《H.A.L.'s 訪問記》


No.0021 - 2009/8/13

宮崎県延岡市 T.H 様-H.A.L.'s 訪問記

Vol.21「九州地方初のVIVID Audio G1 GIYA、更に全国初Midnight blue音のカルテとは!!」

         ■ Customer's history ■

2005年5月8日のこと、当時はハルズサークル会員でもなく初めてH.A.L.を訪れ
たT.H 様の手記を先ず最初にご紹介致します。

http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/fan/hf_hear0198.html

当時T.H 様の使用機器は次のラインアップでした。

SPEAKER SYSTEM : JBL  4343
POWER AMPLIFIER: ACCUPHASE  M-2000(x2)
PRE AMPLIFIER  : MARK  LEVINSON  No.380SL
D/A CONVERTER  : ESOTERIC  D-70vu
CD TRANSPORT   : ESOTERIC  P-0svu
PHONO EQUALIZER: LUXMAN  E-1
RECORD PLAYER  : MICRO  SZ-1
PICUP-CARTRIDGE: ORTOFON  MC30W
SPEAKER CABLE  : MONITOR  LS-1602

このころはT.H 様はコンピューターはお使いになっておらず、直筆のお手紙を
頂戴したものです。手紙もキーボードで書くということに慣れきってしまって
いた私などは直筆でのお手紙を頂戴するということは恐縮してしまうものであ
り筆に自信のない私は尊敬さえしていたものでした。

そして、ハルズサークルというメールマガジンが想像以上の情報量で日々配信
されているということをお知らせし、奥様の手ほどきを受けて頂いて受信した
メールを読まれるだけもいいので、ということで翌年3月にハルズサークルに
ご入会頂きました。

また、お目にかかってから一年後、ハルズサークル入会とともに初めてお求め
頂いたのが当時話題となったオリジナル商品G-0dでした。

http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/plate.html

限定50台という台数は少ないようで多いもの。Master Clock Generatorという
製品に関しても認識が薄いユーザーが多かったものですが、ここからがT.H 様
のオーディオにおける色々な意味での転換期が始まったと言えます。

http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/fan/hf_hear0297.html

マラソン試聴会をはじめとして下記のようなH.A.L.の独自イベントにも日帰り、
または一泊されて上京し参加して頂くという熱心さ。次第にご自身の求めてい
た音が発見されていったようです。

http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/fan/hf_hear0350.html

2006年の春にG-0dをお求め頂き、それをESOTERIC P-0s+VUK-P0に使用されてか
らの印象は上記のお手紙でも頂きましたが、その年の5月T.H 様にとって一大
決心であり、その後の音質を決定的に変化させることになったコンポーネント
の導入に踏み切られました。GOLDMUND  MIMESIS 24MEとTELOS 2500です。

当フロアーでセッティングされたGOLDMUNDでNautilusをはじめとする複数の
スピーカーを聴くうちに、この両者によるパフォーマンスの素晴らしさに期待し、
以前のシステムと決別しても良いという確信が湧き起こってきたということでしょう。

システムの根幹に以前とは違う次元のアンプを導入したことにより、T.H 様は
スピーカーの刷新も図られSonusfaber Stradivari Homageをほぼ同時期に導入
されています。

優秀なトランスポートとマスタークロックでフロントエンドが仕上がり、更に
GOLDMUNDとStradivari Homageの導入によって一新されたシステムが完成した。

しかし、日々のハルズサークルでの情報提供をつぶさにチェックされ、ここで
私が検証した各製品に対して旺盛な好奇心と行動力を示されて電源環境とケー
ブルに対するアップグレードが進行していきました。特に重要なポイントとし
てはTELOS 2500に左右一台ずつのESOTERIC PS-1500を採用されたことでしょう。

翌年の春にはG-0dから発売間もないG-0Rbへと変更され、更に“B-board”を
始めとするMMW(Metal Matrix Works)シリーズを積極的に導入されて行きます。

2007年の10月には20台限定生産となったESOTERIC PS-1500MEXCELをフロント
エンド用として追加され、重要なケーブルも次第にESOTERIC MEXCELシリーズ
へと更新されていかれました。

この間GOLDMUNDで開発したバージョンアップは全て採用し、2008年2月のこと
長年愛用されたきたESOTERIC P-0s+VUK-P0から、出荷時点でバージョンアップ
を施したESOTERIC P-01+VUK-P01へとトランスポートの世代交代が行われました。

そして、今年2009年7月のこと、H.A.L.における四年間に渡る数々の試聴に
よって、ご自身の感性の進化が希求した一つの結論へと到達していくのでした。


            ■ Customer's room ■

2009年7月のある日、まだ梅雨明けしないうす曇りの早朝。空路宮崎に向かう
ため、久しぶりに乗ったモノレールから新しいターミナルを建設する広大な
工事現場に目を奪われながら地下へと進み羽田空港の第一ターミナルビル駅に
到着しました。

