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2016年11月11日 No.1344
 H.A.L.'s One point impression!! - Kiso Acoustic HB-G1

思えばKiso Acousticと原さんとの出会いから早いもので七年が経ちました。 http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/hb1/histroy.html 三年前にはこれ!「H.A.L.'s One point impression!!-Kiso Acoustic HB-X1」 http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/1075.html そして、今年は「Kiso Acoustic HB-G1来る!!」 http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/1326.html 第二段階の試作機が持ち込まれ、そしてマラソン試聴会へと!! http://www.dynamicaudio.jp/marathon/40/22and23stageKnew.html 更に「速報!!Kiso Acoustic HB-G1がStereo Sound GRAND PRIX 2016受賞!!」 http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/1341.html 略歴を述べれば上記のようになるが、今回のHB-G1を聴き、その音を語るには 少々おさらいが必要かと思い、次の一節を引用しておきます。 『触れることで響きを作る!!感性を揺さぶる前例のない音とは!!』より引用 http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/660.html           -*-*-*-*-引用開始-*-*-*-*-     ■ スピーカーのエンクロージャーはなぜ必要か ■ スピーカーの外形を形作るエンクロージャーはスピーカーボックスともキャビネット とも呼ばれることがあるが、そもそもなぜ必要なのか? この存在理由が実はスピーカーにとっての必要悪となっている場合があるという ことを考えてみたい。 エンクロージャーの役目とはなんだろうか? 真っ先に考えられるのが音源であるスピーカーユニットを特定の位置に保持する ための台座というか設置機能としての役目は誰しも考えつくところだろう。 しかし、それではエンクロージャーという名称は何を意味するのか? これには音響学的に重要な理由がある。 ここでダイナミック型スピーカーの動作原理をなるべく単純に考えてみた。 ダイヤフラムは前後にピストン運動を繰り返し、前進した瞬間にはダイヤフラム 前面の空気の密度を高め高気圧を作り、逆に後退したときには低気圧を作り出す ということだ。 随筆にも述べているが音波には回折効果があり、再生する周波数が低くなるに つれて回折効果が大きくなってくる。言い換えればウーファーの動作で再生する 帯域ではダイヤフラム前面に押し出した高気圧はコーン背面に回りこんでしまい、 また逆に後退したときの前面に発生する低気圧に対してはコーン背面の高気圧が 回りこんで音圧を相殺してしまうのである。 これを簡単な実験でイメージすればウーファー単体のユニットを空間に吊り下げ、 オーディオジェネレーターから低い周波数を入力すると音にならないという現象になる。 これを解決するためにウーファー後方に放射される低域の音波を囲ってしまい 前面の音波と相殺されないようにする必要がある。このように低域再生に必要な 囲い込みの効果を求めることから名称もエンクロージャーとされているのである。 もうひとつ事例を挙げれば、フルレンジユニット一発をワイヤーで吊るし、 上述と同じように可聴帯域のすべてを入力するという実験をやったとしよう。 22KHz からゆっくりと周波数を下げていくとすると、ユニット正面では高い周波数は ちゃんと音として認識できるが、300、200、150Hz あたりから次第に音としては 感じられなくなってしまい、100Hz 以下になるとコーンに指で触れて激しくピストン 運動しているのに音にならないという現象になる。 つまり、極端に言えばミッドレンジから上の高い周波数では、エンクロージャー の存在価値は次第になくなってくるということだ。 この自由空間におかれたスピーカーユニットで再生する周波数が低くなるにつれて 音圧が減少していく傾斜はオクターブ当たり-6dB というリニアなものであり、 ユニット後方を囲い込むことによって低域の音圧が得られるようになる。 以上のことからエンクロージャーの存在理由はダイナミック型スピーカーの 場合には低域再生のために必須のものということになる。 以上は随筆「音の細道」第55 話「VIVID AUDIO K-1」の第一部からの抜粋です。 この続きはよろしかったら下記よりご覧頂ければと思います。 http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/oto/oto55.html さて、このような目的を持つエンクロージャーは長年無共振思想がスピーカー 設計の主流となり、いや、むしろほぼ全てのメーカーがこの思想に準じた設計 方針であろうと思われる。 これを言い換えれば高剛性、高質量という発想であり、各種の素材を使用して 振動エネルギーをどれだけ封じ込めるか、あるいは受け付けないかということで 数々のスピーカーが作られてきた。 無共振ということは特定の周波数を強調しない、あるいは減衰させないという ことを意味するものだが、実はエンクロージャーが第二の音源になってはいけない ということでもある。 この第二の音源とはどういうことか、それは上記の随筆でも述べているので、 ぜひ続きをご一読頂ければ理解が深まるものと思われる。そして、第二の音源には エンクロージャーの外形と内側での音波の振る舞いという二つの要素がある。 エンクロージャーの外形が四角いものでは外部ではコーナー部の反射、内部では 定在波による変調ということになり、それを科学的に解決していくというアプローチが コンピューターの普及と進歩によって解決されてきたということだ。 確かに第二の音源があったのでは録音信号に含まれない音波が発生し、Hi-Fiと いう思想からすればいいことは何もない。しかし、それは第二の音源が人間に とって心地よくない音、コントロールされていない不要な音だから否定的に 考えられるものだと言える。 Hi-Fi思想によって録音され再生される楽音、それを発する楽器の成り立ちを 考えるとき、スピーカーの無共振思想と同様に特定の音階・周波数で共鳴しない ということは楽器作りのノウハウとして必要かもしれない。 