない。それは承知しているところ。

しかし、複数のスピーカーを展示しているということを前提に私はセッティングに
注意して、いくつかのスピーカーが同居している状態でも音像がしっかりと確認でき、
定位感も正確に感じられるように各スピーカーを配置してきた。

でも、HIRO Acoustic C4CSというスピーカーは音楽と録音を裸にするだけでなく、
音響空間・オーディオルームそのものも裸にしてしまったということだろう!

私は仕事がらということあり、また聴覚の感度・感性というものにはひとしおの
自信を持っているのですが、一次反射音や残響時間、伝送周波数特性という各種の
音波の伝搬状況を耳で聞いて分析することが出来ると自負しています。

つまり室内という限られた容積の環境の下で音源から発祥した音波が空気中を伝搬
していく過程において、起こり得る変化と現象の数々を理解し記憶し、そして
見ただけで推測できるという経験値を持っているという自信です。

それらの分析力を前提にしてH.A.L.で鳴らしたHIRO Acoustic各シリーズのスピーカーの
音質評価は当フロアーの音響的特徴をはらんでいたのだという発見をしてしまったのです!

言い換えれば、最低条件として再生音の分解能を維持し、音像の輪郭表現を認め、
定位感の明確さを保障し解像度を確保するという当フロアーでの今までの配慮に
関して、やはり限界があったのだという実感を思い知らされたのです!

T.I.様のHIRO Acoustic C4CSが描く音場感の造形とは時間軸の進行に伴った自然
減衰による楽音の消滅の仕方が、絵画の遠近法における消失点のように正確な
遠近感によって構成されるものであり、距離の二乗に反比例して減衰するという
音波の性質を極めて正確に実現しているということなのです。

描く対象物が遠近感によって距離が遠くなっていくほど小さくなり焦点もあまくなる
という絵画的写実法で言えば、発生した音波が空間に拡散していくという状況は
リバーブを施すことで音響的遠近法として鑑賞に値する美しさを作り出すことが出来る。

言い換えれば、スピーカーという音源位置から遠ざかる程に減衰していく音波が、
響きのグラデーションとして感じられるように再生されることで、時間軸をずらし
ながら消滅するまで空中に留まる余韻を表現出来ることが重要だと考えます。

その余韻感の滞空時間は再生システム全体での情報量にも関わってくるのですが、
もちろんT.I.様のシステムではラック、電源とアース、ケーブル関係に至るまで
最高峰のコンポーネントにて固めているので、極めて豊かな情報量を有している
と断言できる。

その素晴らしい情報量によってスピーカーから出力された再生音による音場感と余韻感の
減衰特性が時間軸に対して究極のリニアリティーを持っているということなのです!!

これをどうイメージして頂くかの比喩として次のような状況を思い浮かべて欲しい。

微風の中で丸めたティッシュペーパーを顔の前で手放したとしましょう。
わずかな横風に流されながらも丸めた薄く軽い紙は一定の速度で落ちていきます。

この丸めた小さな紙をグラフのプロットとして横から見れば音波の減衰特性として
斜めに直線的に下降していくことがイメージできると思います。

そして次には箱から引き抜いたティッシュペーパーをそのままに手放したイメージです。

空気をはらんで瞬間的に宙に漂い、あるいはすとんと高度を下げたり、ゆったりと
揺らめきながら着地するまでにふわふわと高度を変えながら落ちていくプロットの
連続をグラフの下降線としてイメージしてみて下さい。

その後者の減衰特性が僅かながら私のフロアーにはあったということなのです!

この課題曲でどっと洪水のごとく発せられた低音部が近くにあるスピーカーの
ボディーに対する一次反射音として、あるいはウーファーの振動板に対して
僅かでも共振・輻射音として存在していたという事実が当フロアーにあったのです!

もちろん、この現象に関しては低域だけではなく全帯域でも発生しているものであり、
それを私のセッティングで嫌味にならずストレスを感じないように配慮してきた
ものですが、それでも不完全であったということをT.I.様のオーディオルームで
HIRO Acoustic C4CSを聴いたことで発見してしまったということです!

瞬発的な打撃音では音響空間のトランジェント特性として音波の立ち下がりというか、
ミリセコンドの単位で消滅していく状況で不要な反射音が皆無であるということを
確認しましたが、連続する楽音において本来録音信号にない音を部屋の特性によって
引きずらない、正しく消えていくことの重要さにガツンと頭を殴られたような衝撃を
もって聴き慣れた課題曲の新たな一面を新鮮な思いで聴き続けてしまいました!

伴奏での分析もさることながら本当の驚きはヴォーカルの質感でした!
音場感の造型という表現で前述しましたが、音像の造型でも新発見があったのです!

