発行元 株式会社ダイナミックオーディオ
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H.A.L.担当 川又利明


2011年8月12日
No.851 「MORDANT-SHORT Performance6 & ESOTERIC I-03 & Black Ravioliの進化!!」
 
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/835.html

上記にてBlack Ravioliをエレクトロニクス・コンポーネントにセッティング
してのインプレッションを述べていますが、実はBlack Ravioliの耐荷重は
何と一個当たり100キロあるということで、重量級スピーカーにも、あるいは
オーディオラックの足元にも問題なく使用出来るというものです。

それを早速スピーカーに試した事例がありました。↓これです!!

http://www.dynamicaudio.jp/file/110727/BRonKtema.jpg

Franco Serblin Ktemaにセットしたのですが、これがまた素晴らしい!!
しかし、Ktemaの音質変化を語りたいと思いつつ時間が経過してしまいました。
現在は上記の写真で見られるようにフロントにBF-3、リアにBF-1を二個という
設定からリアはBF-2を二個にアップグレードしました。

そこで外したBF-1 二個がどうなったのか!?というのが今回のお話しです!!
その前の予備知識として述べておかなくてはならないことがあります。
先ずはPerformance6の以前のセッティングを振り返ってみましょう。

http://www.dynamicaudio.jp/file/110626/msr6.03.jpg

正面から見ると↑このようなレイアウトになっています。

http://www.dynamicaudio.jp/file/110626/msr6.01.jpg

http://www.dynamicaudio.jp/file/110702/msr6.06.jpg

Performance6の足元を見ると何もありません。つまり標準装備のスパイクにて
直接床にグサリと突き刺してセットしているという事です。

http://www.dynamicaudio.jp/file/110809/msbr06.jpg

http://www.dynamicaudio.jp/file/110809/msbr07.jpg

前後4本のスパイクの形状は↑このようになっています。お気付きでしょうが
トゥイーター後方の角や入力端子のデザインとお揃いということで、わざわざ
削り出して成形しているという凝った作りのスパイクです。これも見所です!!

この試聴室では床面に直接スパイクを使用することが多いのですが、俗に言う
スパイクベースの受け皿を使う事はありません。直接スパイクの先端を床に
グサリと突き刺してセットします。逆にそうしなければならない理由があり、
それを説明することが今後の展開で必要になって来るからです。

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では、H.A.L.の床はどういう構造になっているのかという大前提から説明を。
当店が入居しているビルは本来オフィス用の構造であり、全フロアーともに
OAフロアー、つまり浮き床式になっていて各種の通線が出来るようになって
いますが、H.A.L.1からH.A.L.3までの3フロアーの試聴室はコンクリートで
床を埋めて補強しています。びくともしません!!

そして、ここの試聴室では約38uに渡り厚さ10cmのコンクリートを流し込んで
固めてありますが、ざっと計算するとコンクリートの重量としては8.6トンと
いう大変きな質量が存在しています。この床面に直接スパイクを使うという
ことであれば、メカニカルグランディングとしても理想的な状態と言えます。

しかし、質量が大きければスパイクが万能で何も問題ないかというと、実は
完璧ではないのです。スパイクそのものと、スパイクをねじ込んでいるスピー
カーの軸受け部の剛性によって逆効果になる場合もあります。つまり、以前に
スパイクの傾向として述べたように、スパイク先端が接する対象の性質によって
スパイクは反作用を受けるということなのです。

このように床そのものは大変に強固であっても、スパイクの形状や取り付け方
によっては高い周波数の付帯音が発生して、高域の再生音が荒れてしまう事が
あります。低域は引き締まってきますが、重量感に欠けてキンキンするような
倍音が付きまとってしまう場合があります。コンクリート直刺しには功罪両方
があり得るという事です。

更に、それに床面の仕上げという要素が加わってきます。下地がコンクリート
でも、その上にフローリング、石材、タイルなどを貼り付けた色々な仕上げが
ありますが、木材のフローリング表面にスパイクを使用することでは悪い要素
はさほどありません。