Sound checkで空の旅をするなどとは考えてもいませんでしたが、私自身何年
振りかで羽田空港にやってきました。搭乗前のセキュリティーチェックでは
セカンドバッグの中身で何回もひっかかり、3センチくらいの刃やヤスリなど
がアーミーナイフのように折りたたみになっているマネークリップがどうして
もだめだというので破棄することになってしまいました。ちょっとした記念品
だったのに…(-_-;)

宮崎空港までの飛行時間は約90分程度でしょうか、そんな時こそ本を読むか
睡眠をとるかしたいものですが、旅慣れない私は中々寝られぬうちに到着して
しまいした。

到着ロビーから出ていくと何と思わぬお出迎えを頂きました。もう30年ほどの
お付き合いを頂いているM様は某航空会社に長年のお勤めであり、国内の色々
な空港に勤務され、現在は宮崎空港の支店長をしていらっしゃいます。

ご自宅は都内中野区であり、つい最近は大昔にお求め頂いたDIATONEからB&Wに
買い替えて頂くと言うメールだけの商談でお世話になったばかりでした。

その折に来月は宮崎に出張しますとお知らせしたものです。到着当日に昼食の
お招きも頂いたのですが急行列車への乗り継ぎで時間がないということで残念
ながら辞退させて頂いたものでした。

ご丁寧にお出迎え頂き十数年ぶりの再会となったわけですが、30年来のおつき
あいですから、お互いの顔を忘れるようなこともありません。昼食がだめなら
ジュースでも、ということでロビーの正面にあるジューススタンドで宮崎名物
の「完熟マンゴージュース」などを御馳走になってしまいました。(^^ゞ

空港内をご案内頂き、JR日南線につながる宮崎空港線の改札までお送り頂きま
した。読売ジャイアンツがキャンプを行う球場があそこで、右側の席に座ると
海が見えますから…と観光案内までして頂き、長年のお得意様とこんなところ
で再会できるとは思ってもいませんでした。本当にありがたいものです。

特急は日豊本線へと接続し宮崎市、日向市を通過して70分くらいかけて南延岡
駅に到着しました。南国宮崎の昼下がりという頃合いに、ひなびたホームに
降りて駅舎の向こうを見るとT.H 様が車から手を振ってお出迎え頂きました。

陽光に輝くワインレッドのJaguar XFは周囲の風景から浮き出たような鮮やか
さで、車にもT.H 様のこだわりを感じることが出来ました。距離的にはわずか
なものでしたが、駅の近くにあるご自宅までご案内頂いたものでした。

モダンなデザインによる近代的な建物の右翼にご自宅の玄関があります。
一階はガレージと物置となっており、玄関から直ちに階段で二階へと上がれる
ようになっており、そこがリビング兼オーディオルームとなっていました。

何回か写真を見せて頂いたりしていましたが、長年お話しをうかがい想像して
いただけのT.H 様のオーディオルームに遂にやってきたのでした。

先ず驚いたのは空間の大きさです!!システムがセットしてある左方向を見上げ
るとこの↓ようになっています。

http://www.dynamicaudio.jp/file/090706/237.JPG

同様に右方向を見ると↓このようになっています。

http://www.dynamicaudio.jp/file/090706/243.JPG

スピーカーがセットしてある後方の壁面から半円形を描く丸い天井が大きな
エアボリュームを確保しており、リスニングポイントの頭上が最も高くなり、
この室内の二階部分に相当するフロアーの天井へとつながっていきます。

この二階相当のフロアーにある手すり越しに撮影した写真も後ほど紹介しますが、
何ともうらやましい空間でありT.H 様がここで何をどのように聴いてこられたか?
そのシステムを正面からご覧頂くとこのように。定位置の椅子に座ったポジ
ションから見ると↓このようになります。

http://www.dynamicaudio.jp/file/090706/250.JPG

この写真では見えていない一番左端から順番に各コンポーネントを見ていきましょう。

http://www.dynamicaudio.jp/file/090706/257.JPG

懐かしいですね〜(^^ゞMICRO  SZ-1にお目にかかるとは!!何年ぶりでしょう!!
当時は「糸ドライブ」が全盛というかブームだったわけですが、これはちょっと
違うベルトドライブです。では、モーターユニットを見てみましょう。

http://www.dynamicaudio.jp/file/090706/258.JPG

このベルトはSF-1という品名のもので、ただのゴムベルトではありません。
特殊な繊維を織り込んだもので確か9,000円くらいした高価なものです。
弾力性はあるものの引っ張り強度が強く耐久性もあり、28キロもあるターン
テーブルを長期間安定して駆動してくれます。