カメラの分野で被写界深度という言葉があります。Wikipediaによる次の説明です。

「被写界深度とは写真の焦点が合っているように見える被写体側の距離の範囲のこと。
 写真用レンズにおいては、ある一つの設定で厳密な意味でピントが合っている場所は、
 一つの平面上にしかないが、一定の許容量を認めることでその前後にも十分に
 はっきりと像を結んでいるといえる範囲がある。その範囲のことを被写界深度と呼ぶ。」

簡単な一例では、ある風景の写真で手前にある被写体から奥にある遠い被写体まで
焦点が合っている範囲が広いようにように見える場合に「被写界深度が深い」
または「パンフォーカス」という。逆に至近距離にある被写体の手前と奥の僅かな
距離においても、どちらかの焦点がぼける場合「被写界深度が浅い」という。

この解説を念頭において長年聴き慣れたEARNED ITでヴォーカルに焦点を合わせて聴く!
そう、見事に音響的「被写界深度が深い」という状況がそこにあるのです!

ことヴォーカルにおいて当フロアーとの違いは何かと考えるのですが、MODEL-C4CSとの
距離は約4メートルとほぼ同じなのに、その焦点の合わせ方、正確さということが
極めて凝縮された音像サイズと超が付くほど克明であり鮮明な輪郭表現となって
私の眼前にくっきりとそびえたっているのです。

私は以前から美しく聴こえる声には響きのオーラが見えるようだと例えたことが
ありますが、この場合にはくっきりとピントが合ったヴォーカルの周囲を響きが
包み込んでいるという状況ではなく、被写界深度が深い音響空間によって歌手の
位置から奥行き方向に余韻が遠のきながら微小な残響をスピーカー後方へと消失点を
引き延ばし、ヴォーカルの背後に大いなる空間を印象付けるという素晴らしい
遠近法を確立しているのです! これはH.A.L.でも真似出来ない芸術性でした!

多数の楽器が織りなす課題曲EARNED ITで発見した素晴らしいパフォーマンスを
次は逆にシンプルな編成での選曲で確認していきます。これです!

■DIANA KRALL「LOVE SCENES」11.My Love Is
http://www.universal-music.co.jp/diana-krall/products/uccv-9378/

DIANA KRALLのパルシブなフィンガースナップが炸裂する印象的な導入部。
先ずここで驚きました! 前述の床用ANKH-VIの効果がここでも実感されます。

パシッ!ピキッ!と繰り返されるフィンガースナップはスピーカーとシステム構成に
よっては刺激成分を含み、彼女の指先には松脂を塗っているのではと思うほどの
誇張感を伴う場合もありますが、何ともきれいに抜けていくスナップ音が素晴らしい!

そして、単純なフィンガースナップが録音にはない雑味というか響きの中に僅かな
濁りを感じるような場合もありましたが、オーディオルームのトランジェント特性と
例えた状況の中には透き通るようなリバーブの美しさを引き出す効用もあったのです。

誇張されたリバーブがパルシブなスナップの瞬間を滲ませ、その反作用で残響が
リバウンドするような微妙な付帯音としてまとわりつくようなこともなく、
フィンガースナップという、たったこれだけの音なのに以前の記憶と異なる要素が
次から次へと私の頭の中に浮かんでしまうことに喜びと感動の両方を禁じ得ません。

Christian McBrideのウッドペースは力強いピッチカートで弾け、ぐっと重量感を
伴い沈み込んでいくベースが実に鮮明な輪郭を描きながら冒頭から展開する。

問題はベースの音像のサイズだ。Flim & The BB's / Tricycleでの爆発的なドラム、
前曲EARNED ITでの低弦楽器の継続的な低音部、スタジオ録音の醍醐味とも言える
高忠実度を絵に描いたような曲層とは違い、生々しいウッドベースの重低音は
環境とシステム構成によって肥満ベースになってしまうこともしばしばあった。

ただし、今までにHIRO Acousticで聴いたChristian McBrideは例外です!

バスレフポートの影響が一切ない清々しいとも言えるウッドベースの質感は当然
ここでも高レベルの完成度を発揮して文句のつけようがありません。

このリバーブが一切ないリアルでドライなChristian McBrideのウッドペース。

同じ環境で歌ったら絶対にありえないというほど芳醇なリバーブで余韻が響く
DIANA KRALLのヴォーカルという、オーディオ的には真逆な録音スタイルの二人が
絶妙なデュオを聴かせる選曲です。

これほどシンプルな編成の録音なのですから、前曲で感じた各項目の分析はどうか!?

「高音のスナップ音、広帯域のヴォーカル、重厚なウッドベース、全て初体験だ!!」

前曲で分析した各項目で頭の中に作っておいたマークシートに私は次から次へと
チェックして全てyesと塗りつぶしていく。まったく当然のごとくにすらすらと!

フィンガースナップの前例のない立ち上がりから消滅までのリニアリティーしかり、
ヴォーカルの音像は究極のダイエット効果でスリムなボディーラインしかり、
ウッドベースの音像がこれ程引き締められて濃密な響きを弾き出すこことしかり!

これらはHIRO Acoustic C4CSの4発ウーファーによる振幅軽減による低歪化という
音質貢献手段によって完璧に裏付けられるものであり、そしてオーディオルームの
トランジェント特性の素晴らしさが逆にHIRO Acousticを裸にしているということです!

