《H.A.L.'s 訪問記》


No.0003 - 2008/5/2

東京都千代田区 M.M 様-H.A.L.'s 訪問記

Vol.3「オーディオに対する新しい価値観を見出すことが出来ました!!」

今回は先ずこの写真から!!(^^ゞ

http://www.dynamicaudio.jp/file/080428/54.jpg

2008年4月某日、首都東京にゴジラ出現!! なんて(笑)特に最新作の映画でも
あるまいし、何で今どきゴジラなんだ〜? はい、実はこれ↓が正体です。

http://www.dynamicaudio.jp/file/080428/51.jpg

東京は有楽町にある東宝系の大手映画館前の一角、今回は昼間に出かけました
のでこんな風景が目にとまりました。大きなシンボルツリーの下は喫煙所に
なっているので周辺から愛煙家が集まってきます。

その足元にはキラ星のような映画スターの手形がハリウッドのチャイニーズ
シアター前のように多数埋め込まれていて、往年の名優たちの名前がぎっしり
と並んでいました。日比谷シャンテ敷地内にある「合歓の広場」の風景です。

外国人の旅行者も「Oh!! GODZILLA!!」と足を止めて写真を撮っていましたが、
この日はM.M 様とお打合せして午前中の訪問とさせて頂きました。

M.M 様のオーディオシステムは、この近くのさるビルの8階にセットされてい
るというこは以前よりうかがっておりましたが、実は現在のお部屋はいわば
仮住まいというもの。

以前は軽井沢に近代的な様式の別荘を新築されていました。しかし、大変残念
なことに建物の設計上の不都合が問題になり、昨年オーディオシステムをどう
にか他に移動したいというご相談があり、私が提携している専門業者を手配し
て大がかりなシステムをいったん東京の倉庫に移送して保管していました。

近い将来には新しい別荘をいずれかの土地に、という構想をお持ちなのですが
適切な場所が決定しないままに時間が経過し、オーディオが聴けないという
数ヶ月間が経過するうちにM.M 様は遂に我慢できずにご自分の事務所でいい
からセッティングして音を聴きたい!!ということになったものです。

ですから、この現在の空間が本拠地ということではなく仮の環境ではあるもの
の、少しでもいい音で鳴らしたいというご要望から熱心な取り組みを続けられ
ており、その限られた空間で何とかしたいという挑戦の過程において私にも
アドバイスをして欲しいというご要望を頂き今回の訪問となりました。

この界隈には近代的なビルと昔ながらのビルが混在しており、夜遅くまで勤務
されているM.M 様はご自宅よりも事務所に詰めている時間の方が長いくらいと
言う。その時間を愛用システムと共に過ごしたいというお気持ちは当然のこと
だろうと察しられた。

http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/fan/hf_hear0411.html

その間にも上記のイベントにもご参加頂き、音波とは何かという基礎原理を
学習され、狭い空間でいかにうまく鳴らすかということに挑戦されてきました。

そして、そのシステムが長年の追求の結果として国内では大変貴重であり他に
は事例がないという組み合わせ。

http://www.dynamicaudio.jp/file/080428/36.jpg
http://www.dynamicaudio.jp/file/080428/42.jpg

