発行元 株式会社ダイナミックオーディオ
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H.A.L.担当 川又利明




2007年3月20日
No.480 「小編随筆『音の細道』特別寄稿 *第60弾*」
『後世に語り継がれる魅力!! ORPHEUS Heritage DACを私はこう聴いた!!』

         〔1〕推薦するということの責任感

私はアマチュアである。プロの物書きではない!!

感動したもの素晴らしいもの良いものは良いと力説できるし、何よりも実演して
証明できるということが私の一番の強みである。だが自分が納得できないものは
いくら高価なプライスタグを付けようとも、また雑誌でいくら絶賛されようとも
私は同調できない。

そのための“HI-END AUDIO LABORATORY”であり、単なる売り場やショールームで
はないということを自負しながら日々仕事をしている。

言わば自分のプライドをかけて音を“作っている”のである。
「あれだけ高価なものを並べていりゃあ〜、そりゃあいい音するに決まってるよ」
というのは大きな誤解であってオーディオの本質をご理解頂けていないということ
ではないかと申し上げたい。

世界中の高級食材には色々なものがある。食べつけたことはないが、フォアグラ、
キャビア、トリュフくらいは私も知っていて、中華料理では熊の手、燕の巣や鱶鰭
などがそうだろう。しかし、そんな高価な食材を手にしたのが一般的な主婦だった
ら調理の仕方もわからないだろう。

仮に何かでレシピを調べることが出来ても調理した結果でどのような味に仕上げる
のかという完成品のイメージ、味という具体的な目標がわからなければ意味がない。

高名な演奏家には個人や財団から値を付けられない程の希少であり高価な楽器が
貸与され演奏や録音に使われるということがある。つまり、道具の価値観に見合う
使い手であるということが認められるからこそ、芸術家の活動という崇高な目的の
ために名器と言われる楽器がふさわしい演奏者にめぐり合えるのだろう。

私は自負を持っているが思い上がりにならないような謙虚さと自分に対する厳しさ
を持ち、自分の信条に妥協のないように日々ハイエンドオーディオに対する追求の
姿勢を崩すことのないように努力している。

そんな私に世界中の名器と言われる可能性を求める作品たちが集まってくる。
今回私が試聴したのはこれ、ORPHEUS Heritage DACだ!!

http://www.yukimu.com/jp/orpheus_heritage_dac.htm



            〔2〕試聴システム

2007年3月7日、私は初めて実物を目の当たりにした。

http://dyna5555.cocolog-nifty.com/photos/secret/orpheus_heritage.html

その後、体調を崩したこともあり、その間にバーンインを重ねておこうということ、
同時に新企画のプロモーションも進行させなければならず、ほぼ10日間のウォーム
アップを行なってから本格的な試聴を開始した。


