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No.307 小編『音の細道』特別寄稿 *第35弾* 
    「ESOTERIC 8N Cuパワーケーブルが創出する
     1/250の興奮と満足感とは!?」
1.第一印象

2004年7月某日、8N-PC8100及び8N-PC8000のシリアルナンバー「0001」が
予定を一ヶ月早めて生産され、音質評価のために持ち込まれた。

http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/op-pho/8npc8000.html

この写真ではケーブル両端のプラグにあるロゴマークが見える角度にしようと
私はケーブルをけっこうな力でねじっていたものである。直径1.6センチとい
うとDOMINUSのちょうど半分の太さなのだが、けっしてやわな感触ではなく
必要な柔軟性を備えながら重厚な印象の外観である。

プラグの高級感と仕上げの良さは抜群であり、MEXCELシリーズ同様に電源
ケーブルでは世界初のカーボンファブリックスリーブを採用している。
外観に関してはより鮮明な画像が入手できたので、2モデルの断面構造の
図面といっしょに下記をご覧頂ければと思う。

http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/op-pho/8npc8100b.html

http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/op-pho/8npc8000b.html

            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

さて、通電時間ゼロではあるが、どうしても聴きたくなったしまうのは人情
というもの(^^ゞ特に私のように好奇心旺盛な人間には我慢できないものだ。
ACケーブルの評価用としてどこに使用するか!? Moebiusの時にも同様な考え
があったのだが、先ずはフロントエンドで試してみることにした。

少なくとも電源の変化をトランスポートとDACで試そうとしても、P-0sを
初めとするdcsのラインアップでは4本を必要とするので中途半端となる。
どうせだったらフロントエンドのすべてを8N-PC8100の影響下において
試聴しようとして下記のシステムで組み合わせをした。


     -*-*-*-*-最初のリファレンスシステム-*-*-*-*-

 ESOTERIC G-0s ■AC DOMINUS vs ESOTERIC 8N-PC8100■    
     ↓
 7N-DA6100 BNC(Wordsync)
      ↓
 ESOTERIC X-01 ■AC DOMINUS vs ESOTERIC 8N-PC8100■ 
      ↓  
 7N-A2500 XLR ×2
      ↓   
 HALCRO dm8(AC DOMINUS)
      ↓  
 STEALTH Indra Balance Interconnect Cable 5.8m H.A.L.'s Special Version
      ↓  
 HALCRO dm68 ×2 (AC DOMINUS×2)
     ↓  
 STEALTH Hybrid MLT biwire Speaker Cable 5.0m H.A.L.'s Special Version
     ↓
 MOSQUITO NEO

            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

長年リファレンスとしてきたAC DOMINUSは通電時間は軽く5,000時間以上と
いう完璧なバーンインがなされたものであり、バリバリの新製品の比較対照用
としては手強過ぎるものである。

付属品のACケーブルと比較しても意味はないし、むしろ相手をDOMINUSとした方が
ポテンシャルがわかりやすいものだろうと考えた。楽勝できる相手と比較しても
説得力はない。超えなければならないハードルを私は意識して高くしたものだ。

MOSQUITO NEOが最近のリファレンスとなってから、私がテストに使用する曲の
定番となったセミヨン・ビシュコフ指揮、パリ管弦楽団 ビゼー「アルルの女」
「カルメン」の両組曲から(PHCP-5276)15.ハバネラのみを集中して聴くことにする。

独特のゆったりした弦楽器のリズムが繰り返され、中央奥ではタンバリンとトラ
イアングルが同じポジションからリズムを刻み、いよいよ盛り上がってフォルテ
へという2分程度の曲が実に色々なことを教えてくれる。

上記システムで最初はX-01とG-0sの両方にAC DOMINUSを使用した状態に対して
まずはX-01のみに8N-PC8100を使用し、G-0sはDOMINUSのままで第一声を聴くこと
にする。さて、どうなるか…!?

「あれ? DOMINUSよりエコー感が減ったぞ。低域の豊かさも減少した。その代わり
 音像は細くなったが…、フォルテで聴こえるホールエコーも薄くなったぞ」

新製品だからといってすべてに即、及第点が付けられるものではない。ここでの
チェックは厳しい!! う〜ん、と唸った末に再度X-01とG-0sの両方をAC DOMINUSに
戻してみるとやっぱり私の印象が正しかったことが確認された。これはいかん!!

それでは、と…。
今度はG-0sのみに8N-PC8100を使用してX-01はAC DOMINUSのままではどうか?

