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2010年8月7日
No.739 「小編随筆『音の細道』特別寄稿 *第70弾*」
『響きを作るスピーカーがもう一つ登場しました!! その名はKtema!!』
 
「H.A.L.'s Short Essay No.70」
 
『響きを作るスピーカーがもう一つ登場しました!! その名はKtema!!』
 
             ■ 序章 ■
 
仕事柄ここH.A.L.に持ち込まれる新製品の数は多い。しかも、各社ともにH.A.L.
という環境と商品構成、そして私という存在を知っての上で適応する新製品を
持ち込まれてくるという慣例が長らくの間に出来上がってしまったようだ。
 
しかも、それらの新製品がまったくの新ブランドによるものという場合も多々
あり、事前の情報から私の期待度も高くなったり、そうでもなかったりという
印象もある。今回の新製品は実は実物を見るまでは失礼ながら後者の期待度で
あったと、今になって思えるのである。
 
その存在感は梱包材から取り出して実物を見た瞬間に、ある種の霊感が働いた
ものか、このスピーカーが愛おしくなってしまったのだから不思議だ。
 
そして、ポジションを細かく調整し輸入元ご担当者とセッティングを行い、
第一声を聴く前に私がやったのは本体の拭き掃除でした。(^^ゞ
 
指紋の一つでもあったら作者に対して申し訳ない気持ちになってしまったのと、
これから聴く音の品格にふさわしい使い方をしなければと私に思わせる程の
期待感がむくむくと湧き起こってくるのだから珍しいことです。
 
そんな新製品とは何か?
 
早いもので五年前にSonusfaberを離れたFrancoSerblinが創設した新ブランド
その名も「FrancoSerblin」による最新スピーカーKtemaが持ち込まれたのが
2010年8月2日のこと。
 
既にwebでは情報が飛び交っていましたが、私がデザインとコンセプトを画面
上で見ただけではそんな気持ちにならなかったのに、不思議な事に実物を目に
したとたんに私の感性は姿勢を正し気を付けを命じたのでした!!
 
http://www.francoserblin.it/
http://www.francoserblin.it/ktema/
 
私は、その姿を見た瞬間にFrancoSerblinに敬意を表しなければと思ったのです。
そして、既にKtemaに対する私の評価はShort Essayという形をとる事で決定
しているというのは皆様も察しがつくと思います。
 
http://www.dynamicaudio.jp/file/100802/P1080133.jpg
 
この写真ではKtemaの木目の色合いが正確に写っていないので、上記のwebサイト
での美しい写真をご覧頂ければということで、この写真では本体の大きさを
イメージして頂ければと思いました。
 
サイズはW425mm×H1110mm×D460mmで何と重量はたったの!? 55Kgなのです!!
ここで見ると可愛いくらいに小さく見えます。
 
http://www.dynamicaudio.jp/file/100802/P1080135.jpg
 
接近して象徴的なプロポーションが分かりやすいアングルで撮影しました。
この造型が後述する素晴らしい音質のキーポイントになってくるのです!!
 
なぜ皆様に紹介したくなったのか!? それは…そうです!!感動したからです!!
 
この私が感動するという事はどういうことか? 作者と情熱とセンスにおいて
波長が合った同期した…ということかもしれません。さて、下記のシステムで
試聴を始めました。実際には三日間に渡り試聴しています。
 
 
   ◇ FrancoSerblin Ktema-inspection system ◇
 
………………………………………………………………………………
Soulution CD-Player 740 (税別¥6,000,000 )
http://www.noahcorporation.com/soulution/740.html
     and
TRANSPARENT PLMM+PI8(税別\606,000.)
http://www.axiss.co.jp/transparentlineup.html#POWER
     and
Project“H.A.L.C”H.C/3M(税込み\560,000.)
http://www.dynamicaudio.jp/audio/halc/
………………………………………………………………………………
                ▽ ▽ ▽
 