私はオーディオシステムのコーディネートにおいては前例のないレベルでの実験的
試みによって、途方もない金額のシステムを実現させることが出来ますが、しかし!
T.I.様のオーディオルームには決して追いつけないという現実を見せつけられました!

この部屋で再生するオーディオシステムこそ真っ裸にされてしまうのですから!!

           -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

「音も風景も変わって生まれ変わったH.A.L.の近況報告!!」
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/414.html

話しは変わりますが、上記のようにQRDのDIGI-WAVEを導入してから13年が経ちました。
http://www.dynamicaudio.jp/file/060318/room-right.jpg
http://www.dynamicaudio.jp/file/060318/room-rear.jpg
http://www.dynamicaudio.jp/file/060318/room.jpg

そして、この環境の中にHIRO Acoustic MODEL-C4CSが下記のようにセッティングされています。
http://www.dynamicaudio.jp/file/2019.02.26.jpg

左右共にMODEL-C4CSのトゥイーターから後方の壁までは約3メートル、同じく
リスニングポジション後方の壁まで約5メートルという距離があります。

そして、向かってLchのMODEL-C4CSのトゥイーターから左側壁面まで約4.5メートル、
反対側の右壁面までは約6.5メートルという位置関係です。

RchのMODEL-C4CSのトゥイーターから右壁面までは約3.5メートル、反対側の左壁面までは
約7.5メートルという位置関係で、ほぼ部屋の真ん中にMODEL-C4CSを配置しています。

それに対して下記のようにT.I.様のオーディオルームにセッティングしています。
https://www.dynamicaudio.jp/s/20190430210635.jpg
https://www.dynamicaudio.jp/s/20190430210724.jpg

これは前述のように当フロアーでの左右間隔とリスナーまでの距離感をそっくり
実現しているセッティングと言えますが、ここでの上記のような壁面からの距離と
いうことが最も大きな違いとなります。

また、当フロアーの床は全面タイルカーペットを敷き詰めているので、フローリングとは
違う反射音の周波数特性だということも追記しておきます。

さて、私はT.I.様宅でのセッティングの過程で同様にMODEL-C4CSのトゥイーターから
各壁面までの距離も測っていました。左右共にトゥイーターから後方の壁、正確には
ANKHの前面までは1.1メートル、そして、左右共に隣接するANKHの前面までは1.0メートルと
当フロアーに比較して至近距離であるということがお分かり頂けると思います。

当フロアーでのMODEL-C4CSから各方面の壁面までは、一般家庭では難しいほどの距離を
もってセッティングしていますが、T.I.様のオーディオルームでは全く状況が違います。

それで問題は発生しないのだろうか!? ここが素晴らしいところなのです!

先ず、私は以前の経験から日本音響エンジニアリングのAGSには絶大な信頼を寄せています。
https://www.noe.co.jp/business/own-products/ags/

しかし、ANKHを使えば全て良しなのか!? いいえ、ANKHと言えども万能ではありません。

それも過去の経験から理解しているものであり、T.I.様のオーディオルームでも
その教訓を踏まえた設計を日本音響エンジニアリングはしてくれました。
再度下記の平面図をご覧下さい。
http://www.dynamicaudio.jp/file/20170701_161726.pdf

この図面のオレンジ色の部分「音場調整スペース」と示されているところが日本
音響エンジニアリングのノウハウであり、各周波数帯域に応じた吸音と拡散の
機能が設置されているものです。そして、それは天井にも仕込まれています。

これこそ企業秘密であり詳細な情報を明かすことはありませんが、低域においては
音圧を分散させる機構を、中高域では主に吸音を主体とする機構が格納されています。

ですから上記にてMODEL-C4CSのトゥイーターからたった隣接するANKH表面まで
たった1メートルしかないというセッティングでも問題なく、逆に素晴らしい
伝送特性が得られているわけです。

実際には奥行き23センチのANKHの倍以上の深さがあり、ANKHの拡散能力に加えて
優秀な吸音特性と低域の減衰効果を「音場調整スペース」にて作り出しているのです。

スピーカーとオーディオルーム両者の高い完成度を探るべく次の選曲です。

■HELGE LIEN / SPIRAL CIRCLE   7. Take Five
http://diskunion.net/jazz/ct/detail/XAT-1245411462

いきなり冒頭の一分ほどはFRODE BERGの強烈なドラムソロが展開します。

そのパートで特筆すべきはキック、各種タム、スネアー、ハイハット、シンバル
という基本的なドラムセットだけでなく、大小様々な金物を含むパーカッション
が極めて高速かつ鋭い打音として左右チャンネルの空間を飛び跳ねるように
展開することです。

特に金属製パーカッションの鋭い高音のインパクトは、トゥイーターのそばに本物の
チャイムの金属板が吊るしてあるのではと錯覚するくらいにリアルであり鮮明で
透き通るような「カチーーーーーン!」「カキーーーーーン!」という打音です。

その音像は風船に刺さる瞬間の針先のように鋭く、強烈な破裂音のごとくパルシブな
打音を発するのですが、ポイントはそれら鋭い打音が発生した空中の、その一点に
数ミリセカンドという瞬間的な音像を形成し、瞬く間に消滅するという素晴らしい
トランジェント特性なのです!