確か当時のMICROの「糸ドライブ」では黄色く細いケプラーに糸を使っていた
ように記憶していますが、やはりこれが切れやすく、またテンションのかけ方
でターンテーブルの回転にも微妙な変化があったりして楽しい苦労をしたこと
を思い出します。

http://www.dynamicaudio.jp/file/090706/261.JPG

ダブルナイフエッジという特殊な軸受け構造を持つSAECのトーンアームを搭載
していますね。ナイフエッジ方式ではSMEのアームが有名ですが、どうしても
一枚の刃だけだとガタツキが出てしまうという原理を日本人の英知が解決した
独自の軸受け方式で高い評価を得たSAECでした。確か、当時の価格は\147,000.
であったと記憶していますが、トーンアームの価格というと\15,000.くらいか
らあった時代ですから、当時のハイエンド・トーンアームのシンボル的な製品
でした。まだまだ現役でがんばっているというのはうれしいものです。

http://www.dynamicaudio.jp/file/090706/265.JPG

そのアナログプレーヤーの右にあるのが電源部です。ESOTERIC P-01電源部と
PS-1500 MEXCELの下に敷かれているのはご存じ“P−board”です。その下に
あるのがLUXMAN  E-1フォノイコライザーです。それを取り囲む御影石に関して
は後述のシステム構成一覧でご紹介しています。

http://www.dynamicaudio.jp/file/090706/267.JPG

それらの右側にあるのがP-01本体です。トレイトップの彫刻をご覧頂ければ
バージョンアップ済みであるというこがわかりますね。下記は参考まで。

http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/573.html

そして、その下にあるのが↓これです。

http://www.dynamicaudio.jp/file/090706/269.JPG

このESOTERIC G-0Rbも電源はPS-1500 MEXCELを使用しており、かつZ−boardを
敷いています。この各種MMW(Metal Matrix Works)シリーズは音質面だけでなく、
機能性としても重要な役割を持っているものなのです。それは何か!?

http://www.dynamicaudio.jp/file/090706/272.JPG

システムの核とも言えるGOLDMUND  MIMESIS 24MEとTELOS 2500がこのような
腰よりも高い位置にセットされているという事例は他にはないでしょう。

黒い御影石の上にセットしたZ−boardは1.5ミリという毛足の赤いフェルトに
よって摩擦を軽減し、重量60キロのTELOS 2500を回転させて動かすことが出来
るのです。それによってリアパネルにアクセスできるので配線のチェックも
しやすく、作り付けラックの限られたスペースの中でもハンドリングが大変
容易になっています。一人でアンプを動かせるのですから、これは便利な使い
こなしと言えます。さて、これまでのところを総括して見ると↓このように
セッティングされていることがわかります。

http://www.dynamicaudio.jp/file/090706/255.JPG

あれ? 先程写っていたStradivari Homageはどこに行ったのか!?

今回私が訪問した意味はT.H 様の今までの音を聴き、そして未来の音を設定す
るという仕事が目的であったわけです。四年間の耳と感性の鍛錬の結果で
T.H 様の求められた方向性が結実した新しいシステム構成をご紹介しましょう。


 ◆H.A.L.'s 訪問記-Vol.21 宮崎県延岡市 T.H 様システム構成◆

          ■ANALOG FRONT END■
………………………………………………………………………………
ANALOG PLAYER  MICRO  SZ-1 + SAEC  WE-407SX + ORTOFON  MC30W

        □Power equipments□

ESOTERIC PS-1500 MEXCEL(税別\900,000.)+ESOTERIC 7N-PC9100(税別\350,000.) 
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/560.html

                ▽ ▽ ▽

ESOTERIC 8N-RPH/5P1.2 (税別\150,000.) 
http://www.esoteric.jp/products/esoteric/8nrph/index.html

                ▽ ▽ ▽

LUXMAN  E-1 Phono Amplifire (税別\220,000.)
http://www.luxman.co.jp/cgi-bin/production/db.cgi?mode=view&no=380

        □Power equipments□

ESOTERIC PS-1500 MEXCEL(税別\900,000.)+ESOTERIC 8N-PC8100(税別\300,000.)
http://www.esoteric.jp/products/esoteric/8ncpc8100/index.html
………………………………………………………………………………
                ▽ ▽ ▽

ESOTERIC 7N-DA6100RCA 2.0m(税別\920,000.)
http://www.teac.co.jp/audio/esoteric/7nda6000/index.html

                ▽ ▽ ▽

       TO GOLDMUND  MIMESIS 24ME


         ■DIGITAL FRONT END■

………………………………………………………………………………
ESOTERIC G-0Rb(税別\1,350,000.)
http://www.teac.co.jp/audio/esoteric/g0rb/index.html
               with
JORMA DIGITAL/SMB-SMB for Internal Wire(税別\88,000.)
http://www.dynamicaudio.co.jp/audio/5555/7f/brn/545.html
               with
H.A.L.'s  Original Products "z-board"(税込み販売価格\57,000.)
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/fan/BZ-bord.html

        □Power equipments□

ESOTERIC PS-1500 MEXCEL(税別\900,000.) 
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/560.html
               and
ESOTERIC 7N-PC9100×2(税別\700,000.)
http://www.teac.co.jp/audio/esoteric/7npc9100/index.html
               and
H.A.L.'s  Original Products "P-board"(税込み販売価格\68,000.)
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/508.html
………………………………………………………………………………
                ▽ ▽ ▽

ESOTERIC 7N-DA6100BNC 1.0m(税別\240,000.)→Wordsync
http://www.teac.co.jp/audio/esoteric/7nda6000/index.html