しかし、音階を狂わせるようなことがなければ、楽器が発する美しい音の追求には やはり美しい“響き”が必要であり、それを実現することが楽器作りの必須要素で あると言えるだろう。 ヴァイオリンやギターなどの弦楽器では、もしも胴体がなくて弾いたり擦った りする弦だけでは音にならないだろう。ドラムやピアノの打楽器でも打たれて 振動するヘッドや弦だけでは音にならない。リードやマウスピースのように空気の 流れで振動しても管共振がなかったら音にならない。 要はコントロールされた美しい“響き”をいかに楽器に与えるかが重要な事と 言えるだろう。 では、スピーカーはどうなのか?“響き”をスピーカーに与えるということは 第二の音源として録音信号に含まれていない不純物を再生音に付加するという 発想があり、それは音楽信号の波形からは歪みと考えられるからだろう。 信号の波形ということは既に音波が電気信号に置き換わっているからこそ言える ものであり、入力信号と出力信号の相似性が崩れた場合のことを歪みという。 二つの波形を比べてみて違いがあることを歪みと言い、つまり比較しただけと いうことであり、物理的な測定によっての観察結果に過ぎないかもしれない。 つまり、設計者の拠り所は耳と感性、人間の五感ではなく測定器だった。 今までのスピーカー設計は“響き”をコントロールできないという理由から “響き”を科学の力で否定し、それを無共振思想という大義名分で納得させて きたのではないだろうか? なぜか? それは作者その人が美しい“響き”を知らなかったからだろう!! “響き”をコントロールするということに人間の五感をもって挑戦し、科学的 根拠を否定せず下地にして美しい“響き”を実現したスピーカーが出現した。 電子工学、音響工学など物理的な知識を有していても、美しい音を知っている ということにはならない。科学は手段であり、手段は過程であり結果ではない。 Kiso Acoustic、2008年10月に設立された会社としては生まれたばかりだが、 販売に向けての事業化の形式を整えただけであり、製品開発そのものは三年 以上前からスタートしていたという。 美しい“響き”を求め続けた日本人が21世紀のオーディオシーンに大きな一石 を投じた。データでは作れないもの。感性で作り上げた美意識を語る…!!            -*-*-*-*-引用終了-*-*-*-*- エンクロージャーの必要性は再生周波数によって異なるという事。 そして、逆転の発想でエンクロージャーを第二の音源として響きを作り出すという 世界で唯一のKiso Acousticが多くのユーザーに認められて早や七年。 原さんは響きを作り出しコントロール可能なスピーカーサイズというものに一線を 引くことで、試行錯誤を繰り返し新境地を発見したというのが私の結論です!! HB-G1の外見ではHB-1をウーファーの上に乗せただけという第一印象を持たれる方も 多いと思いますが、実は想像以上のこだわりが随所に盛り込まれているのです。 先ずはScan-Speak製の広帯域なベリリウム・ダイヤフラム・トゥイーターの採用。 Kiso Acousticでは、このトゥイーターの高域特性を公開していませんが、Scan-Speakの 資料によるとIlluminator beryllium tweeter D3004/604010の再生周波数帯域は 実測データとして40KHzまでしか測定されていませんでした。 90.5dBという能率で振動系の質量はわずか0.35gというトゥイーターですが、 測定チャートの上限40KHzでわずかに-4dBという優秀なものであり、特性グラフの 折れ線を私の推測で延長していくと恐らく70KHzで-10dB程度は確保しているだろう。 http://www.kisoacoustic.co.jp/hb-g1?lightbox=dataItem-isl03p0p その高域特性を有意義なものにするためにHB-1では内蔵しているクロスオーバー ネットワークを外付けの別筐体とし可能な限りのレベルアップを図っている。 http://www.kisoacoustic.co.jp/hb-g1?lightbox=dataItem-isl03p0r もちろん、120Hzというウーファーのクロスオーバー周波数に使用するインダクターも サイズが大きくなるので、妥協なきものをというこだわりからすれば当然のごとくの 成り行きだったかもしれない。 そして、HB-1の黒い台座部分に納められていたクロスオーバーネットワークの パーツを抜き取ってしまうと、原さんが認めた響きとは違ってしまうというので HB-G1の中・高域スピーカーの台座にはダミーウエイトを仕込んであり、HB-1の 基本設計通りの響き方をそのままにしているという。側面から見て木目のスピーカー 本体とウーファー用エンクロージャーの中間部の黒い部分のことだ。 http://www.kisoacoustic.co.jp/hb-g1?lightbox=dataItem-isl0alxj カタログには書かれていない、こんなこだわりが原さんの執念となってHB-G1の 開発を楽しくも容易でないものにしていたはずだ。 さて、ここでHB-1と設計思想と同じミッド・ハイレンジの響きを作るエンクロージャー という特徴から視点を変えて、Peerless製の10p口径ウーファーを4基搭載した ベースシステムはどうか、私は低域再生においても響きを作る思想なのかどうかを HB-G1が初めて持ち込まれた時に真っ先に原さんに質問したものでした。 その答えはNOでした。ベースシステムではエンクロージャーを第二の音源として 響かせるという手法は否定することから開発を進めていったというのです。 私の質問に対して口頭での説明に努力してくれた原さんですが、どうにもこうにも ご本人のこだわりを説明しきれないという事で、後日頂いた手書きに近い図面を こちらでRewriteしたのがこれ。メーカーサイトにも載っていない初公開情報です。 ■Kiso Acoustic HB-G1ベースシステム概略構造図 http://www.dynamicaudio.jp/file/20161103-HBG1.3.jpg 先ずは、このベースシステムのエンクロージャーの材質から紹介しましょう。 五年前に紹介していた下記の記事を再読頂ければと思います。 「新企画⇒New product release“Shizuka(静)”の魅力」より引用 http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/805.html           -*-*-*-*-引用開始-*-*-*-*- http://www.dynamicaudio.jp/file/110223/cmc01.jpg 肉眼では表面は触るとフエルトのような感触をしていて真っ黒にしか見えない ものなのですが、マクロ撮影したらこんなにも複雑で微細な材質だったとは!! http://www.dynamicaudio.jp/file/110223/cmc02.jpg そして、次はボールペンのペン先と一緒に撮影したものです。