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H.A.L.担当 川又利明




2008年1月19日
No.564 「小編随筆『音の細道』特別寄稿 *第65弾*」Vol.2
『 今までの常識を上書きする実力と魅力を持つVitus Audioとは!!』

「早版⇒H.A.L.'s Short Essay No.65」

         〔3〕Vitus Audioパワーの源泉

http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/563.html

多数のお問い合わせを頂戴し、かつ試聴のご希望も入るなどVitus Audioの
魅力は静かに浸透を始めたようだ。前回と同じシステム構成でオーケストラ
以外の曲でも当然チェックしてみなければと思いつつ、スタジオ録音における
忠実な音像と空間表現のあり方に興味をそそられる。

http://www.cs-field.co.jp/vitusaudio/ss-010.htm

ここで紹介されているように、今回のシステムの要は何と言ってもSS-010と
いう二系統の入力と精密なボリュームコントロール機能を有するパワーアンプ
であろう。

純粋なクラスA動作では250Wという固定バイアスを流しながら、その十分の一
の25Wという近代のアンプでは大変小ぶりな定格出力にて設計された。なぜ
贅沢なパーツと躯体を持ちながらたった25Wなのだろうかと思いつつ、近年の
ハイエンドシーンを見ていると同様にハイパワーを売り物にしないアンプが
いくつか見受けられるようになった。

そして、数多くのパワーアンプのスペックを見るたびに、大出力アンプを開発
したメーカーの各社は口をそろえて完璧なスピーカードライブには大きな出力
が必要なのだと自社のポリシーを語っている。もちろん、私もこの試聴室に
おいて過去には錚々たるハイパワーアンプを鳴らしてきたものだが、それらの
体験でもハイパワー駆動を否定する発想はなかった。結果的に音質に関して
大きな説得力があったからだ…。そう、結果オーライという音質本位な考えが
私の最優先事項だからだ。

このフロアーはおおよそ123平方メートルで、ここH.A.L.の試聴室だけでは
ざっと55畳という広さ。天井高は2.7メートルで壁面のほぼ全周囲に渡り
QRDがふんだんに使用されている。

http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/414.html
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/415.html

このように使用したDIGI-WAVEの枚数は34枚、BADが6枚、更にDiffractalが7枚、
Skylineが何と65枚を採用し、比較的というか相当デッドな環境を作り出して
いる。だからこそ、録音に含まれている膨大な情報量としての余韻感と空間
表現が曲によって、あるいはシステム構成によってきちんと聴き分けられる
環境が設定出来ているのである。

音源であるスピーカーから後方の壁面までおおよそ3メートル、スピーカー
前面からリスニングポイントまでがざっと4メートル、リスナー後方の壁面
までは約2.5メートル程度という配置。これは長年私が多数の経験からベスト
ポジションを模索して決定してきたもの。

NEOはそんな空間のほぼ真ん中にセッティングしてある。だからこそ、ここで
は小音量から大音量までのあらゆる音量においても鮮明な再生音が可能になる
というものであり、各種の試聴に信憑性が伴うものだ。

言い換えれば、H.A.L.の環境はスピーカーを核とするオーディオシステムの
再生音に対してストイックなステージと言えるものであり、スピーカーから
放射された音波にルームアコースティックによる特性の足し算としての演出
効果はないということだ。

このような環境においてVitus Audio SCD-010 & SS-010 & ANDROMEDA CABLEの
1ブランドシステムがどのようなスタジオ録音のリアリティーを聴かせてくれ
るのだろうか?

そして、私は最前にも述べたようにSS-010の25Wというパワーが、このような
環境において過不足なく魅力的であるかどうか、今後のチェックポイントの
大きな要素となっていた。コンパクトなボディーのSS-010はパワーにおいても
コンパクトなのだろうか!? さあ、何を聴いてやろうか!!

スタジオ録音でポップな演奏とビッグバンドの迫力も聴きたいということで
私の選曲はまたまた古いディスクからになってしまった。これだ!!

