発行元 株式会社ダイナミックオーディオ
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H.A.L.担当 川又利明
2012年6月21日
 No.931 「Inter-view対象:国内のオーディオ誌では未発表のMcIntosh XRT1K」
 
【新企画⇒H.A.L.'s Inter-view!!】

Vol.1 「Inter-view対象:国内のオーディオ誌では未発表のMcIntosh XRT1K」

インタビュー(英:Interview)とは、二人かそれ以上の間での会話で、一方が
他方に質問をして情報を得るために行われるものである。

インター(inter)とは「互いに」「相互に」という意味の接頭語。
ビュー(view)とは「見る」「眺める」の意味をもつ動詞である。

調査型のインタビューは、質問者と、情報源となる対象者の間に構築された
社会的相関作用である。そこでは、最初に立てた仮説と比べて適切と思われる
情報を得るために質問者は対話を開始しそれをコントロールする。

             -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

インターナショナル、インターネット、インターチェンジ、インタラクティヴ、
オーディオではインターコネクト・ケーブルなどなど、確かに「相互に」にと
いう意味がうなずけるものです。

私は、この(Interview)からInter-viewとしました。つまり、相互に関係を
持ちながら私の視点で見つめる事、分析することを-viewで表現しました。

オーディオ製品は私達に取って音楽という感動を提供してくれる情報源とも
言えるでしょう。私のインタビューは対象者に様々な問いかけ、実験、分析
などを投げかけ、私の仮説を証明していきます。

私の仮説とは…、「この音は人々を感動させることが出来る」ということ。
音楽を聴いて感動するのはなぜか、その裏付けを私の分析と推測によって
インタビューの対象者の個性と本質、そして魅力の要因を述べるコラムです。

             -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

Vol.1 「Inter-view対象:国内のオーディオ誌では未発表のMcIntosh XRT1K」
http://www.mcintoshlabs.jp/jp/Products/pages/ProductDetails.aspx?CatId=Speakers&ProductId=XRT1K

■調査目的:「McIntosが目指した音とは何か!?」

■発端は下記システムとの出会いでした。
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/916.html

■私の知りえるハイエンドオーディオとは一線を画する魅力的な音。
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/917.html


[1]全体像

最も特徴的なのは2019mmという高さだろう。しかし、日本の一般的な天井高で
あれば受け入れ可能な範囲。もちろん音質的な根拠あってのこと。
http://www.dynamicaudio.jp/file/120409/XRT1K-D01.gif

25センチウーファーで下限の再生周波数特性は20Hz(-10dB)というスペックを
公開していますが、この秘密がXRT1Kの頭頂部にあったわけです。

http://www.dynamicaudio.jp/file/120408/mcintosh2012.04.04.08.jpg
これは輸入元のホームページでも紹介していない項目です。

直径は15センチ、長さは何と64センチという巨大なバスレフポートがXRT1Kの
てっぺんに向けて搭載されているのです!!

これほど大口径/大型ポートは滅多にお目にかかれるわけではなく、この大胆
でユニークな設計が20Hzという低域の再生限界を拡張しているわけです。

そして、床上2メートルの高みから放射される低域が空間を満たすことで
得られる魅力がXRT1Kの特徴でもあります。

エンクロージャーの全容積は約70リットル、再生周波数帯域20Hz〜45kHzと
いうことですが、これは-10dBダウンのレンジをとっているとのこと。

この低域の再生に大きく関与しているのがポートチューニングですが、上記の
大型バスレフポートの共振周波数は31Hzに設定されています。

そして、これだけの重厚な低域を再現するために要する設置面積はたったこれ
だけというのですから、他のスピーカーと比較すると素晴らしい省スペース。
http://www.dynamicaudio.jp/file/120409/XRT1K-D02.gif

その構造的な特徴を支えるのが高剛性アルミニウム押し出し成形のエンクロー
ジャーの採用でしょう。以前の同社スピーカーでは木材を基調としたものですが、
内部の平行面をなくし、機械的にもダンピングを施したコラムスタイルです。
エンクロージャー内部の吸音材はスチレンプラスチックライナーを使用しています。
http://www.dynamicaudio.jp/file/120409/XRT1K-10.jpg
最大外形寸法(1台)W368×H2,019×D403mm 質量(1台)76.5kg

3ウェイ74スピーカーシステムということで多数のドライバーを搭載している
フロントバッフルは約12mmの厚みがあるMedium-density fiberboardで作られています。

3ウェイのクロスオーバー周波数250Hz、2.2kHzということで、各々のスロープ
特性は各々は次のようになっています。

ウーファーのローパスは250Hzより-18dB/oct、ミッドレンジのバンドパスは
250Hzよりローカットは-12dB/oct、2.2kHzからのハイカットは-12dB/oct、
トゥイーターのハイパスは2.2kHzから-12dB/octとなっています。

さて、このような構成の各ドライバーにはどのような特徴があるのか?
更にInter-viewしていきましょう!!


[2]搭載ドライバー

■インライン配置の19mm Titanium Dome Tweeter  28個
Neodymium-Iron-Boron Alloy Magnets
http://www.dynamicaudio.jp/file/120409/XRT1K-01.jpg

このチタン・ドームトゥイーターのボイスコイルは直径20mm、エッジは加工
した布製、クロスオーバー周波数2.2kHzより-12dBのスロープ特性にて45KHz
までを再生している。

この写真でも見られますが、トゥイーターのダイヤフラムの正面にはクロス
バーが取り付けられている。フロントバッフルにつながるフレーム周辺の
カーブが絶妙で、バッフル面にはきれいなサーフェスでマウントされている。
http://www.dynamicaudio.jp/file/120404/mcintosh2012.04.04.03.jpg

見た目は地味だが45KHzまで再生可能なチタン・トゥイーターなので、恐らく
高域の指向特性を広げるためにディフューザーとプロテクターの役目とを
果たしているものと推測している。

このABS樹脂製クロスバーはX-PHASING DISK(エックス型位相整合ディスク)と
称しており、確認してみると私の推測通り超高域の位相補正をするフェイジング
プラグの役目を果たしているという。

簡単に言えばトゥイーター軸状の周波数特性と同等な放射パターンが得られる
ように高域の指向性を広くしているものだろう。これが後述する高域の質感に
大いに貢献していることが解って来る。

■ダブル・インラインの50mm Inverted Titanium Midrange Dome Drivers.44個
Neodymium-Iron-Boron Alloy Magnets
http://www.dynamicaudio.jp/file/120409/XRT1K-02.jpg

ミッドレンジドライバーとしては大変小口径の50mm、ボイスコイル直径32mm、
しかし材質がチタンであることを考えると大口径と呼んでも良いくらいだろう。
250Hzから2,200Hzをバンドパスするドライバーだが、エッジは発泡スチロール
をポリウレタン加工したもの。

■POLYPROPYLENE 250mm Woofers  ×2
http://www.dynamicaudio.jp/file/120409/XRT1K-04.jpg