これだけ見て この材質が分かった方は凄いです!!(^^ゞそして、角度を変えてもう一枚!! http://www.dynamicaudio.jp/file/110223/cmc03.jpg どうですか〜、これ!! コの字形のものが何かお分かりですか?ホッチキスの針なんですね〜!! 開発者の言葉では、この素材は塗布するという表現をしていました。いったい これは何なのか、想像つきますか?塗るというイメージ湧きますか? (^^ゞ 果たして、こんな素材がオーディオにどう関係してくるのか? では、この素材とは何かを種明かししましょう!! これ↓です!! http://www.cmctd.co.jp/ 私も、この実物を見るまで知りませんでしたが、カーボンマイクロコイル(CMC) という合成物質なのです。 http://www.cmctd.co.jp/cmc/cmc.html そして、このCMCは電磁波吸収特性↓が素晴らしいということが大きな特徴です。 http://www.cmctd.co.jp/cmc/emabsorb/emabsorb.html 1.電磁波を99%吸収 2.1〜100GHzに渡る広帯域な電磁波吸収特性 3.(a)他の電磁波吸収材(フェライト、カーボン等)を添加(b)CMC含有量の 変更 (c)CMCのサイズの変更により電磁波吸収特性のカスタマイズが可能 4.成形性;シート、パネルでの提供が可能 5.筐体間隙への充填可能 このような物性を軍事目的に利用しようとすると、レーダー波の吸収も可能と いうことでピンとくる方もいることでしょう。この驚くべき新素材をどのよう に音質向上に生かすのか? それは汎用性を考慮してシンプルな形となりました。 http://www.dynamicaudio.jp/file/110223/NCB4246.pdf  ★税別定価 ¥120,000.            -*-*-*-*-引用終了-*-*-*-*- ベースシステムのエンクロージャーは概略構造図にあるように厚さ2.3mmの炭素鋼板で 構成されていますが、前後左右天地ともに1.6mmの金属製制振パネルを貼り合わせて 3.9mmの厚みを持たせています。 この炭素鋼板そのものが上記のNCB4246で採用したものと同質であり、電磁波吸収材 カーボンマイクロコイル(CMC)も、使用箇所は企業秘密ということでしたが、 ウーファーユニット周辺にチューニングのために使用されているのです。 概略構造図のフロントバッフルとトップ、ボトムプレートを黄色で示している部分は モノコック構造として、一枚板の炭素鋼板を折り曲げて整形し、左右サイドパネルは 組み合わせたのちに溶接されている。 概略構造図の青いパネルは金属製で制振のために内部に特殊な金属用接着剤にて 接着し、要所をスポット溶接で固めているという念の入れようです。 ただし、リアパネルは制振用パネルを内側に貼り付けていることは同じですが、 各ユニットにアクセスできるようにビスにて固定され開閉可能としています。 そして、注目すべきはフロントバッフルですが、前述の2.3mm炭素鋼板を三枚溶接し 三層構造とすることで剛性を高め制振構造をより強固にしているのです。 これらの各パネルを組み立てたのちに、焼き付け塗装を行って独特の高級感を出し、 エンクロージャーとしての気密性も大変高いものにしている。 次に、概略構造図にあるようにウォールナットの丸棒四本をブレーシングのために 左右サイドパネルに間に橋渡しして取り付けているが、その構造を下に追記しました。 厚さ3.9mmのサイドパネルに、先ず断面がU字型となる金属製パーツをあてがい、 その中にウレタンフォームを充填して共振止めを行い、そこに木製丸棒を固定すると いう方法で、サイドパネルに直接プレーシング素材が当たらないようにしている。 仮にブレーシング素材が金属であったり、木製であってもパネルに直付けしたりすると、 左右パネルの間で共振が発生してしまうという事で、何事にも実験を繰り返しながら 音質的にベストな状態に仕上げていくという職人技のノウハウが秘められているのです。 私は試聴の際に低域のエネルギー感が凄い曲をかけながら、盛大に響き振動している ミッド・ハイレンジ・スピーカーのボディーに触れて、HB-1と同様な指先での振動を 確認した後に、このベースシステムに触れてみると完璧な制振状態であることが実感 されたものでした。 HB-G1のクロスオーバー周波数は、ミッドとトゥイーターでは5KHzでHB-1と同様。 そして、ウーファーとミッドレンジは120Hzという事なのですが、各々のスロープ 特性は-12dB/octということで、4個のウーファーとしては240Hzにおいても-12dBの 音圧を出力していることになります。 この240Hzという帯域は低音楽器のボリューム感が最も発生する周波数であり、 昔のプリメインアンプに搭載されていたトーンコントロールのBASSの調整ツマミに 250Hzとレタリングされていたのを覚えているベテランも多いことと思います。 低域の量感を左右する240Hz以上のウーファーの再生音に関して、原さんは響きは 不要であり、あってはいけないものとして徹底した制振設計を行い、ウーファーの ハイカットフィルターによって伸びていく中低域に色付けがないように配慮したのです。 それが、今度はミッドレンジ・スピーカーのローカットフィルターによって、 -12dB/octで減衰していく低域に関しては、HB-1の思想通りの響きのみを生かすという、 響きを分離化することでミッドレンジ・ユニットの大振幅時の歪率も低下させる という一挙両得を狙ったものだったのです。 HB-1の思想通りの中高域スピーカーですが、HB-1ではウーファーだったユニットが 3ウェイではミッドレンジという役目で、しかもクロスオーバー周波数は120Hzという事。 一般的な3ウェイスピーカーでは、ウーファーのクロスオーバー周波数は低くて200Hz、 最近の注目作であるYAMAHA NS-5000では700Hzという例もありますが、多くは300Hzから 500Hzくらいまでが3ウェイスピーカーでのウーファーの再生帯域というものです。 それが何と120Hz以下を受け持つウーファーをベースシステムとして追加したのは、 正にKiso Acousticが響きを尊重し作り出していくという思想を現したものなのです!! メーカーサイトやカタログに紹介されていないノウハウを中心に、HB-G1にかけた 原さんのこだわりを私なりの視点から説明させて頂きました。 私は聴いて感動しないことには、このような文章は書きません。いや、書けません! 当フロアーにて日々試聴を繰り返し、バーンインも進み熟成した響きを放ち始めた HB-G1の試聴システムをご紹介しましょう。 ◇ H.A.L.'s Sound Recipe / Kiso Acoustic HB-G1-inspection system ◇ ……………………………………………………………………………… dCS Vivaldi Clock (税別¥2,120,000.) http://www.taiyo-international.com/products/dcs/vivaldi-clock/      and TRANSPARENT XLPC+PI8 (税別¥770,000.) http://www.axiss.co.jp/brand/transparent/power-code/power-cord-2/      and finite element MR02-2+CERABASE 4P (税別¥970,000.) http://www.axiss.co.jp/brand/finite-elemente/finite-elemente/ ……………………………………………………………………………… ▽ ▽ ▽ Cardas Audio Lightning BNC Cable http://www.taiyo-international.com/products/cardas/digital/ ▽ ▽ ▽ ……………………………………………………………………………… dCS Vivaldi Transport (税別¥5,230,000.) http://www.taiyo-international.com/products/dcs/vivaldi-transport/ and TRANSPARENT XLPC+PI8 (税別¥770,000.) http://www.axiss.co.jp/brand/transparent/power-code/power-cord-2/      and finite element MR02-2+CERABASE 4P (税別¥970,000.) http://www.axiss.co.jp/brand/finite-elemente/finite-elemente/ ……………………………………………………………………………… ▽ ▽ ▽ TRANSPARENT REFERENCE XL 110ΩAES/EBU DigitaL (XLR)×2 (税別¥960,000.) http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/1037.html http://www.axiss.co.jp/ftran.html ▽ ▽ ▽ ……………………………………………………………………………… dCS Vivaldi DAC (税別¥4,270,000.) http://www.taiyo-international.com/products/dcs/vivaldi-dac/      and TRANSPARENT XLPC+PI8 (税別¥770,000.) http://www.axiss.co.jp/brand/transparent/power-code/power-cord-2/      and finite element MR02-2+CERABASE 4P (税別¥970,000.) http://www.axiss.co.jp/brand/finite-elemente/finite-elemente/ ……………………………………………………………………………… ▽ ▽ ▽ Vitus Audio-Andromeda Interconnect cable XLR 1.5m(税別¥1,070,000.) http://www.cs-field.co.jp/brand/vitus/products/andromeda.html ▽ ▽ ▽ ……………………………………………………………………………… Vitus Audio SL-102(Anodized Gray) (税別¥7,130,000.) http://www.vitusaudio.com/en/79989-SL-102 Vitus Audio-Andromeda AC Power cable 1.5m(税別¥420,000.)付属 http://www.cs-field.co.jp/brand/vitus/products/andromeda.html      and finite element MR02-2+CERABASE 4P (税別¥970,000.) http://www.axiss.co.jp/brand/finite-elemente/finite-elemente/ ……………………………………………………………………………… ▽ ▽ ▽ Vitus Audio-Andromeda Interconnect cable XLR 7.0m(税別¥3,490,000.) http://www.cs-field.co.jp/brand/vitus/products/andromeda.html ▽ ▽ ▽ ……………………………………………………………………………… Vitus Audio SM-102(Anodized Gray)(税別¥13,800,000.) http://www.vitusaudio.com/en/121301-SM-102 Vitus Audio-Andromeda AC Power cable 1.5m×2(税別¥840,000.)付属 http://www.cs-field.co.jp/brand/vitus/products/andromeda.html      and TRANSPARENT PIMMX(税別¥540,000.) http://www.axiss.co.jp/brand/transparent/transparent-2/ ……………………………………………………………………………… ▽ ▽ ▽ shizuka Speaker Cable CCL-1 (2.5m/税別¥120,000.)特注仕様8.0m使用 http://www.shizuka-acc.com/ccl-1 ▽ ▽ ▽ ……………………………………………………………………………… Kiso Acoustic HB-G1(税別¥4,500,000.) http://www.kisoacoustic.co.jp/      and H.A.L.'s Z-Board×2(1枚/税別・配送費込み¥60,000.)スピーカー本体用 http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/fan/BZ-bord.html      and H.A.L.'s P-Board×2(1枚/税別・配送費込み¥65,000.)