そして、ここで使用しているのがタイルカーペットです。先ずは大手メーカー
のサイトから↓これをご覧になって下さい。

http://www.toli.co.jp/digital_catalog/fabricfloor2011/index.html?id=0004

最初のページを開くとオーディオルームにお薦めというセールスポイントが
ありますが、意外に意外タイルカーペットは私も推薦したいものなのです。

http://www.dynamicaudio.jp/file/110810/tc01.jpg

http://www.dynamicaudio.jp/file/110810/tc02.jpg

さて、そこで次の写真を見て下さい。↑これは私が撮影しました(^^ゞ
タイルカーペットの断面をクローズアップしたものです。新品で毛足がつぶれて
いない状態で毛足が3ミリ、下地が2ミリということで厚さは5ミリでした。

タイルカーペットが音響的にメリットがあるいうポイントが二つあります。
一つは吸音性が結構あるということで、スピーカーの一次反射音をかなり吸音
してくれるということ。ただし中高域の帯域だけです。また、メーカーのカタ
ログにもありますが生活騒音も同時に吸収するので室内のノイズフロアーを
下げてくれる効果があります。フローリングの部屋が多いですが、実はこのよ
うなメリットがあり低コストで作れる音のいい床として利用されるといいでしょう。

もう一つのメリットはスパイクに対する機械的ダンピング効果というものです。
写真でご覧のように下地2ミリを貫通するようにしてスパイクがタイルカーペットの
下にある基礎に打ち込まれた時に、ラバー系素材がスパイクを包み込むように
してダンピングしてくれるのです。ですから、基礎がコンクリートであっても
グサリと差し込む事でラバー系素材に空いた穴はちょうど良い受け皿という
役目を果たしてくれます。

そして、タイルカーペットのオーディオ的なデメリットを説明しましょう。
この上にコンポーネントやスピーカー、ラックの脚部など全てのものを置くと
いう場合に設置面が平面という時には機械的にはフローティングされた状態に
なってしまいます。

相当な重量のあるスピーカーを付属スパイクでセットしようとした時に、仮に
直径数センチであっても受け皿を使ったとしたらだめです。何十キロもある
パワーアンプのフットが丸い平面だったら、それも同様に浮いてしまいます。

フォーカスは甘くなり音像は膨らみ、解像度が低下して奥行き感も減少する。
一口に言えば、厚さ5ミリと言えどもタイルカーペットに面として接する脚部
や受け皿を使ったとしたら重量が100キロ以上あってもメカニカルアースを
取る事は出来ないという事です。これは覚えておいて下さい。

当然タイルカーペットの上に直接Black Ravioliを置いてみようということも
お薦めできない理由がここにあります。基礎がしっかりしているという前提で
タイルカーペットの音響的メリットを活用するのであれば、設置する時には
なるべく小さい面積で荷重を基礎に連結させていくことが必要と言う事です。

そのような特徴を踏まえた上で、タイルカーペットの床であってもスパイク
直刺しよりも良い音を狙いたいということで、どうやってBlack Ravioliを
使いこなしていくか、ということになります。

長い前置きで申し訳ありませんでした。そろそろ話を戻していきましょう!!

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昨日は右肩を痛めてしまったと言いましたが、右手の指三本をPerformance6の
フロントにあるバスレフポートに入れて、垂直を維持したままで何回も何回も
Performance6を上げ下げしていたからなのです。

一体何のために? はい、先ずは次の写真4枚をご覧になって下さい。

http://www.dynamicaudio.jp/file/110809/msbr01.jpg

http://www.dynamicaudio.jp/file/110809/msbr02.jpg

http://www.dynamicaudio.jp/file/110809/msbr03.jpg

http://www.dynamicaudio.jp/file/110809/msbr04.jpg

正にPerformance6のために特注したのでは思うような赤いフエルトを貼り付けた
ボードですが、これは何かと言いますと…
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/fan/BZ-bord.html より

■P-Board なのです!!