ボイスコイル直径32mm、センターキャップはポリプロピレン製120mmの大口径。
このドライバー1個で7.5Kgというヘビー級ユニットです。

LD/HP(Low Distortion-High Power) Magnetic Circuit 
http://www.dynamicaudio.jp/file/120409/XRT1K-05.jpg

上記の写真は右側の一般的な磁気回路のポールピースに対して左側はLD/HPの
構成パーツを示しており、ボイスコイル・ギャップに独特なアルミリングを
仕込んでいるものです。その構造は下記のようになっています。
http://www.dynamicaudio.jp/file/120612/XRT1K_10INCH_CROSS_SECTION.PDF

ボイスコイル・ギャップの左右に二個のリングが設置されていますが、これは
ギャップに発生する磁束密度を集中させることが目的です。
これにより上下ギャップの周辺磁気影響を減らし歪みを減らします。

加えてレンツの法則により、ボイスコイルの磁場極性に反対する磁場を発生し
て電流を誘発する為、アルミスリーブがギャップに発生する磁束の変化を打ち
消します。これによりギャップの磁場を一定に保ちEddy Current(磁束が変化
することによって導体内に発生する渦状の誘導電流)を減らします。

上記の断面図の中に「DUAL CERAMIC MAGNETS」という耳慣れないマグネットの
表記がありますが、実はハード・フェライトマグネットと呼ばれるものであり、
炭酸ストロンチウムと酸化鉄から成ります。 下記は参考として関連リンク。

http://www.allmagnetics.com/ceramic.htm

こセラミック・マグネットはボイスコイルの発熱による消磁を防ぐ効果に優れ、
ポールピースの中心に放熱用のベントを空けてクーリング効果を高めています。

http://www.dynamicaudio.jp/file/120409/XRT1K-06.jpg

このグラフは縦横軸の値が示されていないので、あくまでもイメージという
事になりますが、LD/HPを採用することでこれほど低歪になりますというもの。
実際に聴いてみたところ随所で効果が音質として確認されたものであり、後述
の試聴感想で更にInter-viewしていきましょう!!


[3]74スピーカーシステムの隠された本来の意味とは?

口径は様々ですが俗に「ダブルウーファー」ということで、二基のウーファー
を搭載したスピーカーは多数あります。ウーファーを倍の数にしたら低域の
音量も二倍になりそう…、と思われるでしょうが、実は1.41倍にしかなりません。

スピーカーユニットの振動板、この振動面積と出力される音圧は正比例の関係
にはないという大原則を先ずご記憶頂ければと思います。

XRT1Kの低域再生に関しては二基のウーファーユニットを搭載した他に上記の
ような巨大なバスレフポートによるポートチューニングの成果が大きく貢献
しているものです。さて、では中高域の合計72のユニットはどうでしょうか?

先ず、50ミリ口径のミッドレンジについて考えてみましょう。私も多数の高級
スピーカーを取り扱っていますが、ミッドレンジが50mm口径というのは極めて
稀な事例だと思います。小さいのです!

このフロアーにある錚々たるハイエンドスピーカーたちを見てもミッドレンジ
としては最低10cmから16cm口径のものが大半です。それらの実質的な振動面積
を計算してみると…

例えばMORDAUNT-SHORT Performance6 の場合は10cm口径なので振動面積としては
78.5平方pとなります。言い換えれば8.8cm×8.8cmという面積です。
http://naspecaudio.com/mordaunt-short/performance6/

そして、あのThe Sonus faberのミッドレンジは正確には165mm口径ですが、
大よそ16cmと想定して振動面積を計算すると約200平方pとなります。
もっと分かりやすいように言い換えれば14.1cm×14.1cmの面積です。
http://www.noahcorporation.com/sonusfaber/SONUSFABER.html

さあ、XRT1Kの場合はどうでしょうか? 50ミリ口径のミッドレンジ44個では…
振動面積を計算すると何と約863.5平方pとなります。

ざっくりと言い換えれば30cm×30cmの面積です。これらを集結して1個の
ドライバーとすれば何と33cm口径のミッドレンジユニットとなります。これは
The Sonus faberの4倍、またPerformance6 の11倍に匹敵する振動面積となります。

この着眼点が重要です。
次にトゥイーターも同様に考えてみましょう。

MORDAUNT-SHORT Performance6 のトゥイーターは2.5cm口径なので振動面積と
しては4.9平方pとなります。2.2cm×2.2cmという面積。

The Sonus faberのトゥイーターは29mm口径、振動面積を計算すると約6.6平方p
となり、言い換えれば2.56cm×2.56cmの面積です。

さあ、XRT1Kの場合はどうでしょうか? 19mm口径のトゥイーター28個では…
振動面積を計算すると何と約79.3平方pとなり、8.9cm×8.9cmの面積です。
これらを集結して1個のドライバーとすれば10cm口径のトゥイーターとなります。

同様に言い換えれば、The Sonus faberの12倍、Performance6 の16倍に匹敵
する振動面積となります。

こんな大きなトゥイーターを搭載したスピーカーなど見た事もありません。
しかも、ミッドレンジでは44個のボイスコイル、トゥイーターでも28個の
ボイスコイルによって駆動されるという超強力なモーターシステムを搭載して
いるということになるのです。

さて、振動面積という一面にに注目して頂くということは、実は私が述べたい
ことの半分なのです。これからが大変重要な要素なのです。

前述では振動面積と出力音圧は正比例関係にないと述べましたが、更にもう
一歩踏み込んだ例えをしますと、一個のスピーカーユニットの二倍の音圧を
得るためには何倍の振動面積が必要になるかと言いますと4倍となります。

そして、スピーカーの出力する音圧というのは振動板(ダイヤフラム)の振幅と
いうことに言い換え出来るものです。つまり、4個のスピーカーユニットを
1個で出力した音圧と同じレベルにした場合には振動板の振幅は半分で済むと
いう原理なのです!!

私が後述するXRT1Kの素晴らしさとは、実はこのような原理から導き出される
推測と説明がキーポイントになってくるのです!!

ミッドレンジの場合、XRT1Kの振動面積は29.3cm×29.3cmです。
これはThe Sonus faberの4倍あるということは、同じ音圧を得るためにXRT1K
のミッドレンジのストロークは半分で済んでしまうという事。

同様にPerformance6の11倍と比較すると1/3の振幅で済んでしまいます。
10cm口径のミッドレンジと比較して、たった33%のストロークで事足りてしまいます!!

トゥイーターの場合にはXRT1Kの振動面積はThe Sonus faberの12倍、という
ことは求める高域の音圧を同じとすると振幅はThe Sonus faberに対して大雑把
に1/3、更にPerformance6よりも16倍の振動面積があるので振幅は1/4で済んでしまいます。

マイクロホンで測定すると、同じ音圧を求めるにしても上記のように振動板の
ピストンモーションのストロークがこれほど違うということが私の着眼点なのです!!