クロスオーバーネット用 http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/fan/BZ-bord.html ……………………………………………………………………………… さて、上記システムによって当フロアーにセッティングされたHB-G1です。 http://www.dynamicaudio.jp/file/20161106-hb-g1.01.jpg 多数のこだわりをもって設計されたスピーカーですが、ここでのセッティングでは 私のこだわりがあります。この写真からお判りでしょうか? ヒント、その1.下記のHB-G1の画像と見比べてみて下さい。 http://www.kisoacoustic.co.jp/hb-g1 ヒント、その2.このPODIUM STANDもHB-G1のベースシステムと同じスパイクです。 http://www.kisoacoustic.co.jp/podium-stand 実は、原さんが考案したKiso Acousticのスパイクは、他社のように鋭いものではなく、 親指ほどの太さの有る金属棒の先端を丸く仕上げてあり、接地面は点になるものの 細い金属棒を尖らせたスパイクにように共振しないデザインになっています。 言い換えれば、Kiso Acousticのスパイクはぐさりと突き刺さるという事はなく、 スパイクそのものの太さによる剛性を生かして点接地させている独特の構造です。 上記の答えとして、私はここでのセッティングでは付属インシュレーターを使用 していないという事です。しかし、そのインシュレーターにこそ原さんのこだわりが あるもので、下記にて商品として販売しているモノだったのです。 MWI7020 (2個入り)¥30,000(税抜き) http://www.shizuka-acc.com/mwi7020   これを8個12万円相当でHB-G1に付属させているという事なのです。 原さんの試聴室はフローリングなので、このMWI7020を使用してチューニングした とのことでしたが、ここのフロアーでは床の状態が違うのです。 下地がコンクリートでも、その上にフローリング、石材、タイルなどを貼り付け た色々な仕上げがありますが、木材のフローリング表面にスパイクを使用すること では悪い要素はさほどありません。 そして、このフロアーで使用しているのがタイルカーペットです。 先ずは大手メーカーのサイトから↓これをご覧になって下さい。 http://www.toli.co.jp/digital_catalog/fabricfloor2011/index.html?id=0004 カタログの12ページを開くと遮音性が高いというセールスポイントがありますが、 意外にタイルカーペットは私も推薦したいものなのです。 http://www.dynamicaudio.jp/file/110810/tc01.jpg http://www.dynamicaudio.jp/file/110810/tc02.jpg さて、そこで次の写真を見て下さい。↑これは私が撮影しました。 タイルカーペットの断面をクローズアップしたものです。新品で毛足がつぶれて いない状態で毛足が3ミリ、下地が2ミリということで厚さは5ミリでした。 タイルカーペットが音響的にメリットがあるいうポイントが二つあります。 一つは吸音性が結構あるということで、スピーカーの一次反射音をかなり吸音 してくれるということ。ただし中高域の帯域だけです。 また、メーカーのカタログにもありますが生活騒音も同時に吸収するので室内の ノイズフロアーを下げてくれる効果があります。フローリングの部屋が多いですが、 実はこのようなメリットがあり低コストで作れる音のいい床として利用されるといいでしょう。 もう一つのメリットはスパイクに対する機械的ダンピング効果というものです。 写真でご覧のように下地2ミリを貫通するようにしてスパイクがタイルカーペットの 下にある基礎に打ち込まれた時に、ラバー系素材がスパイクを包み込むようにして ダンピングしてくれるのです。 ですから、基礎がコンクリートであってもグサリと差し込む事でラバー系素材に 空いた穴はちょうど良い受け皿という役目を果たしてくれます。 そして、タイルカーペットのオーディオ的なデメリットを説明しましょう。 この上にコンポーネントやスピーカー、ラックの脚部など全てのものを置くという 場合に接地面が平面という時には機械的にはフローティングされた状態になってしまいます。 当然、鋭いスパイクで重量級スピーカーをセットすればタイルカーペットを貫通して コンクリートに直接スパイクが届くかもしれませんが、お薦めできない理由がここにあります。 基礎がしっかりしているという前提でタイルカーペットの音響的メリットを活用する のであれば、設置する時にはなるべく小さい面積で荷重を基礎に連結させていく ことが必要と言う事です。 そのような特徴を踏まえた上で、タイルカーペットの床であってもスパイク 直刺しよりも良い音を狙いたいということで開発したのがH-Boardでした。 「オリジナル商品第五弾!! HB-1のために作りました“H-Board”誕生!!」 http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/691.html H-Boardの外形はPODIUM STANDに合わせてあるため、私が使用したのがZ-BoardとP-Boardでした。 これら三種類のボードは形は違いますが、すべて質量は19Kgで同じです。 実際にセットアップした状態が下記の写真です。 http://www.dynamicaudio.jp/file/20161106-hb-g1.02.jpg 私は試聴の上で音質的にZ-BoardとP-Boardを使用することを選択したのです。 http://www.dynamicaudio.jp/file/20161106-hb-g1.03.jpg 当フロアーでこの各種ボードの片面に貼り付けられている赤いフェルトを下にして タイルカーペットに接するように置くと、両者の毛足が密着して摩擦が大きくなり ピクとも動かなくなってしまいます。 ですから、ここでは敢て裏返しにして使用することで、光沢のある黒い仕上げ面を 下側にしてタイルカーペットの上で押せば動くようにして位置調整できるように しているのです。誤解なきようよろしくお願い致します。 ここでお断りしておかなければならないのは、本来の使い方は赤いフェルトを フローリングの床面に接するように下にして使用することで、滑らせて位置の 微調整ができるようにし、床面も傷つかないようにしてご使用頂ければと思います。             -*-*-*-*-*-*-*-*-*- さて、前置きが大変長くなってしまいましたが、以上の状況で試聴を開始しました。 と、いうよりもほぼ毎日のように聴き続け、どなたにお聴かせしても私同様に感動 して頂けるだろうという鳴らし込みが出来るまで熟成を重ねてきたという事でしょうか。 