発行元 株式会社ダイナミックオーディオ
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H.A.L.担当 川又利明

No.1142 2014年9月15日
 「今明かす! CLOCK IN 10.0000MHzのディスプレーの正体はこれだ!!」


2014年9月8日
No.1140 「この被写体は何だ!? CLOCK IN 10.0000MHzのディスプレーは何だ!!」
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/1140.html

■先ず最初に種明かししてしまいましょう!! この10MHzクロック信号を受信
 しているのは何と!! ★Aurender W20でした!!

http://www.aurender.jp/products/w20/
そのW20のフロントパネルのディスプレーだったのです!!
http://www.dynamicaudio.jp/file/20140906-DSC01770.JPG

「H.A.L.'s One point impression!!-Aurender W20」
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/1069.html

さて、このAurender W20は着実に販売実績を伸ばしているH.A.L.に唯一展示
導入したハイレゾ音源対応ミュージックサーバー/ネットワークオーディオ
トランスポートです。そもそものきっかけは、DEVIALET 800とのペアで導入
されたある会員からの次のような問い合わせから始まりました。

           -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

Aurender W20へのクロック信号入力ですが、10MHzは対応しておりますでしょうか。
Abendrot Audio なるメーカーの STUTE というマスタークロックにちょっと興味がわいています。
https://hookup.co.jp/products/stute.html

           -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

私がこれまでに輸入元から得た情報やwebサイトでは10MHzには対応していない
という認識だったのです。というのも…

以前からAurender W20へはdCS Vivaldi Clockからワードシンクを供給してい
たのですが、実は、W20で再生するファイルのサンプリング周波数と同じクロック
信号をマスタークロックから供給する必要があるものなのです。

もしも、W20が再生するファイルと違うクロック周波数でワードシンク信号を
入力しますと、W20のディスプレーに表示されるword syncの文字に横線表示が
引かれてW20の内部クロックで出力するように自動的に設定変更されてしまいます。

という事はW20のHDDに記録されている膨大なデータの様々なサンプリング周波数
のファイルを再生する度に、外部マスタークロックの発振周波数をいちいち
変更しなければならなくなってしまいます。

実は、AurenderとdCSは技術的に緊密な関係にあり、相互の製品での利便性を
高めるために上記の外部クロックとの同期を自動的に行うためのDongleをW20
の付属品としてあり、USBケーブルを使ってW20とdCS Vivaldi Clock、同社の
他のクロックでもW20が再生するファイルのサンプリング周波数に自動的に
追随するようなプログラムを標準装備しているのです。

下記はその接続方法を示す画像です。
http://www.dynamicaudio.jp/file/20140914-dcsvivaldi3.jpg
http://www.dynamicaudio.jp/file/20140914-sample1.jpg

ですから、現状ではWAVやFLACなどの高音質と言われる音楽データファイルで
10MHzというサンプリング周波数は存在していないので、いくら外部マスター
クロックから10MHzを入力しても再生するファイルに適合するはずはなく、
結局はW20の内蔵クロックでの動作に自動的に切り替えてしまうものと私は
考えていたわけです。これは輸入元も同様な認識であったわけです。

この問い合わせに輸入元からも非対応であるという回答がいったんはあったの
ですが、念のために現地メーカーに問い合わせすると下記の回答がありました。

           -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

Aurender社に将来の10MHz対応予定を問い合わせておりましたところ、
代表のHarry Lee氏より下記の回答(ほぼ直訳)がありました!!

「発売当初より10MHzに対応していたが、Webサイトを含め発表するのが
 漏れていた。お客様には大変申し訳ない気持ちだ。」との回答が!!

           -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

ということで、Aurender W20は外部クロックより10MHzのクロック信号を入力
すると自動的に内部クロックに対してPLL回路による同期を行い、再生ファイル
のサンプリング周波数に関係なく外部マスタークロックの発振精度に依存した
データ出力を行うようになることが今になって解ったのです!!