                ▽ ▽ ▽
………………………………………………………………………………
ESOTERIC P-01+VUK-P01(税別\2,500,000.)
http://www.esoteric.jp/products/esoteric/p01/
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/576.html
               with
ACOUSTIC REVIVE RMF-40 (税別\148,000.)
http://www.phileweb.com/ec/?p=4360
               with
中国産/山西松藤黒御影石ボード
http://www.un-kei.com/
http://www.un-kei.com/audioboard/ab-india30.html

        □Power equipments□

ESOTERIC PS-1500 MEXCEL(税別\900,000.) 
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/560.html
               with
中国産/山西松藤黒御影石ボード
http://www.un-kei.com/
http://www.un-kei.com/audioboard/ab-india30.html
               and
ESOTERIC 7N-PC9100×2(税別\700,000.)
http://www.teac.co.jp/audio/esoteric/7npc9100/index.html
               and
H.A.L.'s  Original Products "P-board"(税込み販売価格\68,000.)
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/508.html
………………………………………………………………………………
                ▽ ▽ ▽

GOLDMUND Lineal Digital Cable 1.5m (税別\95,000.)
http://www.stellavox-japan.co.jp/products/goldmund/accessories/digital_cable.html

                ▽ ▽ ▽
………………………………………………………………………………
GOLDMUND  MIMESIS 24ME(税別\5,800,000.)+CLOCK VERSION-UP (税別\300,000.)
http://www.stellavox-japan.co.jp/products/goldmund/ultimate/mimesis24.html
http://www.stellavox-japan.co.jp/support/upgrade/upgrade_07.html
               with
H.A.L.'s  Original Products "z-board"(税込み販売価格\57,000.)
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/fan/BZ-bord.html

        □Power equipments□

ESOTERIC PS-1500 MEXCEL(税別\900,000.) 
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/560.html
               and
ESOTERIC 7N-PC9100×2(税別\700,000.)
http://www.teac.co.jp/audio/esoteric/7npc9100/index.html
………………………………………………………………………………
                ▽ ▽ ▽

GOLDMUND Lineal Digital Cable 1.5m ×2本(税別\190,000.)
http://www.stellavox-japan.co.jp/products/goldmund/accessories/digital_cable.html

                ▽ ▽ ▽
………………………………………………………………………………
GOLDMUND TELOS 2500+Alize 6 (税別\13,500,000.+税別\800,000.)
http://www.stellavox-japan.co.jp/products/goldmund/ultimate/telos2500.html
               with
H.A.L.'s  Original Products "z-board"(税込み販売価格\57,000.)
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/fan/BZ-bord.html
               with
中国産/山西松藤黒御影石ボード
http://www.un-kei.com/
http://www.un-kei.com/audioboard/ab-india30.html

        □Power equipments□

ESOTERIC PS-1500 ×2 (税別\1,200,000.) 
http://www.esoteric.jp/products/esoteric/isolationtrans/index.html
               and
ESOTERIC 7N-PC9100×2(税別\700,000.)
http://www.teac.co.jp/audio/esoteric/7npc9100/index.html
………………………………………………………………………………
                ▽ ▽ ▽

JORMA DESIGN  JORMA PRIME Biwire/3.5m (税別\3,920,000.)
http://www.cs-field.co.jp/jormadesign/jormadesignmain.htm

                ▽ ▽ ▽
………………………………………………………………………………
VIVID Audio G1 GIYA / Midnight blue (税別\6,700,000.)
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/610.html
http://www.dynamicaudio.jp/file/090119/g1.80.jpg
http://www.dynamicaudio.jp/file/081227/01.jpg
http://www.dynamicaudio.jp/file/081227/02.jpg
     and
H.A.L.'s  Original Products"B-board"×2(税込み販売価格\256,000.)
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/fan/BZ-bord.html
………………………………………………………………………………


         ■ Customer's Sound ■

さて、今回の訪問に際して私が最初に聴いておかなければいけない音がありま
した。それは、この四年間というものT.H 様のシステムが次第に変化してきた
わけですが、その折々に前述のようにご感想を頂いてきたものです。

そして、ご来店頂いた場合には口頭でのお言葉の中から、あるいは頂いた電話
の会話の中から、更に頂戴したお手紙の行間からT.H 様のおっしゃる音質変化
の方向と実態を自分の頭の中でイメージして組み立ててきたものでした。

その四年間の過程を経てきた現状というのが↓このスピーカーによる音です。

http://www.dynamicaudio.jp/file/090706/250.JPG

スピーカーのみStradivari Homageということで上記のエレクトロニクスで
鳴らしていた音を最初に聴かせて頂きました。

■マーラー交響曲第一番「巨人」第二楽章  小澤征爾/ボストン交響楽団

T.H 様が主に聴かれるのはクラシックでありオーケストラものが多いという
ことは承知しているので、私も真っ先に定番の課題曲を聴くことにしました。

「むむ…、なるほど〜、でも…、そうだよな〜」

最初の一曲で多数のパラメーターを察知した私は各項目でのチェックを数秒間
で行い、その後の課題曲の演奏では確認ということで聴き進んで行きました。

ミッドレンジからトゥイーターの領域まではSonusfaberの魅力である柔軟性と
温度感のある楽音の質感が見事に再現されています。それはGOLDMUNDによる各
ドライバーのコントロールがきっちり行われているという証しであり、一般の
ユーザーが聴く分には感動的でさえある音質を有していることがわかります。

では、なぜ私は第一印象から良好な音質と言いきってしまうことが出来なかったのか?