     ◇ ORPHEUS Heritage DAC inspection system ◇

………………………………………………………………………………
ESOTERIC G-0s(税別\1,200,000.)
http://www.teac.co.jp/av/esoteric/g0_g0s.html
     and
JORMA DIGITAL/BNC-BNC 24cm Internal Wire
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/470.html
     and
ESOTERIC PS-1500+7N-PC9100(税別\950,000.)
http://www.teac.co.jp/av/esoteric/ps1500/
………………………………………………………………………………
                ▽ ▽ ▽
ESOTERIC 7N-DA6100 BNC(Wordsync用)(税別\240,000.)→ESOTERIC D-01×2
http://www.teac.co.jp/av/esoteric/mexcel/
                ▽ ▽ ▽
………………………………………………………………………………
ESOTERIC P-01 (税別\2,200,000.)
http://www.teac.co.jp/av/esoteric/p01_d01/
     and
ESOTERIC PS-1500+7N-PC9100×1(税別\950,000.)
http://www.teac.co.jp/av/esoteric/ps1500/
http://www.teac.co.jp/av/esoteric/powercable/9100mexc.html
………………………………………………………………………………
                ▽ ▽ ▽
ESOTERIC 7N-DA6100 RCA 1.0m(税別\240,000.)■44KHz Singleで伝送     
http://www.teac.co.jp/av/esoteric/mexcel/
                ▽ ▽ ▽
………………………………………………………………………………
ORPHEUS Heritage DAC(税別\4,000,000.)
http://www.yukimu.com/jp/orpheus_heritage_dac.htm
     and
TRANSPARENT PLMM+PI8(税別\606,000.)
http://www.axiss.co.jp/transparentlineup.html#POWER
………………………………………………………………………………
                ▽ ▽ ▽
ESOTERIC 7N-DA6300 RCA 1.0m×2(税別\560,000.)
http://www.teac.co.jp/av/esoteric/mexcel/6300.html
                ▽ ▽ ▽                    
………………………………………………………………………………
HALCRO dm8(税別\2,200,000.)
http://www.harman-japan.co.jp/products/halcro/dm8_10.htm
     and
TRANSPARENT PLMM+PI8(税別\606,000.)
http://www.axiss.co.jp/transparentlineup.html#POWER
………………………………………………………………………………
                ▽ ▽ ▽
ESOTERIC 7N-DA6100 MEXCEL RCA 7.0m
http://www.teac.co.jp/av/esoteric/mexcel/
                ▽ ▽ ▽
………………………………………………………………………………
HALCRO HALCRO dm88 ×2 (税別\7,600,000.)
http://www.harman-japan.co.jp/products/halcro/dm38_68.htm#dm68
http://www.halcro.com/productsDM88.asp
          and
TRANSPARENT PIMM+PLMM(税別\606,000.)×2set
http://www.axiss.co.jp/transparentlineup.html#POWER
………………………………………………………………………………
                ▽ ▽ ▽
STEALTH Hybrid MLT Speaker Cable 5.0m H.A.L.'s Special Version
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/290.html
                ▽ ▽ ▽
………………………………………………………………………………
MOSQUITO NEO(税別\4,800,000.)
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/oto/oto54.htm


    ■ 比較参考用として下記システムも同時に試聴 ■

以上は上記システムと同様にしてトランスポートより一系統を下記に分配
………………………………………………………………………………
ESOTERIC P-01 (税別\2,200,000.)
http://www.teac.co.jp/av/esoteric/p01_d01/
     and
ESOTERIC PS-1500+7N-PC9100×1(税別\950,000.)
http://www.teac.co.jp/av/esoteric/ps1500/
http://www.teac.co.jp/av/esoteric/powercable/9100mexc.html
………………………………………………………………………………
                ▽ ▽ ▽
ESOTERIC 7N-DA6300 XLR 1.0m×2 Dual AES/EBU(税別\560,000.)
http://www.teac.co.jp/av/esoteric/mexcel/6300.html
                ▽ ▽ ▽
………………………………………………………………………………
ESOTERIC D-01(税別\2,200,000.)
http://www.teac.co.jp/av/esoteric/p01_d01/
     and
ESOTERIC PS-1500+7N-PC9100×2(税別\1,300,000.)
http://www.teac.co.jp/av/esoteric/ps1500/
http://www.teac.co.jp/av/esoteric/powercable/9100mexc.html
………………………………………………………………………………
                ▽ ▽ ▽
ESOTERIC 7N-DA6300 XLR 1.0m×2(税別\560,000.)
http://www.teac.co.jp/av/esoteric/mexcel/6300.html
                ▽ ▽ ▽
………………………………………………………………………………
HALCRO dm8(税別\2,200,000.)
http://www.harman-japan.co.jp/products/halcro/dm8_10.htm
     and
TRANSPARENT PLMM+PI8(税別\606,000.)
http://www.axiss.co.jp/transparentlineup.html#POWER
………………………………………………………………………………
以下はパワーアンプからスピーカーまで同様として随時比較

             -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

このようなシステム構成としたが、ESOTERIC D-01との比較において優劣を検討
するというものではなく、長年のリファレンスとして聴きこんでいるD-01と個性の
対比をすることでORPHEUS Heritage DACの魅力を語る上で参考にしたものである。

また、基本的にケーブルに関しては一貫してESOTERIC MEXCELシリーズを採用する
ことで伝送系の誤差を最小にしようという配慮、特にDACからプリアンプへという
アナログ変換後のラインには同じ7N-DA6300シリーズを使用し導体そのものを同一
とすることで最も重要な伝送系に配慮したもの。

そして、Heritage DACは入力は44KHzのRCAシングルとしているが、ESOTERICのP-01
の出力でも特にアップサンプリングはしていない。では、同社のD-01に対しては
どうかと言うと176.4KHzにアップサンプリングして伝送させている。

