Vol.1
Motivation
Vol.2
Naming
Vol.3
Enthusiasm
Vol.4
Details
Vol.5
Final finish
Price
Ordering instruction
“H.A.L.C”シリーズの使命とは何か!?
次世代のH.A.L.のリファレンスとして長期に渡り音質的なステータスを維持し、お客様にとっても飽きの来ないシンプルであり高級感あるデザインと仕上げを目指し、 安定価格にて末永く供給できるということを重要視した。当然のことながら、その中で最も重要視したのが音質。
そして、そのキーポイントになるのが棚板(Shelf)であることは想像に難しくない。

ここで、最初に結論から述べれば“H.A.L.C-Shelf”は次のような仕様に決定した。
サイズ:W525m(横幅)×D420mm(奥行き)×H(厚み)28.7mm
重量:1枚 10.5Kg
※サイズはzoethecusと並べて併用しても良いように横幅は同一としたが、dCSのElgar/Delius/Purcell、そしてWadiaの921/931など、 わずかにzoethecusのz.slabでは奥行き不足でウッドフレームにはみ出してしまうものまで搭載できるように2センチ程大きくしてある。
ただし、これは棚板のみの寸法であり、本体の仕上がり寸法は
645W×540D×655H(mm) (三段の場合/スパイク含み)となる。
■下記詳細による素材として6層/特殊な接着面を含めて11層合板仕上げ

http://dyna5555.cocolog-nifty.com/photos/secret/halc_shelf_01.html

(この写真は試作品のために正式な仕上げをしていません。)

※上から順に断層構造の詳細/ただし接着面は含まず。
1)1.5mm:アルミ板(マイクロヘアライン仕上げ)
2)9.0mm:高密度MDF合板(密度:0.69g/cm3)
3)6.0mm:特殊合成樹脂によるコア材
4)2.0mm:高比重11340 kg/m3を有するダンピング用金属シート
5)9.0mm:高密度MDF合板(密度:0.69g/cm3)
6)1.2mm:ブラックメラミン仕上げシート

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このようにポンと述べてしまうとあっけないが、妥協なき設計の結果で棚板一枚で10キロを超えてしまったというのは我ながら驚きのスペックとなった。
そして、最上面のアルミ板の仕上げにもこだわり、1.5ミリと肉厚感を与えホットスポットの反射光がないように しっとりとした質感でキズも付きにくく無言の高級感を醸し出している。
すべすべした肌触りはGOLDMUNDの感触を思い出すようだ。
この結論を出すために試作した枚数は実に9枚に及び、それらを下記に述べるシステムで入念な試聴の上で追求していった。

“H.A.L.C-Shelf”検証システム

ESOTERIC G-0s(税別\1,200,000.)*Rubidiumオンリー

7N-DA6100 BNC(Wordsync用)

ESOTERIC X-01D2 (税別\1,400,000.)■ここに“H.A.L.C-Shelf”使用

ESOTERIC 7N-DA6300 MEXCEL RCA 1.0m

HALCRO dm8(税別\2,200,000.)

ESOTERIC 7N-DA6100 MEXCEL RCA 7.0m

HALCRO HALCRO dm88 ×2 (税別\7,600,000.)
※参考:http://www.halcro.com/productsDM88.asp

STEALTH Hybrid MLT Speaker Cable 5.0m H.A.L.'s Special Version

MOSQUITO NEO(税別\4,800,000.)

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zoethecusをどのくらい超えることが出来るか!?
このテストのためにメカニズムとエレクトロニクスが共存するSACD/CDプレーヤーを載せかえることで比較試聴して行くことにした。
これでトランスポートのようなメカ重視のコンポーネントもプリアンプのように純粋に電気的コンポーネントの両方に対してのベクトルをつかむことが出来る。
〔試作第一段階〕
試作No.1とNo.2 : 二種類のコア材の比較
1)1.5mm:アルミ板
2)9.0mm:高密度MDF合板
3)6.0mm:合成樹脂を二種類選択しコア材の違いを確認する
4)9.0mm:高密度MDF合板
5)1.2mm:メラミン仕上げシート
最初の試作段階ではMDF合板とコア材のみという構造で、先ずは二種類のコア材を決定することから始めた。
ここで、過去にzoethecusに挑戦しても私が採用に至らなかった数社のラックを試聴した時の体験を思い起こしてみた。 最も大切なことは低域の輪郭表現や重量感という音像の絞り込みという面でzoethecusが大変優れていたということだった。
その上でエコー感という情報量の豊富さという次の段階で評価を進めるべきであり、 肝心な音像の解像度自体が確立されなければ楽音の芯とエコー感のセパレーションを感じ取ることが出来ない。