事務所の一角に最小スペースでセットされたコンポーネントたちと、日本には
1セットしかないというこの↓スピーカーが私の目を引いた。

http://www.dynamicaudio.jp/file/080428/38.jpg

このシステム構成は次のようになっている。


    ◆H.A.L.'s 訪問記-Vol.3 千代田区 M.M 様システム構成◆

ESOTERIC G-0Rb(税別\1,350,000.)→ dCS Verdi la scala(sub transport) 
http://www.teac.co.jp/audio/esoteric/g0rb/index.html
        □Power equipments□
Harmonix WATTaGATE - 350 & Chikuma 75M-1400 + PAD 20th PURIST AC & 
ESOTERIC PS-1500 MEXCEL + PAD Signature Series AC DOMINUS PLASMA
     ↓
PAD Signature Series DOMINUS PLASMA BNC
      ↓
ESOTERIC P-0s+VUK-PO (税別\1,950,000.)
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/216.html
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/108.html
        □Power equipments□
Harmonix WATTaGATE - 350 & Chikuma 75M-1400 + PAD 20th PURIST AC &
ESOTERIC PS-1500 MEXCEL + PAD Signature Series AC DOMINUS PLASMA
      ↓
PAD Signature Series DIGTAL DOMINUS PLASMA XLR×2           
      ↓
Dcs Elgar plus  (税別\2,080,000.)
http://www.ohbashoji.co.jp/products/dcs/index.html
        □Power equipments□
Harmonix WATTaGATE - 350 & Chikuma 75M-1400 + PAD 20th PURIST AC &
ESOTERIC PS-1500 MEXCEL + PAD Signature Series AC DOMINUS PLASMA
      ↓  
PAD Signature Series DOMINUS PLASMA XLR        
      ↓   
Chord Electronics CPA5000 (税別\2,600,000.)
http://www.timelord.co.jp/Consumer_audio/CHORD/chord_reference.html
        □Power equipments□
Harmonix WATTaGATE - 350 & Chikuma 75M-1400 + PAD 20th PURIST AC
      ↓
PAD Signature Series DOMINUS PLASMA XLR  
      ↓
Chord Electronics  SPM14000 (税別\9,940,000.)
http://www.timelord.co.jp/Consumer_audio/CHORD/chord_reference.html
        □Power equipments□
FURUTECH FT-S20A + PAD Signature Series AC DOMINUS PLASMA(20A)
    ↓
PAD Signature Series DOMINUS PLASMA V-BIW  
    ↓
GERMAN PHYSIKS Carbon MK4 (日本では未発売/特注品としてオーダーしたもの)
http://www.german-physiks.com/german-physiks-speaker-line/the-carbon-mk-iv.html

ご覧のようにシグナルパスのケーブルは見事なまでにPAD DOMINUSに統一され、
かつ電源ケーブルには同社の最新PAD 20th PURIST ACも導入し、それらを
ESOTERIC PS-1500 MEXCELを介して使用されるという徹底ぶり。

特にスピーカーCarbon MK4は国内ではここにしか存在していないものであり、
以前はDDDがチタンのCarbon MK2を使用されていた。

そんなM.M 様から訪問前にはこんなメールも頂戴していました。

「第一回、題名のない試聴会にてYG Acoustics VoyagerとTRINITY の組み合わ
 せを聴かせてもらった際には、そのあまりの音の良さに衝撃を受けまして、
 “もっと音を良くしたい”と、事務所においてもがんばっておりましたが、
 現実は甘くないという事を思い知らされるばかりでした。

 ぜひ遠慮なく問題点を指摘してもらいたく、また改善方法などもアドバイス
 をいただけると助かります。試聴用のCDもお持ちください。
 よろしくお願いいたします。」

はい、熱心な取り組みに敬意を表しつつ、私がお伺いすることで何らかのお役
に立てるということであれば私もうれしく思います。ということで、今回は
以前の軽井沢の別荘から比べても、あえてコンディションが万全でない環境に
挑戦しているM.M 様のお役に立てばという思いでお伺いしたものでした。

            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

事務所の一角ということで入室してからざっと室内を観察し、なるほど〜と
いう思いで早速聴かせて頂く事にしました。最初はオーケストラからです。


■マーラー交響曲第一番「巨人」小澤征爾/ボストン交響楽団第二楽章

いかんせん私も全く聴いたことがないGERMAN PHYSIKS Carbon MK4はDDDが最新
のカーボンファイバー製ということで外観も精悍さが感じられ、かつ以前は
ふたつのウーファーをボディーに格納していたが、今回はよりトランジェント
を追求するということでシングルウーファーに換装されている。

私は、普段M.M 様がここで聴いているというポジションよりも約1メートル程
椅子を後ろに下げて聴き始めました。

「おー!!このDDDはいいな〜!!こんな質感が出せるんだ!!」

懐かしいP-0sのリモコンと納品したばかりの最新型Chord CPA5000の多機能
リモコンを両手にして聴き始めた私の第一印象はすこぶる良いものだった。

http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/456.html
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/462.html
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/465.html

私はGERMAN PHYSIKSのDDDに関しては上記のようにPQS402を使用して色々な
局面から分析と評価をしてきましたが、カーボンDDDがこんなに素直で清々し
い音質だったことに先ず驚いた!!