いやいや、私は逆に嬉しいのですが、でも試聴してみないと…ということで
先日下記システムにて検証してみました。

 ◇ H.A.L.'s Sound Recipe / Aurender W20-inspection system  ◇
 
………………………………………………………………………………
dCS Vivaldi Clock(税別¥1,920,000.)
http://www.taiyo-international.com/products/dcs/vivaldi-clock/
     and
TRANSPARENT PLMM2X+PI8(税別¥695,000.)
http://www.axiss.co.jp/transparentlineup.html#POWER
     and
finite element Pagode Master Reference Rack/HD02+CERABASE 4P(税込み¥970,000.)
http://www.axiss.co.jp/fFE.html
………………………………………………………………………………
                ▽ ▽ ▽
 
Cardas Audio Lightning BNC Cable 
http://www.taiyo-international.com/products/cardas/digital/

                ▽ ▽ ▽
………………………………………………………………………………
dCS Vivaldi Transport(税別¥4,740,000.)
http://www.taiyo-international.com/products/dcs/vivaldi-transport/
          vs
Aurender W20 (税別¥1,900,000.)
http://www.aurender.jp/products/w20/
          and
ESOTERIC G-01 (税別¥1,350,000.)★10MHzはG-01から直接W20のみに接続
http://www.esoteric.jp/products/esoteric/g01/
     and
TRANSPARENT PLMM2X+PI8(税別¥695,000.)
http://www.axiss.co.jp/transparentlineup.html#POWER
     and
finite element Pagode Master Reference Rack/HD02+CERABASE 4P(税込み¥970,000.)
http://www.axiss.co.jp/fFE.html
………………………………………………………………………………
                ▽ ▽ ▽
 
TRANSPARENT REFERENCE XL 110ΩAES/EBU DigitaL (XLR)×2(税別¥860,000.)
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/1037.html
http://www.axiss.co.jp/ftran.html

                ▽ ▽ ▽
………………………………………………………………………………
dCS Vivaldi DAC (税別¥3,870,000.)
http://www.taiyo-international.com/products/dcs/vivaldi-dac/
     and
TRANSPARENT PLMM2X+PI8(税別¥695,000.)
http://www.axiss.co.jp/transparentlineup.html#POWER
     and
finite element Pagode Master Reference Rack/HD02+CERABASE 4P(税込み¥970,000.)
http://www.axiss.co.jp/fFE.html
………………………………………………………………………………
                ▽ ▽ ▽

ZenSati Seraphim / Interconnect cable XLR 1.5m 1Pair (税別¥1,302,000.)
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/960.html

                ▽ ▽ ▽
………………………………………………………………………………
ESOTERIC Grandioso C1 (税別¥2,500,000.)★E.M.G-board 使用
http://www.esoteric.jp/products/esoteric/c1/
     and
ESOTERIC 7N-PC9500 MEXCEL+PI8(税別¥815,000.)
http://www.esoteric.jp/products/esoteric/7npc9500/index.html
http://www.axiss.co.jp/transparentlineup.html#POWER
     and
finite element Pagode Master Reference Rack/HD02+CERABASE 4P(税込み¥970,000.)
http://www.axiss.co.jp/fFE.html
………………………………………………………………………………
                ▽ ▽ ▽
 
ESOTERIC 7N-A2500/XLR 7.0m(税別¥2,280,000.)
http://www.esoteric.jp/products/esoteric/7na2500/index.html
 
                ▽ ▽ ▽
………………………………………………………………………………
ESOTERIC  Grandioso M1(1Pair 税別¥2,800,000.)★E.M.G-board 二枚使用
http://www.esoteric.jp/products/esoteric/m1/index.html
     and
ESOTERIC 7N-PC9500MEXCEL(2本/税別¥720,000.)
http://www.esoteric.jp/products/esoteric/7npc9500/index.html
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/1044.html
     and
finite element Pagode Master Reference HD10+CERABASE 4P(2台/税別¥720,000.)
http://www.axiss.co.jp/brand/finite-elemente/finite-elemente/
………………………………………………………………………………
                ▽ ▽ ▽

Zonotone 7NSP-Shupreme 1 / 2PairをBi-Wireにて使用
(2.0m/1Pair 税別¥220,000.)and(2.5m/1Pair 税別¥258,000.)
http://zonotone.co.jp/products/speaker-cbl.html

