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H.A.L.担当 川又利明
    
2021年8月5日 No.1670
 H.A.L.'s One point impression!! - CH Precision  Vol.1

「CH Precisionで鳴らすHIRO Acousticは絶品です!!」
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/1205.html

「HIRO Acousticならではの物凄い比較試聴を一日だけやりました!!」
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/1206.html

「HIRO AcousticとCH Precisionを聴くための東京への旅が始まった!!」
https://www.dynamicaudio.jp/5555-7F/news/1207.html

「聞きしに勝る音CH Precision M1が鳴らすHIRO Acousticの快感!!」
https://www.dynamicaudio.jp/5555-7F/news/1208.html

「CH PrecisionのThierry HeebさんにHIRO Acousticを聴いて頂きました!!」
https://www.dynamicaudio.jp/5555-7F/news/1212.html

上記のエピソードを思い出してもCH Precisionで鳴らしたHIRO Acousticは凄かった!

あれから6年という歳月を経過し、新たなフラッグシップモデルL10 & M1を開発した
新世代CH Precisionのフルラインアップを集結させて更なる高みを追求します!
https://www.zephyrn.com//chprecision/index.html

しかも、私も以前から気になっていたハイエンドケーブルCrystal Connectを全面採用!
https://www.zephyrn.com/crystalcable/index.html

セッティング状況は下記にてご覧下さい。
https://www.dynamicaudio.jp/s/20210727191139.jpg
https://www.dynamicaudio.jp/s/20210727191148.jpg

今回のシステム構成の詳細は下記にてご覧下さい。

H.A.L.'s Sound Recipe / CH Precision - inspection system
https://www.dynamicaudio.jp/s/20210731174913.pdf

          -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

この稀に見ないグレードでのシステム構成により試聴を開始するに当たり、
最近の新製品アンプの検証から学習した事の一項目はバーンインの重要性でした。

セッティング当日では別ブランドの試聴を行っていたこともあり、急いては事を
仕損じるの例えのように慎重にバーンインを行い、約100時間以上に渡りエンハンサー
CD-ROMをリピートさせてきました。

そして、納得出来るバーンインが出来たところで、更に私にはチューニングすべき
項目が今回のステレオパワーアンプM10とプリアンプL10にはあったのです。
https://www.zephyrn.com//chprecision/page/M10.html
https://www.zephyrn.com//chprecision/page/L10.html

下記の記事でも述べていましたが、CH Precisionのアンプにはグローバルフィードバックの
設定によって楽音の質感を選択できるという特徴があることを私は承知していました。
https://www.dynamicaudio.jp/5555-7F/news/1205.html

もちろん、その前にはプリアンプL10においてもソースコンポーネントに対する
キャリブレーションを行っていたという事は言うまでもありません。

パワーアンプM10の「GLOBAL FEEDBACK」は0%から100%までの可変機能があり、
プリアンプL10では「GLOBAL FEEDBACK」と「LOCAL FEEDBACK」に二種を選択する
という項目を確認しない限り本格的な試聴には進めないだろうと考えていました。

更に6年前の経験からスピーカーに近いパワーアンプでの設定を最初に確立しなくては、
という考えから最近課題曲に加えたこのアルバムから試聴を開始したのです。

■溝口 肇「the origin of HAJIME MIZOGUCHI」より「1.世界の車窓から」「14.帰水空間」
https://www.sonymusicshop.jp/m/item/itemShw.php?site=S&ima=3355&cd=MHCL000010099
http://www.archcello.com/disc.html

私の聴き方は例のごとく音像と音場感の両立という視点なのですが…

「なんとまあ! フルCH Precisionの威力とはこれほどの物だったのか!」

今まで研究対象としてきた数社のアンプで聴き続けてきたHIRO Acousticが正に
気を付け!という号令のもとにビシッと姿勢を正したという素晴らしい第一印象でした!

ソースコンポーネントにマスタークロックジェネレーターまで含めて、
更にCrystal Connectというハイエンドケーブルをシグナルパスに採用した前例なき
パフォーマンスが何もしない最初から表れたのですから度肝を抜かれたの一言です!

でも、この第一印象が私のチューニングする方向性を示していたということが
次第に解ってくるのでした…。

6年前の同社のパワーアンプM1やA1でのグローバルフィードバックの設定では
0%から100%までをユーザーの任意で選択するというものでしたが、今回のM10では
電源投入後のデフォルトとしては0%となっていました。

設計者いわく、0%が基本であり数値を大きくしてフィードバック量を増やしていくと
低域の増加傾向があり、中高域の楽音では本来の質感から変化していくというのです。

私は以前のM1やA1では試聴の結果、0%では音像と質感の両方に曖昧さを感じてしまい、
結果的には80%という設定を良しとして使っていたので逆の解釈になっているようです。