 ESOTERIC P-0シリーズ及びP-01電源部にジャストサイズ!!
 同時にESOTERIC PS-1500にも使用できる最小サイズとして開発しました。
 その他にも小型モノラルパワーアンプなどにもご利用頂けます。

 250×420×H50mm 19kg一枚あたり配送費・税込み販売価格\68,000.
 http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/508.html

電源部(Power supply)のために開発したP-Boardでしたが、何と何とネーミング
に関してはPerformance6のためのP-Boardということでジャストでした!!

さて、上記のセッティングをご覧になって疑問に思われるであろうことを先に
私から説明致します。

まず、なぜ赤いフエルトを上面にしているのか?

これはフエルト面を下にするとタイルカーペットとの物凄い摩擦でがっちりと
噛み込んでしまい、全く動かせなくなってしまうからです。そこで天地を逆に
して各種MMW(Metal Matrix Works)ボードの黒い面を下にすると、100キロ級の
スピーカーでもタイルカーペットの上を少しずつ滑らせて移動が出来るから
なのです。これは結構大きなポイントです。

通常は床面にフエルト面を下にしてセットすると、今度は逆にフローリングと
フエルトによって少しずつ移動が出来るようになり、スピーカーのセッティング
には重宝するものです。ユーザーの使用事例も色々とリンクで紹介している
ので一度ご覧になって頂ければと思います。

次にもう一つ説明すべきことがあります。上記ではタイルカーペットに面接触
するようにセッティングはいけないと述べていますが、実は上記の写真のように
P-Boardにスパイク仕様でPerformance6を乗せた段階では音質的には最初の
ように8.6トンのコンクリートに届くように直接置いた方が良かったのです。

しかし、フローリングの床では状況は全く逆になります。スパイクの受け皿を
使用しないでP-Boardにスパイクを直刺しでセットすると数段良くなります!!
ですから、これから進行する次の段階に至る前の確認ということで、この状態
でも私は試聴することにしたのです。それだけ手間暇がかかりましたが…

            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

私が目指したものは、このフロアーの床に存在している8.6トンのコンクリート
に頼らずとも、それ以上の音質を出したいということでした!!

そのために必要なのがP-Board+Black Ravioliというコンビネーションです。

http://www.dynamicaudio.jp/file/110809/msbr05.jpg

四点支持を推奨するBlack Ravioliですが、スピーカーの形状によっては三点
で支持する方が良い場合もあります。↑今回もそのケースであり、上記の様に
BF-1をフロントに二個、BF-2をリアに一個という配置にしました。ポジション
は固定なのでP-Boardもフエルト面を下にして、このように配置しました。
いよいよ、これにPerformance6を乗せていきます。

http://www.dynamicaudio.jp/file/110809/msbr06.jpg

http://www.dynamicaudio.jp/file/110809/msbr07.jpg

そこで、再度Performance6の底部をご覧下さい。スパイクの近くに盛り上がった
部分があるのがお分かりでしょうか? 私の推測ですが、メーカーとしてスパイク
を使用できない場合に直置きするにも床に対する接地を底面をべったりと置く
のではなく、突起を設けて少しでも浮かした状態にしようと考えたのだと思います。
私も初めて知りました。この突起に当たらないようにBlack Ravioliをセット
していくとこうなります。

http://www.dynamicaudio.jp/file/110809/msbr08.jpg

BF-1をフロントに選んだ理由もお分かり頂けるでしょう。

http://www.dynamicaudio.jp/file/110809/msbr09.jpg

リアのBF-2がちょっとのぞいていますが、それは問題にはなりません。

http://www.dynamicaudio.jp/file/110809/msbr10.jpg

P-Boardの黒い仕上げ面を上にしたので、全体像としても違和感なくなりました。

http://www.dynamicaudio.jp/file/110809/msbr11.jpg

今になってP-Boardというネーミングにしておいて本当に良かったと思います。
本当にPerformance6のために特注したようなジャストサイズでした!!