それらは正にANKHをはじめとした日本音響エンジニアリングの技術力が現実の音に
なったということであり、音響空間のパフォーマンスがいかにオーディオ再生に
おける情報量を正確に再現しているかという証になっているのです!

そのMODEL-C4CSに伝送される情報量として、現在の私と当フロアーの音質が追い
付けない要素があります。再度下記の写真をご覧下さい。
https://www.dynamicaudio.jp/s/20190430210650.jpg
https://www.dynamicaudio.jp/s/20190430210701.jpg

この総額735万円というTransparent OPUSとREFERENCE XLスピーカーケーブルの存在。
同じくTransparent OPUSシリーズのPower Isolatorと電源ケーブルの採用です。

これらを恒常的に使用しているというこだわりが高解像度、高速反応、極めて低い
ノイズフロアーを実現しているものであり、上記の音響環境の素晴らしさと相まって
当フロアー以上のMODEL-C4CSの再生音をここに実現しているのです!

そして、このドラムで更に画期的な低域再生という手本が示されてきます。

上記では微風の中でティッシュペーパーを手放した時の落ち方の違いで低域を
中心とした当フロアーととの減衰特性の例えをして説明しましたが、それが
ここぞと言わんばかりにキックドラムの質感に現れてくるのです!

このアルバムでFRODE BERGが叩くドラムはドライな録音でイフェクトをほとんど
かけていない音です。「ドス」「バス」「ドン」という重々しさを追加した録音
ではなく「ダン!」と切れのいい打音で、すっきりと後味良く低音楽器にしては
珍しく音の輪郭を聴き手に見せるような歯切れのいいテンションが引き締まった
素晴らしいキックドラムです!

このドラムの素晴らしさでANKHを核にした日本音響エンジニアリングの技術力と、
Transparent各種アイテムの素晴らしさを述べたかったわけですが、この後に続く
ピアノとウッドベースも上記の課題曲の傾向のまま素晴らしい質感でした!

この場では語り切れない曲数で試聴しましたが、克明な楽音で検証すべくスタジオ
録音の課題曲として外すことは出来ない大貫妙子/ATTRACTION「四季」を聴く。
https://www.universal-music.co.jp/onuki-taeko/

この曲のイントロは小倉博和のギターと高水健司のウッドベースで始まりますが、
両者ともにスピーカーの軸上には定位していない。

ギターはセンターの左寄りの中間、ベースはセンターから右寄りの中間という位置で、
そもそも音源がない空間に定位する。

ほぼ同時に始まった両者の第一声から未体験の興奮が私を襲った!
ギターのピックが弦を弾いた瞬間に当フロアーとの違いが歴然と現れる!

そう、前述の微風の中に落としたティッシュペーパーの軌跡という反射音による
環境の違いが真っ先に頭に浮かぶのです!

それは楽音としての音色の忠実さという初歩的な次元ではなく、弾かれた弦が
サウンドホールから引き出した響きの絶対量が増加していて、楽器の胴体そのものが
響きを醸成するという当たり前のことがHIRO Acousticの情報量を殊更に引き上げる!

Grandiosoシリーズの類まれな情報量の素晴らしさは残響成分の徹底的な抽出という
事に尽きると思うのだが、今までになかった響きの連鎖が空気を伝わり、
左右スピーカーの中間から更に音源位置よりも広がる両翼に広大な音場感を展開する!

しかし、その音場感の造型が当フロアーとは違い、楽音が沸き上がりながらも
一定のポジションに音像を構成すると、その輪郭を忠実に維持していることに気が付く。

それはウッドベースにおいても同様な傾向を見せ、低音階の楽音であっても芳醇な
響きは空間に居残り、消滅までの時間軸を録音通りにトレースしていくという
今まで見られなかった整然とした音場感を構築している!

たったこれだけのイントロの数秒間で私の耳センサーは当フロアーとの差異を秒針が
進むたびに検出し、耳から聴覚神経を得て私の記憶中枢のファイルと照合を始めるが、
その回答は一瞬のうちに私の口からもれた一言に集約された!

「何これ! リバーブをどうかけているか、もろに解ってしまうではないか!」

そして、この曲のイントロで今度はジャストセンターから発せられる輝く音が!
パーカッションの藤井珠緒が叩くトライアングルの打音に痺れました!

「さっきのドラムと同じ傾向を確認でした! これは私のフロアーでも無理!」

立て続けにチェックしフラッグが立つという過去の経験との違いはヴォーカルでも発揮された!