もちろん、ここまで皆様にお薦めするわけですから、私は定番の課題曲も聴き、 更にHB-G1の魅力を堪能できる選曲はないかと探し出してきたのがこのアルバム。 ■和田 薫/伊福部 昭/外山 雄三:日本の管弦楽(マルメ響/広上 淳一) http://ml.naxos.jp/album/BIS-CD-490 伊福部 昭 - 交響譚詩 Ballata Sinfonica I. Prima ballata: Allegro capriccioso 冒頭から鮮烈なフォルテで弦楽と金管楽器の叩き付けるような強烈なアタックが 噴き出してくる。弦楽と管楽器が螺旋を巻くように絡み合いながら展開し、 日本の情緒感を見事にスコアに表現した私が大好きな一曲。冒頭からしびれる! 「何なんだ! 美しくも力強く、こんな音色は聴いたことがないぞ!」 今までに数え切れないほどのスピーカーとシステム構成で聴いてきたこの曲。 急テンポで進行する演奏に圧倒され、頭の中にあるカウンターが秒の数字を どんどんアップしていく過程において、今のこの音と類似する音はなかったかと 私の記憶を高速スキャンするのに要した時間は10秒ほどか。 聴き進むほどに過去の記憶にある音とは相似性はあれど根本的にマッチするものなし、 という回答が弾き出されるまで一分とかからなかった。類似性があると言えば同社の HB-1とHB-X1なのだが、それとて六割程度のマッチングだろうか。 遂にヒットなしのフラッグがピンと音を立てて結果を出した。この曲は演奏する スピーカーによってはエキセントリックなきらめきを放ち、ともすれば金管楽器の 質感が過敏に鋭さを感じさせ、弦楽もテンションを引きつるような緊張感を伴う。 ところが、相当な音量で鳴らしているにも関わらず、HB-G1が奏で始めた舞踊曲の 旋律を描く弦楽は前例のない程の艶やかな光沢を放ち、しなやかに余韻を撒き散らす! 躍動する主題の旋律が宙を舞っているとステージの奥から重みがあり切れ味のいい 打楽器の連打が空気を揺さぶるようにしてホールのエアボリュームを誇示する!! 弦楽器の質感は優雅とさえ言える美しさを伴いつつ、金管楽器の音色には清々しさを 感じるほどの透明感が耳に心地よく、オーケストラの響きを雄大な空間にたなびかせる 演出効果をスピーカーがやってしまったという驚きが先行する!! 「迫力と優美さを共存させる響きをスピーカーが作り出したということか!?」 剛性の高い重量級スピーカーの数々で聴いてきた印象と全く違う展開に驚き、 先ずはHB-G1(原さん)の得意満面なほほ笑みを見せつけらたようだった。 アップテンポでダイナミックなこの曲が、これほどまでに耳に心地よく聴けるとは! (原さんに!)やられた!という思いに体温が上がり、でも冷静さを取り戻して次の曲を待った。 II. Seconda ballata: Andante rapsodico 緩急のある主題と木管楽器の振る舞いが魅力的な演奏が始まり、興奮の7分間から ようやく立ち直り、HB-G1が聴かせる美的音楽の構成要素を探し始めていた。 Kiso Acousticの処女作HB-1も、次作HB-X1もトゥイーターは共通、黒檀を削り出した ショートホーンの奥には日本のフォステクス製になるドライバーが組み合わされている。 しかし、HB-G1のベリリウム・トゥイーターがホーン形状ではなく、ダイレクト ラジエーターとして音波の放射パターンが異なることにより、ホーンのように 前方に集中した高域成分の放射ではなく、ドーム型ダイヤフラムでは球面波に近い 広範囲な指向性を持たせたこと、更に高域再生能力が大幅に高まったことも含め HB-G1のミッドハイ・エンクロージャーが第二の音源として放出する響きの広がり方に マッチしていると思われた。 次に、HB-1、HB-X1もウーファーとトゥイーターのクロスオーバー周波数は5KHzと同じ、 HB-G1の場合には同じ10cm口径のユニットでもミッドレンジドライバーとして機能 しているが、やはりクロスオーバー周波数は5KHzと同じ。 そもそもKiso Acousticの特徴として、第二の音源であるエンクロージャーの内部に 対して10cm口径のユニットの後方に放出する音圧によって、楽器と同じようにエン クロージャーが共鳴して響きを放出するという原理がある。 ただし、トゥイーターの振動板の後方はドライバーユニットのキャビティーに よって密閉されているので高域成分がエンクロージャー内に放出されることはない。 そして、HB-G1でも5KHzのクロスオーバー周波数でスロープ特性は-12dB/octと同じ。 つまり、10KHzにおいても-12dB、7.5KHzでは-6dBという音圧が発生し、120Hzから 高域に向けてかなり広範囲な再生帯域を持っているという事。 このPeerless製の10p口径ユニットがヴァイオリンやギターの弦の役目を果たし、 エンクロージャー内部に音響エネルギーを放出することで、第二の音源として ブレーシングでチューニングされた単板に響きを与えるのである。 だから、HB-1の頃から、スピーカーの後ろに回ってもヴォーカルが聞こえてくるし、 あたかもスピーカーの振動板のようにエンクロージャーに触れると振動していることが分かる。 ミッドハイレンジのスピーカーユニット二個とエンクロージャーの三者が再生音を 構成しているということがKiso Acousticの最大の特徴なのだが、HB-G1に搭載 されたベリリウム・トゥイーターが第二の音源に対して素晴らしいマッチングの 放射パターンで以前にはなかった魅力を発揮しているのだと私は実感した。 トゥイーターとエンクロージャーの響きが溶け合う事で、これほど美しい再生音が 実現したものであり、世界中のあらゆるスピーカーと対比して孤高の存在として 独自性を発揮している!! スピーカー周辺の空間をパレットとして、スピーカーユニットという絵具から 何色もの色を絞り出し、絵筆を使ってパレットの上で複数の絵の具を調合して 新しい色、自分だけが作り出した色彩を発見していく喜びと楽しみ。 Kiso Acousticの画期的な特徴は、その絵具にエンクロージャーという新しい要素を もたらしたという事なのです。そして、私がイメージするエンクロージャーという 絵具の色は半透明の白色ではないかということです。 白はすべての原色に微量に混ぜ合わせることで、その原色の色調をそのままに パステル調の新しい色となる。青は水色、赤はピンク、黒はグレーのように、 つまりはもともとの色が何だったかが分かるように新色を作り出すことでしょう。 トランスデューサーとして電気信号を機械運動に変換し、音波を作り出すスピーカー ユニットが正確に色々な楽器の音を再生していく。ヴァイオリンそのものの音色は スピーカーユニットで再生し、ヴァイオリンの楽音に一滴の半透明な白い絵具を 混ぜ合わせた音をエンクロージャーという第二の音源が作り出し、両者を空間と いうパレットで調合していくと人が聴いて美しさを感じる絶妙な響きが出来上がる!! この曲を聴きながら、HB-G1のスピーカーユニットの軸上に楽音がまとわりつく ことなく、左右スピーカーの中間に見事に音像が配列される不思議の謎解きを 私はこのように考えた。