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H.A.L.担当 川又利明
2012年3月12日
 No.909 「電源環境改善計画 PEIP-2012'AiTEC Λ5.3seriesを導入」
 
“PEIP” (Power supply Environmental Improvement Plan)

「H.A.L.を使って検証し推奨するオーディオ用電源の新展開!!」

〔1〕電源に関する一面を考察

常識と言われるものこそ本質がわかりにくいものだと思ったことはないだろうか?

ことオーディオにおいて信号が伝送されるケーブルを取り替えれば音質も
変わるだろうという推測はわからなくはない。しかし、音楽信号がデジタル
領域であれアナログ領域であれ、まったく通過しない電源ケーブルによって
音質が変化するという事実はオーディオに興味を持たない門外漢にはまったく
想像しがたいことであろう。

思えば一般家庭で電源の文字通り“源”というのは壁に取り付けられたコンセント。
その向こう側にあるコンセント器具、その先の屋内配線の電源ケーブル、
ブレーカー、配電盤、保安器、そして電信柱の柱上トランス、またはビルや
マンションなどの変圧設備などが存在するわけだが、そのどこまでをオーディオ用
としてふさわしいコンディションに改善できるのだろうか?

私が知る限り、現状では配電盤そのものを高性能かつ音質的に良いとされるも
のに交換したり、配電盤からコンセントまでの配線を凝ったものに交換するなど、
ユーザーの自己責任がとれる範囲で改造してくれる業者があることにはある。

現に私もそのような依頼を受けて知己の専門業者に電源工事を依頼し、実際に
屋内配線を改良して、その効果も確かにあるという報告も頂戴しているものだ。

しかし、私が今回皆様にご提案したいのは一切の工事を必要とせず、また配電
盤や配線材の交換で得られる効果とは違う方向性の音質向上をもたらすものなのである。

それは電源設備の改造では部材の交換によって電源供給の効率や瞬間的な電流
容量の増大に応えるということが主目的になるのであろうが、後述するように
音質的に悪影響を及ぼす各種の要因に対してフィルター効果を含むものは、
この電源工事の項目には含まれていないからだ。

設備としての電源改造を行うということは永続的に住まわれる場合や、自己
責任において電源系を作り変えることが許される住居の場合には良いだろうが、
それが可能な方はオーディオ人口の何パーセントくらいだろうか?

また、電源工事が可能だとしても、やむを得ない転居があった場合には電源
ケーブルや配電盤などもいっしょに新居に引っ越すだろうか?

今回私がご提案したいものは、工事は一切必要なく、当然移転の際には器具と
してそのまま外して移動できるものであり、どんな住居と電源環境であっても
外来要因からオーディオシステムを保護して理想的な電源を供給するための
製品なのである。


〔2〕現在のH.A.L.で常設採用している電源製品とは

さて、今回の企画で私がここ数年間で最も高く評価するオーディオ用電源関係
の製品をを発見したということであり、それは既に下記の多数のレポートと
現在このH.A.L.の試聴設備として導入されているものだ。

1.ACケーブル

これ自体にノイズフィルターモジュールが搭載されており、メガヘルツ帯域の
RFノイズをキャンセリングする効果を持っている。また、そのフィルターその
ものが重厚であり、ケーブルそのものに対して制振効果を有する設計となっている。
価格的には数種類があるが私が音質的に評価したのはトップモデルであり、
ここでは総数32本を導入している。

■ Transparent PLMM2X  ×32Peace    \7,680,000. 
 http://www.axiss.co.jp/ftran.html


2.パワーアイソレーター

この製品は名前のごとく電源をisolationするわけだが、この特徴を述べる
前の予備知識として私がH.A.L.'s Circle Review-No.1046で述べているアンプ
のスイッチング電源の原理について電圧と電流のあり方を述べている一節を
引用しました。専門用語で“力率”と言いますが後ほど詳しく述べます。

            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

さて、次にコンセントからこのような波形の電圧をコンポーネントの電源部に
受け入れたとして、次に流れる電流は電圧の波形と全くの相似形になるのか、
というと実際には全くことなる電流の波形になってしまうということを知らな
い人が大半であろうと思う。

これはあくまでもイメージとしての例えなのだが、電源から見た負荷の状態に
もよるのだが、電圧が描く正弦波のほぼ頂点に差し掛かろうとするときの一瞬
だけ電流は流れるのである。

大雑把な例えだが、夏の富士山の頂上にわずかな雪が白く残っている写真を
思い出して頂ければいいだろう。富士山のシルエットが電圧のカーブだとして、
そのピークに達する九合目の頂上近くの白い部分でやっと電流が一瞬流れ、
他の傾斜面では一切電流は流れないのである。