一見不公平のように見えるが、実はここからがHeritage DACの面目躍如という
テクノロジーが見えてくることになる。



           〔3〕Heritage DACの特徴

http://www.yukimu.com/jp/orpheus_heritage_dac.htm

ORPHEUS Heritage DACの詳細は輸入元の上記サイトに述べられている通りだ。
その中で下記の写真をじっくりご覧頂きたい。

http://www.yukimu.com/jp/image_orpheus/hdac_in.jpg

Latest Q5アナグラム・テクノロジーズの最新非同期サンプルレート・コンバー
ター(SRC)であるLatest Q5モジュールをチャンネル毎に搭載。192kHzまでのPCM
デジタル信号をすべて768kHz/24bitに変換。この仕事をしているのが上記リンクの
写真左側で輝く金属ケースが四つ見られるが、その一番手前、各種デジタル入力
端子の直近にあるモジュールだ。

http://www.noahcorporation.com/behold/

768kHz/24bitに変換という技術は私にとっては初めてのものではなく、下記の
beholdが登場したときに大変素晴らしいインプレッションを述べたものだった。

http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/346.html ぜひご覧下さい。

前述ではトランスポートのP-01からのデジタル出力を何もアップサンプリングしな
いでHeritage DACに送るということで不公平感があるのでは、ということに対して
実はHeritage DACそのものが内部で48KHzの16倍というアップサンプリング技術を
確立しているので私は今回は何も意に介さずにセッティングしたものだった。

             -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

さて、その向こう側中央に二個並んでいるのがQ5モジュールで生成した768kHz/
24bit信号を384kHz/24bitデータを8回路分生成するSONIC2モジュール。更にその
奥に一個あるのがタイムロック・モジュールということになる。

さて、私はここで意外なものを見つけた。これと同じものが二本タイムロック・
モジュールから左右の基板に配線されている。

http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/op-pho/g03_009.jpg

そう、G-0Rbで新規に採用されたIEC60169-10(TYPE SMB)という規格のコネクター
だった。何と目の付け所は世界的な視野で見ると似てくるものなのか。
http://www.jae.co.jp/new/jnew/jnews225.htm
http://www.jaeconnector.com/jp/type_jp.cfm?type_code=T0080

輸入元のサイトにもあるように、このタイムロック・モジュールのジッター性能は
1ピコ秒以下ということなのだが、これは0.000 000 000 001秒ということ、つまり
一兆分の一ということであり、ちょうどRubidium発振素子の精度と同程度という
ことになろうか。それにしてもMaster Clock Generatorを自前で内蔵化していると
いうことになり、アナグラム・テクノロジーズの技術力の高さを見せ付けられた。

             -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

そして、アナログ・デバイセズ社のデュアルDACであるAD1955Aを4基、独立した
合計8回路のDACをひとつのチャンネルに使用するという贅沢な仕様だが、実は
これもESOTERICのX-01D2でも6個使用している。

http://www.teac.co.jp/av/esoteric/x01_ux1/x01d2.html

http://www.teac.co.jp/av/esoteric/mexcel/

ハイテク・デバイスメーカーの進化によってハイエンドオーディオも同様に進歩
していくということなのだが、上記システムのように超広帯域のESOTERIC MEXCEL
シリーズのケーブルでセットアップしたことも両ブランドの対決に正確さと彩りを
添えることになったようだ。



        〔4〕ノーマルCDの潜在能力と隠された魅力

今まではどちらかと言うと比較試聴が多く、単体でのコンポーネントの魅力を探る
というよりは音の間違い探しというイメージで集中力を発揮し、かつ過去の記憶と
の照合を瞬間的に行ないながら緊張を強いる試聴が私の仕事ではつきものだ。

しかし、このORPHEUS Heritage DACでは私の息抜きも兼ねて(^^ゞ音楽を楽しみな
がら聴いてみたいものだ…、という願いがあった。さあ、どういうことになるか?

まず最初の一曲として私は迷うことなくこれをかけることにした。もう、定番で
あるマーラー交響曲第一番「巨人」小澤征爾/ボストン交響楽団第二楽章。さあ!!

「あー!! これいいです!! 私好きです!! こんな美しいマーラーは初めてだ!!」

陳腐な第一印象だが、私にしては珍しく第二楽章だけのはずが最後の四楽章まで
席を立つことが出来ず聴き続けてしまった。

第二楽章の冒頭から私を虜にする弦楽器の美しさが際立つ。
稀に見る情報量と余韻感を平然と発揮しながら何と滑らかな質感だろうか!!