それが見事に次の曲で証明されていく!! 4.外山 雄三 - 交響詩 「まつら」Symphonic Poem, "Matsura" 昨年と今年もマラソン試聴会の最後の一曲に選んだ雄大で繊細な曲です。 空気を弾くような低弦のピッチカートによる合奏で始まり、ゆったりと控えめな 音量でコントラバスのアルコが続き、そこに抑えに抑えた弱音で大太鼓の細かい 連打がはるか向こうから響いてくる。この低域の質感の充実もHB-G1のポイントだ。 ピッコロが切ない歌声で響き、かすれるように弦楽が尾を引く余韻を残し、 やがてゆったりしたホルンの壮大な楽音が空間の大きさを提示しながら展開する。 日本独特の和音による弦楽が流れるように始まる時、いつも私はうっとりしてしまう。 「あー、完全に消えてる!! 空間から湧き起こる弦楽の何と素晴らしいことか!!」 前述のエンクロージャーという音源がホールの空間を作り出し、その空間に描かれる 弦楽五部の合奏が始まった時、私はHB-G1の姿を完全に見失っていた!! そして、木管の響きが彩を添え、和太鼓の小気味よい打音が遠近感を印象付け、 たゆたうような弦楽の響きが空間を埋め尽くしていく絵画的な描写力に感動する!! 二回目の弦楽による主題の提示が終息していくと、グロッケンシュピールの輝く ようなソロが始まり、トライアングルと交互に響くやり取りが始まると他の パートは完全に沈黙する。 ベリリウム・トゥイーターが活躍する、この高音打楽器の質感が素晴らしいダイナ ミックレンジをもたらし、弦楽の微小なアルコから次第にオーケストラが息を吹き返す。 日本的情緒感あふれる弦楽の主題に金管楽器が加わり、起伏の激しい演奏から フィナーレに向かって長いクレッシェンドが始まる。 約13分という演奏を長いとは決して感じることなく、聴き慣れている曲なのに なぜか新鮮な印象で聴き続けているが、既にHB-G1の存在感は視覚的なものだけ。 響きを作るという事は同時に音場感をも構築する、これがKiso Acousticの面目躍如たる 素晴らしさなのだと思うと、以前から私が発言している音像の縮小化と音場感の 拡大というモットーが希薄に感じられるのだが、結果論として美しさを感じてしまうので 明らかに私の負けを認めてしまった。こんな音を聴かせられたら仕方ない! この曲はラストは何と壮大なファンファーレで幕を閉じるが、まるでオリンピックの 体操競技で床運動の最後に見事な回転技を決めて、ぴたっと着地が決まった一瞬のように、 トランペットと完璧に同期して強烈なグランカッサの打撃音が弾ける。 このダイナミックなファンファーレにも当然響きの要素が含まれており聴きやすい。 そして、グランカッサの質感がこんなにも充実し素晴らしかったとは!? HB-G1を語るには、いまだ道半ばという思いで、次の選曲は既に決めていた。             -*-*-*-*-*-*-*-*-*- ■「鬼神」和田薫の音楽 http://www.kaoru-wada.com/ http://www.kaoru-wada.com/?p=854 http://www.kingrecords.co.jp/cs/g/gKICC-819/ このディスクから先ず何を聴こうかと考えた時、私のインスピレーションが これだというトラックを指し示した。当然このディスクの内容は承知しているが、 何といっても強烈な大太鼓やインパクトのある和楽器が重厚な低域と凄まじい 迫力で録音されているため、先ずは無難なチェロからという配慮があった。 5.チェロとオーケストラのための 祷歌 https://www.youtube.com/watch?v=hDDhkPKShAc ケルン放送管弦楽団の副首席チェリストであるOliver Wenholdのソロから始まる。 「何だ! こんなチェロを奏でるスピーカーが他にあっただろうか!」 私はこれを書く前に同じトラックを三回も繰り返して聴いてしまった!! それほどHB-G1が聴かせるチェロが素晴らしかったからだ!! 柔軟性がありながら絶妙な摩擦感がHB-G1のボディーを震わせ、抑揚のある演奏に ともなって音像そのものが躍動する。弓のタッチが細かく刻まれるカデンツァが 素晴らしく、すすりあげるような高音階の質感にしびれるような快感が伴う音!! マラソン試聴会で演奏したHB-G1の最初の選曲も溝口肇のスタジオ録音の鮮明な チェロが思い起こされるが、ケルン・フィルハーモニーホールのステージ中央で Oliver Wenholdが演奏するチェロは広大な音場感をもたらし、その空間を支配する。 冒頭からチェロという楽器の魅力をまざまざと見せつけられていると、ふと気が付く。 コントラバスの長いストロークの、ゆったりしたアルコで奏でられる音量を抑えた 重厚な通奏楽音が背景にしっかり根付いている。同時に大太鼓を柔らかく叩く低音 の繰り返しが寄り添うようにチェロを包み込んでいることに。 主題の旋律をチェロが朗々と奏でる四分間を過ぎてから、ハープの爪弾きに誘われる ようにアレグロに移行しオーケストラ全体が呼応する律動的な展開に引き込まれていく。 あのHIRO Acousticを迎えてから膨らまない低音というスピーカーにおける価値観を 重視するようになった私にとって、このHB-G1のベースシステムが聴かせる低域の 制動感の素晴らしさがKiso Acousticの歴史に新しい一ページを刻んだと実感された。 チェロと入れ替わりにオーケストラが爆発するようなフォルテを叩き出し、 その背後から低音打楽器の重量感ある響きがHB-G1の周囲に湧き起こる素晴らしさ。 八分過ぎに右手奥から突然叩かれるティンパニーの重々しい四連打が意表を突く!! この見事に引き絞られた低域の質感がベースシステムの真骨頂なのだろう。 ライブ録音なので演奏後の盛大な拍手が鳴りやまないうちに、リモコンを操作して 同じトラックを聴き直してしまった私も未体験の魅力がここにあった!! この低域のダイナミックな再現性があれば、この曲もいけるかもしれない!! と、HB-1とHB-X1で演奏するのはためらわれるほどの迫真の低音が炸裂する曲。 マラソン試聴会の最後でも演奏したこの曲をかけてみることに。 3.津軽三味線とオーケストラのための「絃魂(イトダマ)」 https://www.youtube.com/watch?v=77KhSBt-rFs&list=RDrB-Z3_Ugsy4&index=2 壮大なホルンの響きとハイテンションな弦楽と打楽器が強烈なインパクトで 襲いかかってくるような導入部。コントラバスとグランカッサの完璧に同期した 重厚な低音が爆発し、オーケストラ全体が発したエネルギーがホールの空間を 満たし、広大な音場感を示しながら消滅していく過程を私は震えながら見ていた!! 