            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

一般的なコンクリートの比重は2.4なのですが、P-Boardをはじめとする各種
MMW(Metal Matrix Works)ボードの比重は何と3.7なのです!! 高密度であり
振動エネルギーの減衰時間が極めて短いという特徴は私が目指すベクトルの
音質にジャストミートしているものです。

更に、19キロというP-Boardの上にBlack Ravioliをセットしましたが、この
状態でのスパイク使用の音質よりも、また床のコンクリートに直刺しよりも
魅力的な音が出始めました!!

そうです、即日のセッティング直後の状態では今一つでしたが、今日になって
みると素晴らしいこと!!

■先ず低域です!!

スパイク使用時よりも量感と重量感が増します。しかし、ここで重要な事は
音像として膨らんで色彩感が薄くなってしまうということがありません。

スパイクの鋭い形状は垂直方向の波動・振動を制御するには良いのですが、
水平方向の振動に関してはどうでしょうか? ここが問題でありポイントです。

やっぱり低域のためにはスパイクが一番いいんだ!!という定説が覆ります。
今までに述べてきたようにBlack Ravioliは乗せる物の形状に合わせて変形し
沈み込む事でがっちりとホールドし、水平方向の振動に対しても抜群の制動力
を発揮するわけです。

Big padよりもコーリアンの板を中間に挟んでいるBFシリーズの開発目的は
そこにあったわけです。考えてみて下さい。スピーカーの振動板のピストン
運動のベクトルは水平方向であり、スパイクは横方法の振動を制御するには
不利な角度であるわけです。

P-Board+Black RavioliでセットしたPerformance6の低音!!
素晴らしくなりました!!

■中高域の質感!!

これはですね〜、私が目指した8.6トンのコンクリートに負けない音という
目標の最大のポイントだったのです。今夜は時間がありませんので、一曲ずつ
のインプレッションを述べるのはつらいので総論としてまとめますが美しい!!

申し訳ないのですが、P-Board+Black RavioliでセットしたPerformance6で
こんなに滑らかでスムーズなオーケストラを聴いてしまったら、もうスパイク
には戻せません!!

P-Board+Black Ravioli+Performance6でヴォーカルを聴いたら、うっとりします!!
もうスパイクには戻せません!!

P-Board+Black Ravioli+Performance6でジャズ。ピアノ、サックス、何を
聴いても濃厚なテイストでやみつきになってしまいます!!
もうスパイクには戻せません!!

8.6トンのコンクリートを床に仕込んでいるお宅は滅多にないでしょう。
それに勝る魅力を引き出したという事は、皆様のお部屋であればどこでも、
どんな床の環境であっても、P-Board+Black Ravioli+Performance6をベストに
鳴らしてくれることでしょう!!

■Franco Serblin Ktemaでも全く同じことが起きています。フランコには
 申し訳ないのですが、スパイクを外してBlack Ravioliの方がいいです!!

本当は一曲ごとのインプレッションを書きたかったのですが、今日は夢中に
なって多数のディスクを聴いてしまい、曲数が多すぎるのと…、連日の残業が
ちょっと堪えてきたので今回は結論だけ述べさせて頂きました。
(前置きが長すぎたのかもしれませんが重要な背景説明なのでご理解下さい)

明日からの試聴では当分P-Board+Black Ravioli+Performance6で聴いて下さい。
またスピーカーを上げ下げすると私の肩が持ちそうにありませんので(^^ゞ


このページはダイナフォーファイブ(5555):川又が担当しています。
担当川又 TEL:(03)3253−5555 FAX:(03)3253−5556
E−mail:kawamata@dynamicaudio.jp
お店の場所はココです。お気軽に遊びに来てください!!

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