ここでテストに使用する課題曲は多数あるが、ヴォーカルとギター、エレキベースというシンプルな構成の録音を中心に複数の曲を聴き続けた。
その度に25KgもあるX-01D2を載せ換えて何度も何度も試聴を繰り返す。
比較の対象はもちろんzoethecusのz.slabであるが、この段階では圧倒的にz.slabの方が低域の解像度に優れており、 今までリファレンスにしてきたことに改めて自信を深めてしまうということになってしまった。

〔試作第二段階〕
試作No.3とNo.4 : 二種類のコア材の比較で第二ラウンド
1)1.5mm:アルミ板
2)12.0mm:高密度MDF合板
3)6.0mm:合成樹脂を二種類選択しコア材の違いを確認する
4)12.0mm:高密度MDF合板
5)1.2mm:メラミン仕上げシート
z.slabよりも分厚い12.0mm:高密度MDFでコア材をサンドイッチした第二段階のもの。
だか、z.slabよりも重厚に作ったはずの試作品は期待外れだった。
重量と32.7mmという厚みが勝れば良いというものではなかった。
棚板自体のダンピングを上げなくては低域の引き締まり効果は得られないだろうと、思い切って次の段階の試作品をリクエストした。
しかし、ここで二種類のコア材のうちで少なくとも楽音の質感と輪郭表現に優れている素材ということは確認できた。 今後はこの高分子化合物の合成樹脂でコア材を特定して試作を進めていくことにした。これを試作No.4としておこう。

〔試作第三段階〕
試作No.5
1)1.5mm:アルミ板
2)9.0mm:高密度MDF合板
3)2.0mm:高比重11340 kg/m3を有するダンピング用金属シート
4)6.0mm:特殊合成樹脂によるコア材■上記No.4による
5)2.0mm:高比重11340 kg/m3を有するダンピング用金属シート
6)9.0mm:高密度MDF合板
7)1.2mm:メラミン仕上げシート
とにかく低域を先ずは引き締めて、この分野だけでもz.slabを追い越したい。そんな願いから試作No.3の到着を待ち受けた。そして、試作No.5が到着した。
まあ、とにかくNo.5が重たいことに驚いた。これだったら文句ないだろう!!
と、耳にタコというほど聴き込んだシステムと選曲で聴き始める。

「おー!! これだったら低域はいけるぞ!!」

この可能性が見えたところで本当に私の心境からすれば光が見えてきたというもの。
z.slabに秘められた音作りの上手さはzoethecusのノウハウなのだろうが、彼らはどんな環境とシステムで音質を決定したのだろうか? と興味も深まった。しかし・・・
ベースとドラムの質感に注視して試聴していて一旦はほっとしたもののどこかが違う。直ちにディスクを余韻感が美しいと評価しているヴォーカルものに換える。
すると、私が追求しているもうひとつの要素、エコー感がまるで昔のドルビーノイズリダクションをオンにした時のようにふっと消え去っていることに気が付く。

「ダメだ、これじゃ〜」

再びz.slabにすると、すーっと拡散し消えていく余韻感が戻ってくる。 シャクにさわるが今までリファレンスにしていたzoethecusを敵に回すということがこれほど大変なことだったのかと改めて痛感させられた。
さて、この先はどうすべきか!?
ダンピング量を減らせば余韻感が戻ってくるだろうか? この方法にすがるしかない。 ずうずうしくも妥協できない私は次なる試作品をお願いする電話をかけていた。

〔試作第四段階〕
試作No.6
1)1.5mm:アルミ板
2)9.0mm:高密度MDF合板
3)2.0mm:高比重11340 kg/m3を有するダンピング用金属シート
4)6.0mm:特殊合成樹脂によるコア材■No.4上記による
5)9.0mm:高密度MDF合板
6)1.2mm:メラミン仕上げシート
試作No.7
1)1.5mm:アルミ板
2)9.0mm:高密度MDF合板
3)6.0mm:特殊合成樹脂によるコア材■No.4上記による
4)2.0mm:高比重11340 kg/m3を有するダンピング用金属シート
5)9.0mm:高密度MDF合板
6)1.2mm:メラミン仕上げシート
ご覧のようにダンピング用金属シートをコア材の上にするか下にするかという配置で二枚を試作した。 私自身も3)と4)の順番を入れ替えただけで音質に影響するだろうか? ということに何の確証もないまま、到着した試作品をいそいそとセットした。

すると・・・、 「おぉっ、これだ!」

ほっとするように余韻感と低域の解像度が両立する音が出始めた。 そして、試作No.6と7も比較してみると不思議なことに試作No.7の構造のようにテスト機であるX-01D2との接点よりもダンピング用金属シートを離した方が 余韻感が勝り解像度も素晴らしい!!