                ▽ ▽ ▽
………………………………………………………………………………
Technical Audio Devices TAD-R1MK2(1Pair 税別¥7,000,000.)
http://tad-labs.com/jp/consumer/reference_one/
………………………………………………………………………………

そして、Aurender W20をコントロールするiPadの画面で、プレーヤー機能の
メニュー画面を呼び出すとマスタークロックの選択スイッチがあります。
「ワードクロックインを使用する」という選択でオンオフが出来るのです。

今回の比較試聴はケーブルの差し替えや重たい物を上げ下げしなくていいので
こういうハイテクなコンポーネントは本当に楽だな~と思うのでした(^_^;)

さて、私が日頃よく使用する課題曲は以前にリッピングをしてありますが、
44KHz/16bitのWAV形式のもので、ちっともハイレゾではありません。しかし…

私が選曲した全てで語るには時間とエネルギーが不足してしまいますが、もう
恒例の次の三曲で印象を語るとすると…。

■Stereo Sound Flat Transfer Series 石川さゆり「天城越え」「朝花」

石川さゆりの歌唱力が光りギター二本だけというシンプルな伴奏の一曲。
数々の試聴に用いてきたが、特にソースコンポーネントでの比較試聴では
欠かせない一曲であり、私は先ずここから聴きはじめた。

iPadの画面で簡単にオンオフの切り替えが出来るので、何回も繰り返し聴く。
イントロでギターのアルペジオからスタートするが、なぜ!? と我が耳を疑う!

とにかくギターの余韻感、それが広がり拡散していく空間の大きさが絶大に違う!!
ディスクプレーヤーとは違い実に鮮明なフォーカスを示すのがAurender W20の
特徴でもある。しかし、言い換えると音像の輪郭再現性は本当に素晴らしいのだが、
空間に漂うような微小信号が醸し出す余韻感はあっさりと感じられてしまう。

ところが、10MHzに同期したAurender W20がここまで空間情報を出すのかと
ギターの質感の恐ろしい程の豹変ぶりに愕然としてしまった!!もう戻れない!!

ギターの弦一本ずつが弾かれた後に形成する音場感の拡大に驚いている暇もなく、
石川さゆりのヴォーカルが入って来ると…。いや~、実に私好み!!

実に鮮明な歌声の発祥地点は左右スピーカーのジャストセンターで揺るがず、
その音像が以前の記憶よりも投影面積を三割ほど縮小しており見事なダイエット
効果がオーディオ的快感となって私の聴覚による集中力を高めてくれる!!

その引きしまったヴォーカルの音像からあらゆる方向に拡散していく余韻感は
今までのAurender W20では体感できなかったものだ!!これは素晴らしい!!

音像は限りなく縮小し音場感は限りなく拡大させる、この私が目指す方向性に
これほど見事にはまってしまうというAurender W20の魅力をなぜ今まで見逃して
いたのだろうか! 惜しい、実に惜しいことではないか!

しかし、これほどの違いを考えるに、以前から述べているようにアップサンプ
リングによって情報量が拡大し、同様な発展性を確認した事は良くあったのだが、
10MHzというマスタークロックのダイレクト入力によってここまで変化すると
いうことは一体どういうことなのだろうか!?

シンプルな録音で楽音一つずつの占める空間表現に増大に舌を巻いた私は、
「天城越え」での大編成の伴奏による多数の楽音で更に驚くことになった!!

イントロでの和楽器、琴の一音一音が紡ぎ出した響きの総量は倍化している。
ストリングスの響きはどうしてこんなに柔軟性を高め透明感を増し、三味線の
響きにこれほどの残響が伴っていたという新発見が次々に興奮の種をまく!!

聴き慣れた曲だけに、しかも44KHz/16bitというデータ量なのに、ここまで
ふくよかな弦楽器による背景の美しさをいとも簡単に実現してしまうのか!?

それがマスタークロックの変更だけで反応してしまうという事実に、ファイル
データ・トランスポートという機能をつかさどるAurender W20の潜在能力の
大きさに驚いてしまった。ここまで出るのか!

iPadでオフにした時に瞬間的に色あせてしまう再生音に私は驚愕した。
今まで何を聴いてきたのだろうかと。

■マーラー交響曲第一番「巨人」第二楽章  小澤征爾/ボストン交響楽団

スタジオ録音による鮮明な個々の楽音の情報量が正にメガアップした驚きに
先を促されるようにオーケストラを聴く。あ~、絶品です!!