STEALTH Sakra  balanced XLR / 1.0m     $13,000
http://www.stealthaudiocables.com/products/Sakra/sakra.html
 
                ▽ ▽ ▽
………………………………………………………………………………
Soulution Line amplifier 721 (税別¥3,250,000 )
http://www.noahcorporation.com/soulution/720.html
     and
TRANSPARENT PLMM+PI8(税別\606,000.)
http://www.axiss.co.jp/transparentlineup.html#POWER
     and
Project“H.A.L.C”H.C/3M(税込み\560,000.)
http://www.dynamicaudio.jp/audio/halc/
………………………………………………………………………………
                ▽ ▽ ▽
 
ESOTERIC 7N-A2500/XLR 7.0m(税別\2,280,000.)
http://www.esoteric.jp/products/esoteric/7na2500/index.html
 
                ▽ ▽ ▽
………………………………………………………………………………
Soulution Mono amplifier 700 (税別¥12,000,000/1Pair )
http://www.noahcorporation.com/soulution/700.html
          and
TRANSPARENT PIMM(税別\240,000.)
http://www.axiss.co.jp/transparentlineup.html#POWER
………………………………………………………………………………
                ▽ ▽ ▽
 
TRANSPARENT Reference XL SPEAKER CABLE (3.0m) (税別\1,550,000.)
http://www.axiss.co.jp/ftran.html
 
                ▽ ▽ ▽
………………………………………………………………………………
FrancoSerblin Ktema(税別\4,500,000.)
http://www.francoserblin.it/
http://www.francoserblin.it/ktema/
………………………………………………………………………………
 
私の試聴インプレッションを後述するに当たり、作者の感性を事前に知って
頂くことが、しいては私の分析と印象を裏付けることにもなり、設計者であり
生みの親のFrancoSerblinのコメントの邦訳を先にご紹介致します。
 
 
  ■ フランコ・セルブリン氏からのメッセージ/Ktema誕生まで ■
 
「言葉では伝えきれない感情も、音楽という言葉を使ってならば伝えることが
 できる、私はそう信じているし、それこそが私の生み出す作品の使命である
 と考えています。」
 
長い経験、奔放なる自由と情熱、私の魂のすべてを込めて創りあげた作品が
誕生しました。Ktemaクテマは、私の人生に不意に訪れたチャンスによって、
まるで運命に導かれるように誕生しました。
 
そして、私の人生に情熱的な思いがけない輝きを与えてくれることとなりました。
素描スケッチの余白に走り書きした一行のメモ、そこからこの難解なプロジェ
クトは始まり、少しずつ深みを増しながら注意深くコンセプトは探られ形成さ
れていったのです。
 
ある日、私は長年の親しい友人から手紙をもらいました。
その中で引用されていた古人の一文に私は啓発され、それがプロジェクトの
キーワードとなり、名前となりました。
 
このときを境に、明確な「形」がクテマに与えられることになったのです。
その言葉を以下に紹介します。音楽再生の正確性が目指すべきものとは何で
あるのか、それについて述べている文章です。
 
ギリシャの著名な歴史研究家であるトゥキディデスが残した言葉に、
"Ktema eis aei"(a possession for ever)普遍なるもの、永遠の価値という
一節があります。
 
時間の経過に惑わされることのない、揺ぎない存在を意味し、"Punta rei"
(everything changes constantly)無常なるすべて、全てのものは変容し
続けるの反意語として使われています。
 
ところで、スピーカーはいつになったら「Punta rei」ではなく「 Ktema eis aei」
な存在になれるのでしょうか?
世の中に溢れ返る「Punta rei」な製品はもうたくさんです。
 
"Ktema eis aei"この象徴的な言葉が率直に私の心の琴線に響きました。
 
これこそが私の成したいことであったと明確に気付いたのです。
新しいものほど良しとする現代の価値観に縛られ、ゴールのない新技術や
新商品の開発競争の乱立のなかで、常に進化(たとえ単に目先を変えているだ
けであっても)、変化が求められ、今更もはや立ち止まることなど不可能な
この世の中にあって、それでも私は永久普遍のものを見出したい、永遠を感じ
させるものを創りたい、そんなチャレンジに取り憑かれたのです。
 