それはプラス側もマイナス側も同様であり、日本では50/60Hzという電源周波
数からすると一秒間に流れる電流の回数は多くても120回ということになってしまう。

さて、そうすると上記の電力を求める式で電圧も電流も、各々をかけて計算し
ようとしても、実際に得られるエネルギーは電流として見た場合には大変非効
率的であることが推測できるだろう。

そこで考え出されたのが、一秒間に上下する正弦波の周波数をもっと増やして
いくと山のふもとの面積、横幅が大変小さくなって富士山のシルエットが細く
なって連続していくということになる。つまり富士山の九合目から頂点までの
高さは同じくして、横幅は九合目の白い部分と同じになって連続していくと
いうイメージである。

             -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

このように電圧と電流の波形は大いに違うものであり、一般的にノイズフィル
ターはインダクティブ(L)成分、キャパシティブ(C)成分で構成されるが、
それは、電圧と電流の位相のずれを生じさせパワー効率にロスを生じさせる
可能性がある。

つまり、上記の例えで言えば、富士山のシルエットとして例えた電圧の波形を
時間軸に対して左から右に描いていくとすると、頂上から右の斜面に下って
きた中腹に至ってやっと電流が流れるという時間のずれを生じるということだ。
 
そこでパワーがロスするということはノイズフィルターによる音質向上の目的
以前の話になってしまう。しかし、今回のパワーアイソレーターは、優れた
ノイズフィルターリング効果を発揮しながら同時に、電圧/電流の位相変化を
一切起こさせず、パワー効率を微塵も損失させることのない厳格な回路設計が
成された。

以上は音質向上のためのノウハウといえるが、落雷などの不慮の事故を防止
するための高性能サージプロテクション機能も搭載している。

■Transparent PI8  ×2Peace    \910,000. 
http://www.axiss.co.jp/whatsnew_trans_PoweIsolator-2011.html

■Transparent PIMMX   ×6Peace    \2,880,000. 
http://www.axiss.co.jp/whatsnew_trans_PoweIsolator-2011.html

★上記のように現在ではTRANSPARENT POWER PRODUCTSの製品を総額で何と
 税別定価で\11,470,000.をこの試聴室に使用しています。

★この試聴室の電源コンセントは新築時にPADのCRYO-L2(当時1個\13,000.)を
 約40個導入し取り付けてあります。

その後にもESOTERIC製品を本企画に参画させて行った歴史もありました。

積極的に音質向上を狙う電源環境改善計画“PEIP”Part.3 始動!!」
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/445.html
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/448.html
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/449.html
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/450.html


〔3〕電源関連製品を二つに大分類

オーディオ用電源としてどのような条件が求められるのかという事の前に、
私達が普段何気なく使っている家庭用電源に関して基本的なことをおさらい
しておこうと思います。一般家庭では電柱の柱上トランスから引き込まれた
電源は下記のような流れでコンセントや照明器具に供給されます。

★引込線→アンペアブレーカー→漏電遮断器→配線用遮断器→コンセントや電灯

ここでいう三種類のブレーカーとは次のようなものです。

■アンペアブレーカー
電力会社との契約によって規定された電力に範囲と許容を設定するものであり、
契約的に電力会社の所有物のために変更・交換などは出来ません。

■漏電遮断器
漏電(地絡)による感電、火災を防ぐ物です。

■配線用遮断器
渦電流や短絡による配線等の加熱や火災を防ぐ物です。配線用遮断器=ブレーカーです。
この配線用遮断器の中で、30A以下のブレーカーという事になります。

一般家庭での電線の太さは1.6mmで、エアコン用に2.0mmを引いている程度なの
でブレーカーは皆30A以下となります。

1.6mm電線=最大許容電流27A ブレーカーは20A
2.0mm電線=最大許容電流35A ブレーカーは30A

オーディオ用という事で議論の対象になっているのは最後の配線用遮断器です。
一例では次のような商品があります。

http://www.dynamicaudio.jp/5555/5/osusume_acce_11.html

このベースは河村電器のSE 2P2E20S(200V用)で下記のような規格となっています。

http://www.kawamura.co.jp/catalog/FILE/SE2P2E20S.pdf

さて、それでは家庭用電源コンセントは確かに規格上では15アンペアなのですが、
0.1秒でも15Aを超えたらブレーカー(配線用遮断器)が落ちるのかと言うとそう
いうものではありません。

