発行元 株式会社ダイナミックオーディオ
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H.A.L.担当 川又利明


2009年4月16日
No.646 「小編随筆『音の細道』特別寄稿 *第67弾*」
 
『パガニーニのメロディーとは!!』
 
             ■ 序章 ■
 
2009年4月9日木曜日。定休日の朝はゆっくり起きて歯磨きと髭剃り、シャワー
を浴びるという日課を自分ひとりしか使わないユニットバスでこなしていました。
 
そこには浴室用のラジオが置いてあり、いつもチャンネルはJ-Waveに合わせて
あります。http://www.j-wave.co.jp/
 
午前中の時間帯でいつも支度しているときに流れているのは、このBOOM TOWN
という番組。クリス智子という美声のナビゲーターが担当している番組です。
 
http://www.j-wave.co.jp/original/boomtown/
 
もう10年間続いているこの番組で、クリス智子が次の曲を紹介しましょうと
いうことでメロディ・ガルドーの名が告げられ曲が始まりました。
 
「おっ!!最近試聴室で良く聴いているあのアーチストじゃないか!!」
 
http://www.melodygardot.com/
 
「おっと…、なかなかいいぞこれ!!何かこうハートにピーンとくるね〜」
 
メロディ・ガルドーのデビューアルバムは既に聞いていましたが、今ラジオか
ら流れてくる曲は大分イメージが違う。
 
確か、試聴盤としても注文していたな〜、この二枚目のアルバムは昨日発売に
なっているはず。
 
デビューアルバムのライナーノーツは実によく書けていると思う。インター
ネットからのダウンロードでは得られない情報が多々あり、いずれCDを購入す
れば皆さんも読まれるだろうということを分かっていながら紹介せずにはいら
れないようなストーリーが彼女にはあった。極力簡単にまとめると…
 
            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-
 
メロディ・ガルドーは1985年フィラデルフィアに生まれ、母親が複数の仕事を
持つ母子家庭で祖母と多くの時間を過ごすなかで音楽を聴き始めたという。
 
9歳からピアノを習い始め16歳の頃には学費稼ぎのために近所のピアノバーで
演奏をしていた。そして19歳の時に事故にあう…。
 
自転車で帰宅途中に赤信号を無視して飛び出してきたジープに轢かれ、骨盤を
砕かれ頭部も損傷を受けて短期記憶障害となる。それだけではない。
光線・聴覚過敏症を患い、それは永久的な障害として残り常にサングラスをかけ
耳に入る音は前後の音が混じってしまい頭の中で不協和音として響いてしまう
のでホワイトノイズを発生する機具を耳に付けたりもするという。
 
事故から一年間は寝たきりの生活を強いられ、これから大人になろうとする
19歳の女性の心境は想像を絶する失望、悲しみ、そして肉体的な痛みという
苦しみに耐えながらリハビリの日々を過ごすことになる。
 
担当の医師は神経経路を脳につなぐには以前やっていた音楽が有効だと考え、
メロディの母親は彼女にギターを与えた。メロディはベッドに寝たままで独学
でギターをマスターしてしまい、音楽の喜びを再び知ることになり同時に今ま
では聴くだけだった音楽を、それからは作曲するという次なる領域にと進んで
いったという。
 
ベッドサイドのポータブル・マルチトラックレコーダーに湧き上がってきた
音楽のイメージを次々に録音し、「Some lessons」副題として「The Bedroom
sessions」と命名されたアルバムは2005年にひっそりと世に出た。
 
彼女の友人のひとりがwebサイトにこの曲を紹介するスペースを作ったところ
実に大きな反響があった。ノラ・ジョーンズの曲を広めたことで有名なラジオ
曲WXPNも頻繁にオンエアするようになり、急激に広まってきたメロディの存在
を察知したユニバーサルが彼女とのレコード契約を申し出ることになった。
 
デビューアルバムのWORRISOME HEARTは彼女の自主制作のものであり、それが
ユニバーサルの流通になったものであり、いわば再発盤ということになる。
 
今回のセカンドアルバムがメジャーレーベルの資金力と人脈を使っての本格的
なメジャーデビューアルバムということになる。
 
私がデビューアルバムのライナーノーツから得た予備知識を元に、今回の新譜
を偶然ラジオで耳にしたということが期待感を募らせ、それは再生システムへ
のこだわりとして更に拡大していくのでした。
 
http://www.universal-music.co.jp/jazz/artist/melody_gardot/index.html
 
            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-
 
たった8センチのスピーカーでありモノラルのラジオで聴いた音楽で感動でき
るのですから音楽というのは不思議なものであり、再生システムのグレードと
音質の再現性というものが必ずしも比例関係にないということも言えると思います。
 