1990年からの五年間Fourplayでの活動中92年に録音されたLee Ritenourのアル
バム“Wes Bound”である。http://www.leeritenour.com/

15年も前のディスクだが長年に渡り色々なシステムで聴きなれたものであり、
今回のVitus Audioのテストにはぜひとも使用してみようと考えていたものだ。

http://www.universal-music.co.jp/jazz/best200/UCCU-5149.html

このリンクでパーソネルはリー・リトナー(g)ボブ・ジェームス(key)
ロニー・フォスター(org)ジョン・パティトゥッチ(b)
ハーヴィー・メイソン、スティーヴ・ガッド(ds)マキシ・プリースト(vo) 他

と紹介されているが、なぜMelvin Davisの名前がないのだろうか? と思った。

http://www.melvinleedavis.com/reviews.html

上記のリンクから下記をたどると、ちゃんと“Wes Bound”も紹介されている。

http://www.melvinleedavis.com/disco.html

ちょっと古いがルイス・ジョンソンの重厚さとマーカス・ミラーのテクニック
をミックスしたようなエレキベースは実に爽快無比な演奏で注目していた。
このアルバムではウッドベースの曲もあり、こちらは名手John Patitucciが
担当している。

さあ、この試聴ばかりは音量をぐっと上げて望みたい。オーケストラものでは
SS-010のボリュームは-3dBだった。一般的にはダイナミックレンジが大きく
録音レベルが低めのクラシックよりも、スタジオ録音の方が録音レベルは大き
くなってしまうもので、従ってアンプのボリュームはスタジオ録音の方が低め
に設定することが多い。しかし、私はこのディスクの音質が良いことと実験的
な意味合いも含めて、ジャスト“0.0dB”で聴き始めることにした。

1.Wes Bound

タイトル曲の冒頭からNEOは抜群の低域コントロールを示し、Bob Jamesのきら
めくようなキーボードとHarvey Masonのスリリングなドラムが鮮やかに展開し、
オクターブ奏法のLee Ritenourが本人いわく“コンテンポラリーグループ”と
呼ぶ重くてスローなビートを奏で始める。

この曲で最初に印象に残るのがHarvey Masonの乾いてテンションの張り詰めた
スネアーの打撃音。この鋭さがピシッとセンター左側の中空に定位して決まる。

「おっ!!いいね〜、このドラム…、しかし、この瞬発力はホントに25Wなの?」

音源であるスピーカーユニットが存在しない中空にドラムの打音をくっきりと
定位させるということ自体がパワーアンプにとっては重要な要素となる。

一瞬で立ち上がり消滅していくパルシブな打撃音をピンポイントで空中に固定
して再生するという能力は私にしてみれば基本中の基本と言えるものだが、
そんな分析は過去に聴いてきた正にスーパー・パワーアンプとも言えるハイ
エンド・メーカーのフラッグシップモデルであれば当然のことだった。

しかし、SS-010はこともなげに鋭い打撃音を鮮明に叩き出し、その直後には
Fourplayでの演奏でも印象的だったHarvey Masonのフロアータムがずしっと
重厚な打音をNEOのウーファーから叩き出してくる!!

NEOのウーファーは600Hzまでを受け持つワイドレンジでありハイスピードな
ドライバーだ。そのユニットは30Kgというプレッシャーをガスシリンダーに
よって与えられ、フロントバッフルに常に圧着されビスを使った固定方法では
ないという特徴がある。

このウーファーは600Hz以上は-6dB/octで緩やかなスロープでつなげられてい
るものであり、これをコントロールするにはアンプの電源部の充実が高レベル
で実現されていなければならない。SS-010はそんな私の思いをあざ笑うかの
ように素晴らしいグリップをNEOに提供しているではないか!! これはいい!!

2.Boss City

もともとはグラミー賞に輝くWes Montgomeryの「Going out of my head」に
収録されている曲であり、Lee Ritenourのビ・パップ風アレンジのブルージー
でファンキーな一曲。イントロでゆったりとしたLee Ritenourのギターから
次の瞬間には強烈なホーンセクションが絶妙なシンコペーションで登場し、
ビートののったMelvin Davisのチョッパーベースが繰り出される。

イントロではハイハットの刻みだけに抑えていたHarvey Masonがスネアーを
がっちりと連打し、ホーンセクションとエレキベースが一瞬の同期を完全に
行って強力な音圧を叩き出す。まるで時計の秒針が12時の時報の前の三秒間に
予報を刻み、ピンと直立する瞬間に演奏者すべてが最大の音量を見事にシンク
ロさせて爆発するような音量感でNEOに新たなパッションを与えている。