公的機関が定めたJIS C 8370「配線用遮断器」で規格がありますので、
こちら↓を参考にご覧になって下さい。

http://www.jeea.or.jp/course/contents/11104/

上記のリンクで(2) 配線用遮断器の項目では次の事例が表記されています。

☆30A以下のブレーカー(JIS C 8370「配線用遮断器」での遮断特性)
定格電流の1.25倍→60分以内
定格電流の2倍→2分以内

JIS規格ではあくまでも“以内”という表現をしていますが、上記河村電器の
SE 2P2E20Sブレーカーの動作特性(2P)のグラフをご覧頂くと良いでしょう。

定格20Aブレーカーと想定して、グラフの横軸125%とすると理論上では25Aと
いうことであり、その際の遮断時間は大よそ1分です。200%では40Aとなりますが、
その場合には大よそ7秒で遮断されます。

また、ブレーカーは電子的に電流を測って基準と比べて遮断の判断をしている
のではなく、バイメタル(熱動素子)により接点の引き外しを行うもので、遮断
特性は熱動素子であるがゆえに温度の影響を受けたり少々ルーズな物です。
この為、細かい動作曲線はブレーカーによって異なります。

このように音楽再生で瞬間的な、もしくは数秒間の大出力があったとしても
頻繁にブレーカーが落ちるということはないわけです。

このように、一般家庭では三つのブレーカーを通ってコンセントに電気が来る
のですが、ブレーカーは熱動素子であるがゆえに「瞬間的な電流制限が無いに
等しい」という事が言いたいのです。これは機器の電源ON時の突入電流に対応
する為に、元々必要な機能だったと言えます。

H.A.L.試聴室ではパワーアンプ用として壁面コンセントには100V/30Aを設定し
ています。定格30Aとすると上記同様なブレーカーの動作特性からすれば大変
有利になるということでしょうか。

私達が一般的にブレーカーと呼んでいる「配線用遮断器」の特徴を理解されて
から次の説明に進んで行きたいと思います。


■アクティブ型レギュレーター電源

またはクリーン電源やACジェネレーターと称するメーカーもありますが、商用
電源の100V50Hz/60Hzを製品内部の発振器によって生成し、コンセントの出力
電源波形に依存しない正弦波によって新たに電源を出力するアンプ形式のものです。

http://www.kanjitsu.com/ps_audio/power_plant_premier.php

http://www.accuphase.co.jp/clean.html

http://www.cse.ne.jp/kp.html

一例を上げれば上記のような製品ですが、これらの特徴としては電源波形を
自らが“波形整形”するという機能が最も特徴的なものです。しかし、国内の
電源コンセントの電力規格である15Aが最大出力となるということもあります。

しかし、この安全規格を前提にしてアクティブ型レギュレーター電源という
製品がブレーカーと同じ遮断特性を持たせるなどいうことはないようです。

上記のアクティブ型レギュレーター電源では供給電力に制限があるので大型
アンプの大出力に際には瞬間的に反応して遮断されたり、大出力を求める再生
音では質的な供給電力の限界を感じる事がありました。


■パッシブ型電源製品/電源アイソレーター

もう一つの分類がこれに当たります。最初の述べておきますが、これには上記
のような“波形整形”という機能はありません。しかし、瞬間的な最大電流は
上記のように制限される事はありません。

そして、ここH.A.L.では上記のようにTRANSPARENT POWER PRODUCTSの製品を
全面的に採用していますが、その第一の要因は高音質であることと電流制限が
ないということが最も大きな理由であり、また転居されても移設できること、
使用前・使用後の比較が簡単に出来て納得出来る事などがあります。

しかし、繰り返しますが今までのパッシブ型電源には“波形整形”という機能
はありません。


〔4〕今後H.A.L.が導入を決定した第三の電源とは!?

さあ、ここまで前置きを述べましたので、既に皆様も想像がつくでしょうか!?

パッシブ型電源のポイントである電流制限はなくアイソレーション効果という
魅力をそのままに!!しかも“波形整形”をしてくれるという電源があったら!!

あったのです!!そういう電源が!! しかも税込み\58,000.ですと!!

★はい、これです!! AiTEC Λ5.3seriesです!!
http://www.aitec-ltd.co.jp/535.html

しかも、上記〔3〕で述べた二種類の電源製品になかった特徴も備えています。
このページの下にグラフが二つありますので、それをご覧下さい。

◎オーディオ機器に一番大切な電源の質を改善し、機器が蘇る!