前述のようにあらゆる楽音の背景にこれほどの余韻感が含まれていたという
ことを、私は音楽ファイルの再生音で初めて体験しました!!

第一第二ヴァイオリンの質感は潤いを帯び、しなやかに流れるように展開する
弦楽器の音色には今まで聴こえていなかった中間色とも言える響きの階層が
倍化して再現され、ホールエコーの折り返しに溶け込みながら新しい楽音が
湧き起るという響きの新陳代謝が素晴らしい!! 

コントラバスによる低音階の残響は、今まで一定領域でプッツリと途切れて
いたのか!? ゆったりとした響きがステージ背後の壁面からLchスピーカーまで
浸透していく空間の連鎖が実に瑞々しく、グランカッサの短い連打による
強調感のない自然な低音がステージ後方から伝わってくる空気感が凄い!!

当然、管楽器のソロパートも音像の明確化と余韻感の拡大と延長が施され、
アップサンプリングの倍数を上げていく過程で実感した変化と同一の方向性で
TAD-R1MK2の広帯域再生を実証する変化を実に簡単なiPadの操作で確認する。

小編成から大編成まで、スタジオ録音からホール録音まで、複数の選曲で比較
して間違いのない効果を確認し、それでは最後の決め手にと私がリファレンス
としている同メーカーのディスク・トランスポート即ちVivaldi Transportに
CDをローディングして、Vivaldi DACの入力を切り替えた!!あー!!これはまずい!!

Vivaldi Transport内蔵のアップサンプラーで8倍にアップサンプリングさせて
Vivaldi DACに入力している音を私は基準としてきた。音像の質感の表現と
音場感の再現性を音楽性という言葉を使い、主観的な評価で個々人の好みを
主張することは一般的だが、私が主張してきたハイエンド・ディスクプレー
ヤーがまだ優位を保っているという自信が初めて揺らいでしまったのです!!

石川さゆりもマーラーも、リッピングしたディスクそのものと比較して…
更にデータとしては44KHz/16bitであるにも関わらず、8倍アップサンプリング
しているVivaldi Transportとの比較において、今回の試聴では同格と宣言せ
ざるを得ない音質を私はAurender W20の潜在能力として確信しました!!

ずっと、ずっと昔のこと。

ESOTERIC P-0にdCS 992/2からマスタークロックを供給し、当時のD/Aコンバー
ターはワードシンク対応でない製品を使っても音質向上があったと感動した事
を思い出しました。

ディスク・トランスポートだけにマスタークロックを供給する事だけでも、
今回同様なベクトルでの音質変化を確認してきた経験から、Aurender W20を
接続するD/Aコンバーターに例えワードシンク入力がなかったとしても大きな
音質貢献が出来ると言う実例を今回は見せつけられました。

正確に言えば、dCS VivaldiシリーズではVivaldi Clockからのマスタークロック
を受信しているので、別のグループのマスタークロックによって動作している
わけですが、発想としてはVivaldi DACの内部クロックの精度をVivaldi Clock
によって高めていて、Aurender W20はESOTERIC G-01の10MHzクロックによって
出力信号の精度を高めているというイメージになろうか。

色々な技術的要素を推測するよりも論より証拠、iPadをタップするだけで出来る
この比較試聴を皆様に体験して頂ければ、前述の私の拙いインプレッションは
無用となることでしょう。

そして、ESOTERIC G-01以外の10MHzクロックを供給してくれるAbendrot Audio
STUTEにもふつふつと好奇心が湧いてくるのを抑えることは出来ません。

早速、私はAbendrot Audioの輸入元にSTUTEのデモ機の貸し出しを要請しました。
さあ、ネットワークオーディオ・コンポーネントの実力が真のハイエンド
オーディオにどこまで迫って来るのか、私の追求するベクトルがまた一つ
増えたという事で今回は締めくくっておきたいと思います。先ずは試聴をどうぞ!!


担当:川又利明
TEL 03-3253-5555 FAX 03-3253-5556
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