「おー!! これは凄い!! アーチスト全員がシンクロしたインパクトの瞬間が
 これほど強烈に叩き付けてくるとは!! ホントは250Wあるんじゃないの!?」

Harvey Masonのドラムのインパクトが強烈かつ鮮明に聴かせるだけではなく、
ホーンセクションとギターが一糸乱れぬシンクロを見事に決めて、一瞬の衝撃
波として私の体全体の皮膚で音圧を感じるような錯覚を起こしてしまった。

NEOのインピーダンスは150Hzで最小となり4オームまで低下する。ちょうど
ベースの中心的な周波数帯域でのことであり、Melvin Davisのエレキベースが
弾けるような演奏を膨らみもせず安定感と重量感をもって聴かせてくれる。

前章でも述べたが、SS-010のボリュームコントロールは0.0dB以上では+2.0dB
+3.0dB +4.0dB +5.0dB +6.0dB +6.5dBと更にパワーを引き出すことができる。

私は意地悪な実験をすることにした。前述のようにデッドな環境であり、その
中ではかなりの音量までチェックすることがよくあるが、既にこの選曲で私が
出したい最大音量と言えるレベルまで音圧を求めていたのだが、25Wという
出力の設定に対して耐久試験ではないが、どこまで破たんせずに音量を上げて
いけるかをテストしてみたのである。

+2.0dBでは…「ぐっと来るね〜、まだゆとりを感じる、まったく問題なし!!」

+3.0dBでは…「この1ステップでの音量感の違いはけっこう大きい!!」

+4.0dBでは…「明確に破綻した歪んでいる、とは言えないところが憎い!!」

+5.0dBでは…「ちょっとざわざわしてきた感じかな〜」

+6.0dBでは…「あっ、ここできたか〜。ピークの頭がつぶれる感じだね〜」

+6.5dBでは…「ここまでくれば十分でしょう、お疲れ様〜という感じ!!」

オーケストラほどダイナミックレンジは大きくない。言い換えれば常に一定の
音量感が再生されるというのがポップスの曲だが、過酷な実験でSS-010は素直
にギブアップするときを使い手にわからせてくれるから逆にいえば安心できる。

私の厳しいチェックで+3.0dBまでは歪み感としては全く問題なく音量の追求が
できる。そして、楽音の音量によって一般の皆様が歪みとして認識し始めるの
が+5.0dB以上というところだろうか。

「えっ、気がつかないうちにボリュームをここまで上げてしまったけど、
 こんな音量を出せるお宅はまずないだろうな〜」

私は音量を上げることで余韻感がつぶされるヘッドマージンの減少は敬遠する
方なので、微小な信号であるエコー感はアンプのパワーにゆとりがないと音量
を上げても再現されないことがある。つまり、小さい信号のエコー感は全体の
音量を上げることで拡大されて聴こえるので、付加されたリヴァーヴの部分は
大音量の方が引き立つだろうという推測は一定の音量までということで、それ
以上は逆にリヴァーヴは再現されなくなってしまう。

それはスピーカーとパワーアンプの出力対比のリニアリティーの問題であり、
スピーカーユニットのダイヤフラムもアンプの電源部も一定の振幅以上の出力
を求めると微小信号の再現性が著しく低下してしまうものだ。

つまり、余韻感を失わない程度のハイパワードライブとして、NEOの能率を
考慮して今回のダイナミックな選曲でも+3.0dBまでは十分に実用範囲である
ということだ。その音量たるや、これは相当なものである。これで25Wか!?

いやいや、私の経験からすると瞬間的には150W以上のパワーを出しているので
はと推測できるものだった。

SS-010はTHD(全高周波歪み)+ノイズで0.01%以下というスペックを公開してい
るが、実際の歪み感を人間が聴いて感じるというのは実はその100倍程度、
つまり歪み率で1%以上になってからようやく音質がおかしいと気づくものだ。

従って、SS-010に歪み率を定格スペックより100倍まで甘くしてもいいから、
どこまで出せるかやってごらん〜という実験では私の想像以上の瞬間出力を
出していることだろう。当然、この曲の後にも10枚以上のディスクを聴き、
チェックポイントの評価は同様であったことを報告しておきたい。見事だ!!

定格出力25W/ch、これは実用上では全く問題にならないものであり、逆に設計
出力にゆとりを持たせるということと、パワーとドライバビリティーの関係は
数字ではないという圧倒的な大音量での証明ができたということだろう。

パワーの数値を大きくするのではなく、内部の設計とパーツの品位にコストを
かけていくという方針が更に常識を上書きする演奏を聴かせてくれた!!