そして、十分な広さとは言えない空間だからこそ、無指向性のDDDの魅力が
発揮されており、Carbon MK4の奥行き方今にきれいなステージ感が浮かぶ。

室内は決して広いとは言えず、また天井も低い方なのに低域のもつれた残響や
定在波もなく、私は以前に聴いてきたCarbon MK2との違いが大変大きなことに
気付いていた。

しかし、私の本能は聴き進むうちに第一印象の裏に隠れている要素を少しずつ
嗅ぎ取っていくのでした。そこで私は続けてオーケストラを聴くのではなく、
各周波数帯域ごとに区分けして分析できる選曲ということでこれを聴くことに。


■“Basia”「 The Best Remixes 」からCRUSING FOR BRUSING(EXTENDED MIX)
http://www.sonymusic.co.jp/Music/International/Arch/ES/Basia/
http://www.basiaweb.com/
http://members.tripod.com/~Basiafan/moreimages.html#remixes1

賑やかなイントロが始まって先ず気が付くのは、サンプリング音源によって
ハイスピードなビートで散りばめられるパーカッションの質感。これには本当
にちょっと驚いた。数あるハイエンドスピーカーでも聴いてきたものですが、
カーボンDDDが叩き出す打音とパルス性の立ち上がりの鋭い楽音が前例のない
くらいに落ち着き、そして中空で叩かれる個々の細かい打音にすこぶるつきの
透明感が感じられる。そして、刺激成分がないという特徴が直ちに私の頭に
インプットされた。

トゥイーターとミッドレンジという二つの音源が弾き出した再生音では、この
曲のように小粒の音像が無数にちりばめられた賑やかな音が華やかさと極彩色
の鮮やかさを思わせるものだった。

しかし、Carbon MK4のカーボンDDDが有する413平方cmという極めて大きな振動
面積による音響変換のゆとりなのだろうか、DDDの高速トランジェント特性が
実際の再生音になると、実は聴きやすく滑らかに聴こえるものだが、まさにそ
れだろう。これは素晴らしい!!

その後に展開されるのがサンプリング音源による合成音と言えるキックドラム
の連打だが、この低域はスピーカーによって様々なバリエーションを持って
聴くことができるチェックポイントだ。なんとそれが!!

「早いぞ!!これは!!」

28Hzまで低域をカバーするというCarbon MK4のシングルウーファーによる低域
だが、切れ込みが鋭いというだけではなく打音の直後に伸びていくはずの残響
が皆無に近く、強烈なブレーキ効果がウーファーを支配しているということが
つぶさに聴き取れる低域だった。そしてBasiaのヴォーカルだ。

「いや〜、これは気持ちいい!!」

単純な一言を発するようだが、それらは私の分析が瞬間的にジャッジした楽音
の質感を直接的に感性の反応として内心で言葉にしているにすぎない。
このカーボンDDDというのは底知れない魅力を持っているものだと圧倒された。

そして、アコースティックなチェロもありエレキベースの響きもクリアーに
観測されるのだが、ここでもちょっと引っかかりのあるポイントが浮かぶ。
う〜ん、では再度オーケストラに戻そう。ということで次の定番のCDに変更。


■セミヨン・ビシュコフ指揮/パリ管弦楽団ビゼー「アルルの女」「カルメン」
 の両組曲から1.前奏曲8.ファランドール10.アラゴネーズ15.ハバネラ

この曲は最初の前奏曲で弦楽器群のアルコでの重奏が左右からかけあいとなり、
そのレイヤーの各層を分離させて聴かせるという解像度のあり方をチェックし
ているものだが、このときのオーケストラの左右の広がり方とホールエコーの
含み方にも観察の目を光らせていく。

