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Vol.4
Details
Vol.5
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Ordering instruction
“H.A.L.C.-Shelf”がいかに難産の上で誕生したか、そのこだわりを述べてきたが、 それを受け止めるフレームに関してはどうするのか?

今までリファレンスとしてきたzoethecusを敵に回すということが、いかに大変なことかを痛感した私は、 中途半端なことではせっかくの“H.A.L.C-Shelf”を生かし切れないだろうという思いから、それを搭載するフレームにはより以上のこだわりと妥協のなさを追求していった。
前例のない骨格とはどういうことか!?

〔 H.A.L.C-frameの材質と仕上げ 〕
zoethecusを知り尽くした私が繰り返し述べてきたこと、それはzoethecusは柔構造であるということだ。
コンポーネント自身の振動をいかに制御するか、そして床の材質が何であろうとも極力その影響からアイソレーションする。 その制振構造は適当な弾性部品をどこかに使用するという簡単なことでは実現できない。 いや、私は今回の開発過程でソルボタンのような無反発ゴムを中間に挟むことで、いきなり音質がゴム質の特徴を持ってしまうことに気が付き、 柔構造とは素材によるごまかしでは解決できないものだということを実感していた。

さて、この“H.A.L.C-frame”の素材だが、下記を再度ご覧頂きたい。

http://dyna5555.cocolog-nifty.com/photos/secret/halc01.html

これは木材の素材感をそのまま出している塗装をほとんどしていない仕上げで、今回の開発での基礎として“H.A.L.C-frame”の材質は「ブナ」を選択した。
学名「Fagus crenata」和名「ブナ」英名「Japanese beech」
数ある木材の中で硬度が高いものとしては、黒檀、紫檀、樫、花梨、タガヤサン(鉄刀木)などに次ぐものであり、逆に「ブナ」よりも硬度が低いものとしては 楓(メープル)、桜(チェリー)イヌマキ(犬槇、犬槙)などなど専門家であればもっと多くの種類が上がってくるのだろうが、 「ブナ」は原材料としても入手しやすく中間的な硬度ということで工場の専門家と協議して決定した。

木は生き物であるため新陳代謝を繰り返し成長を続けている。
生物としての木が活発な新陳代謝をしている部分が外辺の辺材部分(厳密には表皮と隣接する数層・・形成層と呼ばれる)で、 細胞が死んで新陳代謝を終えた部分が中心に近い心材となる。
辺材は生命活動を行う必要性から栄養分や水分が多いので腐りやすくシロアリなどの害虫にも弱い。 心材は辺材に比べると強度的には劣るが、フェノール類などの抽出成分を含んでいるため耐朽性にも優れているので、外構用部材などにはよく用いられている。
建物の構造材としては心材を含んだ角材が利用されるが、変形が大きいので、十分に乾燥した材を用いることが求められている。

木材の中心に近い部分を心材(しんざい)というが、同じブナでも今回はこの部分で優良な材木を探してもらい採用することにした。 このブナを素材として、上記の素材色のままという仕上げと塗装によって茶色がもう少し濃くなるチェリー風の仕上げという二種類を “H.A.L.C-frame”として商品化することに決定した。
 後日紹介するが、ベーシックな“H.A.L.C”シリーズのラックとしては、このブナを素材としたもので展開するが、その他にも上級機というか同じ構造で ブナよりも硬度が高いブビンガ(Bubinga)を使用したシリーズも販売予定とした。

http://www.fuchu.or.jp/~kagu/mokuzai/bu.htm

一般的には聞き馴染みのない材木だが、実際にブビンガで試作したものを見ると今までにない高級感があり、 多少のコストアップを認めて下さる皆様にはぜひ推奨したいラインアップとなるだろう。 更に一部のメーカーでこれを材料にスピーカーキャビネットやアクセサリーを商品化しているものもある。その仕上げとはこんな感じだ。

http://www.dynamicaudio.jp/file/061228/H.C3B02.jpg

私が撮影したものは画質補正をしているので、私のコンピューターのディスプレーと私の独断と偏見で色合いを調整しているので更に次の画像も参考のためにご覧頂きたい。

http://www.dynamicaudio.jp/file/061228/H.C3B05.jpg

“H.A.L.C.-Shelf”の表面仕上げで大変美しいマイクロ・ヘアライン仕上げもこの次の画像で感じ取って頂ければ幸いだ。

http://www.dynamicaudio.jp/file/061228/H.C3B03.jpg

〔 H.A.L.C-frameの構造 〕
zoethecusの柔構造を解き明かしていくと色々なノウハウが発見できたのだが、同時に敵に回したzoethecusの弱点を研究することにもつながった。 見た目は単純だが、このメインフレームの構造そのものにも私はこだわった。
先ず、この写真をご覧頂きたい。

http://www.dynamicaudio.jp/file/061228/z.3R01.jpg

四本の柱と横木を連結している手法に注目する。これはzoethecusの連結部分の拡大写真であるが、一本の金属ボルトの頭がお解かり頂けると思う。 このように実はzoethecusの柱と横木の連結方法は長いボルトを一本斜めにねじ込んで固定するというもので、 木材と木材とは事実上は接しているだけで緊密な連結はされていないというものだ。
それに対して“H.A.L.C-frame”の連結部分はどうなっているか・・・!?