         〔4〕心地よい温かな声質

オーケストラによる広大な空間表現から始まり、スタジオ録音での音像の質感
を極限的な音量によってもチェックした。このワンボディーで提供される音質
がここまでの魅力を持っていたのかと感動から納得へと認知されていく。

しかし!! 弦楽器が美しいものはヴォーカルだった素晴らしい!!
これを確認しなくては締めくくりにならないということで、何かヴォーカルを
と考え、やはりここは日本人の声、言葉で確認しようと思い至った。そうこれ。

ちあきなおみ/ちあきなおみ全曲集「黄昏のビギン」
http://www.teichiku.co.jp/teichiku/artist/chiaki/disco/ce32335.html

この曲も使い始めて二年以上になり、多数のハイエンドシステムの検証で重宝
するディスクの一枚。
当然、Vitus Audioを展示してからの四ヶ月間にヴォーカルもののCDは何枚も
聴いてきたが、ふと思い付くと ちあきなおみ は試していなかったようだ。

http://www.cs-field.co.jp/vitusaudio/scd-010.htm

今までの四ヶ月間で私が時間をかけて聴き続けてきた自信はVitus Audioとい
うワンブランドシステムであったことも特筆すべきことだと思う。
SCD-010+SS-010+ANDROMEDA AC/INTERCONNECTS XLR/SPEAKER CABLEという布陣
によるケーブルまでも含むシステムによって再現された音質の説得力の大きさ。

それは高忠実度再生というハイファイオーディオの常道をいくものであり、
シンプルであるが故の完成度の高さを標榜するものでもある。そして、同社の
最も大きな個性と特徴は以前に私が分析した通りのものだった。つまり…

http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/322.html

ここでも述べている暖色系の音色と質感ということが現在も全く同じであった
ということなのである。二年前も、その魅力を最後に確認するのに日本人の
ヴォーカルを聴いていたことを思い出す。そう、大貫妙子の「四季」だった。

真空管の温度感、温かみのある音質というものを私は否定はしない。しかし、
その温かさという魅力にマスクされてしまう現象もあるようだ。原理的に出力
トランスを通じてスピーカーに信号を供給する管球式アンプは音像の中身に
関しては確かにたおやかで滑らかな質感とひと肌のような温もりを連想する
音質は魅惑的ではある。

しかし、どうしても私はそれだけで満足できない側面があり、躍動的なパワー
感と輪郭の鮮明さという着目点でどうしても引っかかってしまうところがある。
もちろん、この私の欲求不満はすべての管球式アンプに当てはまるものではな
く、一部の作品では私をうならせるものもあったが、長所短所を説明のために
一般論として拡大解釈したものとお考え頂きたい。そして…

SCD-010のなめらかに開閉するトップローディングのスライドドアに指をかけ、
今では目をつぶっていてもディスク交換ができるほどになじんできたものだ。

SCD-010そのものにボリュームコントロール機能があるのだが、指四本を同時
に使う特殊なコマンド操作でバイパスすることができる。ここでの試聴は当然
最大出力でSS-010に接続しての設定であることである。さあ、どう出るか!?

「あっ!!出だしのヴァイオリンの質感は…、うん、ギターもそうだ!!」

二年前に同社のSL-100とSM-100によってNEOを鳴らした時の印象が蘇る。
そう、このひと肌のぬくもりというか、温度感が擦る弦楽器と弾く弦楽器の
両方で直ちに感じられた。楽音の発生した空間での定位感と音像のサイズは
心持ちふっくらとしているが輪郭ににじみや曖昧さがないのでエコー感との
識別もはっきりとできる。

コーヒーカップの取っ手に指を通すのではなく、カップそのものを両手で包ん
だときのような触覚による温度感が私の耳に作用している錯覚を催す。そう…
そのカップはアルミやステンレス製でやけどしそうな熱さを手の平に押し付け
るのではなく、厚みのある陶器にいったん伝わった熱が程良い温度調整をして
肌に優しい暖かさに和らげてくれるようなイメージが心地に良い!!