先ずは楽器の数が少ない「1.世界の車窓から」で0%から50%へ、更に100%へとM10の
フィードバック量を増やしていく方向で変化を見てみたのですが…。

ハープの爪弾きのテンションが微妙に甘くなっていく方向、チェロの音像が次第に
膨らんでいく方向の変化があることが解ってきました。でもこれ、とても微妙です。

次にシンセドラムの低音が続く「14.帰水空間」で同様に0%から100%まで三段階で
比較していくと、人工的で無機的なドラムの音質がフィードバック量を増やしていく
につれてわずかに音像がふくらみ同時にテンションが緩んでくる傾向を察知しました。

いやいや、この変化は以前のM1やA1と逆ではなかろうか。以前のモデルでは逆に
フィードバック量を増やしていくと音像もテンションも引き締まっていたのに…。

では、ここでヴォーカルの選曲で試してみよう、しかも全てセンター定位のこれです。

■大貫妙子 「pure acoustic」より7.「突然の贈りもの」
http://www.universal-music.co.jp/onuki-taeko/products/upcy-7097/

0%での再生音を基準として50%へ、更に100%へとフィードバック量を増やしていくと
打楽器やハープのようなインパクトの強烈な楽音の音像とテンションの変化が微妙に
弛緩した穏やかな音質になったという傾向を伴奏のピアノでも確認したのですが、
ヴォーカルの質感は演出的な緊張感の緩和というか、少し聴きやすくなった雰囲気。

伴奏楽器とヴォーカルの優先順位をどう考えるかでユーザーの選択があっても
良いものだと思いつつ、もう一曲ヴォーカルで確認しようと次の選曲です。

■Melody Gardot/Sunset in the Blueより1.If You Love Meと9.From Paris With Love
https://www.universal-music.co.jp/melody-gardot/products/uccm-1260/
https://www.universal-music.co.jp/melody-gardot/about/

そう、この曲でも確かにヴォーカルの質感で言えばフィードバック量を増やしていく
ことを肯定するユーザーがいてもおかしくないという変化を示しました。しかし…

この段階でも繰り返しますが、このCH Precisionシステムは今までの研究対象とは
次元が違う音です! 本当にこれは凄いことになってきました!

以上の観察でM10におけるフィードバック量の傾向を認識し、実は上記の課題曲で
プリアンプL10の「GLOBAL FEEDBACK」と「LOCAL FEEDBACK」という二者択一の試聴も
続けて行うことにしたのです。その時のパワーアンプM10での私の設定は0%でした!

つまりパワーアンプの表現力で最も音像サイズが小さくなる設定での実験です。
その上でプリアンプのフィードバック量がどう影響するかの検証をしたのです。

「ほ〜、そういうことでしたか!M10で0%という基準を作っておいたからこそだ!」

ここで私が進むべき方向性が見えた来たと思います。
プリアンプにおける二者択一では、パワーアンプにおけるフィードバック量が
増える方向性での変化は「LOCAL FEEDBACK」での音質変化にあると判断しました。

ヴォーカルにおける緊張感の緩和を取るか、伴奏楽器も含めて打楽器などの瞬発性を
取るか、という選択が象徴的な判断材料になるかと思いましたが、音像と音場感の
両者におけるバランス感覚にて決しようと選曲したのがECMレーベルのこれです。

■Dominic Miller / Absinthe (CD)よりタイトル曲1.Absinthe
https://dominicmiller.com/product/absinthe-cd/
https://www.youtube.com/watch?v=sY6aQy0MJ7k

冒頭のDominic Millerのギター、続くシンバルの輝き、更にバンドネオンのリードの
バイブレーションのあり方、そしてドラムの強烈な打音の連続。これが決定的でした!

先ずプリアンプにおけるフィードバックの選択は間違いなく「GLOBAL FEEDBACK」でした。
この曲で聴くとL10における二者択一では一発回答で決定できました。

簡単に言えば曲と録音で感じられる魅力を引き立たせるのはどちらかという聴き方で、
「LOCAL FEEDBACK」では全ての楽音のフオーカスがあまくなってしまい微妙に滲んで
いるのではと感じてしまうからです。

このL10における「GLOBAL FEEDBACK」を固定しておいて、今度はM10のフィードバック量を
0%から50%へ、更に100%へと変化させていったのです。何度も飽きずに聴くものですね(笑)

すると、Dominic Millerのギターの質感の変化はさほどでもないのですが、最も
顕著にM10のフィードバック量の増加が音質に表れたのはシンバルにおける高域の
情報量での微妙な減衰、バンドネオンのリードの音色が多少丸まってくる傾向、
そして何よりもドラムの打音の鮮烈さ切れ味があまくなってしまったことです。

前述のヴォーカルの質感に関しては選択の余地ありといったんは考えたものの、
このドラムの鋭さと鮮明さに曇りが出てしまうというのは受け入れがたかった!

確かにヴォーカルという連続音に関しては人によっての好みが分かれるところでもあり、
一概にフィードバック量の推薦を一元化することは出来ないかもしれませんが、
ドラムの立ち上がりの鋭さだけでなく余韻感も同時に減衰してしまったという印象があり、
この響きの情報量というポイントは私が最も重視しているところなので迷いはない!