私は、このプロジェクトを必ず実現させようと意を強くしました。
それはまるで、押し寄せる"Punta rei"の大波にもまれながら必死に浮かぼう
とする小舟のような話でしたが「時を越えて不滅のものがある」その証明と
なる製品を自らの手で創りあげたいと決意したのです。
 
振り返りますと、1980年に発表した最初の作品Snailスネイルは、あの鮮烈な
外観故に、ある雑誌で"レオナルド風"(レオナルド・ダヴィンチ風)と定義さ
れ伝説と評されました。
 
スネイルでの経験を経て以来、私は、アコースティック楽器の響きに着想した
新しいコンセプトのスピーカーを数多く発表してきましたが、すべての作品に
言えるのは、一切の妥協を排し頑固なまでの首尾一貫したクラフトマンシップ
を捧げてきたということでしょう。
 
クテマも同様に、私のインスピレーションとデザイン哲学が隅々にまで注ぎ込
まれており、美しさと簡潔さを併せ持つ固有の自由な造形を誇っています。
 
「Parvaパルヴァ」「Minimaミニマ」「Electa Amatorエレクタ・アマトール」
これらの作品が今日も世界中の音楽関係の権威から真に評価され言及され続け
ていることを私は誇りに思います。
 
これらの作品群が長年に渡り"best loved by the Italians" (イタリア人に
よる最も愛すべきスピーカー)」と評されているのは嬉しい限りです。そして
代表作として現在もその作風が継承されている集大成「Guarneriガルネリ」
「Amatiアマティ」「Stradivariストラディヴァリ」へと続きます。
 
感慨深いこれらスピーカーの数々は、私が30年以上に渡り全身全霊を込めて
培ってきた情熱の軌跡です。音楽再生分野の歴史に名が刻まれているこれらの
代表作と同様、Ktemaクテマも私の情熱が生み出したもうひとつの分身として、
同様の道を歩むことでしょう。
 
今回の開発に関して、私はこれまでになく密なリサーチと深い考察を施しました。
外観デザインから、ドライバーユニットの選択、クロスオーバー回路の設計
まで、デザインの全てを自らで行い、様々な検証を経た上で、独創的な3曲面
構造ラインを見出しました。
 
30ものプロトタイプの試作を繰り返してようやく、新しさと古さ、その両方の
要素を併せ持つコンセプト通りのスピーカーに到達したのです。
 
実際には、技術革新の影響を一切受けず、淘汰も変化もせずに在り続けられる
商業製品はこの世に存在し難いでしょう。しかし、真に価値のあるものならば、
製品の本質とその存在理由は、時代の中でも生き続けることができるのです。
 
なぜなら、それらは自身のもつ確かな機能性とリンクして、また一種の普遍性
にもリンクして、時間の経過や流行に左右されない、普遍的な存在感が与えら
れるからです。
 
私は、普遍的なコンセプトを自ら確立する必要があり、それを実際の製品に
具現化しなくてはなりませんでした。
 
つまり私は、素晴らしい、しかし不可能にしか思えない、" Ktema eis aei"と
"Punta rei"の融合という困難な命題を与えられたのです。
 
真のオーディオファイル(探求者)が求める最もシンプルな要求、それは演奏が
再生される際の正確性と臨場感です。
 
私の意味するところの熱心な探求者とは、オーディオシステムを楽しむために
音楽を利用する人ではなく、音楽を楽しむためにシステムを求める人達のことです。
 
私は、自身の新作には、これまでとは一線を画す斬新で強固なコンセプトを
用いる必要があると感じました。
 
その新概念とは、上述の相反要素を克服したものでなくてはならないのと同時
に、製品はエレガントで機能的で使い勝手の良いものでなければならないとい
う多様な要望を満たしていなくてはならなかったのです。
 