低域に問題がありました。コントラバスの音像が大きい、輪郭が見えない…と
いう傾向が冒頭から感じられてしまったからです。

これだけのエアボリュームのある空間、見上げるほどの天井高、曲線の天井面
という構成からも定在波が発生しているとは考えにくく、ルームアコースティック
の問題なのか、あるいは他に原因があるのか?

早速、確認のために他の課題曲も全てひと通り聴くことにしました。

■セミヨン・ビシュコフ指揮/パリ管弦楽団 ビゼー「アルルの女」「カル
 メン」の両組曲から1.前奏曲 8.ファランドール

■チャイコフスキー:バレエ音楽《くるみ割り人形》op.71 全曲 サンクト
 ペテルブルク・キーロフ管弦楽団、合唱団指揮: ワレリー・ゲルギエフ

続くオーケストラの課題曲でも同じ傾向がありました。ただし、私が感じてし
まった低域の質感の問題点はオーケストラだけ聴いていると中々解り辛いもの
だと思います。

クラシック音楽では低域の余韻感がゆったりする傾向が聴き手にとっての快感
として認識される場合が多く、ホールエコーの豊かさと勘違いしてしまう事が
ままあります。中高域のフォーカスや輪郭は観察しやすいのですが低域では
心地よい演出として肯定的に見てしまう場合が多いものです。

でも私はそれを見逃すことはできず、スタジオ録音の課題曲を駆け足で聴く事
にしました。そうしたら…

Basia…「う〜ん、やはりドラムの音像が見えないし大きい。ちと軽い質感」

MICHAEL BUBLE…「ベースだな〜、やっぱり。でもヴォーカルもやや大きい」

DIANA KRALL…「ヴォーカルのフォーカスが甘いということは他の楽音でも」

ちあきなおみ…「音階の低いヴォーカルにも症状が見えてるな〜」

今回はこの症状をいかに解決するかが主目的ではなく、新しいスピーカーを
セットアップすることに優先順位があるということで、ピアノ運送の業者を
待たせて以上の課題曲を全て聴き終わりました。

仮に現状のスピーカーをそのままでチューニングするということであれば、
リプレースメントから始まりスパイクの調整など細部のツメを行って変化を
付けていくのですが、この時はT.H 様がこれまで聴いてきた音というものを
しっかりと記憶に焼きつけて新しいスピーカーのチューニングの根拠として
いこうと考えていました。

さて、待たせていたピアノ運送にゴーサインを出して、いよいよ九州地方で初
のVIVID Audio G1 GIYA、更に全国初となるMidnight blueの搬入作業を開始し
ました。下取りとなるStradivari Homageを再梱包し、“B-board”はそのまま
でG1 GIYAを先ずはセットアップしました。こんな感じです。

http://www.dynamicaudio.jp/file/090706/291.JPG

次に、前述のように二階部分の手すり越しに俯瞰するとリスニングポジション
との関係がお分かり頂けるだろうと思いますので、次の写真もどうぞ。

http://www.dynamicaudio.jp/file/090706/277.JPG

http://www.dynamicaudio.jp/file/090706/283.JPG

天井の局面との関係も次の写真でお分かり頂けると思います。

http://www.dynamicaudio.jp/file/090706/286.JPG

さて、このような環境に導入したG1 GIYAをどのようにセットアップしていく
のか…!? 実は一日目はこの辺で時間切れというか、T.H 様のお誘いで私も
初めての延岡の街へと繰り出していくことになりました。(^^ゞ

音のことばかり考えていた私には延岡という街の予備知識は旭化成がある街と
いう程度でゼロに等しかったわけですが、五ケ瀬川と大瀬川に挟まれた中州に
繁華街があり、東京と違って道幅も歩道も広く歩く人は少ないという夜の街に
繰り出したものでした。本当に楽しいひと時を過ごすことが出来ましたし、
今までのT.H 様とは違った側面でのお人柄も垣間見ることができました(^^ゞ

            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

さて、翌日は朝から雨模様の天気となりましたが、いつもの出勤時間と同じ
くらいにT.H 様のお宅に向かい、いよいよラフセッティングしたG1の細かい
調整を行うことになりました。

前夜はひと晩じゅうバーンインのためにエンハンサーCDをリピートしておいて
頂いたので、各ユニットの初期バーンインはひとまず完了というところからの
スタートです。先ず次の二枚の写真を交互に見比べて下さい。

http://www.dynamicaudio.jp/file/090706/295.JPG

http://www.dynamicaudio.jp/file/090706/297.JPG

この最初の位置はStradivari Homageがあったポジションとほぼ同じです。
私は先ず左右スピーカーの角度から判定しようと課題曲を聴き始めました。

そのポイントとしてT.H 様はオーケストラを中心に聴いていますが、それだけ
ではなくヴォーカルもお好きなので両者のバランスをどうとるかということに
私は腐心することになりました。

