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H.A.L.担当 川又利明
    
2018年2月19日 No.1457
 H.A.L.'s One point impression!! - HIRO Acoustic Laboratory MODEL-C4CS!!

■第一章「78秒間の愉悦」

H.A.L.'s Special Release - HIRO Acoustic Laboratory MODEL-C4CS
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/1449.html

上記でのリリースを発した後に下記の本文中にて次のように述べていました。
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/fan/hf_hear0684.html

『序章「HIRO Acoustic奇跡への胎動」と書きましたが、その本編として第一章を
 どのように書くのか、私は慎重に考えていますし書かないかもしれません。』

その理由も上記の0684の文中で書いていますが、展示期間があと数日ということで
実物があるうちに何らかのインプレッションを発しなければと思い詰めていたものです。

そして、このスピーカーで聴く音楽は過去に聴いた音とは別次元のものであり、
聴き続けてきたどの楽曲で音質を語るにしても、その数が多いだけに文章化する
時間と私のボキャブラリーが不足しているということに悩んでしまったという
ことも要因のひとつです。

そこで、最近このスピーカーを試聴して頂く際に、約80秒という短い演奏にて
MODEL-C4CSの最大の特徴を表現しうる選曲として次のCDを皆様に必ず聴いて頂いて
いることに思い当たりました。

Handel's Messiah: A Soulful Celebration
https://en.wikipedia.org/wiki/Handel%27s_Messiah:_A_Soulful_Celebration

上記のディスクの冒頭 Overture における最初の78秒間の再生音を共通課題として
皆様に聴いて頂いていますが、この短時間の再生音から発想した私の分析と評価、
そこから考察するスピーカーという道具の基本原理などを分かりやすくご説明し
話しを展開して行ければと考えました。

何といっても1992年のCDなので、とっくの昔に廃盤となっており、ネット上で
簡単に試聴できるようなサイトが見つからなかったので、先ずはこの78秒間の
録音内容を簡単に説明します。

冒頭には奥深い森の中で鳴きかわす虫の声と渓流の水の音、落差の小さい滝のような
せせらぎというか小川の清流を思わせる水音の効果音から始まります。

そして、左側から高速で叩かれるコンガの連打が右方向に流れるように展開し、
カウンターが00:12を示した瞬間に、とてつもない重低音のドラムによる強烈な
打撃音がセンターより右寄りの奥深いところから叩き出されます。

大口径で重厚な低音のドラムの打音は極めて鮮明なインパクトの瞬間から、
揺れながら響き続ける太鼓の胴の重量感ある低音を長く長く空中に保ちながら
ウーファーの限界に挑戦してくる!

そのドラムの重量感と残響の克明さ、長く尾を引く余韻にこれ程の揺らぎと情報量が
隠されていたことに驚愕し、次の展開を待っているとセンターから前例のない程の
エネルギッシュなタムが叩き付けるような打撃音を繰り出してくる! 凄い!

このタムの背後を多数のパーカッションが埋め尽くし、マリンバが軽やかに
独特の旋律をリピートすると、シンセサイザーによる神秘的なメロディーが
ジャングルに漂うような笛の音にも似て空中に浮かぶように舞い踊る!

その間には最初の一打よりは音量を抑えたものの、数小節の間をおいてドラムが
繰り返され、センターからの激しいタムの打音と対称的な響きの長短で鳴り響く!

広大な音場感の仲で展開する豪快な打撃音と、散りばめられた多数のパーカッションの
生々しくも細やかな音、ひっそりと旋律を奏でるマリンバとキーボードの浮遊感、
たった78秒間なのに壮大なドラマを予感させるOvertureから熱いゴスペルが始まる!

             -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

これを私が求める大音量で体全体で感じる低音のダイナミックな再生音を聴きながら、
今までの体験では激しくウーファーの振動板がピストンモーションしていた動きを
視認出来たものだが、MODEL-C4CSの四基のウーファーは目視できる振動をしていない!

この最初の着目点が実はMODEL-C4CS開発における究極の目的だったのです!