明日出社したらどんなシステムでこの新曲を聴いてみようか、早速オーディオ
的好奇心が明日の試聴を楽しみにしてくれました。
 
 
         ■ dCS Paganini Series ■
 
MELODY GARDOTの新譜MY ONE & ONLY THRILLが翌日私のデスクに届けられてい
ました。昨日ラジオで聴いた曲は01. Baby I'm A Fool でした。
 
ストリングスアレンジが絶妙な曲、パーカッションが印象的でギターとホーン
セクションがビートにきいたリズムを展開する曲と対象的な伴奏がメロディ・
ガルドーのヴォーカルを引き立てますが、さてどんなシステムで聴いてやろう
かと数瞬の思案でひらめいたのが新世代のdCSプレーヤーシステムでした。
 
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/503.html
 
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/505.html
 
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/507.html
 
上記のように新世代dCSシステムはESOTERIC VRDS-NEOの搭載によって大きく
パフォーマンスが飛躍したが、いかんせんメカニズムのコストが高い。
 
関連リンク
http://www.esoteric.jp/products/esoteric/p05/index.html
http://www.esoteric.jp/products/esoteric/x05/index.html
 
VRDSの能力と魅力を継承しつつ、世界的に見てより多くのメーカーが採用できる
メカニズムの開発ということでESOTERICではVMK-5の派生形であるUMK-5を開発
して供給を開始したのが一年以上前のこと。
 
ESOTERICのP-05 & D-05は私も聴いているが、dCSはメカニズムが強化されれば
更に素晴らしいパフォーマンスを実現する可能性を有しているブランドであり、
それはデジタル技術、エレクトロニクス技術のインフラとして高度なテクノロ
ジーをプロフェッショナルの現場でも実証してきたdCSならではのもの。
 
フラッグシップScarlattiシリーズは十分に聴き込み分析と評価もしたきたが、
ESOTERICメカ搭載の第二世代として二年前からデザインが公開され、そして
昨年の本格的な市場導入を果たしたのがPaganiniシリーズでした。
 
H.A.L.のリファレンスであるESOTERIC P-01+VUK-P01 & D-01+VUK-D01 & G-0Rb
のシステム価格は占めて635万円、VUKを含まなければ575万円というところ。
そして、dCS Paganini Clock+Transport+DACで580万円ということから同価格
の両者比較が気になるところでもある。
 
新企画“We Love D!!”の一環として、dCS Paganiniシリーズをじっくり試聴
できる機会ができたのだから、このチャンスを逃す手はないだろう。
 
システム構成はJEFFROWLAND  Criterionの参入によってより忠実度が高まり、
また微細なチェックが可能となったMOSQUITO NEOによって聴いてみることにした。
 
 
    ◇ dCS Paganini Series-inspection system ◇
 
………………………………………………………………………………
dCS Paganini Clock(Black)(税別\1,200,000.)
http://www.ohbashoji.co.jp/products/dcs/paganini-clock/
     and
TRANSPARENT PLMM(税別\240,000.)
http://www.axiss.co.jp/transparentlineup.html#POWER
     and
Richard Gray's Power Company  PowerHouse(税別\2,600,000.)
http://www.stellavox-japan.co.jp/news/pdf/RGPC_Powerhouse.pdf
     and
Project“H.A.L.C”H.C/3M(税込み\560,000.)
http://www.dynamicaudio.jp/audio/halc/
………………………………………………………………………………
                ▽ ▽ ▽
 
dCS original BNC Cable(Word sync)→dCS Paganini Transport & Paganini DAC 
 
                ▽ ▽ ▽
………………………………………………………………………………
dCS Paganini Transport(Black)(税別\2,200,000.)
http://www.ohbashoji.co.jp/products/dcs/paganini-transport/
     and
TRANSPARENT PLMM(税別\240,000.)
http://www.axiss.co.jp/transparentlineup.html#POWER
     and
Richard Gray's Power Company  PowerHouse(税別\2,600,000.)
http://www.stellavox-japan.co.jp/news/pdf/RGPC_Powerhouse.pdf
     and
Project“H.A.L.C”H.C/3M(税込み\560,000.)
http://www.dynamicaudio.jp/audio/halc/
………………………………………………………………………………
                ▽ ▽ ▽
 