私が訪問する直前にCarbon MK4の左右の間隔を広げて両サイドのでっぱりのあ
る壁面の直角のコーナー部に接近させるように配置を変更したとM.M 様はおっ
しゃる。その位置関係を見るとこの↓ようになっていた。

http://www.dynamicaudio.jp/file/080428/38.jpg

この位置におけるコーナーの張り出し部分とスピーカーとの間隔をクローズ
アップするとこの↓ようになっていた。

http://www.dynamicaudio.jp/file/080428/43.jpg

M.M 様の言葉によるとGERMAN PHYSIKSのPQS402やPQS202シリーズのようにDDD
の後方に直角に近い先端を持つウッドキャビネットが配置されており、無指向
性のDDDの放射音をリスナーに直接反射させないようなデザインになっている。

であれば、Carbon MK4のDDDも直角な壁面のコーナーに接近させても大丈夫だ
ろうという推測のもとに左右間隔を広げ、その分写真のようにコーナー壁面に
思い切って接近させたということだった。

確かにDDDに直近のコーナー部分では一次反射をリスナーに折り返す角度では
ないが、石膏ボードの壁面は確かに反射音の質がいいとは言えない。そこで、
私はせっかくセットしているQRDのAbffusorを次の↓ように配置を換えた。

http://www.dynamicaudio.jp/file/080428/46.jpg

クランク状に切り替えしている壁面にぴったり寄せる形で置いていた外側の
Abffusorをこのように斜めに配置して、右手の奥にあったAbffusorもぐっと
近付けることでDDD背後のコーナーにおける石膏ボードの露出面を小さくした。
同時に外側のAbffusorが45度の角度でCarbon MK4の左右両翼に配置することで
一次反射の拡散の仕方を調整した。

「音波は距離の二乗に反比例して減衰します」とは私のイベント「題名のない
試聴会」で音響工学の基礎知識として来場者に述べたものですが、音源に最も
近い壁面こそ最も強烈な多くの一次反射波を反射しているということだ。
そこをカバーしつつ、Abffusorの拡散するエネルギーも音源に接近したことで
減衰する前に散らしてあげることができる。

つまり、M.M 様がスピーカーの間隔を広げたセッティングを肯定するための
チューニングということになる。さあ、これで再度オーケストラを聴こう!!

「おー!!そうそう、先ず広がったね。そして、弦楽器の質感が音量を上げても
 整然としてスムーズに展開している。これだね〜」

同じQRDでもDiffusorやDiffractalを音源に接近させるのは禁物です。これら
は吸音はしないので、室内全体の音響エネルギーが減衰しすぎないようにと
いう配慮からスピーカーから離れた壁面、スピーカーと反対側でリスナーの
背後の壁面などにセットされるとよいものです。反対にAbffusorは狭い室内で
は積極的にスピーカーに接近されて頂いても大丈夫です。

狭い室内でスピーカーの中間の壁面にDiffusorやDiffractalを設置される場合
にはご注意ください。オーケストラの管楽器の音像がにじまないか、ヴォーカ
ルの音像が膨らみ輪郭があいまいにならないか、これをチェックして下さい。

サウンドステージが両翼に心地よく広がり、同時に弦楽器の反射音も適度に
吸収・拡散されるので滑らかさが増します。目をつぶっているとステージの
左右が3割くらい広がったように感じられ、不思議な事に木管・金管楽器の
定位感も以前にましてくっきりしてきます。こんな配置の変更だけでカーボン
DDDの魅力が更に生きてきました!! うん、これはいいです!!

オーケストラの再生音で空間の広がり方と楽音の質感の両方にお金をかけない
音質向上を実現した後は、今度はちょっと違った切り口での聴き方の調整です。
次はスタジオ録音の定番、この曲を聴くことにしました。


■DIANA KRALL 「LOVE SCENES」11.My Love Is(MVCI-24004)
http://www.universal-music.co.jp/jazz/artist/diana/disco.html

解像度と情報量の両方をこの一曲で聴き分けることができる選曲です。
するといきなりです!!

「あっ!! これ凄いです!!」

何が…!? 例のDIANA KRALLが指を鳴らす音です。パキッ!!と弾ける切れ味と
肉厚感が同居している音で、しかも直後に伸びていくエコー感が何ともリアル。

そう、効果音として誇張したものではなく、マイクの近くで弾かれた指がわず
かな空気に波動を起こし、それをマイクのダイヤフラムが捉えたミクロの風圧
みたいなものまで聴こえてきます。カーボンDDDはやってくれます!!