これら多数のドライバーが垂直にインライン上に配置され音波を放射すると
この↓ような拡散パターンとなります。右が一般的なスピーカーが放射する
中高域の球面状の放射パターンで左側がXRT1Kの円筒形のパターンとなります。
http://www.dynamicaudio.jp/file/120409/XRT1K-03.jpg

皆様は何でスピーカーユニットが74個も必要なのか、とお考えになる方が多い
と思いますが、大音量を求めるために必要だという事ではないのです。
このMcIntosh XRT1Kの以前にも同様な試みがなされていました。

20年前に私がH.A.L.で初めて展示して鳴らしたXR290もそうでしたが…。
http://audio-heritage.jp/MCINTOSH/speaker/xr-290.html

アーノルド・ヌデールが主宰したInfinityやGENESISなどのスピーカーや、
Apogeeなどのブランドも同様に中高域のインラインデザインがありました。

当時は「ポイントソース理論」という考え方があり、インライン状の多数の
音源が構成するスクリーンのような音場の向こう側に音像が小さく定位すると
いう表現をしていたのを思い出します。しかし、リボン型スピーカーユニット
の音質は奥行き感の演出には良かったのですが、ダイナミズムはどうか?

それらの時代を経験してきた私だからこそ、現在の…いや正確に言えば既に
20年以上前から実現させていたMcIntoshスピーカーの魅力を、近代的なハイエンド
スピーカーたちと比較しての素晴らしさを述べることが出来るのです!!
更にInter-viewしていきましょう!!


[4]オーケストラによる印象と考察

改めて試聴システムを紹介します。今回はXRT1Kにスポットを当てていますが
組み合わせるアンプは同社のサウンドポリシーを理解するためにもMcIntosh
のみにて行っています。

■McIntosh  XRT1K (税別1Pair\5,000,000.)
http://www.mcintoshlabs.jp/jp/Products/pages/ProductDetails.aspx?CatId=Speakers&ProductId=XRT1K

■McIntosh  MC2KW (税別1Pair \8,800,000.)
http://www.mcintoshlabs.jp/jp/Products/pages/ProductDetails.aspx?CatId=Amplifiers&ProductId=MC2KW

■McIntosh  C1000C&T   (税別 \2,400,000.)
http://www.mcintoshlabs.jp/jp/Products/pages/ProductDetails.aspx?CatId=Preamplifiers&ProductId=C1000C

■フロントエンドはdCS Scarlattiのフルシステムで組み合わせしています。 
http://www.taiyo-international.com/products/dcs/
dCS Scarlatti Transport(Black) (税別 \4,230,000.)
dCS Scarlatti DAC(Black) (税別 \2,970,000.)
dCS Scarlatti Clock(Black)(税別 \1,390,000.)

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■マーラー交響曲第一番「巨人」小澤征爾/ボストン交響楽団

実は、上記McIntoshシステムを導入してから第二楽章を中心に既に何回もこの
CDを聴いてきました。思えば20年以上に渡り多数のオーディオシステムを試聴
するのに使ってきたマーラーが、このMcIntoshシステムによって正に蘇ったか
のような感動をもたらしてくれたことを最初に述べなくてはなりません。

そして、本日は試聴室内の空調を止め、照明も落として第一楽章から最後まで
じっくりと聴いてみたのです。

導入部の冒頭、弦楽各部のスコアの第一小節から「sempre ppp」が付けられて
おり、(イ音)の保続音による演奏に関してドイツ語で指揮者への注意が記されている。

「この最も低い(イ音)はピアノッシモで演奏されるのではあるが非常にはっきり
 と聞き取れなければならない」

(音楽之友社/改訂版:1967年 Universal Edition リプリント OGT 1446より)

この場合、ピアノッシモという音量の解釈は指揮台の位置で考えるものでは
なくホール客席の聴衆全てに対して言えるものなのだろうと思います。

不肖、私は2005年2月にサントリーホールでヒュー・ウォルフ指揮による
フランクフルト放送交響楽団によるマーラーの交響曲第一番を聴いた時の
記憶をたどるしかありませんが、あの時にもsempre pppの付いた導入部の音は
はっきりと聴きとることが出来ました。

どれだけ小さい音を出すかということと、はっきり聞こえなければならないと
いう相反するような演奏ですが、今日聴いたXRT1Kによるsempre pppでの
再生音は正にライブで聴く鮮明さを私の眼前に提示してくれたのです!!

木管楽器が各パートが一小節の間をおいて掛け合いのソロを演奏し、クラリネットが
印象的なカッコーの声を真似、イングリッシュホルンが距離感を持って響き、
ミュートされたトランペットが走るように右手の高い位置で吹かれると…。

弦楽器のピアノッシモに管楽器の演奏がステージの各部署から湧き上がり、
まるでステージに曙光が差し込むように明るさが増していくではありませんか!

夜明け前の薄暗闇を表現する弦楽器のsempre pppをこれほど鮮明に聴かせて
くれたスピーカーが今までにあっただろうか? 弦楽器のつぶやきのような細かい
アルコの繰り返しの中に実はこれほどの数の音色があったのだと気が付く!!

そして、管楽器の音像を弦楽器の弱音の中に克明に点在させる再現性を、私の
記憶にあるスピーカーの再生音と直ちに照合するのだが見当たらない…。

微弱な信号、微弱な音量を再現するのに中高域ドライバー74個の威力が先ず
ここから実感された。

左右のトゥイーター二個とミッドレンジ二個という構成の一般的なスピーカー
の再生音圧をマイクで測定し、それと同じ音圧をXRT1Kで再生したとしたら
前述のように一つ一つのドライバーのダイヤフラムの振幅は大変小さくて済む。

しかし、これは音圧を測定するという意味では結果は同じくするが、振動板が
ピストンモーションによって空気の粗密波である音波を送りだす作用面の空気。

いや、この場合には作用面ではなく三次元的に作用空間と言えようか。
フロントバッフルは幅は28cmで、トゥイーターとミッドレンジがインラインの
アレイ状に取り付けられているのは上下に125cmという面積。

フロントバッフルそのものが、実は72個のこれらのスピーカーユニットのリフ
レクターとして機能するものであり、各ユニットが放射する音圧を前方に展開させる。

この時に測定用マイクを床上60cmから180cmの高さで移動させたとしても音圧
は一定のものとなり、これは一般的なトゥイーターとミッドレンジが1個ずつ
というスピーカーの場合とは異なる結果となる。もちろん、人間の耳でも同様
な結果となる。

音圧測定は無響室にて音源と測定マイクという二点間を1.0mの距離として行う
ものだが、音圧は距離の事情に反比例して減衰するという基本原理を考えれば
一般的なスピーカーはドライバーからの一定距離で音圧は等しくなる。

http://www.dynamicaudio.jp/file/120409/XRT1K-03.jpg

そうです。つまりは上記の画像のように一般的なスピーカーが放射する音波の
拡散は球面形状にて進行するのに対してXRT1Kは円筒形という説明をしましたが、
音圧を測定するのはあくまでもマイクロホンという音波を通過していく空間の
1ポイントだけです。

しかし、この画像の両者を比較してお分かりのようにXRT1Kが放射した音波を
同じ時間軸で考えた場合に、音響的なエネルギーが作用する空気の容積は大変
大きなものとなります。これが微小信号の伝送に貢献しているということが
重要なポイントであり、それでも音圧は一緒なのですから!!