ESOTERIC 8N-6P/6Pi(税別\50,000.)
http://www.teac.co.jp/av/esoteric/ilink_cable/
 
                ▽ ▽ ▽
………………………………………………………………………………
dCS Paganini DAC(Black)(税別\2,400,000.)
http://www.ohbashoji.co.jp/products/dcs/paganini-dac/
     and
TRANSPARENT PLMM(税別\240,000.)
http://www.axiss.co.jp/transparentlineup.html#POWER
     and
Richard Gray's Power Company  PowerHouse(税別\2,600,000.)
http://www.stellavox-japan.co.jp/news/pdf/RGPC_Powerhouse.pdf
     and
Project“H.A.L.C”H.C/3M(税込み\560,000.)
http://www.dynamicaudio.jp/audio/halc/
………………………………………………………………………………
                ▽ ▽ ▽
 
Stealth Indra Dynamic Audio 5555 HAL.XLR/2.0m (税別\2,204,000.) 
http://www.dynamicaudio.co.jp/audio/5555/7f/brn/315.html
http://www.highend.jp/stealth01.htm
 
                ▽ ▽ ▽
………………………………………………………………………………
JEFFROWLAND  Criterion (税別\2,780,000.)
http://www.ohbashoji.co.jp/products/jrdg/criterion/
     and
TRANSPARENT PLMM+PI8(税別\606,000.)
http://www.axiss.co.jp/transparentlineup.html#POWER
     and
Project“H.A.L.C”H.C/3M(税込み\560,000.)
http://www.dynamicaudio.jp/audio/halc/
………………………………………………………………………………
                ▽ ▽ ▽
 
ESOTERIC 7N-A2500/XLR 7.0m(税別\2,280,000.)
http://www.esoteric.jp/products/esoteric/7na2500/index.html
 
                ▽ ▽ ▽
………………………………………………………………………………
HALCRO dm88 ×2 (税別\8,000,000.)
http://www.harman-japan.co.jp/product/halcro/dm88.html
http://www.halcro.com/productsDM88.asp
          and
TRANSPARENT PIMM+PLMM(税別\606,000.)×2set
http://www.axiss.co.jp/transparentlineup.html#POWER
………………………………………………………………………………
                ▽ ▽ ▽
 
ESOTERIC 7N-S20000 MEXCEL 5.5m(税別\2,920,000.)
http://www.esoteric.jp/products/esoteric/mexcel/index.html
 
                ▽ ▽ ▽
………………………………………………………………………………
MOSQUITO NEO (税別\4,800,000.)
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/oto/oto54.htm
     and
H.A.L.'s original“B-board”(二枚/税込み\256,000.)
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/fan/B-bord.html
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/521.html
………………………………………………………………………………
 
ここで特筆すべきはPaganini TransportからDACへの接続をESOTERIC 8N-6P/6Pi
によって行うことで、通常のCDフォーマットをDSDにアップコンバートして
伝送するという設定にて試聴していくということ。同時にCriterionでもバッ
テリーモードによってベストコンディションを心がけるということで、私と
しては微小信号を再生音として極力引き出していこうという発想があった。
 
            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-
 
プロデューサーに巨匠ラリー・クラインを迎え、コネチカット州出身の作曲家
兼編曲家ヴィンス・メンドーサによるオーケストラアレンジが実に素晴らしい。
01. Baby I'm A Foolはまさにオーケストラバックのイントロから始まった!!
 
ライナーノーツにはこのストリングスを称してシネマティックと表現している。
それは第二次世界大戦中の悲しい恋を描いた50〜60年代の映画音楽のような
ムードを持っているということらしい。
 
シネマティック…、う〜ん、上手いこと言うもんだ!!と思いつつ、いぶし銀の
ようなシックな弦楽器の音色がゆったりと録音されているイントロが始まり、
右チャンネルのNEOの少し内側にメロディのアコースティックギターが浮かぶ。
 
もう、この時点でしっかりと彼女の持つ妖艶さにはまり込んでしまった。
しかも24歳にして事故によってもたらされた人生の辛苦から、彼女自身が既に
苦しさ悲しさを語ることのできる女性として成長させ、歌詞の内容も単なる
ラブレターの軽さではない情愛が感じられるのだから堪らない。
 
センターでは控えめなベースがゆったりとメロディの背景を整え、ドラムは
ブラッシングのみというソフトタッチなリズムセクションがヴォーカルとの
位置関係を微妙にずらしながら展開する。
 
いい音楽はラジオでも感動できると思っていた私に前言撤回を求めるような
素晴らしいステージ感が眼前に現れたことをなんで否定できようか!!
 