http://www.dynamicaudio.jp/file/061228/H.C3B01.jpg

外観からは解らないだろうが、先ず柱と横木の連結部分には一切の金属は使用していない。
機械的な応力によって締め込む、いわゆる「ネジ止め」ではパーツの加工精度が多少悪くとも機械的に締め付けることで 弾性素材である木材の接合部を多少変形させることで組み立て時のまとまりを良くすることが出来る。
しかし、私はこのような手法では納得しなかった。削り出すパーツの加工精度を極限まで高め部品として組み上げたときに 寸分の狂いもなくぴったりと密着し組み立てることが基本ではないだろうか。そのために敢えて接着という接合方法を選択した。
しかし、木材の切断面の繊維質の方向性が極端に違う部分を組み合わせ接着するということでは強度が出ない。 そこで、この写真では見えないが、横木と柱の双方が接する部分に各々二個ずつの穴をあけた。 この穴は奥に行くほど直径が微妙に小さくなっており、ここに二本の木製ピン(ダボ)を打ち込む。
木製ピンは穴の奥に押し込まれることで圧縮され強固に連結され、それを接着剤が補強するという形で連結される構造とした。
縦方向に二本打ち込まれたダボによって、横木は片側だけに荷重がかかってもフレームの内側に向けて回転する方向で変形することがない。
また、微妙なことなので解りづらいと思うが、zoethecusは柱部分も横木も角材としてのコーナーを面取りして丸みを持たせる外観としているが、 次の写真のように“H.A.L.C-frame”では敢えてエッジをそのままとして日本風の高級感を狙った。

http://www.dynamicaudio.jp/file/061228/H.C3B06.jpg

そして、“H.A.L.C-frame”のデザイン上での大きなアクセントとなっている前面の柱の上下には、あの“AVALON”をモチーフにしたカッティングを施し、 前例のない印象を見るものに与えるようにした。これも私のアイデアである。

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柔構造でありながら強度を求める。
一種矛盾したような表現だが、これは振動に対しては柔構造が必要であり、 荷重に対して長年の使用中にも変形しない耐久性を持たせる強度を持っていなければならないという意味である。 そのためのノウハウはここにもあった。先ずは次の画像をご覧頂きたい。

http://www.dynamicaudio.jp/file/061228/z.3R03.jpg

これはzoethecusの横木同士を“かすがい”【鎹】の要領でアクリルボードによって固定している部分のクローズアップである。 z.slabを載せる部分でもあり、この柔軟性ある素材で振動に対する吸収力を得ているものであり、機械的なたわみに対する強度をここで上げているのである。
これは絶妙なアイデアであり、私は敵に回したzoethecusから学ぶべきところは素直に模倣させてもらった。 しかし、そこでこだわりの精神を捨てたわけではない!! 次の写真だ!!

http://www.dynamicaudio.jp/file/061228/H.C3B04.jpg

一見して解るようにアクリルボードの厚みも増し、それを固定するビスの処理、仕上げの美しさ、と各所に見えない部分ながら妥協をすることはない。
特に通常はこの部分はフレームの下側にあるので見えないが、横木と横木の空間つまり棚板の間隔はzoethecusと同じ8インチ、20センチとしているが、 私は寸法ぎりぎりの高さのあるアンプをzoethecusに載せようとした際に、このアクリルボートを固定するためのビスの頭にアンプのトップパネルが引っかかってしまい キズを付けてしまったという苦い経験がある。
“H.A.L.C-frame”では安全面も配慮して横木の下側には何も突出部がないように仕上げることにした。これもこだわりである。