つまり、シングルウーファーのMODEL-CCSからMODEL-CCCSへの進化とまったく同様に、
ウーファーの追加は低音の増量を求めたものではなく、低域再生の低歪化という
ことが最大の特徴であるということです。

では、ウーファーユニットの数が増えれば各社ともに同じ指標を実現しているのでは
ないかと言うことになりますが、ここからがHIRO AcousticがHIRO Acousticたる
所以の設計方針だということになります。順序だてて説明しましょう。

先ず私たちが普通に聴いている2ウエイ以上のマルチウエイスピーカーにおいて、
高域のトゥイーターと中域のミッドレンジ・スピーカーユニットが放射する音波は
各ユニットの振動板が前方に向けて放射している音波のみです。

ただし、この中高域の二つのスピーカーユニットも振動板の後方にも前方に放射して
いるのと同じ音波が発生しているわけですが、それらはほぼすべてのメーカーでは
内部の吸音材にて減衰させているのが実情です。でも正面に出た音のみを聴いている
ということには変わりありません。

ただし、例外的にB&W NautilusやViVid Audioのスピーカーでは中高域ユニットの
バックプレッシャー(背圧)を独自の消音機構で減衰させ、振動板への背後からの
反射波による影響から解放されるような設計のスピーカーもあります。

ここで再確認しなければならないのは、ダイナミック型スピーカーの動作原理です。
磁界の中におかれたボイスコイルに流される音楽信号という電流によって、フレミングの
左手の法則に従った運動エネルギーが発生し、それがボイスコイルに連結するダイヤ
フラム(振動板)にピストンモーションをもたらし、空気に気圧変化を起こさせて
音波に変換しているということです。

この原理の解説に関して音とは何かという関連ページを下記にご紹介します。
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/1448.html
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/1451.html
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/1453.html
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/1455.html

さて、では低域用ウーファーにおいてはどうか、と言いますと市販スピーカーの
ほぼ九割以上はバスレフ型です。このバスレフ型に関して、20年前に下記の随筆にて
私見ということで述べていることにヒントがあり、理解して頂ければと紹介しておきます。

第四十五話「美音倶楽部」
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/oto/oto45-01.html
第一部「プラトン哲学に生きる音」の第四章『analyze』がそのページです。

相応しい環境にて正弦波やホワイトノイズをマイクで拾うという測定法にて、
スピーカーの再生周波数特性を測定したとして、上記随筆で図示したグラフを
ご覧頂ければ良いのですが、確かに測定上でのレスポンスを低域まで拡大していく
ということではバスレフ方式のメリットはあるでしょう。

しかし、そこに音楽信号という複雑かつダイナミックな信号波形を再生するという
状況に関して、私はMODEL-C4CSを聴いて過去に経験のない低域の質感に驚くと共に
ハイファイスピーカーにおける低域再生のあるべき姿というものを再発見したのです!

それは上記の課題曲において私が求める音量で再生した時の低域の質感の素晴らしさです!!

ここで言えるのは過去の私の体験の中で、最も正確と思われる低域を聴かせてくれたのは
GOLDMUNDとAVALONのトップクラスのスピーカーたちでした。しかし、今回はそれを
軽く上回る低音の質感をMODEL-C4CSはいとも簡単に再現しているのです!

Handel's Messiah: A Soulful CelebrationのOvertureにおけるドラムの凄まじい
迫力とエネルギー感を、究極的と言える輪郭表現と克明な音像としての再現性は類を見ません!

アタックの瞬間での超高速な立ち上がり、その後の響きの中に含まれる多彩な
音色と揺らぎ、残響が完全消滅するまでの時間軸に対する完璧なトレース能力、
一切のゆるみがない打撃音のテンションの素晴らしさ、どれを取ってみても最高です!

このMODEL-C4CSの低域の素晴らしさを聴いていると、これはボイスコイルに流れる
音楽信号の通りなのだと確信が持てるようになりました。つまり、上記にて述べている
中高域スピーカーユニットが再生する音波とイコールの前面放射のみの音だと!!

バスレフ型のエンクロージャー内部での変調と不要輻射を含んだ低音が、バスレフ
ポートという共振周波数をもつ経路を通じて位相と時間が遅れた音波を排出してくる、
そんな低音を出すスピーカーとは歴然と違うということなのです。

言い換えましょう。ウーファーの出す音がボイスコイルに流れた音楽信号のみという
限定をすれば、バスレフポートから出てくる音波は入力信号には含まれていない音であり、
それを冷静に考えれば一種の“歪”なのではないかと考えられるのです。

もちろん、各社の努力とセンスによってバスレフ型スピーカーでも十分に音楽は
楽しめるものですが、それらの低音にはポートチューニングという各社独自の
設計によって音楽信号にはない低音が付加されているということなのです。

つまり、HIRO Acousticは低音のレスポンスを増強、拡張するための低音のリユースを
行っていない完全密閉型という方式が、中高域スピーカーと同様に入力信号のみに
正確に追随する低域再生を行っているということなのです!!