また、クテマは、自意識の強い押し付けがましい製品になってはなりませんで
した。私のイメージの中でクテマとは、常に美しく"崇高な"ものを求める美意
識の高い人々の家に置かれるものであり、謙虚なたたずまいの"再生楽器"で
ある必要がありました。 
 
決して、役割を超えて自らを主張するような俗悪肥大した存在になってはいけ
ないのです。
 
一方、性能面では、知覚の限界を超えたアコースティックのさらなる可能性を
感じさせる、確かな個性をもちあわせた唯一無二のスピーカー、しっかりとし
たエモーションを感じる音づくり、それを私は目指しました。
 
クテマに対して私は、斬新で真に革新的な創造物であることを求めました。
そして、オーディオファイルの善き人生に寄り添いながら、彼らに時間を忘れ
てリスニングに没頭する喜びを授ける、穏やかで魅惑的な存在となって欲しい
と考えたのです。
 
コンセプトのきっかけは、クテマ誕生のはるか以前、ある考えがふと私の心を
よぎったことに端を発します。 
 
エンクロージャー内で演奏会を再現するという発想はどうだろうか…と。
 
そこで、コンサートの「舞台」にハイライトを当てるというアイディアが浮か
びました。このは発想に沿って、クテマの躯体デザインに明確な理由がつけら
れ形が与えられました。
 
つまり、最もシンプルで、最も直接的で、最も自然な方法で演奏会の臨場感を
再現すべく検証した結果、演奏の場を内部に設けること、つまりオーケストラ
のステージをスピーカー内に設けるという方法が、最もクリアでリアルな知覚
を可能にするのではないかという結論に達したのです。
 
ステージ上でも再生音楽上でもセンターはもっとも重要な部分で、注意が集中
して向けられるところとなります。
 
我々は、前面中央に立つコンサートアーティスト、ソリスト、歌手をその音楽
の焦点(フォーカルポイント)として明確に意識させることで、それを取り囲む
空間を立体的に感じ取ることができるのです。
 
周囲の音場、サラウンディングエリアは、フォーカルポイントに沿って設けら
れます。
オーケストラ、室内音楽団、ミュージシャングループなどがそれにあたります。
 
このステージ配置をクテマの構造で簡潔に示すと、ふたつの役割「センター」
をなすフロントバッフルに取り付けられたユニット群と、「サラウンディング
スペース」をなすそれ以外のユニットや構造の役割として説明されます。
 
さらに、クテマには、構造上のみならず技術的な観点でも、これまでとは一線
を画す特殊な選択がなされています。
 
特に、アコースティック可聴周波数帯域のミッドレンジを決して邪魔したり
汚したりすることのないよう、調整には細心の注意と配慮が施されました。
 
ミッドレンジは最も繊細で敏感なパートで、我々の耳が認識可能な最も僅かな
差異を知覚するところです。 
 
また、完成したハーモニクスの豊かさが、楽器の真の音色を際立たせる場所で
もあります。位相調整において、最も慎重な検討および顧慮が必要なパートな
のです。
 
このように、クテマの前面バッフルに搭載されている「センター」の中核と
なる3つのスピーカーユニットが決定されるまでには、実に数年の歳月が費や
されました。そしてこの要素こそが、クテマにおいて芸術的要素を担い、リア
リティを表現するもっとも重要な役割を果たしています。
 
ここで記すべきことは、音楽再生の根本的な目的とは、決して技術的パラメー
ターに盲目的に従属することではなく、的確な顧慮を配しながらも、最終的に
は、リスナーの耳を幸せで満たすこと、それには自らの聴感覚が不可欠なのだ
という明白な認識です。
 
クテマに於ける「センター」と「サラウンディングスペース」の全体構成は、
これらの理論に基づき様々な選択を経て決定されています。
 
「サラウンディングパート」についてですが、その役割はソロパートを適切に
サポートすることに加え、自身も、音楽の心臓部に伴走しそれを補うリアー
ディフュージョンという重要な働きを担っています。
 