エコー感の豊潤さが印象に残るDACでは金管楽器の質感にまぶしさ鋭さが伴う場合
がままあるのだが、Heritage DACは私のこの耳をもってしても刺激成分を検出する
ことが出来なかった。オーケストラの弦楽器はオーディオシステムでは“面”と
して認識できると常々例えてきたが、ステージの両翼一杯に広がる弦楽器群の末席
の演奏者にも均一な光を当て、各パートが放出するエコー感は私の記憶の中でも
トップクラスの見事さだ。

そして、オーケストラに対峙するタクトを持たない小澤征爾の左手が腰よりも低い
位置で手の平を下にして抑えるようなしぐさをしているのか、弱音部の弦楽器の
豊かな響きが何とも美しく、その同列で木管楽器の佇まいに潤いを感じつつ、特に
マーラーの曲で魅力的な展開を見せるホルンが一斉にフォルテに差し掛かったとき
私は背筋にぞくぞくっとする電撃を感じてしまった。こんなことってあるのか!!

この最初の一曲で私はHeritage DACに一目惚れしてしまった!!

Word syncなど我関せず!! と独自のデジタル技術で素晴らしい演奏を聴かせてくれ
たD/Aコンバーターとして私はGOLDMUND MIMESIS 20MEの存在を大変高く評価して
いるものだが、それに勝るとも劣らない素晴らしさがHeritage DACにはある!!

独自の手法で完成度の高さを競い合うことに異論はなく、ESOTERIC D-01に関して
もフルスペックの実力が発揮できるようなアップサンプリングでの設定を常として
いるのだが、それと堂々と渡り合う実力。

いや、ここでのセットアップではESOTERICのシステムには同社の電源システムと
して7N-PC9100とPS-1500を惜しげもなく投入しているので、フロントエンドの価格
としては400万円のHeritage DACを上回る構成となっている。
しかし、役者が違うのか!!

             -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

弦楽器のあまりの自然な美しさに心惹かれてしまった私は当然の選曲として次に
これを聴いてみることに。

http://www.universal-music.co.jp/classics/artist/akiko-suwanai/discography.html
諏訪内晶子(ヴァイオリン指揮)ヨーロッパ室内管弦楽団
J.S.バッハ:ヴァイオリン協奏曲集

2つのヴァイオリンのための協奏曲 BWV1043  1. 第1楽章:Vivace がはじまった。

「はあ〜、こんなに美しいヴァイオリンって…」

言葉がないというのが率直な印象。この一言はため息ということです。

このディスクには私のお気に入りがある。ヴァイオリン協奏曲 第1番 BWV1041
第1楽章:Allegro moderato 第3楽章:Allegro assai そして、ヴァイオリン
協奏曲第2番BWV1042 では 第1楽章:Allegro がずっと昔から大好きな曲だ。

溜まらずリモコンで選曲して、むさぼるように諏訪内のStradivari dolphinの音色
を聴き続ける…。

「あ〜、こんなに甘美で切ない諏訪内の演奏ってはじめてだ!!」

彼女の若さあってか、指揮者としてはやや早めのバッハだが、彼女のStradivariが
織り成すアルコの一ストロークからほとばしる音色と色彩感の乱舞は私の大脳に
恍惚感にも等しい快感と驚きをもって浸透してくる。これはたまらない!!

29年前の録音になるオーケストラと二年前のほぼ最新録音と言える両者の弦楽器に、
私は時代を超越した演奏者の情熱とパッションを感じた。これはHeritage DACの
なせる技なのだろうか!!

             -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

次はやはりSACDで諏訪内晶子/詩 曲(ポエム)より
http://www.universal-music.co.jp/classics/artist/akiko-suwanai/
1トラック目のサン=サーンス:序奏とロンド・カプリチオーソ 作品28

ここで使っているのはハイブリッド・ディスクということなので、P-01のリモコン
のPLAY AREAで「CD area」を選択し、Heritage DACに通常のPCM信号を出力させる。
Heritage DACの操作系は本体の右サイドパネルにあり、フロントパネルの優美な
カーブの前面にはインジケーターのみでスイッチはない。