この原理によってXRT1Kが再生する弱音の鮮明さは一般的なスピーカーに増して
大変素晴らしい再現性を見せているのです。これは前述の各ユニットの振動
面積の比較説明でも推測して頂きたい要素なのです!!実に見事でした!!

そして、もう一つ注目すべきことがあります。中高域のドライバーが72個も
あるということで、音源の数が多いのでフォーカスがぼけた茫洋とした音に
なってしまうのではと思われている方々が多いのではないかと思います。

しかし、ご心配なく! 垂直方向にインライン状に配置された音源で2チャンネル
ステレオ再生をした場合には、生成される音像が膨らんだり輪郭が乱れたりと
いう現象は起こりません。むしろ、前述したように音源位置の向こう側に音像
を結ぶ「ポイントソース理論」によって遠近感のある鮮明な音像が表れます。

更に多数のドライバーをインライン状に配置する最も大きな理由として、水平
方向への指向特性の改善があります。つまり、再生周波数が高くなるにつれて
スピーカー正面の主軸のオンアクシスで測定する高域特性で広帯域を誇る
スピーカーがあったとしても、30度、60度とオフアクシスで角度が大きくなる
につれて高域特性が減衰していくという傾向が大きく軽減されるのです。

円筒形の放射パターンという意味には実は音圧だけでなく周波数特性の素晴ら
しさということが含まれているということをが重要なことなのです!!

             -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

このInter-viewは一夕一朝で出来たものではない。とにかく何日間もかけて
じっくりとインタビューした。三種類のsempre pppも聴き比べた。

1977年小澤征爾が42歳の時に振った同じくボストン交響楽団とのGRAMMOPHONに
よるアナログ録音のマーラー一番、私がリファレンスにしているのは1988年
小澤53歳の時のPhilipsによるデジタル録音、そして、小澤征爾73歳にして
サイトウ・キネン・オーケストラとのSHM-CDのDECCA録音による同じマーラー
の一番をも聴いてきた。

その他のオーケストラによる録音も何枚聴いたことだろう。これほど突き詰めて
一つのスピーカーに対局した事は珍しい。それほどXRT1Kには魅力がある。

聴けば聴く程XRT1Kの特徴がエッセンスとして私の記憶に残り、どのディスク
を聴いても、これだという特徴が確認されるようになってから書き始めた。

先ず誰もが聴いて直感的に感じることが弦楽器の美しさと質感の素晴らしさ。
流れるような気品ある弦楽器は麗しく聴き手の耳を包み込むようであり、その
抜群の解像度を聴かせながらも透明度が高いホールエコーを再現する。

透き通るような色合いと質感ということは、同時に弦楽五部の50人の各々の
演奏者の音色が微妙に異なる表現まで聴かせるので、直前まで静かだった水面
に突然の風が吹き水面にさざ波が立った時に、その細かな波に様々な光が反射
して、連なる定位感の弦楽器群に様々な色彩感がちりばめられていることを
想起させてくれるのが素晴らしい。

オーケストラにおける弦楽器の編成はシステム構成やクォリティーの違いに
よって、弦楽器群がひと塊りになってしまい、あたかも一人だけの単一の色彩
として聴こえてしまう場合がある。

しかし、私の経験からも優秀な再生システムであればあるほど、第一ヴァイオリン
は14名、第二ヴァイオリンが12名、ビオラは10名、チェロ8名、コントラバス
6名という構成の一人一人が微妙に違う音色を出しているということが感じら
れたものだが、この時のXRT1Kの解像度の素晴らしさと各パートの音色の調和
は実に素晴らしいものだった。

同じ音階、旋律を演奏しながらも、その弦楽集団のハーモニーが一つに融合して
いく様をどのように伝えたらよいのか、私は次のような引用で皆様の感性にて
イメージを高めて頂ければと考えました。

「Everything You Can Imagine Is Real」-想像することができるものはすべて真実-

 かのPablo Picassoの言葉です。そしてこれをご覧下さい。

http://www.facebook.com/photo.php?fbid=383009438423910
facebook「Shaman Medicine Womanさんの写真」より

弦楽器群を一本の絵筆と例えたら、このように実に様々な色の絵具をまとわせ、
その一色ずつを完全に混ぜ合わせて出来上がった新しい一つの色で描くのでは
なく、多数の絵具が混じり合う前にキャンパスに乗せていく事で新種の中間色
が出来上がり、それらが混然一体となって多種多様な色彩感のグラデーション
の楽音としてXRT1K周辺の空間キャンパスに描き出していくのです!!

多数の弦楽器が醸し出す楽音、音色にはこれほどの多彩な色彩感が含まれていたのです!!

集団の中に個性が光り輝く弦楽器を聴かせてくれるXRT1Kに私は新しい可能性
を発見し、創業以来63年を経てMcIntoshが目指す音という真実に感動しました。

そして、同じ弦楽器でもハープの爪弾きがこれほど鮮明に聴けたのも出色でした。
マーラーの交響曲においてハープが弦楽器群の中に埋没することなく、見事に
存在感を主張してくれる演奏を私は知りません。実に素晴らしい!!

http://www.mcintoshlabs.jp/jp/Brand/Pages/Heritage.aspx

これほど緻密であり美的な弦楽器の質感が、それも何のストレスもなく乾いた
喉に冷たい湧水を流し込んだ時のように体にしみこむような自然さは何なのか。
私はXRT1Kの素性を観察し分析するうちに圧倒的な歪感の少なさがもたらすもの
ではないかと推測するようになったのです。

スピーカーユニットの振動板の挙動に全高調波歪の要因となるものがある。
多数の周波数帯域を一つのスピーカーで再生する時に発生する歪の一種類。
分かりやすく皆様の頭の中でイメージしやすい例えいうと、次のようになる。

XRT1Kのクロスオーバー周波数250Hz、2.2kHzとなっているが、他のスピーカー
でも同様に複数のユニットによって再生帯域を分担している。この時にミッド
レンジドライバーは250Hzという低音と2,000Hzという中域も同時に再生する。

つまり、ざっと10倍の違いのある周波数を再生しているのだが、スピーカーの
振動板の動作を簡単に言えば毎秒250回のピストンモーションを繰り返している
という状況に、毎秒2,000回という同様な前後運動を繰り返しているという
二重の動作をこなしていることになる。