優秀なスピーカーは上記のようにわずかに角度を変えただけでも音場感と音像
の両方が変化します。

アップロードした写真のURLの最後が297の場合はリスナーに対して正対し、
G1の正面を向けるようにするとヴォーカルのフォーカスが最も引き締まり、
音像も一番小さく聴きとれるようになります。

しかし、この場合にはオーケストラの再現性において管楽器などの定点から
発する楽音についてはヴォーカルと同じことが言えるのですが、弦楽器群が
面として提示させたいのにスピーカーユニットの軸上に音像が集中してしまう
という現象が起きます。

そこで295のようにリスナーがスピーカーの軸上にあるのではなく、わずかに
外側を向くようにすると弦楽器群がほぐれてくるという展開が始まります。
ただし、左右スピーカーが全く平行になってしまう角度では今度はヴォーカル
がビッグマウス状態になってしまうので好ましくありません。

こんな調整を進めていくときに“B-board”は大変便利です。フローリングの
上にフェルトが接するので簡単に位置と角度を調整することが出来ます。

この作業を繰り返すうちに現在の位置関係ではちょっと限界があることを少し
ずつ感じ始めていました。でも、その前にやっておかなくてはならないチェック
ポイントがもう一つありました。以前のスピーカーで感じられた低域の問題が
リプレースメントによってどの程度変化するかということです。そこで…

http://www.dynamicaudio.jp/file/090706/297.JPG

http://www.dynamicaudio.jp/file/090706/299.JPG

今度はこの二枚の写真を比較して見て下さい。左右間隔は同じくして奥行き
方向への移動を行いました。この写真にはありませんが、手前に引き出すこと
で後方の壁面からの距離を空け、また逆に写真299のようにぎりぎりまで後ろ
に近付けるという位置でも試していきます。

この前後のポジションを四種類試してみた結果、297の位置に決定しました。
この四段階では299の位置で最も低域の輻射効率が大きくなり、量感は増しま
すが解像度は失われてしまいます。

であれば、最も手前に引き出した方が低域の質感は良くなるのでは? という
推測になりがちですが、事実は小説よりも奇なり…という程大げさではありま
せんが、ケーブルが伸ばせるだけのぎりぎりまで手前に移動すると不思議な事
に低域の残響時間が延長されたように変化してしまいフォーカスが悪化してし
まうのです。結果的に前後関係としては297のポジションを選択して次の段階
へと進んでいくことにしました。

私はNautilusに出来てG1 GIYAに出来ないこと、逆にG1 GIYAに出来てNautilus
に出来ないことをH.A.L.の環境下で色々とテストしていました。その両方を
バランスよく実現するということは前述のオーケストラとヴォーカルの両立と
いうことに他なりません。

オーケストラでは左右への音場展開をいかに広く雄大にして空間の大きさを
リスナーにイメージさせるか。逆にヴォーカルではセンターに定位する音像を
いかに濃厚な質感で描き、その余韻感を周辺に拡散させることが出来るか、と
いう目標があり、この段階ではまだ納得できるレベルではなかったのです。

調整過程での選曲は頻繁に変えているので一曲ごとの説明は出来ませんが、
この段階に至るまでに二時間ほどかかっており、何回ポジションを変更したか
忘れてしまうくらいでした。

297の写真で壁掛け時計の位置がセンターにあり、後ろの作り付け家具のセンター
も同様にセンターとしていることがお分かりかと思います。私が求めるレベル
まで持っていくにはスピーカーの左右間隔を何とか広げたいのですが、左側に
ドアがあるために更に左側に広げるのはよろしくないというT.H 様のご要望が
あります。では、どうするのか? ↓この状態です。

http://www.dynamicaudio.jp/file/090706/283.JPG

では残るのは右側だけ、ということでテレビの位置を思い切って変えることに。
それをT.H 様に提案すると、実はこの部屋の完全な中心線は右側の壁面が一段
奥まっているので家具や時計の位置から右側に80センチくらいずれているのだ
というお話し。それでは見栄えはこの際二の次にしてやってみましょうという
ことで調整し直したのが次の写真。

http://www.dynamicaudio.jp/file/090706/302.JPG

いや〜、これは効きました!! 295と297の位置関係と比較すると大変な違いです。
そして、この変化によって音質的にどういう効果が得られたのか?

Nautilusが得意とすることは各楽音の音像がスピーカーユニットの位置にまと
わりつかず空間に定位させることです。故にスピーカーが消えるという例えが
成り立つわけですが、G1の場合にはNautilusのようにクロスセッティングは
向きません。楽音の質感が周波数特性の高域側ロールオフという現象になって
聴こえてしまうのでだめなのです。

ですから、オーケストラにおいて弦楽器群を中間定位させるためにはどうして
も左右間隔を出来るだけ広げていく必要があるのです。この中間定位という事
を言い換えればスピーカーユニットの位置に定位せずに、左右スピーカーの
中間で音源がない中空に定位させるということ。

この場合には着目するのはオーケストラの弦楽器群であり、特に左側G1の軸上
に重なっていた弦楽器群がスピーカーの距離を離すことで内側に移動してくる
のです。このポイントが大切です。この場合にはスピーカーのうち振り角度は
さして重要ではなく、左右間隔が大きく影響してきます。大正解でした!!