このアルバムATTRACTIONを録音した当時の大貫妙子は46歳、ベテラン歌手として
脂が乗り切った時代。いや、失礼! 今でも素晴らしい歌声で活躍されているのだが、
私のフロアーで聴く時よりも若い声!?

同じCDからESOTERIC Grandiosoが引き出した情報量には声の張りと潤い、
リバーブの響き、余韻が消え去るまでの残響という背景描写力、高音階での伸び、
それらを全て調合して美しいと聴き手に訴える自然な説得力をT.I.様の部屋では
感じてしまうのだから仕方がない!!

以前にも述べていましたが、実はこの曲ではヴォーカルが入ってきた時には深い
リバーブがかけられていて、センター定位の口元から左右の空間に広大な音場感を
展開して進行していくのですが、CDトランスポートのカウンターが01:02になった時、
「風が立てば 心寒く 陽だまりの冬」というフレーズが終わった時に篠原ストリングスの
弦楽器が入ってくるのですが、その瞬間からヴォーカルのリバーブがふっと消えるのです。

背後に展開するストリングスの残響とヴォーカルのリバーブが重複しないように
というミキシングエンジニアの操作なのでしょうが、この大貫妙子の背景の響きが
回り舞台の風景が一瞬にして変わってしまうがごとくに豹変する有様が実に鮮明に
分かってしまうのです!

であるからこそ、スタジオ録音の弦楽器であっても、そのパートに施したリバーブが
引き立ちながら独自の音場感をもって展開する美意識を録音テクニックとして感じる
ことが出来るものです。

さて、ここでヴォーカルで感じたパフォーマンスは当然オーケストラでも弦楽器でも
発揮されるだろうという推測に対して、この篠原ストリングスの演奏が答えになってくれました!

ノイズフロアーが究極的に抑え込まれた環境において、弦楽器を比較するとこうなる?
これは想像するのが難しいことかと思いますが、私は二つの変化を感じていました。

ひとつは連続楽音である弦楽器が、当然スタジオワークで施されたリバーブがあると
いう前提においても余韻感が浸透していく空間サイズが広がり音場感が拡大されると
いう分かりやすい変化。

そして、もう一つはルームアコースティックの完成度が高まると楽音の質感、
音色そのものが蘇生するという変化です。これは分かりにくいかもしれませんが、
HIRO Acousticはそこも忠実に再現してくれるのが素晴らしいことなのです!

この後者の変化の方が弦楽器の美しさという評価項目に対しては分かりやすいかもしれません。

ただし、前述のように音響空間とシステム全体のクォリティーに依存する領域であり、
すべての再生装置で感じられるかどうかは保証の限りではありません。
その証拠見つけました!

大貫妙子の楽曲では多数に参加しているピアニストがFebian Reza Paneですが、
この曲でもすこぶるつきの美しい響きをもつピアノが録音されています。

あくまでも伴奏という位置付けでのピアノで自己主張は強くありませんが、
イントロのギターとベース同様に左右スピーカーの中間にぽっかりと浮かぶ鍵盤が
イメージされ、しっとりとした旋律を奏でるピアノの粒立ちと余韻感にT.I.様の
部屋の威力がさり気なく表れているポイントを私は見逃しませんでした。
これは素晴らしいです!

たった六人とは思えない篠原ストリングスの弦楽による間奏があり、いよいよサビと
いうところで再びギター、ベース、ピアノが加わってきます。そして…

「さくらさくら★ 淡い夢よ★ 散りゆく時を★知るの★ 胸に残る★
 姿やさしい★ 愛した人よ★ ★ ★ 」

上記の歌詞に追記した星マークですが、そのタイミングで演奏されるのが鈴です。
鈴といっても下記のようなハンドベルと呼ぶ多数の鈴がついた楽器のことです。
http://www.kikutani.co.jp/itemlist/5263

素晴らしい音場感を展開するT.I.様の部屋の空間表現性能という魅力に加えて、
前述したように楽音の質感、音色までも変化させるという一例がこの瞬間に分かります!

鈴の個数が増えたのか? ハンドベルだけにリバーブをかけたのか?
そんなシンプルな疑問が浮かんでくるような清涼感ある音色に変化しているのです!

そして、鈴の音がシャランと響き、その残響に長いdecrescendo(デクレシェンド)が
追加され、> > > と左右トゥイーターをつなぐ直線のセンター位置の上に向けて、
美しくたなびく余韻感が立ち昇り消えていく情景を私は目撃してしまったのです!
これ、実際に聴くと興奮し感動すると思います!