という、ちょっとオーバーな表現の見出しがありますが、上のグラフでの
「歪波形を相殺することにより波形を改善します」とありますが、そもそも
何の波形なのか明示していないのが問題なのです。AC100Vの「電圧」の波形
であればあり得ません「電流」の波形であればあり得ます。

私も実際の電圧波形をオシロスコープで見たことがありますが、こんなに
グニャグニャな波形ではありませんでした。しかし、コンデンサーインプット
の機器を含む複数の異なる機器が存在すると色々な電流波形が合成されますの
で「電流波形」ならあり得ると思います。

これはメーカーの良識として、定義を明確にしたグラフ波形としてユーザーに
見せるべきではないかと思います。生意気言ってごめんなさい<m(__)m>

仮に電流波形という事であれば得られる電力と密接に関係してくるので、大切
なのは、その下の「位相角の制御によって力率を改善する」ということになり、
私が上記〔2〕で述べている富士山のイメージがこれなのです。

http://www003.upp.so-net.ne.jp/hashizume/Thinking/Original/Power.pdf

ネット上でちょうど良い解説を見つけましたので上記に紹介しておきます。

http://www.taiyo-international.com/products/jrdg/model625/

私が直ぐに思い付くのは上記のJEFFROWLANDのパワーアンプでの説明でも力率
PFC(Power Factor Controller/PowerF actor Correctionとも言う)が大分以前
から述べられていたということです。

http://www.taiyo-international.com/archives/catalog/jrdg/model12-10.pdf
http://jeffrowlandgroup.com/ClassicAmps.htm

そして、古くは上記のJEFFROWLAND  MODEL12では13年前に既に搭載されていて、
その他のメーカーでも同様な電源の効率化技術をアンプの電源に投入していました。

スイッチング電源と呼ばれる技術の根本的な原理も電源部の周波数を高くして
PFCを良くしようという取り組みの一つとしてご理解頂ければ良いと思います。

しかし、この技術を全てのコンポーネントに応用できるという、しかもくどい
ようですが税込み\58,000.です(^^ゞ

次に、この製品に関しては下記をご覧下さい。
http://porcaro.exblog.jp/12661354/

家庭での電源コンセントはひとつのブレーカーから複数のコンセントを直列に
配線しているのが一般的です。ひとつのブレーカーを落とすと壁一面、または
一部屋全部のコンセントが切れることは経験されていると思いますが、この
AiTEC Λ5.3seriesは直列配線された電源系統に一台を設置すれば良いという
ことで、同時複数の製品に効果を発揮することが出来ます。

メーカーさんの話では一系列に複数使用すると効果も倍増するという説明が
ありますが、まあ…それは導入後の課題で良いと思います。(^^ゞ

H.A.L.'s Owner's impression!!-AiTEC Λ5.36
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/fan/hf_hear0627.html

そして、音質向上の副産物として冷蔵庫などの電化製品のうなりにも効果が
あるという報告があったのは電流波形がきれいになった事の一例だと思います。

オーディオ用電源の色々な製品も、実は使用する機器によって流れる電流波形
が変化するためにうなりの要素も複数存在するということかと思います。

さて、2012年3月5日のこと。AiTEC Λ5.35が初めてH.A.L.に持ち込まれました。
使用するコンセントはTransparent PI8を差し込んでいる二個口のコンセント
で空いている一口に差し込むだけ。これでPI8の出力する8系統の電源全てに
効果を発揮しました!!

どのような効果か!?

http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/907.html

http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/902.html

労を惜しむわけではありませんが、実は上記のΛ3.16で体験した事と同様な
変化が起こるのです。私が比較試聴した時にはΛ3.16 Professionalをセット
しておいての実験でしたが、使用前・使用後の比較試聴では明らかに効果が
ありました。

電源に対するΛ5.3シリーズと空間に対するΛ3.16シリーズのどちらが効果的で、
どちらを買えばよいのか? という質問に関してはお答えするのが困難です。

というのは、いずれも一度体験したら外したくなくなってしまうからです。
しかも、くどいですがΛ5.3シリーズは税込み\58,000.なのですから…(^^ゞ

■そして、私がH.A.L.での導入を検討している最大の要因は、既に設置して
 いるTRANSPARENT POWER PRODUCTSと共存し更に1ランク上の音質に発展して
 くれたという事実からです。

そして、ハルズサークルの皆様にも新たな提案を行っていかなければ!!

「余談」
解説文章が長くなってしまい試聴インプレッションを書いている時間がなく
なってしまいました。体調も今一つで申し訳ございません。次の機会に述べた
いと思いますが上記の文章量を私の評価と思って頂ければと思います。(^^ゞ

■ハルズサークルへの提案はスタートしています。この機会にご入会下さい。


担当:川又利明
TEL 03-3253-5555 FAX 03-3253-5556
kawamata@dynamicaudio.jp

お店の場所はココです。お気軽に遊びに来てください!!

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