「そうそう、この弦楽器のテイストはやっぱりVitusAudioの持ち味だ!!」

イントロで感激しているうちにNEOのセンターに浮かんできた ちあきなおみ
の声がこれまた素晴らしい!! そう、空気に溶け込んでいくような余韻の尾を
引き、唇の輪郭を見極めようと血眼になって4メートル先の空気に視線を釘付
けにしている私の心中を見透かしたように、歌詞にはないこんなセリフが
聞こえてきそうなのだ。

「分析やら検証やら、そんな目で見てばかりいないで耳を澄まして…、そう
 そして目をつぶって私の歌を聴いて…」と彼女からのテレパシーが届く。

日常的な業務をこなしながら今日は試聴室とデスクを何回往復したことか。
ついには残業時間に食い込み、逆に来客がなくなったときを見計らって空調を
止め、照明も落とし、彼女の声に従うべく再度試聴室のソファーに身を沈めた。

私は試聴の時にはきっちりと両目を開き、目の前で展開する楽音の定位感や
余韻感、そして空間表現のあり方を視覚的にとらえるように観察するのが常だ。

左右のスピーカーの位置に対して中間定位がどのように展開するのか、自分の
視線が遠くに向けられるときは遠近法を耳で解釈し、ビジュアルイメージで
再生音を捉えることで文章への置き換えができるようになってくる。そうしな
いと独りよがりの情緒的な思い入れだけの文体になってしまうだろう。

しかし、Vitus Audioの演奏では何かが違うのだ。再生音の各項目を評価する
パラメーターとして必要不可欠な基本項目と十分すぎる情報量を最初から有し
ていることはわかっていた。それなしには私は各論でのチェックポイントには
進んで行けないこだわりがある。そう、四ヶ月間付き合ってきたVitus Audio
は私が知らぬ間に自分をどう見て、聞いて欲しいのかを私にレクチャーしてい
たようなのだ。Vitus Audioは聞けば聞くほどに聴き手の感性を大人にする。

オイルヒーターのような温度になるSS-010に手をかけてボリュームを-6dBに
セットし、めったにないことだがSCD-010のスタートボタンを押し、わずかな
動作音が聞こえてきたときにはまぶたを閉じて二回目の演奏開始を待っていた。

「えー!! イントロのヴァイオリンはこんなにゆったりしていたっけ?
  ギターのエコー感はこんなに広がっていたんだ!!
  あっ、ちあきなおみ の歌が…」

視覚的に音質的な特徴を捉えようとしていた私は目を閉じて同じ曲を聴くこと
でこんなにも大きな感動に巡り合えるとは思ってもいなかった。

Vitus Audioの演奏する音楽はぬくもりが気化して音場感に漂いだしている、
という表現しかなかった!!

弦楽器、ヴォーカル、ウッドベース、トライアングルの音までも、目をつぶっ
た私が初めて聴く体験だった。厳冬の季節に川の水面から水蒸気がうっすらと
立ち上っていくように、また熱いコーヒーから立ち上る湯気のように、楽音の
存在する目蓋の向こう側の空間では実にゆったりした時間が流れているのだ。

Vitus Audioのコンポーネントそのものが暖かい。

Vitus Audioが聴かせてくれる音楽には演奏者の情熱を気化させる技がある!!

Vitus Audioによって描かれる情景は目を閉じることで初めて見えてくる!!

視覚的に観察するから輪郭表現というシルエットに気を奪われてしまうのだろ
うか!?しかし、目を閉じることで楽音の輪郭を視線で追わないようにすること
で、私は新しい音楽の聴き方を知ることになった!!

目をあけていると絶対に触れることのできない音楽の世界がある。しかし…
Vitus Audioの演奏に包まれて目を閉じると演奏者に触れることができそうな
錯覚を催し、想像力が倍加して耳から入ってくる情報に目には見えない彩りを
添えている。とにかく楽しい!!

緊張感から解放され、ほっと安心できる安らぎの音。それは決して曖昧な表現
ではなく、聞き手のイマジネーションによって何倍にも膨らんでいく音楽の
情景描写を促進する。この私が仕事を忘れて感動してしまったのだから困った。

Vitus Audioの魅力、私は四か月かかってようやくわかったような気がする。

そう、聴く人のハートを温めてくれるオーディオ装置がこの世にあったのだ!!


このページはダイナフォーファイブ(5555):川又が担当しています。
担当川又 TEL:(03)3253−5555 FAX:(03)3253−5556
E−mail:kawamata@dynamicaudio.jp
お店の場所はココです。お気軽に遊びに来てください!!

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