お断りしておきますが、私はバスレフ型スピーカーを全否定しているものではありません。

「それが私の求める音量において相当なストロークでウーファーが振動しているにも
 かかわらず、音程と波形の正確さをここまで維持できるということは凄いことです!
 再度口にしますが、あのHIRO Acousticと同じベクトルの低域ではないですか!!」

と述べていたスピーカーをご記憶でしょうか? ↓そうです、このスピーカーです!
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/1396.html

結果的にバスレフ型という方式で低域の増強・補強を行うということが商品としての
面白さ魅力づくりとして各社が競い合うのは良いと思います。

それは聴き手が心地よく楽しめるという大前提によるモノづくりの巧さとも言えますが、
経験値の少ないユーザーでは迫力のある音という演出ということで低音の実態が
解らないものだと思います。

しかし、HIRO Acousticはこだわりの設計によって、ウーファーを含む3ウエイの
全てのスピーカーユニットを、ボイスコイルに供給される音楽信号だけを再生すると
いうシンプルでありながら基本原理に忠実なスピーカーを作り上げたのです!

http://www.hiro-ac.jp/

バスレフ型スピーカーの低音は“歪”だと過激なことを述べましたが、それは
私の経験においてHIRO Acousticの試みが私が以前から求めていたにもかかわらず
実物の音としてユーザーに提示できなかった時代が終わったということでもあります。

冒頭に述べていたウーファーの低歪化、それは振動板のストロークを小さくすることで
大振幅においても破綻しない信号波形通りの忠実再生であり、次にボイスコイルに
流れる音楽信号のみに追随した低域再生という二大条件を初めてクリアーしたという
ことが、今回のMODEL-C4CSを頂点とするHIRO Acousticの開発目標を裏付けたものなのです!!

             -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

78秒間の課題曲を聴いて多方面の考察を行い、それを出来るだけ簡単にお伝えしようと
ウーファーにおける低歪化の根拠を述べてきましたが、論点は低音だけなのか?
いいえ、それはごく一部のものであり、全ての周波数帯域の質感にも大きく関わっています。

HIRO Acousticの三モデルのスピーカーでクロスオーバー周波数は公開されていない。
しかしながら、これまでの廣中さんとの会話の中から私が推測するにウーファーと
ミッドレンジのクロスオーバー周波数は350Hzから480Hzの間くらい、ミッドレンジと
トゥイーターのクロスは4KHzから上下に500Hz前後の範囲と考えています。

ということは、前述のように低歪化を果たしたウーファーが何気なく聴いている
音楽の中で、どのような役割を果たしているのかという実験をお客様の目の前で
何回も行ってきました。

ヴォーカルとギター伴奏だけ。ドラムもベースも低音楽器の言われる楽音がない
シンプルな録音を先ず聴いて頂き、その音場感と質感の素晴らしさを先ずは記憶に
残して頂き、ウーファー用パワーアンプをシャットダウンさせるのです。

人間の声もギターという楽器も中音域の音だろうと思っている人が多いと思いますが、
実際にウーファーを止めて同じ音量で聴くとどうなったか?

また、ハープシコード、チェンバロという古楽器はピアノと違って低音はあまり
含まれていないので、ウーファーの出番はあまりないだろうという推測のもとに、
チェンバロのソロ演奏をウーファーなしで聴いて頂きます。

そして、再びウーファー用アンプをスイッチオンとして同じボリュームで聴いて
頂いた時のお客様の表情を見ると、そこに答えがあるのでした。

ウーファーが再生する帯域というのは音楽にとって予想以上に重要であり、音楽の
土台を担っているという実体験をして頂くことで音楽全体のクォリティーアップに
どれほど大きな貢献をしているのかが解って頂けるのでした。

ウーファーが受け持つ再生帯域というのは想像以上に広く大きな影響力があるのです。
その低音がここまで低歪化されると音楽全体がこれほど輝くのか!!

私が史上最高と評価しているのは、むしろ低音だけではなく全帯域における質感の
改革が実現したという実感を今までの試聴で確認したからなのです!!