私はこれまでに聴いてきた実に多くのCDプレーヤーに関して、メカニズムの
違いによる音質的な傾向をVRDSであるかないか、という分類の仕方で聴き分け
ができるようになっている。それは、あのESOTERIC P-0以来ずっと感じ続けて
来たものであり、メカの完成度が再生音にどのような違いをもたらすかという
ことに関しては一家言をもっていると自負している。
 
もしも、同じ曲をVRDSメカのプレーヤーと、それ以外のプレーヤーで聴かされ
ても的確に言い当てることができるだろう。
 
VRDSであるかないか、それは音像の輪郭表現で判定することができる。特に
低域のリズム楽器、またギターのように立ち上がりがハイスピードであり、
かつ高速に立ち上がった楽音から発生するエコー感の拡散から消滅までを実に
忠実に描いていくという描写力によって聴き分けることができる。もちろん、
これらの再生音の特徴がすべてを言い当てるものではなく、一例としての見方
であることは言うまでもないが、dCS Paganini Transportの持つ情報量の素晴
らしさということで最初から私のレベルでも違和感なく聴くことができた。
 
ヴォーカルの定位感と輪郭表現がきっちりしているということ、バックの楽音
でもディティールが実にしっかり描かれることはESOTERICメカの恩恵であると
直観できたものだった。しかし…、Paganini Transportに搭載されているメカ
UMK-5というのはVMK-5の派生形と述べたが、実はVRDSではない。
 
つまり、光学系、アクチュエーターなどの基本ベースと同等であってもVRDSの
最大の特徴であるターンテーブル、スタビライザーというものがないタイプで
あり、ディスククランパーはCDの中心部分しかサポートしていないというもの。
 
シネマティックなゆったりとした美しいストリングス、ドラムはブラッシング
だけで強烈な打音を含まず、ベースの音像はことさらストイックな絞り込みを
するという録音ではないので、私はメロディの歌声とオーケストラアレンジの
素晴らしさに気をひかれオーディオ的な分析など後でいい、という心境で演奏
に聴き入っていたのだろう。
 
            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-
 
では、もうちょっとオーディオ的な要素をイメージして聴いてみようという
心境に変化を予測していたかのようにメロディの新譜は三曲目に対象的な曲を
用意してくれていたのである。03. Who Will Comfort Me が実にいい!!
 
イントロはハンドクラップとメロディのヴォーカルとギターというシンプルな
編成で始まり、センターにはカホンではないかと思うじゃりつく低音の打楽器
がポンと出現するが、やがてそれは毛布などでダンプしてチューニングを甘く
したようなキックドラムの音にとするりと差し替えられていく。
 
その間にも数々のパーカッションが登場し、ゆったりとしたストリングスの
前曲とはまったく異なる演奏を展開していく。
 
「私の魂は不幸に疲れきってぼろぼろ、ああ神様、誰が私を慰めてくれるでしょう…」
 
という歌詞とは全く対象的なはつらつとしたリズムが思わず私の体をゆする。
叩く音弾く音の数々がノリのいいベースを中心にして左右のNEOの中間に展開
するが、その瞬発力と瞬く間に消えていく打音の繰り返しはライトの明滅の
ように鮮やかに私の耳に残像を残していくようだ。これは爽快だ!!
 
このパーカッションの切れ味と引き締まった音像、更にハイテンションな打音
のありようはVRDSであってもおかしくない!!
 
VRDSのターンテーブルの恩恵はディスクの上下動によるフォーカスサーボの
軽減を狙ったものというのは過去の随筆でも述べているが、打楽器の立ち上が
りの鋭さとフォーカスイメージの克明さというのはVMK-5譲りのレーザー光軸
の傾きを発生させない軸摺動型ピックアップ、そしてシャーシベースの重厚さ
によって得られるものではないかと過去の記憶との類似点を探しながら聴き進む。
 
「いいです!!この質感は!!Paganiniシリーズに弱点はなかったのか!!」
 
辛苦をなめた事故からの人生の変化を音楽によって救われたのか、この曲の
最後はメロディの明るい笑い声でエンディングとなる。プロデューサーの
アイデアだと思われるが、逆に聴き手をリズムに乗せて慰めてくれるという
演奏と再生音はパガニーニの名を冠したdCSのヒットではなかろうか!!
 