言い換えれば、一秒間に250回の往復運動をしているという事で、振動板は
無信号の定位置から前後に一往復する間に約10回の小刻みな振動をしていると
いう現実がある。毎秒2,000回という細かい振動を繰り返しながら毎秒250回の
前後運動をしているというイメージをもっと分かりやすく例えると小型ラジオ
を片手に持って、自分の耳に近付けたり離したりという手の動きを付けた感じ
ということでいいでしょう。

さあ、ここからです。振動板が後ろから前に出てくる時と、逆に手前から奥に
引っ込んで行く時の各々片道の過程でドップラー効果がミクロの世界で発生
しているということなのです。そこで手に持ったラジオの例えが生きてきます。

音源が接近してくる時には周波数は高くなり、離れていく時には低くなります。
パトカーや救急車のサイレンが近づいてくる時と去っていく時など、普段の
生活の中でも色々と体験することがあるでしょう。そして、スピーカーの場合
には、このドップラー効果というのは振動板の振幅の大きさによって増減する
ということなのです。

さあ、ここまで述べれば察しが付いてきたでしょうか? これがトゥイーター
の場合には2.2KHz以上45KHzまでを担当するのですから、何と20倍以上も違う
周波数を再生しているということ、トゥイーターのダイヤフラムの一往復の
間で何と20回の高周波運動を繰り返しながらピストンモーションを繰り返して
いるということになってきます。

これはどの帯域のドライバーでも言えることであり、ピストンモーション
一往復の間に周期数が高くなったり低くなったりのドップラー効果を一回ずつ
繰り返しているというミクロの視点での観察が出来るわけです。

思い出して下さい。同じ音圧を再生するのにXRT1Kの72個の中高域ユニットの
振動面積による振幅の小ささを…、ダイヤフラムの振幅が小さくなることで
変調歪が低減されるというメリットがここにあるわけです。

何とも清々しい弦楽器は皆様も体験したことがないはず。なぜならば皆様が
使用しているスピーカーのドライバーの数がいくつあるのか、という着眼点に
対して未知の回答を音で知らしめてくれるのはMcIntosh XRTシリーズだけなの
ですから!!

             -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

弦楽器の美しさはXRT1Kの精悍な外観からは想像も出来ない優雅さをもって聴く
人を惹きつけてくれることは間違いないが、実はオーケストラで感じられる
XRT1Kの魅力は他にも多数ある。その一つが管楽器と打楽器の質感だろう。

管楽器の質感とは二つの意味で他のスピーカーでは体験できない魅力がある。
先ず、その定位感と音像の輪郭表現の素晴らしさだろう。

マーラー一番の編成では木管はフルート4(ただし3番4番はピッコロ持ち替え)、
オーボエ4(3番はコーラングレ持ち替え)、楽章によってクラリネット4(3番は
変ロ調ではバスクラリネット)ファゴット3(3番はコントラファゴット持ち替え)
そして、金管はホルン7、トランペット5、トロンボーン4、バス・チューバ1。
打楽器は大太鼓、シンバル、トライアングル、タムタムなどで構成される。

前述のようにXRT1Kの放射パターンは円筒形であるのだが、次のような特徴を
リスナーは知らず知らずのうちに聴かされているのである。

一部のスピーカーを除いて大多数のスピーカーのトゥイーターは床面から1.1m
から1.2mと高さに位置している。これは座って聴く座高位置によるものだろう。
従って、立ち上がって聴くとオーケストラを見下ろすような構図の音場感に
なってしまう。

しかし、XRT1Kではステージに対する距離感を再生音に含めているのである。
つまり、立ち上がって聴いてもオーケストラのサウンドステージは目線と同じ
高さに常に位置するのである。コンサートホールの客席で立ち上がって見ても
ステージの高さは距離があるので見下ろすような事にはならない。XRT1Kでは
どの高さでもリスナーは地平線のごとく等しい高さにステージを感じるのだ。

天井の高い広大なステージ感を眼前にしつつ、弦楽器群が占める音場の中に
管楽器は忽然と姿を現し、くっきりとした音像から発した余韻感が実に広範囲
な空間に展開し拡散していく美しさがある!! 

弦楽器群と同じ高さに出現する木管楽器のソロパートがこの上もなく鮮明なの
だが、弦楽器の後方に少し位置を高くして定位する金管楽器の質感が素晴らしい。

ホルンやトロンボーンのように朗々とし響きをホールの空間にたなびかせていく
金管楽器の充実感も当然申し分ないのだが、タンギングをしっかりと利かせ
瞬発力ある演奏のトランペットは鋭さと輝きが欲しい楽器ながら、下手をすると
強い光に思わず目をそむけるように耳にストレスを感じさせる局面があった。

しかし、XRT1Kの72個のスピーカーユニットが聴かせるトランペットの響きは
刺激成分など微塵もなく、大音量でも爽快に響き、耳に刺さるような違和感は
全く感じられない。

それでいて目をそむける事もなく、トランペットの輝く光点をしっかりと正視
できる歪感の少なさが視覚における解像度を保証したように楽音の細部を聴き
とることが出来てしまうという芸当を演じる。この爽快なトランペットの響き
はマーラー一番に限らず他のオーケストラでも強烈に印象に残る心地良さだった。

さて、打楽器に関してはトライアングルと大太鼓という全くスケール感の違う
両者にてXRT1Kの魅力を語ることが出来るだろう。打楽器の中でも小さな
トライアングルの高音、雄大にしてダイナミックな低音を響かせる大太鼓。

実は、この両者の楽音は他のスピーカーと逆転現象が起こっているのである。
それは…。

マーラーに限らず数々のオーケストラにおいて清涼な響きのトライアングルは
チェックポイントのひとつなのだが、XRT1Kで聴くと不思議な現象として他の
スピーカーと直ちに対比できることがある。

このフロアーで相当な音量でダイナミックに展開するオーケストラは実に壮大
な演奏なのだが、その音量の中でトライアングルが叩かれると…。

72個の中高域ドライバーが聴かせるトライアングルの音像が先ず小さいこと。
そして、音量を上げても音像のサイズが変化しないということ。これです!!

一般的なトゥイーター1個というスピーカーでは音量を上げるとトライアングル
の音像も大きくなってきます。皆様も経験があると思いますが、これを当然の
ごとく今まで聴いてきました。

しかし、何と言う事でしょう! 