低音部は、Allison, Klipsch, Snellなどの著名なスピーカー設計者により
草案されたデザイン思想に沿うかたちで採用されましたが、この分野は数ヶ月
に渡り、特に慎重な調整を重ねる対象となりました。
 
そして一連の試みは、たいへん興味深く、そして新たな特性に帰着したのです。
 
それは、ホーン・サラウンディング理論に基づきウーファーを後面に配置し、
エンクロージャーを直方体ではなく独特の3曲面設計(トリプル・アーチ・
シェープ)にすることで得た振幅の同調化(sychronicity in the vibration)
効果です。
 
ウーファーユニットの振動板に対し、フロントウェイブとリアーウェイブの
両方に同じ抵抗を与えることで、いくつかの予期せぬ結果に加えて、この類ま
れな特性を得ることができました。
 
それによって、クテマが実現する量感豊かな高音質は、単純な技術採用を超える、
よりエモーショナルな次元へとリスナーを導いてくれるのです。
 
クテマを聴くことで湧き上がる幸福とエモーションは、感性、教養、そして
音楽知識に溢れたリスナーの心を必ずや満たしてくれると確信しています。
 
私がテストと改良の長い月日を送っている時の事です。 
 
私はマエストロ・アンドレア・ボッチェッリ氏に招かれ、試作中のクテマを
持って氏の自宅を訪ねたことがありました。何枚もの自らのアルバムを聴き
終えた氏から贈られた賞賛の言葉を受けて、私がクテマに用いた独自の音楽
再生の表現方法に、改めて誇りと確信を抱いたことを覚えています。
 
「私の声が一層温かく、そしてより美しく見える!これこそが本物のホーム
 シアターだ、私がすぐそこにいる、すぐ前に。
 "a possession for ever" 普遍なるもの、の実現、おめでとう。
 コングラチュレーション!" 」
                        	Andrea Bocelli
 
冒頭で申し上げたように、私はこの魅惑的なチャレンジを成し遂げたことに
たいへん大きな満足を得ています。
 
そしておそらくこの試みに勝利できたのではないかと確信しています。
 
クテマを通して、みなさまが音楽を聴く素晴らしいひとときを、より一層
楽しんでいただけることを心より望んでいます。
 
                    2010年 フランコ・セルブリン
 
            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-
 
私は、この邦訳を転載するに当たり、当然長い文章なので省略し短縮しなけれ
ばと考えていましたが、どこを割愛するのかと自問すると、どこも削れず…
また編集も出来ないことに気が付きました。ご精読頂きありがとうございました。
 
そして、三日間に渡り聴き続けた私の分析と印象をこれよりご披露致します!!
 
 
      ■ 結論はKtemaとは響きを作るスピーカー ■
 
ダイナミックオーディオは創業してから45年。そして私の在社歴は33年、更に
H.A.L.と命名しての活動を初めて18年くらいになります。しかし、当然それ
以前からも高級オーディオの販売を手掛けオーディオと日々を共にしてきたも
のでしたが、ここで大切なのは時間的な長さではないということです。
 
最も重要なのは、どんな音を聴いてきたか…という経験値の高さだと思います。
 
私のキャリアを実績として示せるものは何か? セールスマンとしての販売実績
というドライな見方もありますが、ではなぜ実績が上げられたのか?
 
それは当然皆様のご愛顧によるところが最も大きな要因ではあります。しかし、
その自覚と感謝の気持ちを元にしても、私がここで演奏している音質に関して
皆様の支持と評価を頂けなかったら、ただの口のうまいセールスマンという
ことになってしまったでしょう。
 
ここで皆様に体験して頂く音質こそが、私の言葉より多くのものを皆様に提供
出来たものであり、その感動こそが私の信用という土台になったのではないか
と自負しているものです。料理人は味が勝負、そして私は音が勝負なのです。
 
そんな私が今回ばかりはKtemaを聴く最初の一曲として、いつものマーラーを
かけませんでした。FrancoSerblinの感性と情熱を拝受するという場面で思わ
ずKtemaをを磨きあげてから聴く最初の一曲として心に決めていたのはこれ!!
 