            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-
 
このアルバムもメロディの作詞作曲によるオリジナルが中心であり、ソング
ライターという天性の才能が彼女の魅力でもある。その中で唯一スタンダード
な選曲があった。11. 虹の彼方に/Somewhere Over The Rainbow です。
 
仕事で不在がちな母親の代わりにメロディが祖母と過ごした幼いころによく
聴いていたという音楽の中にあったのでしょう。海外発売のCDではこの曲が
エンディングとなっているわけだが、オーケストラバックの美しい旋律の曲、
そして上記のようにエネルギッシュなリズム感あふれる曲という対称性にもう
ひとつこのアルバムで特徴としているのがブラジリアンタッチのアレンジだ。
 
本格的なメジャーデビューの証しとしてサウンドプロダクションの大きな進歩
が感じられるアルバムだが、再生装置で私がいつも追求している音像と縮小と
音場感の拡大という相反する命題を聴きなれたアンプとスピーカーにおいて
ソースコンポーネントだけの変化でPaganiniシリーズの魅力を聴いてやろうと
いう目論見がいよいよこの曲で発揮されるのではないか? 
 
パーカッションの名手ポリーニョ・ダ・コスタの妙技がイントロを飾り、
ツリーチャイムやウッドシェイカー、バードフルートまで登場する。
この解像度がこれまた大変素晴らしいものでした!!
 
メロディのギターが優しく爪弾かれる背景に多数のパーカッションがまさに
乱舞するという導入部にヴォーカルが加わってベースが重なり厚みを増しなが
らもメロディの声には緊張感が消え去り、Somewhere Over The Rainbow♪♪
そして「虹の彼方には青い鳥が飛んでいる…」というおなじみの歌詞がラテン
リズムに乗って展開していく。
 
イントロでのパーカッションの数々が緻密で絞り込まれたフォーカスで定位し、
凝縮された音像の周辺に大いなる空間のゆとりを強調するように響き渡る。
 
シンプルな演奏だけに空間表現の大きさはPaganiniシリーズがいかに微小信号
を忠実に再現しているかという証拠であり、弦楽器が面としてスピーカーの
中間を埋めていくのとは対照的な音の空白を見事に展開してくれる。
 
「いいですね〜、メロディのライフストーリーに送ったパガニーニの美学です!!」
 
聴いて頂ければ分かります。いや、聴いてから語って欲しいPaganiniです!!
 
            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-
 
偉大な音楽家の名前を冠するオーディオ製品は他にもいくつもある。
 
dCSのプロ機はナンバーだけだが、以前のElgarにしてもPurcellにしても古典
音楽界からの命名は同社の特徴でもある。
 
Scarlattiはイタリア・バロック時代の作曲家一族の姓。Scarlattiは17世紀の
中盤から18世紀に至るまで主に四人の子孫に音楽家の系譜を広げていった。
この四世代に渡る一族にちなんでフラッグシップモデルを名付けたということ
を今にして思うとなるほど、と命名の重厚さという思いがある。
 
Paganiniは演奏家でもあり、作曲家としても活躍しヴァイオリン曲を残したが、
極めて速いパッセージのダブルストップ・左手のピチカート・フラジョレット
奏法など、どれも高度な技術を必要とする難曲として知られている。
そして、自分の作曲を自分しか演奏できないという領域での神秘性を自らが
尊重していたという。
 
私はPaganiniシリーズを実は他社比較しながらも比較していました。しかし、
その内容と分析を述べなかったことはPaganiniにしかできないこと、そこに
魅力があるということを新進アーチストの演奏を聴きながら出来れば独り言の
ように語りたかったという真意がありました。
 
そうです、パガニーニの作曲したメロディーというものは演奏者にとっては
難曲であったわけですが、聴き手にとってはどうだったのでしょうか?
 
Paganiniシリーズで聴いたメロディ・ガルドーは私が聴き手であり、神経質に
音楽の中身を追求するのではなく、音楽とは耳で聞き肌で感じ、そして心に響
かせるだけでいいのだということを教えてくれたように思えるのです。
 
プロを自認する私から見ると、必要な性能を持っているのならば後は解釈に
よってオーディオシステムを選び楽しめるという選択基準を軽くクリア―して
いることが認められたということです。さて、そして…
 
http://www.ohbashoji.co.jp/products/dcs/puccini/
 
本日、ここにはdCS Pucciniが届きました。これはもっとおおらかに楽しめる
ものでしょう。さて、私はPucciniでどんな音楽を聴くのでしょうか!?


このページはダイナフォーファイブ(5555):川又が担当しています。
担当川又 TEL:(03)3253−5555 FAX:(03)3253−5556
E−mail:kawamata@dynamicaudio.jp
お店の場所はココです。お気軽に遊びに来てください!!

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