慣れてくると何も問題なく、フロントパネルの右側に手を伸ばせば入力セレクター
のスイッチがすぐにわかる。アップダウン式になっており同期すればインジケー
ターが点灯に変わる。

同じ諏訪内のディスクではオーケストラになると録音レベルが低く設定されている
のでプリアンプのボリュームを調整し聴き始める。

「あ〜、いいな〜。柔軟性と情報量が両立すると、こんなしなやかでありながら
 ホールエコーがとても豊かなんて…。これは文句のつけようがないぞ!!」

さて、ここで私の悪癖が首をもたげる。せっかくだからESOTERICと較べてみよう!!
そして、どうせだったらSACDの音質で比較してみるか〜。

再びリモコンでPLAY AREAを操作して「SACD 2ch」にセットして再度スタートした。

「いや〜、さすがだね〜。やっぱりSACDの方が私の各チェック項目のすべてで
 素晴らしい!! これが今まで基準にしてきたんだから…」と確認して満足した。

しかし、待てよ…。ここのESOTERICシステムは完璧にセットアップしてある。
構成要素が考えてみてもP-01/D-01/G-0s/PS-1500/7N-PC9100/MEXCELシリーズなど
電卓で弾くと…ざっと税別定価の合計で888万円となる。これが前提だろう。

そして、このESOTERICシステムでSACDをかければ納得の音質が得られるわけだが、
ハードウエアは同じくしてディスクのフォーマットを変えたらどうなるのか?

再度リモコンでPLAY AREAで「CD area」を選択して同じ曲をかけてみた…!?

「う…、うん〜、これはね〜、どうしたものかね〜」

もちろん、決して悪いというものではない。あくまでも先ほどのSACDの音質の記憶
が鮮明であるが故の反作用と言えるだろう。でも、通常のCDレイヤーの音はこうな
んだから…、と私はもう一度Heritage DACに戻してみた。

「あー!! これはさっきよりも個性がわかるぞ!! いいじゃないかー!!」

この勝負は微妙だろう。完全に私がブラインドテストをしたらどうなることやら…。
本体価格400万円のHeritage DACにはスペックで示されるテクノロジーでけでなく、
再生音というものをどのように捉えるか、音作りのうまさセンスが感じられる。

とにかく、オーケストラをはじめとする弦楽器の再生音にはすこぶるつきの魅力が
あるということだけは断言できる。これは素晴らしい!!

             -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

さあ、ホール録音のニュアンスがとてつもなく美しく再現されるという魅力が前例
のないレベルで私のハートを揺さぶったHeritage DACだが、スタジオ録音ではどの
ような展開を見せるのか!?

ここでひとつのキーパーソンが私にうれしいプレゼントを贈ってくださった。

その方はディスクのクレジットにはこのように記載されている。 Shun-ich Kogai
(本名の公開は控えたいので親しみを込めて敬称は省略させて頂きました)

http://www.shimaken.jp/  より  http://www.shimaken.jp/sss/

今井 美樹/ゴスペラーズ/島田 歌穂/DJ KRUSH/中島 美嘉/bird/ 平原 綾香
/森山 良子/矢野 顕子/りんけんバンド/ロン・カーター

この豪華メンバーによるスーパーセッションということで、詳細は上記サイトを
ぜひご覧頂きたいものです。

さて、このShun-ich Kogaiと私が知り合ったのはほぼ25年くらい前のこと。
レコーディングエンジニアでありながらオーディオマニアでもあり、これまで
手がけた録音は大編成からソロ録音まで幅広く、オーケストラからジャズまで
こなすという名人。私の試聴室のディスクのコレクションにも同氏の作品は
多数あるが、残念ながらアーチストの影となる縁の下の力持ち的な存在なので
表舞台には中々登場することはない。

しかし、Shun-ich Kogaiの作り出す音はアコースティックな音場感の追求と楽器、
アーチストの存在感にぴったりフォーカスを合わせた録音というもので、言わば
私が目指すハイエンドオーディオの理想像と一致するところなのである。

純然たるクラシック音楽から今回のようなジャズまでShun-ich Kogaiのセンスは
共通するところがあり、それがミュージシャンからの絶大なる信用となってフリー
ランスとして独立してもアーチストご指名の仕事が引きもきらず多忙な日々を
送っている。■当然ハルズサークルの会員でもある(^^ゞ