「さようならと▲ さようならと▲あなたは▲手をふる▲
 鈴の音が▲唄いながら▲ 空を駆けてく▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ 」

また、歌詞を引用しましたが、この三角マークは何かというと、右側奥に定位する
クラベスが叩かれる瞬間を示しているものです。このクラベスの音が違うのです!
http://www.kikutani.co.jp/?post_type=itemlist&s=%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%83%99%E3%82%B9

このシンプルな打音はスピーカーとシステム構成によって千変万化の違いを見せるのです。
シンプルな楽音だからこそ、再生環境によって大きく変化するのが分かりやすいのです。

前例にもありますが、先ずは余韻感が大変美しい響きの延長としてどなたにも分かるでしょう。
クラベスの音にもリバーブが施されていますが、そのリバーブ・エフェクターの音作りの
質感そのものが顕著に表れてきます。

ちょっぴりノイジーとも聞こえるシィーンという残響が何ともくっきり見えるようですが、
それがスムーズに減衰しながら消滅までの時間軸をストップウォッチで測れるほどに
長く尾を引きながら空気に溶け込んでいくのですから堪りません!これは美しい!

そして、ピアノや弦楽器の事例でも述べましたが、打音そのものにも変化を感じます。

スピーカーによっては金属的で硬質な打音になってしまうこともありますが、ソフト
ドームトゥイーターを採用したHIRO Acousticでは何も心配は要りません。

それにしても、T.I.様の部屋で聴くクラベスの音色に木の香り、木製の響きという
質感が実に見事に表れるのですから不思議です。

そして、この課題曲で過去の記憶と比較しつつ、音場感の造型が違うと上記にて
述べましたが、いよいよオーケストラでの試聴でこれまでの分析をまとめていこうと
次の選曲に取り掛かったのです。

■マーラー交響曲第一番「巨人」第二楽章 小澤征爾/ボストン交響楽団

いつもであれば最初に聴く課題曲を今回は温存していたがごとく、スタジオ録音での
細かい楽音の品位を最高レベルのオーディオルームとMODEL-C4CSで検証し、その
最後のつめとしてオーケストラで音場感の造型というものを確認したかった。

それは冒頭の弦楽五部のアルコによる合奏が始まった瞬間に、数え切れないほどの
スピーカーとシステム構成で聴いてきた経験とは異なるサウンドステージがそこに
あるという実感をもたらしていた!

ここでも、前述の微風の中に落としたティッシュペーパーの軌跡という反射音による
環境の違いがオーケストラのステージ感という特徴を全体像として提示してくる!

T.I.様の部屋で聴くボストン交響楽団は当フロアーで聴いてきたそれとは違い、
独自のステージ感という空間表現をものにしていた。

それはどのような意味かというと、管弦楽の各パートの定位感は殊更に鮮明であり
素晴らしい音像を細かく表現するのだが、演奏者一人ずつが奏でる楽音が空中で
三次元的に独立した存在感を示し、演奏者の背後に更なる奥行き感を感じさせる!

当フロアーでは左右方向における音像と定位感については充分な分解能を有しており、
楽器の配列から周囲に拡散していく余韻感までもしっかりと再現しているという自負が
あったのですが、T.I.様の部屋で聴くオーケストラには前述していた遠近法による
響きの遠近感が備わっており、楽音の背景に更に空間があるというイメージで
展開するのです!

言い換えれば、私のフロアーではオーケストラがスピーカーの位置に従うように、
リスナーからの距離感を一定として管弦楽各パートが定位する。つまり大よそ
4メートルの距離という同心円の前方の円周上に楽員が並んでいるというイメージ。

当フロアーでは左右共にMODEL-C4CSのトゥイーターから後方の壁までは約3メートルと
いう距離があるにも関わらず、聴き手からの遠近感が乏しいということを私は
ここで初めて知ることになってしまったのです!

しかし、T.I.様の部屋では左右共にトゥイーターから後方の壁、正確にはANKHの
前面までは1.1メートルしかないというのに、ボストン交響楽団の楽員一人ずつが
まるで透明人間になってしまったかのように、個々の楽音が発祥しているはずの
距離感から更に奥行き方向へと響きの伝承が行われているという事実に驚く!!

管楽器などは見事にその特徴を反映し、演奏者の背後と頭上にステージ奥の壁と
見上げるほどの天井があるという錯覚を催すほどに広大な奥行き感を提示する!

つまり、この時点で当フロアーでのオーケストラ再生でも、僅かながら一次反射音を
含んだものを私は聴き続けてきたのだという、反面教師の役をT.I.様のオーディオ
ルームが果たしているということだろう! これには参りました!

そして特筆すべきは楽音の質感です。最も聴き慣れた課題曲で音場感の造型という
ものを確認し、オーケストラの美しさというものにフォーカスすべく次の選曲です。

■マーラー:交響曲第五番 嬰ハ短調
フランソワ=グザヴィエ・ロト(指揮) ケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団
http://www.kinginternational.co.jp/classics/hmm-905285/
http://www.kinginternational.co.jp/classics/kkc-5842/
https://www.ongakunotomo.co.jp/m_square/readers_choice_total/index.html

このマーラー:交響曲第五番 第一楽章の冒頭ではステージ上手奥からトランペットが
颯爽とした響きを奏で、スネアーの連打と相まって低音の金管楽器が重なり、
咆哮するオーケストラが強烈なフォルテを叩き出す!

先ずはこのトランペットの質感が真っ先に私の期待に応えてくれた!