実は写真302は私が最終的に納得したセッティングであり、この前の段階では
選曲をヴォーカルに切り替えてフォーカスの出方を調整していたのです。

ヴォーカルの音像を縮小する方向、フォーカスをより鮮明にする方向ではG1の
角度を内側に向けて正面を見るようにするといいのですが、ある角度を堺にして
オーケストラの弦楽器が再び左側のG1のフロントに群れてきてしまう現象が
起きてしまうのです。それを回避するために、かつヴォーカルのうま味を失わ
ないように、細かく刻んで角度を何回も調整していきます。

その結果、G1の中心線を延長するとリスナーの顔に焦点がありクロスポイント
に頭が位置するのではなく、G1の軸上から伸ばした直線がリスナーの耳から
10センチ程度外側を通過するような角度が望ましいと判断しました。

オーケストラとヴォーカルのディスクを交換する頻度を高め、複数の録音で
両者のバランスを図り、三時間ほどの時間でたどり着いたのが写真302の状態
でした。このセッティングで確信が持てた後でT.H 様にお座り頂き、決定した
セッティングを意図的に角度をずらせた場合とジャストの場合を聴き比べて
頂き、私がチェックしてきた過程を説明し変化のありようを実感して頂きました。

ジャストに決まったセッティングを崩していくと、変化していく音質にT.H 様
も確かな手ごたえで解って頂いた様子で、御自身で根拠を実感して頂きました。
その上で床にマーキングをして固定し、後日ご自分の感性でいじってみても
戻せるようにしてG1のセットアップを完了としました。

スピーカーは生き物でありセッティングによって千差万別の変化を示す、とい
ようなことは皆様も承知でしょうが、変化させた場合の何が良いのかという
基準を持っていないとゴールが見えないものです。
仕上げに課題曲を聴き直していきました。

            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

以前にも述べた事ですが、交響曲と協奏曲では特に弦楽器群の配置が録音に
よって異なります。交響曲では指揮台のあるステージ中央から弦楽器の配置が
並び面として左右に広がっていきます。

しかし、ソリストがいる協奏曲ではセンターにピアノやヴァイオリン、ギター
や管楽器などのソリストを定位させ、それらと重複しないように弦楽器群の
真ん中を空けて定位させるように録音されています。これは基本です。

「お〜、やっぱりそうだよね〜。弦楽器群は濃厚でありステージいっぱいに
 広がって欲しいもの。そして、弦楽器群はスピーカーという音源にまとわり
 使いなことが基本でしょう!!」

マーラー交響曲第一番/第二楽章冒頭の弦楽器群のアルコによる重奏は幾重に
もレイヤーを重ね、しかし演奏者が数十人いるという存在感を微妙な一人ずつ
違う色彩感の多彩さとして再現されてこそというもの。

これをこなしてこそ本物と言えますが、チューニングが進むうちに次第にG1は
解像度を上げ、同時に各楽器のピントが合っていく過程を確認することが出来
ました。

G1のスタイルを称してT.H 様はリアビューが一番良く、真正面から見たG1が
一番面白くないとおっしゃるところは私も同感。

設定した角度をリスニングポイントから眺めるとG1のくるりと巻かれたトップ
のロールが内側からわずかに見える微妙な角度。交響曲の録音スタイルでは
ぎっしりと密度感のある弦楽器が左右G1の間にしっかりと根をはったように
中間定位し、管楽器が後方の壁面まで立ち位置を遠のかせて遠近感を醸し出す。

トライアングルの音像は小振りに納まり、ステージの雛段の最上部に位置する
トランペットやホルンのマウスピースが見えるように遠近法の消失点が複数
現れている。

数十人の弦楽器奏者の弓がしっかりと同期して動く様がイメージされるほど
解像度が素晴らしいのはGOLDMUNDのドライバビリティーの成せる業か、はたまた
ESOTERICのマスタークロックとP-01の作り出す精緻であり広大な情報量として
エッジをきりっとさせるお家芸なのか!!

そして、興奮と冷静さが相まった納得という段階にたどり着いてふと思うと、
以前のスピーカーで感じていた低域の問題点がまったく感じられないという
ことに今になって気がついた。

三時間に及ぶチューニングでポジションを色々と変化させてきたが、当然その
過程において低域の質感も変化していたので、スピーカー固有のものなのか
ルームアコースティックの悪戯なのかは特定できないが、VIVID audio C225
Bass Driverが描き出す低域の再現性は何と素晴らしいことか!!

解像度、重量感、テンションのあり方、高速な立ち上がり、そしてコントラバス
のピッチカートの後に漂う低音のホールエコーの見事な広がりが素晴らしい!!