XRT1Kのトゥイーターが聴かせるトライアングルの音像はステージ上で居並ぶ
他の多数の楽器の一員という、つつましい音像サイズなのです。

音量によってサイズが変化するトライアングルでは質感も同時に変化しています。
他のスピーカーでは音量を上げるとトライアングルは猛々しい音色で自己主張
を始めます。

音量を上げると良い表現では力強く芯のある音になってきます。逆にマイナス面
としては打音そのものがぎらぎらしてきて品位が低下することもあります。
トライアングルが一人のヴァイオリン奏者よりも存在感が大きくなってしまう
ことがあると思います。

しかし、XRT1Kで聴くトライアングルは、このフロアーのエアボリュームを
沸騰させる程の音量で聴いても質感は均一であり、あくまでも楽員の一人と
して適切な自己表現であり、涼やかな美しい余韻を透明感をもって響かせてくれます。

次に大太鼓ですが、他のスピーカーと逆転現象というのは小音量でもスケール
感が変化しないということです。大太鼓に対してマレットを直角に力強く当てる
迫力ある打音。インパクトの瞬間からホールエコーの拡散は実に雄大です。
このような演奏法では音量を上げていっても迫力が増すということで好意的に
聴けるものです。

しかし、このマーラー一番の第三楽章のように、大太鼓に対してマレットを
平行に近く振って、撫でるように持続する低音として叩かれる演奏法の時に、
音量としても微弱な打音をステージに供給するような時にXRT1Kは実に繊細で
反応の良い低域のホールエコーを再現してくれるのです。

大太鼓の奏者がヘッドを手の平で触れて打音をミュートして初めて大太鼓が
鳴っていたんだ、ということを解らせてくれるような小音量でも見事な低音の
音場感を作ってくれるのがXRT1Kなのです。

つまり、他のスピーカーでは音量を上げていかないと再現されないような低音
でも、XRT1Kのボディー全体の容積を使っての絶妙なポートチューニングで
頭頂部から降り注ぐ低域の響きが自然にXRT1Kの周辺に低音の余韻感をまき散らし、
反応が素晴らしいウーファーとの組み合わせで中高域の個性にマッチした豊かな
低域を音量に関係なく再現してくれるという素晴らしさが光ります。

では、音量を上げていったらXRT1Kの低域はどうなるのか?
実は、ここから先は選曲を変えてのInter-viewが更に続くのです!!


[5]多様なスタジオ録音による印象と考察

演奏方法として微妙な力加減で叩かれた大太鼓の忠実な低域の再現性として
XRT1Kの発する低域は小音量での表現力が音場感を伴って素晴らしいと述べた
後で、私はまったく逆の方法で大音量で鳴らした場合のテストをしてみることにした。

ここからの解説で前もって述べておきたいことは、私が分析したXRT1Kの特徴
を聴きとるのに、そしてこの場で文章化するに当たり試聴したディスク、曲の
数は実に多種多様で相当な数にのぼり、それら全てを引用しての解説は困難と
いうことで象徴的な選曲で解説を試みることにします。

でも、そんなことをわざわざ言わなくても良いのに…。はい、ごもっともです。
私が言いたかったことは、この私にしてXRT1Kで聴く音楽はどれも素晴らしく、
この原稿を書いている時間の数十倍の時間で音楽を聴いてしまったということ。
いや、この私が仕事を忘れて音楽を楽しんでしまったという体験を言いたかったのです。

さて、中高域ドライバーでの振動面積によるメリットを前述していますが、
XRT1Kの25センチ口径ウーファー二個の振動面積は981平方センチとなり、
これはほぼ38センチ口径ウーファーに匹敵する振動面積を持っています。

小音量でも実に雄大な広がりを見せ細かいニュアンスの低音を聴かせてくれた
XRT1Kに今度はとどろくばかりのハイパワードライブをしかけてみましょう!!

「MISSION:IMPOSSIBLE」(スコア盤)PHCP-1802
「MUSIC FROM THE ORIGINAL MOTION SCORE」音楽ダニー・エルフマン(96年)
 http://homepage1.nifty.com/sountolab/adn9.htm#MISSION

このディスクは適切なサイトが中々見つからないので上記リンクを引用させて
頂きましたが、私の試聴ディスクの中でも低域の振る舞いをチェックするのに
最適な一枚をかけてみました。

38cmクラスの大口径ウーファーを搭載したスピーカーで、量感だけでなく質感
や輪郭表現をもチェックするのに使ってきた曲ですが、冒頭のアフリカン・ドラム
の壮大な低音がポイントです。今まではプリアンプのボリューム表示が50-60
くらいで聴いてきましたが、この曲では70以上まで上げていきます。すると…

「おー!! ついてくる、まだまだいけるぞ!!」

中高域の質感が実に美しいということは前述の通りで歪感がないということが
耳に優しい再生音として聴ける。ストレスがないと自然に音量も上がってしまう。

このようなドラムの大振幅をスピーカーシステムに与えた場合には、ウーファー
ユニットでストロークの限界としてボトミングしてしまうか、エンクロージャー
とバスレフポートの設計によっては音にならずに破綻してしまうかという恐れ
があるが、何と何とXRT1KのLD/HP(Low Distortion-High Power) と称している
磁気回路がコントロールしている低域はびくともしない。

MC2KWのパワーメーターが時折1000Wを飛び越えて2000Wに届こうかというハイ
パワーでも破綻することなくドラムのインパクトと、それに続く胴鳴りの響き
をこの試聴室全体に広げていきます!! いや〜、実に爽快!!

驚くほどのロングストロークでもまだまだパワーが入るXRT1Kには脱帽です。
そして、床上2メートルにある巨大なバスレフポートからは共振周波数が31Hz
という低域が打音に続く響きの要素として、こんな低音が入っていたんだと
気が付かせてくれる。深い、重たい、それでいて高速反応の低域は快感です!!

あの「スパイ大作戦」の印象的な旋律が迫力あるパーカッションと共にフル
オーケストラで演奏される壮大な曲。これは聴いて頂くしかありません!!

             -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

Michael Buble 「Crazy Love(Hollywood Edition)」1.Cry Me A River
http://wmg.jp/artist/michaelbuble/WPCR000013987.html

あのThe Sonusfaber の随筆でも使用したこの曲ですが、XRT1Kで聴くと何と
新しい発見が色々あるものです。オーケストラで述べてきた超低歪の再生音は
聴いていて美しさを感じるものですが、バックの様々な楽音はスタジオ録音の
曲でも同様に素晴らしさを発揮します。

ホーンセクションの切れ味の鋭さ、ドラムの瞬発力と残響のリアルさ、弦楽器
のしなやかな表現力、どれをとっても歪感の少なさということが耳に心地よく、
スタジオワークで施されたリヴァーヴの響きが実に雄大なスケール感を描きます!!
そして、Michael Bubleのヴォーカルが…!?

「あっ、このヴォーカル違うぞ。どうしてだ!?」

何が違うのか? 私は早速次のディスクに入れ替えて試してみることに。

MELODY GARDOT 「THE ABSENCE」
http://www.universal-music.co.jp/melody-gardot/

MELODY GARDOT三枚目のアルバムをかける。この選曲にも狙いがあった。
Michael Bubleの豪快な歌いっぷりと豊富な声量に対して、MELODYの歌は
耳元で囁くような、マイクに語りかけているような歌い方という歌唱法の対比です。

「あっ!! やっぱりそうだ!! 間違いない!!」

ディスクによってヴォーカルの録音と処理の仕方が違うので、Michaelの
全てのアルバムで共通という事ではないのですが、この曲では声量豊かな
ヴォーカルの口許、声の中心というかヴォーカルのという楽音の音像の核の
部分は小さく、その周辺にリヴァーヴの残響が広がっていく事で豊かな音場感
を録音に含めている。

その逆にMELODYの優しい歌声は口許のサイズはゆったりとした音像として左右
のスピーカーの中間に浮かんでくるものであり、他のスピーカーではセンター
の中空に大きめなシルエットで描かれる傾向を感じとっていました。ところが…

この両者のヴォーカルをXRT1Kで聴くと他のどのスピーカーよりも口許が縮小し、
実にコンパクトでありながら精緻な音像として中空にポンと浮かぶのです!!