上記でもオーケストラの楽員一人ずつの透明感が素晴らしいと述べたが、何とも
T.I.様のオーディオルームで響き渡るトランペットの質感が素晴らしいのです!

スピーカーによっては金管楽器の演奏が始まると奏者がステージ手前に歩いてきて、
オーケストラの他の楽員を差し置いて最前列で吹き始めるような前後方向での定位感の
変化を見せるものもありますが、そもそもHIRO Acousticではそのようなことはない。

遠近法の消失点とも言える距離感をもってステージ後方の奥行き感をしっとりと
響きに乗せ、ホールエコーを適度にはらんだトランペットが右手奥から奏でられると、
その音色には金管楽器にしては珍しい透き通るような滑らかさを含んでいた!

その延長線上で推測した強烈なオーケストラ全体によるフォルテも響きにしなやかさ
を含み、一切の刺激成分がない芳醇なサウンドの炸裂として爽快に受け止めた!

低音の金管楽器は階段を駆け下りるような勢いで音階を下げ、そのバイブレーションは
ステージ上で一瞬のつむじ風として床から吹き上がり、MODEL-C4CSの強力であり
正確な低域再生の恩恵にあずかり見事に空中に余韻を撒き散らしていく!

そんな導入部の強靭な筋肉質を思わせるオーケストラのフォルテからしばしの間をおいて、
しっとりと弦楽合奏が主題を奏で始めた! これだ!

「おー! まるで弦楽五部の演奏者たちがRIZAPで変身したみたいだ!」

何ともベタというか俗世間的な表現ではあるのですが、私の頭にひらめいたのは
弦楽器群の質感が記憶にないほどに美しくなったという印象を例えたかったのです!

スタジオ録音での特徴をさんざん述べてきましたが、ドラムで感じたこと、
ピアノで感動したこと、パーカッションで驚いたこと、ヴォーカルで唸ったこと、
それらを総括してオーケストラではどうなるんだろうという推測が的中したのです!

私は以前から2チャンネル再生ではオーケストラの弦楽器は面として表現され、
管楽器は点として音像を感じることがあると述べてきたものですが、その観察法を
少し改める必要性がありそうです。

つまり、弦楽五部の集団としての楽音はスピーカーの個性とルームアコースティックの
両方から適度な響きの追加を受けて聴いた方がきれいに聴こえるのではないか、
という考え方からの脱却と言えると思います。

面で表現される弦楽器であれば、そこに適度な調味料やスパイスのような響きを、
録音されていない信号の音として追加して混ぜ込んでも判別が難しく、上手く
料理すれば本来記録されている音に良い演出効果として上乗せしても良いのでは…、
という発想を根本的に否定することです。つまり何も付け足してはいけないということ!

その意味ではT.I.様のオーディオルームとHIRO Acoustic MODEL-C4CS、そして
ESOTERIC GrandiosoシリーズとTransparent各種アイテムなどは全て上記の思想を
しっかりと追求しているブランドであり、その集大成としてのオーケストラが
完成したと言えると思います!

弦楽五部の各パートが響かせる楽音は見事にシェープアップされ、それ自身が
奏でる音以外の追加要素を電気的にも音響的にも否定し、限りなく録音信号の
ままに忠実に再現すると、そこには研ぎ澄まされた美意識があったということです!

響きの階層を幾重にも織りなして、しっとりと滑らかに流麗な弦楽が空間を満たして
いく情景を私の視線がなぞっていき、冒頭の興奮から次第に分析力を弛緩させる
ような安堵感に包まれつつ、いつしか音楽に没入していた私に気が付いたのです!

スタジオ録音での検証では、この一音がこう違うという各論として比較検討してきた
ような気がするのですが、オーケストラでは当初述べた「音場感の造型」という
考え方と根本的な楽音の質感、美しさという視点にて印象を述べたものです。

H.A.L.'s One point impression!! - HIRO Acousticにしか出せない低域!!
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/1481.html
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/1539.html

私はこの課題曲、マーラー:交響曲第五番に関しては上記の記事で低音の質感と
いうものをグランカッサの表現法ということで述べていました。

弦楽器と管楽器の美しさに関しては複数のオーケストラの録音でも確認してきましたが、
もしかすると多少残響時間が長くライブな部屋という環境でも、その伝送周波数特性が
適正であれば好ましい響きの演出効果として期待できる一面もあるかもしれません。

しかしながら、前述のように100Hzから500Hz付近という低音楽器が主に存在する
帯域の残響時間が0.25から0.3秒という理想的な状態は、かえって低音の量感を
減じてしまうのでは…という危惧を多少なりとも私は予想していたのです。

しかし! そんな私の推測に対して、この時のグランカッサやティンパニーという
低音打楽器の質感は今までの私の経験値によっての不安要素であり、音響空間と
して完成度が高まるとこうなるのだ! という新事実を見せつけられたのです!