〔 H.A.L.C-frame制振構造の拠点 〕
外観はzoethecusに似ている?
否定も肯定もしない事実であり、これは上記に述べてきた制振構造を実現するためにたどらなければならない素材の選択と シンプルな造形という観点で致し方ない方向性の一致としか言いようがない。
しかし、“H.A.L.C-frame”には外側からは見えない隠された秘密がある。それを解説するには先ずzoethecusのこの部分を見て頂きたい。

http://www.dynamicaudio.jp/file/061228/z.3R02.jpg

zoethecusのスパイクを取り付ける部分だが、実はこの埋め込みナットの内側には空洞があり、そこには砂が充填されている。
しかし、その充填された砂はラックと搭載したコンポーネントの荷重を受けるものではなく、 まさにシェーカーのように柱部分全体が振動したときの防振のためというものである。
確かにシェーカーにぎっしりと砂が詰まっていれば、いくら振ってみても音はしないと例えだろう。
そして、“H.A.L.C-frame”の同じ部位はどうなっているのか!?

http://www.dynamicaudio.jp/file/061228/H.C3F01.jpg

これは“H.A.L.C-frame”の脚部を下側から見た画像だが、このようにステンレスの円筒が組み込まれている。
その木部との接点は黒いゴム製のOリングでふさがれている。この構造はいったい何を意味するのか!?
この部分にスパイクを取り付けるとこうなる。

http://www.dynamicaudio.jp/file/061228/H.C3F02.jpg

ご覧のように取り付けられたスパイクは木材の柱部分とは接することがない。後述するが、ここが重要なポイントになっているのだ!!
スパイクを取り付けた“H.A.L.C-frame”とzoethecusのそれとを並べて観察すると次のようになる。

http://www.dynamicaudio.jp/file/061228/spike-halc_z.jpg

zoethecusのスパイクはアルミ製であり直線的なカットによる円錐形となっている。
このような単純な造形はNC旋盤を操る技師からすれば単純なプログラムで低コストで出来る加工らしい。 ちなみに、このzoethecusのスパイクは100グラムだった。
それに対して“H.A.L.C-frame”で使用するスパイクは・・・

http://www.dynamicaudio.jp/file/061228/H.C3F-Spike.jpg

このように独特な関数カーブでの削り出し加工で造形し、更に受け皿となるベースも同様なカーブで作られている。
ちなみに、このステンレス製のスパイクはそれだけで自重は280グラム、ベースは130グラムという質量を持たせることにした。 上記の画像は試作段階のものであり、最終製品では受け皿ベースの形状を更に変更するように依頼し同時に仕上げも高級感ある美しさになることを追記しておく。

さあ、これからが重要なポイントである!!
もうzoethecusの模倣とは呼ばせない“H.A.L.C-frame”独自のアイデアがここに盛り込まれている!! それを解説しているのが次のリンクだ!!

http://www.dynamicaudio.jp/file/061228/halc00.gif

言葉よりも多くを語ってくれる断面図だが、そのポイントを述べていくと・・・
zoethecusのスパイクを締め込んでいくと埋め込まれたナットと木材部分の両方に接触する形となるが、“H.A.L.C-frame”では フレームにかかる荷重を明確に一点支持としている。
Upper stainless spike baseの上に赤く色分けした部分があるが、これは厚さが2ミリに及ぶ酢酸ビニール系樹脂接着剤によって緩衝材としての機能を持たせ、 木材と金属を接着できるという特徴の他にも若干の弾性を持たせるという制振構造のための一層を形成している。
事実上“H.A.L.C-frame”のコーナーポストはこのようにUpper stainless spike baseの一点で荷重を受けることになる。
そして、肝心なことは上方向へと先端を向けているUpper high mass stainless spikeは木材部分と機械的に接することなくシリコンとRubber“O”ringによって位置を保持され、 フレームの積載部分からの上側から来る振動と床方向の下から来る振動に対して完全な両方向の一点支持によるメカニカルグランディングを実現しているということだ!!
重要なスパイクが垂直を維持するために脚部の木材部に接していないという独自の構造は再度上記の画像で確認して頂きたいものだ。

http://www.dynamicaudio.jp/file/061228/H.C3F02.jpg

そして、この床面と唯一接するUnder stainless spike baseの存在感も音質に影響を与えているものとして、 私のこだわりの対象となりチューニングのノウハウをここにも仕込むことになった。

“H.A.L.C-Shelf”と“H.A.L.C-frame”との接点おけるノウハウ、そして様々な材質の床に接するスパイクベースの存在感。
いよいよ次回はProject“H.A.L.C”の最終章として私の試聴がより各論でラックという存在を追求していく!!

Project“H.A.L.C”の使命とは何か!? 次世代のH.A.L.のリファレンスとして長期に渡り音質的なステータスを維持し、 お客様にとっても飽きの来ないシンプルであり高級感あるデザインと仕上げを目指し、安定価格にて末永く供給できるということを目指した。
そこまでのこだわりに対して意外な展開が待ち受けていた。
文:川又
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