オーケストラの演奏では、もしかすると当フロアーより何倍も高い天井が威力
をもっているのか、一次反射音をすぐに聴き分ける私の耳でも違和感なく、
広大無辺の余韻感を大きな空間に浸透させ、美しい消失過程が心に残る!!

さて、低域の課題を更に追求すべく、この課題曲を気持ち音量を上げてかけた。

■“Basia”「 The Best Remixes 」CRUSING FOR BRUSING(EXTENDED MIX)
http://www.sonymusic.co.jp/Music/International/Arch/ES/Basia/
http://www.basiaweb.com/
http://members.tripod.com/~Basiafan/moreimages.html#remixes1

長いイントロで繰り返される打ち込みによるサンプリング音源によるドラム。
この連打が繰り返されるたびに低域のトランジェントが以前にも増して素晴ら
しいということが証明されていく。

フロントではなくサイドにウーファーがあると低域の再現性に問題が出てしま
うというスピーカーを私は経験したことがありますが、G1においてはまったく
その心配はいりません。

倍音成分を多く含むドラム、ミッドレンジとのつながりが自然でないと音像が
ぶれてしまうベース、スタジオ録音で精緻に描写される低域の各パートは見事
にかみ合って質感を完璧なものにしています。

オーケストラでこうあってほしいという低域とスタジオ録音でのそれとは追求
する方向性が違う場合がありますが、スピーカーのレベルが上がれば上るほど
録音の傾向に逆らわずに全ての演奏をきっちりと鳴らしていきます。

ゆったりと膨らむように低音楽器の残響を広げていくスピーカーはクラシック
音楽にとって良い演出をするものの、スタジオ録音では楽音の輪郭を描けず
低音楽器の音像が膨らむ傾向を示してしまいます。

この現象を再生音量を限界まで上げていく時に、G1がNautilusよりも優れてい
る一面が聴きとれるものです。大きなストロークをウーファーに与えた場合の
追随性の素晴らしさ、それがG1の真骨頂とも言うべき進化だと言えます。

大きな部屋であれば大らかな再現性でも良いのか? いや、違います。
左右のスピーカーとリスナーが描くトライアングルのサイズが大きくなれば
自然と解像度は良くなるものか? いや、違います。

T.H 様のお仕事はドクターであられるので、当然患者さんからは最初は問診と
いうことで、どこが悪いのか話しを聞くことから始まるものでしょう。

そして、患者さんが言うところの症状が現れるとすれば、こういう原因があり
得るという根拠のもとに疑わしき所を診察すると果たして、その原因が確認で
きるので治療へと進む、という流れになるものでしょう。

私も色々なご相談を受けて、その問題点が発生しうる可能性のあるポイントを
アドバイスし、その要素に変化を付けて頂くことで音質の変化があるかないか
を答えて頂き次の段階に進む、という遠隔的な対症療法をすることはあります。

しかし、今自分が聴いている音質に対する不満点、疑問点をユーザーが認識
できなかったとしたらどうなるか?

つまりは自分が聴いている音質が機器のパフォーマンスとして正常であるか
どうかという基本がわかっていなかったらどうなのか?

あるいは、特に不満はなくシステムの変化があった時にちゃんと音質も変化し
ているという自覚はあれど、変化させる前の音質がニュートラルであるかどう
かという自己診断が出来ているかどうか?

やはり問診だけでは解りえないことがあるものです。触診したり聴診器で聞い
たり、肉眼では見えない方法で人体の中を見たり、という段階で患者さんの
反応と実態を把握することが大切だと思います。

私は、今回前例のない距離を移動し時間も使い、T.H 様の懐に飛び込むことで
T.H 様がおっしゃっていた言葉での訴えを私自身の耳と感性で確認することが
出来ました。

実に多くのユーザーの実際の音を問診だけで推測し、アドバイスしてきた音の
カルテとして記憶しているものが大半ですが、今回の訪問では何にも増して私
の所有するT.H 様のカルテに最も正確な記入を多数の項目で行うことが出来た
という実感があります。

スピーカーとオーディオそのものが生き物であり、生きているがゆえに色々な
症状を暗黙のうちに訴えてきますが、そのメッセージを感じとってあげること
が最も重要な事だと思います。

T.H 様ご安心ください。T.H 様の新しいシステムの健康状態はすこぶる健全で
あり何の心配もありません。自由奔放に好きな音楽を思う存分お楽しみ下さい。

高価なオーディオシステムであればあるほど、その真価を発揮しているかどう
かが私の仕事の締めくくりと言えます。四年間のご愛顧に対して今回の訪問で
私も安心出来る結果を出せた事を大変うれしく思っています。

Sound checkの目的、それはユーザーが実際に聴いている音と私の推測が同期
することによってユーザーの疑問点や不満を私が理解することです。私が理解
できれば対処方法も実際に試し改善策をご提供出来るというものです。

はるばる宮崎にまで足を伸ばしましたが、今回の訪問はそれ以前の音を知り、
それ以後の音質を作るということで大変有意義でした。

T.H 様の部屋の音とシステムの音が記載されたカルテは今後のお付き合いに
大いに役に立つことでしょう。今回は本当にありがとうございました。



HAL's Hearing Report