何度も述べていますが、中高域のユニット数72個、これらが必要とする振幅が
極めて小さくて済むということが、前述のオーケストラにおけるトライアングル
と同様にヴォーカルの再現性に関しても多大な貢献をしていることが分かりました!!

音像が小さくなったということだけが取り柄ではないのです。絞り込まれた
口許から発せられた歌声によるリヴァーヴの残響が他者に例のない程に長い
時間軸で滞空し、周辺に拡散していく領域がとにかく広大なのです!!

つまり、ヴォーカルの音像が小さいということは余韻感が削り取られ情報量が
減少しているから細く冷たい音という事ではないのです。それだったら私は
認めたりしません。ところがXRT1Kは違うのです!

ヴォーカルの様々なニュアンスによる表現、歌唱のテクニック、声量の大小
などの様々な情報をしっかりと歌手の存在感としてまとわせており、今までの
他のスピーカーのように音量の大小に伴ってヴォーカルの口許サイズが大きく
なったり小さくなったりという変化がないのです!!

私は推測しました。この試聴室のエアボリュームとルームチューニングで残響
をコントロールしている空間で、通常の左右二個のトゥイーターとミッドレンジ
で再生するヴォーカルはボリュームを上げていくと音像も大きくなりました。
それは再三にわたり述べているように、スピーカーユニットの振動板の振幅が
大きくなることに付随する現象なのではないかと!?

振動板とは見た目のドーム型、コーン型のダイヤフラムそのものの他にもボイス
コイルとボビンというパーツの質量、それにダンパーの制動力というバネ性の
あるものが一体となって数グラムの質量をもってピストン運動しています。

皆様イメージして下さい。例えばミッドレンジのダイヤフラムが1KHzを再生する
ということは、毎秒1000回のピストン運動を繰り返します。ある音量では前後
への振幅が0.3mmだったとしましょう。前後に0.15mmずつ動くということです。
それでも結構な音量でしょう。

皆様も再生中のスピーカーに指先で触れたことがあると思います。盛んに振動
している感触を指先に感じたことでしょう。触感で感じられる振幅ということで
例えば上記のような状況で次第にボリュームを上げていったとします。すると、
パワーを入れていけば前後に1.2mmくらいの振幅には直ぐになってしまいます。

ある音量で鳴っていた振幅0.3mmに比較して移動距離は4倍になったとしても、
再生する周波数は同じなのでピストン運動の回数も同じです。ですから再生音
は変わらずに音量を変化・調整出来るわけですが、同じ時間軸で移動距離が
4倍になるという事はダイヤフラムの速度も4倍にならなくてはなりません。

そして、2チャンネルステレオの場合には左右の音源からの正確な再生音の
合成によって定位感が発生します。この定位感という位置付けは音量に関係
ありません。音量を上下しても音像の位置は変わりません。

さて、スピーカーの振動板の振幅変化が音圧の大小になると述べてきました。
この音圧というものを音響工学的に説明すると面白くもない常用対数を用いた
公式が出てきます。例えば Lp = 10 × log10(p2/p02) = 20 × log10(p/p0) 

私とて数学は苦手なので要点だけ述べますと、音楽の世界では「耳で聞いた
平均的な音の大きさ」を俗に「音圧」と呼ぶことがあり、その平均的なという
意味は音が発生している時間軸の長さに関係し、微積分の公式を使って音圧の
在り方を計算するということになってきます。

平均的な音の大きさ、つまり瞬間的な短時間で大きな音量、例えばドラムや
パーカッションなどをガンガン鳴らしても人間の耳に感じる音量感というもの
は大きく反応しません。しかし、連続する音だと直ぐにうるさく大きな音と
いう印象を受けるものなのです。

さて、この辺でまとめていきましょう。オーケストラにおける弦楽器のように
大編成の多数の楽器が連続した楽音を出す時には人間の聴覚特性ではさほど
電気的なエネルギーを使った大音量でなくとも十分な充実感が感じられます。

このオーケストラの中で最も大人数の弦楽器群の音量感を中心にして再生音の
ボリュームを調整すると、その基礎的な音量感において他の管楽器や打楽器の
音量も自然な調和ということで演奏され録音されています。

また、スタジオ録音のヴォーカルを含む録音では、歌は連続音であり演奏の
主役でもあり、大方はヴォーカルの音量を中心にして再生音量を決定すると
思います。

この時に音源のないセンターに定位するヴォーカルは左右スピーカーが発する
音波の和、合成された音像として定位感を発生しますが、その時々の音量と
いうことは上記のような振動板の移動速度の大小とも置き換え出来ます。

一例ではありますが、上記のように4倍の速度で質量のあるものを動かすわけです。
聴いた上で楽音の質感には歪感を感じなかったとしても、私の推論では高速な
振動板の動作によって左右スピーカーの交点であるセンターに像を結ぶヴォー
カルの輪郭や大きさは、一つのユニットのダイヤフラムの振幅の大きさに影響
されているのではないかという仮説です。

仮説の証明を学術的にはする事が出来ませんが、上述のように多数のユニット
によってユニット一個当たりの振幅を非常に小さく出来るXRT1Kの再現性と
いう実態を持って皆様に理解して頂ければと思います。そして、もう一つ!

上記のように、人間の聴覚特性では音量感は時間軸の長さに関係するという
事を証明するのに、XRT1Kで聴くパーカッションの楽音という事例を上げる
ことが出来ます。

72個の中高域ユニットが放射する音波は円筒形の放射パターンということ、
そして、トゥイーター1個とミッドレンジ1個という一般的なスピーカーと同じ
音圧を得るのに振動板の振幅は大変小さくて済むということ。

トライアングルはもちろんですが、特にタンバリン/スレイベル/カバサ
カスタネット/クラベス/マラカス/シェーカー/ギロ/フィンガーシンバル
ツリー・チャイム/ベル・ツリーなどなどの比較的高い音階の数々の打楽器を
XRT1Kで聴くと圧倒的に他のスピーカーとの比較して質感の充実があるのが
お分かり頂けると思います。

実に多数のユニット数によって振幅は大変小さくなるということを前提にして、
聴き手が欲しい音量まで上げていった時にはどうなるか。中高域ドライバーが
各々1個ずつというスピーカーに比べて、瞬間的な発音の繰り返しによって
演奏されるパーカッションのリアルさは格段に向上するのです!!