「こんな低音に支えられた音場感、10センチユニットが出す低域じゃないぞ!!」 HB-G1のベースシステムは前述のように強固なボディーによる完全密閉型。 能率を上げトランジェント特性を良くするために共振周波数を持たせるポート チューニングという方法を取らずに、自然な減衰特性で極めて低い周波数まで 伸ばしながら、小口径ウーファーの高速反応を重視しつつ同時にダンピングも行う。 前述のように他社の3ウェイスピーカーでは見られない120Hzという大変低い クロスオーバー周波数を選択したのは、HB-G1のミッドレンジドライバーによる 響きの創生を考慮した上で、そのミッドレンジドライバーにおけるストロークの 大きな超低域成分を取り除き、ベースシステムにゆだねるというアイデアが HB-G1のトータルな歪率の低下に結びついているのです!! つまり、HB-1という原器で出しえなかったミッドハイレンジの質感の向上という ことが、ベースシステムを追加した本来の目的でもあり、ただ低域の増量を狙った 訳ではないという原さんと意図をしっかりと確認することが出来ました。 締太鼓の爽快な打音がホールに響き渡る中で、津軽三味線の鋭い立ち上がりが 拍子木やびんさざらといった和楽器の切れ味と呼応して素晴らしい余韻がHB-G1の 上空にたなびく有様に、ただただ酔いしれ感動にひたる自分がいた。素晴らしい!! あっという間の13分が終わると、この低域だったら更にこの曲もいけるかもしれないと、 素晴らしい低域に安堵した私は欲深くなった。HB-1の時代には考えもしなかった 林 英哲が大太鼓が炸裂する次の曲はこれだ。 7.和太鼓とオーケストラのための協奏的断章 鬼神 https://www.youtube.com/watch?v=rB-Z3_Ugsy4&list=RDrB-Z3_Ugsy4#t=49 ここで強烈な印象をもたらす林 英哲と風雲の会について先にご紹介する。 http://www.eitetsu.net/ http://www.eitetsu.net/fuun/ 林 英哲 率いる風雲の会メンバーである上田 秀一郎と田代 誠らによる14基の 大小の和太鼓がオーケストラと共演する16分に及ぶ壮大な協奏的楽曲。 六つのパートで構成され、オーケストラと和太鼓のカオス的な導入部、弦楽器の 強奏による主題と第二主題。続いて和太鼓の激しい律動にオーケストラが競奏する アレグロ部、静寂と荘厳、和太鼓とオーケストラの対比、和太鼓のみの律動部。 再度静寂の中で副主題が再現され、司伴楽風な儀式的謡部に続き、怒涛のアレグロ再現部。 ライナーノーツの解説から引用すると上記のような構成による雄大な演奏だが、 その随所で打ち鳴らされる和太鼓の再現性に対して私は慎重にボリューム調整した。 しかし、冒頭のカオス的導入部でいきなり叩かれた大太鼓の音圧を感じ、これは まだいけるとボリュームを3dB上げて聴き始めてしまった。 上記で示したyoutubeの動画の画質とPCのスピーカーでの音質はさておき、この ディスクで唯一、作曲者である和田 薫 自らが指揮した一曲。 これら大太鼓を含む打楽器のラッシュに対して、響きを否定したHB-G1のベース システムが他社の大型スピーカーと比較して、この大音量に対して完全無比な 低歪の再生音だったかは議論しても虚しいが、私が許容する音楽鑑賞のレベルでは 全く問題なし。 それどころか、幅15センチ高さ62センチのベースシステム本体のサイズを考えれば、 驚嘆に値する低域の素晴らしいダイナミズムが冒頭から感じられる意外性に私は 一瞬戸惑い、その後の展開を聴き進めるうちに上述の各項目が全て発揮された パフォーマンスに息を呑みつつ心中ではスタンディングオベーションを送っていた!! 特に大太鼓の音というのはバチで叩くポイントによって音程と音色が変わるという ことが感じられ、口径の大きな太鼓では倍音成分が多分に含まれているという事を HB-G1のミッドハイレンジスピーカーの響きの要素でも感じ取ることができた。 前述のように120Hzを境にして、ベースシステムとミッドレンジが共同作業で主な 低音楽器を再現するわけだが、間近で見るとミッドレンジの振動板がベースシステムの それよりも激しく振幅していることが分かる。 ミッドレンジの低域部はバスレフ方式によって、ポートから音圧を抜いているので トランジェント特性も良くなるが、密閉型エンクロージャーよりは低域の再生限界は 高くなってしまう。そこをベースシステムがサポートする形で叩き出した各種 和太鼓のテンションと響きを含む質感の素晴らしさに安堵し感動してしまった!! 正に怒涛のアレグロ再現部が終わろうとしているその時。 このスピーカーは他のジャンルの音楽に対しても今までにない魅力で聴かせて くれるであろう強い確信が私の心中に宿っていたのです!! 実は、HB-G1を検証するために一週間前から封印していた課題曲がありました。 毎日のように聴き、エンハンサーCD-ROMを毎晩のようにリピートさせ、今日まで 熟成させてきた結果が以上でした。そこで、つい先ほど定番のこれを聴いたのです。 ■マーラー交響曲第一番「巨人」第二楽章 小澤征爾/ボストン交響楽団 いや〜、驚きました!!そして感動しました!! 私が聴いたすべてのスピーカーで聴き続けてきた定番のマーラーがこれ程美しく 奏でられたのは初めてです!! HB-X1の時にも第一印象では私は納得せず、今年の9月16日にHB-G1を初めて聴いた 時にも納得しませんでした。しかし、今は…、 三年前に語った次の一節を祝福と感謝の気持ちを込めて原さんに贈ります。 おめでとうございます。そしてありがとうございました!!             -*-*-*-*-*-*-*-*-*- 人間が五感で感じるもの。その中に“美”がある。 視覚では、美しいとつぶやいた人の視線の先をたどることで何が美しいのかを 知ることが出来る。 しかし、美しい臭いとは言わない。美しい手触りや感触とも言わない。 美しい味も微妙だろう。しかし、美しい音というのは決して不自然ではない。 そして、この美意識というものは先天的に人間の大脳にプログラムされているのか、 生まれて初めて体験するものでも美しいという言葉が湧きあがって来る。 その美意識とは体験を重ねることで、より美しいものを発見するたびに感性に 響く美の対象をレベルアップしていく習性がある。 つまり、経験値によって美に反応するための記憶の蓄積が多くなると、以前の 経験に対して比較対照し、更なる美に目覚め、逆に従来の美しさの評価レベル を一ランク下げて表するようになるだろう。そのに美しさの追求という無限の 欲求と好奇心があるのが人間である。 2009年にKiso Acoustic HB-1を世に送り出したキソアコースティック株式会社 代表 原 亨 氏は、実は表には出さないが、今までの七年間に更なる美しさを 追求してきたのであった。

川又利明
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