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/738.html
 
- The Secrets of Baroque Violin -
Enrico Onofri solo violin, music by Biber, Telemann, Bach etc.
(Ancor Records / Nichion / Sony Music Distributions)
 
http://www.enricoonofri.com/
 
http://homepage3.nifty.com/enricoonofri/ 
 
Baroque Violinはビブラートを用いない奏法であり、演奏する音響空間の響き
を積極的に利用するという背景は知る人ぞ知るという特徴かもしれない。
 
FrancoSerblinと同じイタリア、その古楽界を代表するEnrico Onofriのソロが
バッハ /トッカータとフーガの演奏において他のスピーカーとどのような対比
を見せるのかという興味関心がこの時ばかりは勝っていたのでしょう。
 
左右Ktemaのトゥイーター間隔は3.1m、私との距離は約4.3mくらいでセッティ
ングされ、他のスピーカーと同等なトライアングルを描く配置としました。
 
Enrico Onofriの鮮烈な演奏が始まった瞬間に私の耳という受容器官と頭の中
の記憶のファイルが大変な高速でクロスチェックを始めたのでした。
 
・このBaroque Violinの音像はこんなにコンパクトだったか?
・古楽器独特の質感としてこんなに弦の乾燥具合が感じられたか?
・反対にBaroque Violinの発音の一瞬後から広がる空間はこんなに大きかったか?
・余韻感として認識できる残響成分の滞空時間はこんなに長かったか?
・響きが拡散していく方向性として音源位置よりも高い空間が感じられたか?
・楽器の輪郭表現と残響との境界線はこんなに鮮明だったか?
 
他社のフロアー型スピーカーとの対比において、瞬時に記憶と照合して相違点
が私の頭中に比較のパラメーターとして表示されていくのでした。
 
「こんな音は他のスピーカーでは出ていなかったぞ!!いや?ちょっと待てよ!!」
 
多数のパラメーターとの類似点にチェックマークが次々に書きつけられていく
中で、私の記憶を検索していくとヒットするものが一つだけありました!!
 
「あ〜!!そうだ!!HB-1がこんな音を出していたぞ!!」
 
Kiso Acoustic HB-1と比較されるとFrancoSerblinはどのように思うかは分か
らないが、私の分析で共通項を多く含むものとしたらHB-1しかない!!
 
ヴァイオリン・ソロという選曲で最初に私が感じた事は、その後の選曲で次々
に革新に変わっていったのでした。当然、二曲目はいつものこれです。
 
■マーラー交響曲第一番「巨人」第二楽章  小澤征爾/ボストン交響楽団
 
小澤征爾が食道癌との闘病生活から復帰したという嬉しいニュースがあったが、
22年前の録音であるにも関わらず、その録音データは毎年、毎回のように違う
システムで再生する度に大いに私の美意識を刺激し、美音という記憶を更新し
続けて行くのだからオーディオとは面白い。同じ録音が年々素晴らしい音で
再現されていくというのだから興味が尽きることはない!!
 
この曲をKtemaが演奏し始めた瞬間から、いや!!正確に言えば、この曲に限らず
Ktemaで聴いたオーケストラ全てに共通する劇的な他社スピーカーとの違いが
認識されたのです!!
 
ヴァイオリン・ソロでは分からなかった低域の要素が発揮され、Ktemaでなけ
れば出せない音という事実を私は数秒間で察知してしまいました。
 
オーケストラの発する各パートの楽音にこれほどまで多彩な色とりどりの質感
があったのか!!という驚きの発見です!!
 
しかも、オーケストラが発するホールエコーにこれほどの多色多彩な響きが
あったのか、という驚きがスピーカーの果たす役目に新次元の設定値を瞬時に
聴き手に理解させるという説得力があるのだからギブアップするしかない!!
 