予備的実験というにはあまりにも刺激的であり、それはHIRO Acousticの能力と魅力が
CH Precisionによって最大限に発揮されたというものであり、短時間での比較試聴で
感じ取ってきた音質変化を総合的にまとめてみようと恒例のオーケストラを聴くことに!

■マーラー交響曲第一番「巨人」小澤征爾/ボストン交響楽団/1987年録音の[3]
録音の古い順に写真左上から[1]右へ[2][3]、下段の左から[4][5][6]として。
https://www.dynamicaudio.jp/s/20210519123606.jpg

しかし、この第二・第四楽章を聴いて最初に感じたことはフィードバックの問題ではなかった。

「何なんだ!この静寂感というか余韻の消え方は!完璧な制動感とはこれの事か!」

これまでの課題曲は考えてみると全てスタジオ録音でした。
ご存知のように各パートの楽音はミックスダウン、イコライジング、マスタリングなど
音作りの各種段階を経て音楽作品に仕上がったものであり、その制作過程においての
センスが聴き手に悟られないように巧妙な技術として音質に生かされているもの。

よって上記にて私が感じ取ってきた音質変化は、各種のスタジオワークにおける
エンジニアリングの狙いとしたところの音質評価だったのだろうか。

リバーブのかけ方、パンポットのアレンジ、イコライザでの演出などなど、施した
音の化粧が制作意図に沿った再生音となることを私は評価基準にしていたのだろうか。

ところが、CH PrecisionがHIRO Acousticを通じて聴かせるオーケストラは、
この私の記憶にもない程の途方もない音像に対する制動感の表れだったのです!
これをどう表現したらいいものか…。

例えば密閉された透明なケースがあったとして、その中で一本の線香に火をつけます。
線香の煙は真っすぐに立ち昇り、次第に空気に溶け込み薄くなりながら、線香の小さな
熱源による微妙な上昇気流が途絶えた当たりでわずかな渦を巻いてから完全に消滅します。

ところが、この密閉ケースにほんの小さな穴を二つ空けたとします。すると…
人間には感じられないが微妙な空気の流れが発生し、線香の熱で最初は垂直に立ち
昇っていた煙は途中から形を変えて揺らぎ始め、広がりながら空気に溶けしまいます。
完全密閉の状態では最後まで目視出来ていた煙の寿命が短くなってしまうのです。

私がCH Precisionでオーケストラを聴いて感じた事を例えれば前者の描写であり、
今まで他のシステム構成で聴いてきたHIRO Acousticは後者と言えるでしょう。

極端であり単純な比喩ではありますが、コンサートホールのステージにオーケストラの
楽員の数だけ線香を立てて火をつけたとイメージして下さい。

その線香一本ずつの煙が音像であり、上記の例えのようにCH Precisionでは最後の
小さな渦から、ふっと空間に溶けてしまい消滅していくまでが忠実に目視できる
煙の寿命が観察出来るのです。

ところが、今までの他のシステム構成では垂直に立ち昇るはずの煙は揺らぎ始め、
音像として見たい形が崩れてしまい、短時間で空間に散らばり響きが短命になるのです。

ただし、他のシステム構成の音を弁護すると空気の揺らぎで煙の形は様々に変化し、
楽音の発祥から消滅まで響きの造形に個性や魅力を感じる事があるのも事実であり、
決して上記の例えのようにCH Precisionが唯一無二の完全体であるとは言いません。

言い方を変えれば、CH Precisionには余分な響き雑味がないので、直感的には
すっきりとした淡泊な印象の再生音と感じるかもしれません、私もそうでしたから…

しかし、逆に言えばCH Precisionによるオーケストラで私が感じた事は今までの
経験でなかったことであり、これはひとえにCH Precisionにしか出来ない究極的な
音像と音場感の素晴らしいコントロールであると直感したのでした。

弦楽五部の各パートにおける安定感と分解能が素晴らしい音色と質感をものにした。
トランペットに代表される金管楽器の透明性をここまで高め美しい響きとしてものにした。
打楽器の遠近感と絞り込まれた音像はグランカッサの打音でも見事な制動力をものにした。

音像の発祥から消滅までの残響を正確に再現し、それは今まで音色の一種だと錯覚
していた響きの揺らぎから発生する音色の変色や固有の刺激成分を完璧に除去する
ことで発見できる質感の極み、再生芸術の新境地として私を驚かせたのです!

以上のような私の分析と表現方法にてオーケストラにおける他者にはない素晴らしさを
確認してしまったので、フィードバック量の実験を同様に行った時には簡単に結論が出ました。

L10は「GLOBAL FEEDBACK」としてM10のフィードバックは0%にて決定です!

先ずは他社アンプにはないCH Precision独自の音質調整に関して納得の選択が出来ました。
この素晴らしい可能性を更に追求すべく研究対象としての課題試聴のメニューが既に
私の頭の中に出来上がっています。続報にどうぞご期待下さい。

川又利明
担当:川又利明
TEL 03-3253-5555 FAX 03-3253-5556
kawamata@dynamicaudio.jp

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