「求めていたものが見つかったぞ!“試作No.7”これだったらz.slabを凌駕したと大きな自信が持てる音だ。10人に聴かせて9.9人までが支持してくれる音だ!!」

ダンピング用金属シートを二層とすることで低域の改善を確認するも音場感を発揮させるにはオーバーダンピングということが新たな課題として表れ、 それを一層にしたことで当初の目標が達せられたという安堵感がわいてきた。
しかし、このダンピングシートの配置でこれほど音質変化があるとは思ってもいなかった。
ラックを、それも棚板だけの変化で起こる想像を超える多様な変化は私には大変貴重であり良い勉強になった。しかし・・・
私は、まだ執念深く疑り深い。
低域の質感と音場感の両立という判定において、まだzoethecusを引き離せる可能性はないのか!? エコー感のあり方についてはまだ追求できる余地はないのか!?
そこで、これでもか!!という確認を行なうために最後の試作を更にお願いした。

〔試作第五段階〕
試作No.8
1)1.5mm:アルミ板
2)9.0mm:高密度MDF合板
3)1.0mm:高比重11340 kg/m3を有するダンピング用金属シート
4)6.0mm:特殊合成樹脂によるコア材■No.4上記による
5)9.0mm:高密度MDF合板
6)1.2mm:メラミン仕上げシート
試作No.9
1)1.5mm:アルミ板
2)9.0mm:高密度MDF合板
3)6.0mm:特殊合成樹脂によるコア材■No.4上記による
4)1.0mm:高比重11340 kg/m3を有するダンピング用金属シート
5)9.0mm:高密度MDF合板
6)1.2mm:メラミン仕上げシート
これが最終的に私が納得したいためにということで無理やり作ってもらった試作だ。試作No.6-7とどこが違うのか、お解かりだろうか?
そう、ダンピング用金属シートの厚みを2.0mmから1.0mmへと半分にしてもらった。
敵に回したzoethecusがこれほど美しく広大な音場感を発揮しているということを今までは当たり前のように恩恵として享受していたのだが、 欲張りな私は試作No.7でたどり着いた未体験の領域が本物かどうか。つまり、もっともっとzoethecusを圧倒できるようなパフオーマンスの可能性があるのではないか。 という思いからエコー感の保存性という要素でダンピング量の半減という最終確認をどうしてもしたくなったのである。

到着した試作No.8-9をいそいそと開梱し、早速試聴に取り掛かることにした。
今までのすべての過程において、一旦は試作No.7がベストと認証したものの、常にリファレンスとしてz.slabを合い間に聴き、 その上に試作No.7が位置するということを絶えず確認してきた。 試作No.7と同じ位置にダンピングシートを入れた試作No.9を我慢しきれずに最初にチェックしてみることにした。 今までのノウハウからも試作No.7よりもイケルとしたら同じ構造の試作No.9に他ならないからだ。すると…!?

「えー!! うそでしょう〜!!」

結果から言えば一挙に試作第二段階の音質に逆行してしまったのである。
確認のために直ちに試作No.8も聴いてみた。だめだ!!ダンピングシートの上下位置関係による音質傾向の違いが見られるだけで本質的には第二段階と同レベルになっている。 つまり、第二段階で達成していなかった低域の質感、絞込みが一挙に崩れてしまったのである。
これでは話にならない。ダンピング量と音質の関係はリニアではなかった。
つまり、ダンピング量を半減すれば余韻感が増長するだろうとの推測は期待はずれであり、 一定の質量がダンピングシートにないと、その存在感は1か0のように一挙に無いに等しくなってしまうということが確認されたのである。
わずか1ミリと2ミリの違いでこれほどまでに低域の質感が変化するとは、ラック(それも棚板のみ)の影響とは何と大きな存在なのだろうか!
そして、やってみて良かった納得したぞ、試作No.7で間違いない!!

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しかし、25キロもあるX-01D2をいったい何回乗せ換えたものだろうか!?
短いときには音が出た瞬間にも質感が解ってしまうので10秒程度で棚板を交換するということを色々な選曲でやってきたものだ。 この作業は9枚の試作品の到着を待ちながら二ヶ月間に及び、数十回、あるいは百回以上やっただろうか?

“H.A.L.C-Shelf”の音質、それはこのProject“H.A.L.C”の骨格を成す重要なポイントであり、そこに費やした時間と労力と情熱は間違いなく音質の根拠として語れるものとなった。
しかも、このH.A.L.という環境と使用システム、そして私の耳と感性という評価基準はzoethecus社のそれを大きく上回っているという自負がある。
さあ、これで私の目標の半分は達成された…!? と思ったら、次々にラックというものが見せる音質変化の摩訶不思議な要素がこれからも発見されることに・・・
文:川又
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