各論を述べると各パート、これは弦楽器と管楽器、打楽器など全ての楽音に
共通する特徴なのだが、楽音のディティールが極めて鮮明であるということ。
 
そして、輪郭表現がこれほど分離し解像度の高さを見せつけながらも、それら
が生み出すハーモニーが殊更に鮮明に階層の分離を見せ、最後には空間での
絶妙な響きの融合として耳に心地よい残響を残していくのだから堪らない!!
 
科学的根拠と高レベルの測定技術によって裏打ちされた数々のスピーカーたち
との相違点は何か? 作者の感性がどれだけスピーカーという変換機に表現され
ているのだろうか、という疑問はKtemaで聴くうちに私の頭の中で考える事
よりも楽しむこと味わう事に優先順位を決定づけてしまうのだから困った!!
 
ここで、同様な表現でクラシック音楽をKtemaで聴いた印象を述べる事は時間
の無駄になりそうなので、日頃使っているスタジオ録音のテスト曲も全て聴き
総合的な見地からKtemaを語らなければ仕方ないという一種の敗北感というか、
テキストで語れる感性の限界を感じつつ、実に多くの曲を三日間に渡り聴き
続けたのだった。さあ、Ktemaの特徴とは何か?
 
http://www.dynamicaudio.jp/file/100802/P1080135.jpg
 
さあ、もう一度↑この写真をご覧頂きたい。注目すべきはフロントバッフルの
面積である。黒いゴムストリングスはSonusfaberの時代から変わらぬものだが、
半円形のグリル部分の横幅、すなわちミッド・ハイ・ドライバーがマウントさ
れているフロントバッフルの横幅は実測で17センチあった。
 
ちなみにKiso Acoustic HB-1では約15センチとほぼ同じくらいだ。広大な音場
感とコンパクトな音像の両立ということでは、フロンドバッフルによるディフ
ラクション、つまり一次/乱反射が発生しないことが最も重要な要素である。
 
昔から述べているようにB&W Nautilusは、その象徴たるデザインであるわけだが、
ミッドレンジドライバーとトゥイーターの発生した音波がどれだけ球面波を
維持して拡散していくかという理論に対して、フロントバッフルの最小面積と
いう形状が大きく貢献し音質に表れているという事実。Ktemaは実に巧妙に
左右二面のアーチ・シェイプによって、音波の拡散を実にスムースに行うと
いうデザイン以外の音響的優位性をものにしているのである。
 
だから!!フロントバッフルにウーファーを取り付けたくない、ということに
デザインの進化論をもたらしたわけだ。他社のスピーカーでは測定上の優位性
を妥協したくなければフロントバッフルにウーファーをもってくるのは当然の
ことであり、誰しも考えないポイントだろう。
 
ここで一つのポイントを述べておきたいが、リアにウーファーがあったら、
中低域のレスポンスの連続性と位相特性に問題は発生しないのか? という事。
 
さて、ここでKtemaのクロスオーバー周波数を紹介する。見掛け上でミッド
レンジが二つなので、3ウェイに思えるだろうが、実は180Hz/500Hz/2800Hz
という帯域分割を行っている4ウェイなのである。
 
リアのウーファーは180Hzまでを受け持つが、実はフロントのミッドレンジの
下側一個は180Hzから500Hzというバンドパスで動作しているのである。
 
つまり、低音楽器の再生音はウーファーとミッドロードライバーの共同作業に
よって再生されており、決してウーファーだけに依存していないということ。
この技によってウーファーという構造物をフロントから除外することの弊害を
巧妙に取り去っていると言える。
 
このような音像の再現性に関して大きな重要性を構造的に示したKtemaは実に
素晴らしいヴォーカルを聴かせてくれるのだから堪らない!!クラシック音楽
だけでなく、スタジオ録音のヴォーカルの魅力をテスト曲で語り始めると、
私の気力体力が続かないほどに長文になってしまうほどなのである。
 