■HIRO Acoustic Laboratory MODEL-C4CS イメージ.1
http://www.dynamicaudio.jp/file/20180116-c4c2102.jpg

■HIRO Acoustic Laboratory MODEL-C4CS イメージ.2
http://www.dynamicaudio.jp/file/20180117-C4CSTA.jpg

次の機会にやってくるMODEL-C4CSはこのように外観の完成度も高まってからと
いうことで時期は未定ですが、私が推薦するスピーカーの最高峰であるという
位置付けは変わりません。

今回の一か月に及ぶMODEL-C4CSの試聴体験は私にとって本当に貴重なものでした。
それを振り返り再会を期待しつつ、上述の低歪化というコンセプトを先日から
述べていた次の投稿から再度引用して締めくくりたいと思います。
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/fan/hf_hear0684.html

             -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

雑誌を見れば評論家の様々な文章にて新製品のイメージが読者に形作られていく
のでしょうが、そのような美辞麗句をもって製品の本質的な音をユーザーにイメージ
させていくという流れに真っ向から対立するこだわりがHIRO Acousticの本分であり、
設計者 廣中さんの次の一言に凝縮されているからです。

2017年12月12日 HIRO Acoustic Laboratory 代表 廣中義樹 氏
「1台も売れなくてもよい」という覚悟
http://www.hiro-ac.jp/introduction.html

そして、ハイファイ・スピーカーの分野で、究極の江戸前鮨のごとく様々な要因で
発生する“歪”を削ぎ落とし引き算していった設計方針がMODEL-C4CSを生み出したのです!!

HIRO Acoustic Laboratory MODEL-C4CSの予価が決定しました!!
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/1451.html

私は上記の記事でバージョンアップの価格をことさら大きく取り上げたつもりなのですが、
本当の一生ものという作品には賞味期限はないのです!!

シングルウーファー仕様MODEL-CCSから初めて五年後にダブルウーファー仕様の
MODEL-CCCSにアップグレードしていく。同様にMODEL-CCCSから七年かけて4ウーファー
つまりMODEL-C4CSに成長させる。そんな発展性が重要だと考えています。

そして、廣中さんは今後も研究開発を続け、有効な新技術が開発されたならオーナーの
皆様にバージョンアップを約束するとも断言しています。

最後に私が言いたいのは、廣中さんは最初からセット価格4,496万円などと言う
とんでもない価格のスピーカーを作ろうとしたものではありません。

それは初期のMODEL-CCSの時代に設計した3ウエイの各々のコンポーネントがいかに
完成度が高かったのか。MODEL-CCX Improvedにて妥協なく設計したクロスオーバー
ネットワークの完成度がいかに高かったのかという証明となっていることです!!

つまり、今までの開発で作り出した各コンポーネント単体が素晴らしい完成度であり、
それらを集積することで過去の開発努力が認められ開花したということと私は理解しています。

ですから、私は胸を張ってMODEL-C4CSを自分の職歴にて過去最高音質と公言しました!!
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/1449.html

私は以前からMODEL-CCCSが登場した時にMODEL-CCSを引き合いに出したり、前作を
踏み台にして新製品の良さを述べたりすることはありませんでした。

なので、今回もMODEL-CCCSを比較対象としてMODEL-C4CSを語ろうとしはしていません。
そのようなことをすれば、過去に私が発言した前作での評価を踏みにじることに
なるからです。

これを逆に考えれば、どうぞMODEL-CCSからスタートして下さい! という絶対的な
自信として皆様に推薦できるということなのです!!

四年前に述べた「音楽を裸にするスピーカー登場!!その名はHIRO Acoustic」と
いう表現は今でも、そして今後も不滅のキーワードであると断言致します!!
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/1160.html

■序章 「HIRO Acoustic奇跡への胎動」と書きましたが、その本編として第一章を
 どのように書くのか、私は慎重に考えていますし書かないかもしれません。
 http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/1449.html

それは、過去に私も…大袈裟ですが人類の誰もが経験していない音をMODEL-C4CSが
出しているので、それを例えようがなく語りようがないのです。つまり、読者の
経験に類似するものはなく、読者の経験と記憶の一部を使ってのイメージングは
困難であると考えているからです。

では、どうするのか…、答えは一つしかありません。聴いて頂くことのみです!!

HIRO Acoustic Laboratory MODEL-C4CSの再来を期待しつつ、私の最終章は今後の
お楽しみということで…!!

川又利明
担当:川又利明
TEL 03-3253-5555 FAX 03-3253-5556
kawamata@dynamicaudio.jp

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