そして、クリスチャン・マクプライドのウッドベースが…!?

「はは〜ん、これか…、私が当初から感じていたアレとは!!」

私はM.M 様が普段椅子を置いているところから1メートルくらいスピーカーか
ら距離をとって離れて聴き始めましたが、思うところがありM.M 様がいつも
聴いているというポイントに前進して聴き比べました。そうしたら思わぬ変化
が見つかったのです。

私はP-0sのリモコンでA-B間リピートを設定し、ウッドベースのみのパートを
繰り返すようにして二か所でベースに注目して聴き比べ、その後にM.M 様にも
同じ二か所で聴き比べて頂きました。

「どうです!? 前の位置だと両側のスピーカーがあたかもヘッドホンのドライ
 バーのように直接音をダイレクトに聴かせてくれるのはいいですが、まさに
 ヘッドホンのように音像が頭の中に定位するように目の前全体にベースが
 大きく広がってしまいますよね。つまり、ベースの音像と輪郭が見えない。

 でも、ほんの1メートルでも後方に下がるとしっかりベースの音像がスピー
 カーのセンターに浮かんで見えるようになってきますね。どうですか?」

という解説を述べてM.M 様にもじっくりと比較していくと、まさに同感という
微笑みが返ってきました。

M.M 様はもともとWindowsが世に出る前にコンピューターのプログラマーを
仕事になさっていた方であり、論理的に処理できる世界を趣味にも当てはめた
いと思いながら現在に至ったということでしたが、オーディオという趣味は
理論を体験の上で学習していかないと上達しないものなのです、というお話し
を間にはさんでいました。さて…

確かに素晴らしいCarbon MK4であり、その特徴のはずの無指向性という放射
パターンが比較的狭い部屋でも広い音場感を再現してくれるのはいいのですが、
オーケストラとは違って鮮明な輪郭が聴き取れるはずのスタジオ録音で違いが
出てきました。

高価なスピーカーとコンポーネントが本来持っているポテンシャルを生かすも
殺すも使い方次第ということなのですが、それをお一人で日々繰り返し調整し
ていたつもりでも目標というか、良い状態の手本が示されないと軌道修正が
出来ないという悩みに対して目指すべき指標が見つかったようです。

Abffusorの使い方で音場感の再現性と広さを良好な状態に設定することができ
ましたが、次は左右スピーカーの内側に定位すべき楽音の音像と輪郭という
ところで正解が見つかりました。これでいいのだろうか?という気持ちが今日
の天気のように晴れ渡り何よりです。さあ、締めの一曲を楽しみましょう!!


■ちあきなおみ/ちあきなおみ全曲集「黄昏のビギン」
http://www.teichiku.co.jp/teichiku/artist/chiaki/disco/ce32335.html

高価なスピーカーの価格を少しでもダイレクトに受け止めようという無意識の
リプレースメント、スピーカーとの距離感を接近させすぎたということで
無指向性の特徴を持つCarbon MK4でもくっきりした音像を再現してくれると
いう発見がありました。

そして、この設定はウッドベースという低域の楽音で調整しましたが、実は
ヴォーカルの帯域でも音像の見え方について大きな進歩がありました。

イントロのギターとヴァイオリン、そしてベルの打音が最前にもましてしっか
りした音像を描き、粗悪な環境と自説されるされるM.M 様の“事務所”ですが、
今度はカーボンDDDが放つ無指向性の音波が広大な空間表現をイメージさせ、
同時に音像をぽっかりと定位させるという音質によって二時間前とは違った
鳴り方になってきました。

「今までプリアンプのボリュームは30から40程度しか上げたことがありません
 でしたが、80まで上げても大丈夫なんですね。いや、その方が違いが鮮明に
 わかるようになりました!!」

とは、M.M 様のご感想です。そうです、私は事前にお断りして自分で聞き苦し
くない程度までボリュームを上げさせて頂きました。それはこういうことです。

「指先で切手をつまんで腕をのばして見てください。切手がいくらかという
 数字がかろうじて読めるでしょうが、小さな画像をこれだけ離してみたら
 細かいことはわかりませんよね。