さあ、ここでもう一つの重要なポイントを理解して頂く必要がある。
この↓図面を先ずはご覧頂きたい。
 
http://www.dynamicaudio.jp/file/100803/ktema.gif
 
今までの解説が更に分かりやすいイラストになっているので、何で早く見せな
いのかと思われるでしょうが、この時点でも遅くはないのです。
 
まず、このイラストはリアのウーファーがbassを独立して再生するという概念
を示し、それが上記でFrancoSerblinが言うところの「ホーン・サラウンディ
ング理論」という事をある意味で説明しているものなのだが、実はこのイラスト
では誤解を招きやすい表現がある。
 
それはbassとmid-Highともに音波が扇型に広がっていくというイメージを与える
ことなのです。
 
音波の波長を考えると、そして音波の自然拡散の在り方を考えると扇型ではなく、
ほぼ円形、三次元的に言えば球体として音波は拡散していくということです。
 
つまり、mid-Highの音波はKtemaの左右のボディー表面をトレースするように
後方にも同心円を描いて広がっていくというイメージを追加して欲しいのです。
 
次にbassは波長が長いので、このイラストのように一方向性に向かって進行す
るとうイメージではなく、ほぼ360度の周囲の空間に向けて拡散していきます。
 
しかし、ウーファーの再生する周波数が低くなればなるほど、ここにホーン・
サラウンディングという考え方で聴き手に臨場感を与える要因を作り出して
いくことが出来るのです。
 
あ〜、どうしても長くなってしまうので簡単に結論をまとめますと…(^^ゞ
 
Ktemaの発する低域は個体感を重視してスタジオ録音のドラムやベースを前方に
写実的表現でポンと定位させるのではなく、左右のKtemaを連結するように
低音という一種のステージ感というか背景というか、楽音のビジュアルを
投影するスクリーンとして空間に絵画のキャンパスのような下地を構成して
くれるという表現でイメージして頂ければと思います。
 
だから、私がかけた数々のスタジオ録音でもアコースティックな音場感を演出
しているものには抜群の相性を示すが、低音のリズム楽器をむき出しで聴きた
いという場合には多少間延びしたというかテンションが緩いという印象をもつ
方もいらっしゃるはずなのです。
 
しかし!! そこがFrancoSerblinが求めた美意識なのです。
そして、それは他社のスピーカーでは真似のできないことなのです。
 
なぜ真似が出来ないのか?
それはFrancoSerblinの感性によってチューニングされているからなのです。
 
ここが最大のポイントでしょう!!
FrancoSerblinとはスピーカーと音楽というものを本当に知り尽くした人物だと
私は改めて感動してしまいました。こんなスピーカーを作れる人間は地球上に
FrancoSerblinだけです!!
 
私も説明も時間と気力に負けそうで、両方ともにもっと欲しいものですが、
ここで上記のFrancoSerblinのコメントを再度引用します。
 
「つまり、最もシンプルで、最も直接的で、最も自然な方法で演奏会の臨場感を
 再現すべく検証した結果、演奏の場を内部に設けること、つまりオーケストラ
 のステージをスピーカー内に設けるという方法が、最もクリアでリアルな知覚
 を可能にするのではないかという結論に達したのです。」
 
これを私が補足すると、「オーケストラのステージをスピーカー内側の音と
外側の音とを連結し融合することで臨場感を再現する」ということなのです。
 
            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-
 
日本にはまだ1セットしかないKtemaを再度ここで実演出来る機会を作ります!!
 
8月13日から15日までの三日間、私が文章で述べたかったこと、伝えられなか
ったことを、同じシステム構成で皆様に聴いて頂けるようにしました!!
 
私の未熟な文章力ではなく、Ktemaの完成された美意識を直接味わって下さい!!


このページはダイナフォーファイブ(5555):川又が担当しています。
担当川又 TEL:(03)3253−5555 FAX:(03)3253−5556
E−mail:kawamata@dynamicaudio.co.jp
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