実は20年前のXR290の時に既に体感していたことであり、継承すべき特徴と
魅力はしっかりと引き継いでいるものだと納得しているものです。

これは他の曲でもしっかりと認識できます。他のスピーカーではありえない
見事な音質であることを追記しておきましょう!!

             -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

私も映画は好きです。しかし、いかに素晴らしいホームシアターの設備があった
としても同じ映画を毎日見る事はないでしょう。しかし、音楽は違います!

好きな曲は毎日聴いても飽きません。その日ごとの体調と心境の変化もあり、
人生の中で様々な出来事を経験しながら、その時の喜怒哀楽を音楽という記憶
メディアに貯め込んで私達は生きています。

メモリーした時が昨日であっても10年前であっても、この曲をどんな心境で
聴いたのか、その記憶と渾然一体となった音楽を耳にする事で、冷凍保存され
ていた私達の大切な感情が美しい旋律とダイナミックなリズムによって解凍され、
再び耳という受容器官を通じて感性の舌先に乗せて味わう至福のひと時は毎日
でも良いのです!!

私はここ最近、このSealというシンガーをネットで見つけたことを大変幸運で
あったと思いながら毎日聴いています。デスクのある接客スペースではSOUL 1を、
試聴室の中ではSOUL 2を毎日リピート再生しているのですからB型の典型です。

Seal「SOUL 2」
http://wmg.jp/artist/seal/WPCR000014372.html

このSealを聴き始めた時はMcIntosh XRT1Kと出会った時とオーバーラップしています。
特にオーディオ的な分析のためという録音ではありませんが、私は二枚のSOUL
を聴いて自分の胸が熱くなる瞬間を何度となく経験しています。

毎朝、プレーヤーをスタートさせて、WISHING ON A STARが始まります。
SOUL 1では聴かなかったSealのファルセットが冒頭から流れ出し、重厚な
リズムセクションが途中から入って来るとジンと来るものがあります。

3トラック目のOOH BABY BABYは元はミラクルズの歌ですが、私はリンダ・ロン
シュタットがカバーしたアルバムを持っていて好きな曲です。同じくSealの
ファルセットが美しく感じられる一曲です。この口許がセクシーなのです!!

5トラック目のWHAT'S GOING ONは私の大好きな曲。ここにも色々なシンガーの
カバーバージョンからオリジナルのMarvin Gayeの違う録音でのコレクション
も数枚あります。それが何とフルオーケストラのイントロから始まるとは!!

美しいストリングスにハスキーなSealのヴォーカルが絶妙にマッチする感動。
気が付くとヴォーカルの左側からハープの爪弾きが聴こえてきます。えっ!!
この曲にハープを使っているのか!!

トレヴァー・ホーンとデイヴィッド・フォスターという二人の巨匠プロデューサー
のセンスが随所に発揮され、オーケストラアレンジの素晴らしい曲です。

XRT1Kのボリュームをちょっと上げると、Sealのヴォーカルの音階が下がった
ところで私の胸郭が共振したのだろうか、呼吸は変わらないのにピクンと
心拍数が上がったような錯覚があり、アーチストとの間に共鳴が起こったかの
ように興奮度のメーターがピンと振れていく!!

オーケストラをバックにお馴染のメロディーをうきうきしながら聴いていると、
途中からリズムセクションがバン!!と入ってきた時の感動! 体温上がります!

7トラックのBACK STABBERSのイントロはフィルターをかけて曇らせたピアノの
音から始まり、主題をさらっと演奏した後に強力なリズムが湧きあがる!!

THE O'JAYSの「裏切り者のテーマ 」がこんなアレンジの素晴らしいサウンド
で展開するなんて想像も出来なかった!! そして、あの(What they do)です!!

バックコーラスとの距離感をしっかりと前後に取りながらもハスキーなボイス
のSealの素晴らしい声量がXRT1Kの得意とするミニマム・マウスの歌唱法を借りて、
こんなにダイナミックに展開し、しかも未体験の歪感の少なさは爽快な歌声を
のびのびと私の眼前にあるXRT1Kという空間キャンパスに描いていきます!!

こんな躍動感と緻密さ、そして息を飲む解像度とアーチストの迫力を忠実に
再現してくれるオーディオシステムに付いているエンブレムがMcIntosh…!!

皆様が知っているMcIntoshの音とは、正確にはMcIntoshのアンプの音ではないですか?

だとしたら、まだMcIntoshの魅力の半分しか知らないということになります。
McIntoshの全てを知った時、日本中のMcIntoshファンがどのように反応するか?

その反響を作り出していくことに私は情熱を注ぎこむことに何の躊躇いもありません。
XRT1Kの登場は壮大なる予告編だったのです!!


[6]McIntoshの夢とH.A.L.の情熱が実現したInter-viewの結論とは!!

■McIntosh XRT2K (税別1Pair\10,000,000.)
http://www.mcintoshlabs.jp/jp/Products/pages/ProductDetails.aspx?CatId=Speakers&ProductId=XRT2K

このスピーカーは本国のMcIntoshの倉庫に保管されています。アメリカ国内の
オーディオショップでも展示実演しているところはないと聞いています。

CES他のアメリカのオーディオショーやイベントの折に同社から運び出して
実演することはあったという。当然、日本のオーディオショーに登場したこと
もないし、日本のオーディオ専門誌で紹介されたこともありません。

「マッキントッシュのエンジニアたちは、ついに夢を実現しました。
 XRT2Kは、40トゥイーター、64ミッドレンジそして6基のウーハーを搭載した
 デュアルコラム式3ウェイスピーカーシステムです。
 最大許容入力2,000ワット。いかなるハイパワーアンプでも余裕をもって
 受け止め、圧倒的なサウンドステージを形成します。」

上記のD&M/McIntoshサイトにある一文をご紹介しました。前述してきたXRT1K
搭載のスピーカーユニット数74個、そしてXRT2Kでは12の30cmウーファーを
含んで116のドライバーがもたらす可能性の大きさは私の解説の通りです!!

McIntoshが実現した壮大な夢、しかし、それを見て頂き聴いて頂くことは
いまま出来なかったのです。

そのXRT2Kが初めてアメリカを出て、国外で世界初の試みとして彼らが実現した
夢を聴いて頂くべく向かった先がここ…H.A.L.です!!

インターナショナルオーディオショーのためでも、日本のオーディオ誌の取材
のためでもありません。このH.A.L.で皆様に巡り合うために海を渡ってきます!

■2012年6月22日から一ヶ月間の期間限定で、McIntoshtが実現した彼らの夢を
 日本中のオーディオファイルの皆様に聴いて頂くためにやってきます!!
 これが新企画Inter-viewがもたらした最終結果だったのです!!


担当:川又利明
TEL 03-3253-5555 FAX 03-3253-5556
kawamata@dynamicaudio.jp

お店の場所はココです。お気軽に遊びに来てください!!

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