「えっ! グランカッサの量感は減少するどころか、くっきり鮮明で豊かじゃないか!
  そして今まで私が聴くことが出来なかった、あの瞬間の音がここまで出ていたのか!」

スタジオ録音のキックドラムの音を「ドス」「バス」「ドン」ではなく「ダン!」と
表現した一節がありましたが、それと同様な再現性をホール録音におけるグランカッサの
打音でも確認することが出来たのです!

グランカッサのヘッドをマレットが叩いた瞬間の音、そのインパクトの瞬間における
張り詰めた打音の感触をつかむことが出来たのです!

今まではグランカッサの重厚であり大きな空間を埋め尽くす低音の量感というスケール感の
大きさばかりに目を奪われていたようで、その低音の量的満足度はそのままなのですが、
例えば「バズーン」「ズズーン」と長く余韻を残す低音として感じていたものが、
T.I.様のオーディオルームとMODEL-C4CSでは「ダ!ズーン…」というイメージで
大太鼓にマレットが接した瞬間に独自のテンションを持つ打音が存在していたと
いうことを発見してしまったのです!

この一瞬の引き締まった打音の後にホールの空間を埋め尽くす重低音の響きが続き、
その長い響きの先端に今まで気が付かなかった乾いた打音が存在していたのです!

もしも、上記のような残響時間特性がなかったら、0.3秒以上という時間軸の中で
スピーカーが発した低音が残っていたとしたら、その響きの残留物に埋もれて
しまっていたということだろうか!?

低域信号が忠実にウーファーより出力されても低域の残響時間が長い部屋だったら、
最初のインパクトに続く低音の響きによって極めて短時間の最初の一音は認識でき
ない状況があったという新発見であり、当フロアーでも見逃していた音、いや!
今までの私でさえも気が付かなかった究極の解像度が得られたということでしょう!

MODEL-C4CSが発する超低域までフラットな再生音は音響空間のグレードを的確に表現し、
その環境はスピーカーの基本性能を白日の下にさらすという相互作用が露わになる!

この一節を最後に引用したのは、ホール録音という空間再現性を司る低域の素晴らしさは
スタジオ録音での低音楽器に関しても未体験の忠実な描写力を発揮するものであり、
主旋律を奏でる楽音の帯域を根底から支える重要な役目を果たしているという確認です!

HIRO Acousticにしか出せない低域も事実、そして完成されたオーディオルームにしか
出せない低域も事実という相互作用の集大成を私は感動の元に実感したのでした!!

           -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

H.A.L.'s One point impression & Hidden Story - HIRO Acoustic Laboratory MODEL-C8CS
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/1539.html

私は上記の締めくくりで次のように述べていました。

「ハイエンドオーディオの芸術性は録音現場の再現ではないということです!」

つまりは、音楽作品の制作側の人々がスタジオモニターで聴いたことのない世界観であり、
それは設備投資の限界を意識しながら採用されたモニタースピーカーのクォリティーを
はるかに凌駕したパフォーマンスであるということでしょう。

これはチャンネルディバイダーを使用してのマルチアンプ駆動によるMODEL-C8CSと
いうスピーカーが成し得た偉業が、業務用スピーカーを目指すという昔の目標から
新たな新次元の到達点を示すものとして述べたものです。

そして、MODEL-C4CSというクロスオーバーネットワークを使用して、一般的な一台の
パワーアンプでも使用できるスピーカーの最高峰と、スタジオレベルの完成度を求め
構築されたオーディオルームの最高峰という両者によって、私でさえも未体験だった
ハイエンドオーディオの芸術性を結論として皆様に報告致します!

最後に冒頭の一節を再度引用しましょう。

「現代芸術において、従来の彫刻や絵画というジャンルに組み込むことができない
 作品とその環境を、総体として観客に呈示する芸術的空間のこと。」

現代芸術においてハイエンドオーディオもその範疇に含まれ、入念に作られた
オーディオルームが芸術的空間であるということをここに宣言したい!

            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

前代未聞の価格となってしまったMODEL-C8CSを頂点とするHIRO Acousticですが、
それは同社とHi-End Audio Laboratoryとしての研究成果としてご理解頂ければと思います。

そして、この挑戦は求める音量とダイナミックレンジの追求ということでもあり、
HIRO Acousticの原点であるMODEL-CCSからMODEL-C4CSまでのシリーズ各機種の
音質はMODEL-C8CSと全くの相似形であるということを一言述べておきたいと思います。

■MODEL-C4CSシステムの試聴が可能なのは5月末日までを予定していますが、
 実際の搬出日は今後の調整となるため多少の延期も想定されます。
 試聴可能な日程は下記ページのgoogleカレンダーにて公開中です。
  http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/

■個別試聴のご応募は下記にてよろしくお願い致します。
 http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/appoint.html

皆様の耳と感性で世界最高と私が推薦する本物のハイエンドオーディオを是非
体験して頂ければと推薦致します!

川又利明
担当:川又利明
TEL 03-3253-5555 FAX 03-3253-5556
kawamata@dynamicaudio.jp

お店の場所はココです。お気軽に遊びに来てください!


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