 でも、腕を曲げて切手を手元に引き寄せて観察すると、どんな絵が印刷され
 ているか、その細かさ精密さまで初めてわかりますよね。更にルーペで拡大
 してみると輪郭の線から隣り合う色がにじみだしてはみ出ているのもわかる
 かもしれません。

 人間の聴覚も同じなんです。小さい音だと何がいいのかわかりません。
 さっきも述べたように音波は減衰するものなので音量が小さいと壁の反射音
 がどう作用しているかも判定できません。調整するときはこのくらいの音量
 でチューニングして、その後は音量を下げても安心して聴けるというもので
 すから、この経験を覚えておいてください。」

こんなお話しと試聴を繰り返しているとあっという間に時間が経ってしまう。

しかし、ちあきなおみのヴォーカルは良かった〜(^^ゞ

Carbon MK4の低域まで高速反応という特徴が声質に潤いを与え、それはDDDの
無指向性という特徴からスタジオ録音にして延々と伸び続ける余韻感を空間に
響かせ、このときばかりはH.A.L.の音をもっともっと鍛えなければという思い
が頭をよぎったものです。

私も初めて聴いたGERMAN PHYSIKS Carbon MK4は本当に素晴らしかった!!
そして、その可能性を引き出すには環境に応じたセッティングが必要であり、
しかし、いったん良好な設定ができれば狭い空間でも宇宙的な音場感の広がり
を楽しませてくれることに行き当たった!!

私も大いに勉強になり良い体験ができました。
これでGERMAN PHYSIKS Carbon MK4の音質を見極め販売する自信もできました。

しかし、輸入元は今後どうするのだろうか!?(笑)

そして、私は賑わう昼下がりの銀座を後にして、まったく雰囲気の違う秋葉原
に戻ってくると、何と早速M.M 様からこんなメールが届いていました。

            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

M.Mです。

H.A.L.'s Sound check!!をして頂きまして、ありがとうございました。

機器のグレードをなかなか使いこなせず、設置にはいろいろ苦労しておりまし
たが、川又さんのご意見を参考に、また新しいステップへの手がかりをつかむ
ことが出来ました。

一人でオーディオを使っていると、なかなか自分の習慣や、決まった扱い方
から抜けることが出来ないのですが、川又さんの客観的な分析評価と、その
考え方を伺う事で、私の中でオーディオに対する新しい価値観を見出すことが
出来ました。

粗末な室内環境でしたが、真剣に取り組んでいただけて大変うれしく思います。

ありがとうございました。

            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

こちらこそ、恐縮してしまうようなメールありがとうございました。
お礼を申し上げるのは私の方でございます。

他では絶対に聴けないスピーカーを試聴させて頂き、ルームアコースティック
の改善方法の実験でも良い成果と学習ができました。私がこの企画で訪問記を
公開するずっと以前から同様なことはやってきましたが、記録として公開する
ことで他の皆様のお役にも立てることでしょう。

そして、M.M 様のおっしゃるように、ずっと一人であーだこーだ? とやって
いても堂々めぐりでいっこうに良くならないという悩みをお持ちの方も多いと
思います。私は自分の経験を積むという学習の意味でもSound checkを続けて
行きたいと思いますが、悩める皆様のお役に立てることも大変うれしく思って
います。

そして、私のSound checkでは“変更前・変更後”の比較を目の前で実験とし
て皆様にも体験して頂き、こちらの音が正解なんです!!ということを実地に
ガイド致しますので皆様の耳でも納得して頂ける方法でお教えいたします。

さあ、私の仕事のフィールドが更に広がってきました。

次は台東区、その次は練馬区のVIPのお宅を訪問予定です。

H.A.L.で長年鍛えてきた耳と感性の水準があります。
地方の皆様からも、こんな私のSound checkをぜひ我が家にも…、という
ご相談がそろそろ入りはじめました。

Sound checkそのものは無料ですが、ケースバイケースでご相談ということで
よろしくお願い致します。また、順番をお待ち頂いている皆様にもお詫び申し
上げます。もうしばらくお待ち下さいませ<m(__)m>


HAL's Hearing Report