先日もSME乃木坂ビルの地下にあるソニーミュージックスタジオで仕事中の同氏か
ら電話が入った。

「川又さん、今、加藤登紀子さんの新アルバムの制作中なんですが、メールで最近
 話題になっているJORMA DIGITAL/BNCをスタジオで使いたいのですが…」

はい〜、では試聴室でばっちりバーンインが完了している一本を提供しましょう、
と言うと、ではスタッフに取に行かせますので、ということで即決。それに続けて
輸入元より翌日に4本を送り込んで無事にお仕事は終わられた様子。

後日Shun-ich Kogaiから頂いたメールでは…

「川又 様

 JORMA DIGITAL/BNC-BNCを貸していただき有り難うございました。

 今回はプロツールスのシンクケーブルとして使いましたが、サウンドの
 クォリティーアップにはスタッフ一同感激してしまいました。シンクケーブルで
 の音の変化は体験的に知っていましたが、スタジオにあるBNCケーブルは
 たいしたものが無く、良くてベルデン製のものでしたので、この変化は驚きです。

 一度JORMA DIGITAL/BNC-BNCを使ってしまうと後戻りが出来なくなってしまいま
 した。数本ずつ揃えたいと思っています。」

了解しました!!
これまでにも私のネットワークでマイクロホンや各種ケーブルなどの提供で
Shun-ich Kogaiのレコーディングには私も一役かってきたという関係で、以前の
ディスクには私の名前もクレジットして頂いたものが何枚もあります(^^ゞ

と、いうことで、この島 健のスーパーセッションは演奏も音質も素晴らしく全部
聴いてしまいました!!

クラシック録音の性格に抜群のパフオーマンスを示したHeritage DACですが、何と
スタジオ録音に関しても最高レベルの演奏を聴かせてくれました。

弦楽器が素晴らしいと表現すると、しとやかで穏やかでソフトなイメージが先行す
るでしょうが、実際には全く別次元でHeritage DACは魅せてくれます!!

先ず、ドラムヘッドのテンションが実に小気味良く、パーカッションも含めて
打楽器の再現性がことのほかハイスピードに展開する。当然、島 健のピアノなど
は左右スピーカーの中間に呆れるほど鮮明に描かれ、それが転がるように各キーの
打音をNEOの各ユニットがしっかりと叩き出している。

録音そのものが潤いと切れ味を両立しているという旨味があり、各々の曲ごとに
ピアノの捉えかたに共通項を持たせながらもヴォーカルのニュアンスの違いを
アーチストごとに鮮明に表現している。

ここでは中島 美嘉のディスクはないので初めて聴いたが、彼女のかすれた声質が
Audiophile Vocal Recordings で聴きなれたValerie Joyceが歌う「Fever」と同じ
曲で絶妙のバランスで聴くことが出来た。
http://www.chesky.com/core/details.cfm?productcode=SACD323&productcategoryid=3

そして、この曲では名手ロン・カーターのウッドベースがフィーチャーされている
のだが、NEOのタイトなウーファーの性格をもってして重量感と程よいグリップ感
で膨らみもせずヴォーカルの存在感をマスクすることなく中島 美嘉の声に適度な
しっとり感を持たせているのが素晴らしい。

編集とマスタリングで様々に音質を変えながら作品として仕上げていくスタジオ
ワークのセンスの良さ、これは言い換えれば私が求める高いハードルを前提とした
自然さということでHeritage DACはホール録音との共通項を自身の魅力として私に
納得させた!!

それは、仕事として製品の分析を一定時間でこなしていかなければ…、という意識
を完全に捨て切れない私にアルバム全曲を聴かせてしまう再生音の魅力として最後
に述べておきたいものだ!!

ORPHEUS Heritage DACが聴かせてくれる音楽。

それはHeritage DACそのものが遺産として使い手の手元にとどまるものではない!!

Heritage DACが聴かせてくれた音楽の喜びと感動、そして記憶が、人の一生という
時間を使いながら私たちの過去に残していく“音楽の遺産”となるのです!!

皆さんは音楽を聴いて何が心に残りますか!?

その答えをHeritage DACに求めて頂きたい!!


このページはダイナフォーファイブ(5555):川又が担当しています。
担当川又 TEL:(03)3253−5555 FAX:(03)3253−5556
E−mail:kawamata@dynamicaudio.jp
お店の場所はココです。お気軽に遊びに来てください!!

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