「ほほ〜、今度はさっきよりも演奏しているホールの照明が明るくなったよう
 に感じられるが、やはり情報量としてはDOMINUS二本よりはマイナスだな〜」

でも、G-0sというマスタークロックでこのような変化が表れたということは
もしかして!? 同席していたESOTERICスタッフの面々には何も言わずに私は
再度配線をし直した。今度はX-01とG-0sの両方に8N-PC8100を使用した。

「おー!! これはいい!! これまでのどれよりも情報量が良く出ているぞ!!」

一瞬気持ちよく余韻が空間に抜けていくようになって喜んだのだが… しかし、
DOMINUS二本が再現していた実在感というか空間表現の見事さ、低域から高域
に至るすべてで同一のスピード感という聴きなれたクォリティーには程遠い。

「やっぱり初物はだめですよ。これ以上この状態で聴き続けても今日のところは
 本格的な検証は無理ですよ。貴重なサンプル品であることはわかりますが、
 どうでしょう、数日間私に預けてバーンインしてからの検証をさせてもらえな
  いでしょうか?」

と、ずうずうしく私はESOTERIC担当者に無理お願いしてしまった。これから
数々のプロモーションに使用する予定があることはわかっているのだが、
どんなに優秀な設計によるケーブルでもバーンインをしなければ真価は発揮
されないものである。私はこのケーブルが有している本当のパフォーマンスを
知っておきたい、ただそれだけなのだが…。

「わかりました、いいでしょう。店長にお預けしますよ。 こっちは何とか
 しますから…」

この時にはラッキー!! と、思いながらも感動には至らず、私も平常心で
お願いしたものだった。

オーディオ用のケーブルはどこに使用するものかに関わらず、大きく分けて
次の二つの種類に分類することが出来る。

PAD、 MIT、Transparentなどのように外界から、そして伝送する信号や電力に
対してアイソレーション効果を設計に含むものと、そうでないものの二種類で
ある。アイソレーション効果を意識した代表例として私はPADのパフォーマンス
を大変高く評価してきたものだが、ESOTERICの設計によるケーブルはどれもアイ
ソレーションという概念はない。

ケーブルにおける音質の決定要素としてアイソレーションの他に素材、構造、
などがあるのだが、今回の8N-PC8100はどうしても贅沢な素材を使ったという
ことが目立ってしまい、私が過去に評価してきたケーブルとは志向が違うとい
う既成概念からあまり期待したいなかったのである。失礼(^^ゞ

X-01とG-0sの両方に同一の電源ケーブルを私用したほうが良い、という結果
のみが初日の印象であり、翌日もバーンインの過程にあるということで私は
真剣に8N-PC8100は試聴しなかったものだ。そして…。


2.バーンインによって表れた驚くべきパフォーマンス

初日の通電時間ゼロの演奏に期待していなかったはずなのに、そんなはずは
なかろうと思いつつ、ある意味で平常心で今後の成り行きを観察しようと私は
8N-PC8100に対するバーンインを進めていった。

通常のディスクによる演奏を営業中も行い夜間も通電を続け約60時間をかけた。
次に一晩かけてPADのシステムエンハンサーをリピート15回連続再生させた。

さあ、そして本日システムエンハンサーを取り出して最初にかけたのが初日に
聴き込んだ15.ハバネラである。その導入部が始まったところで、思わず感動
の波がつま先から背筋を駆け登ってくるのが感じられた。これは冷房の効き
すぎではない(^^ゞ

右側からコントラバスのゆったりしたアルコでハバネラのリズムが演奏され、
ついで左側でもヴァイオリンが音階を高くして同じリズムを奏でる。既に
この時点で弦楽器がホールに撒き散らすエコー感の存続性が初日とは格段に
違っているのである。フォルテではなくともゆったりした演奏でこそ余韻感
のあり方が問われるものだが、初日の音はこの段階で失格していたものだ。

やがて中央奥からタンバリンとトライアングルが同じパターンのリズムを
刻むのだが、このトライアングルの鮮明さと輝きは何とも質感が根本的に
違ってきているのである。明るく輝くのに潤いを感じる。それは楽音その
ものも輪郭がしっかり見て取れるということもあるのだが、打音の始まり
から終わりまでの時間軸が長く感じられるのだ。

これは左右スピーカーの中央で音源となるスピーカーユニットがないはずの
空間に浮かぶ中空での定位感の素晴らしさであり、左右のNEOのトゥイーター
が発した高域の音波が虚空で見事にジャストピントのフォーカスで音像を
絞り込まれたシルエットとして再現しているという事実。そして、潤いを
感じるというのは点として描かれた小さな打楽器ふたつのエコー感を本来
あるべき分量として空間に漂わせているという、微小な情報提示が聴く人に
伝わってくるからだろう。

それを電源ケーブルの貢献でここまで引き出すとは!! こんなX-01とG-0sは
今まで聴いたことがない!!

驚きの再現性を最初の一曲で叩きつけられ、私は聴きながら同時通訳のように
インプレッションを言葉に置き換えて表現するという作業を必死に行っていた。
演奏が進むにつれて音を言葉に翻訳するにも感動のあまり言葉が多くなりすぎ、
センテンスが増え続けるのでたった二分程度の演奏を語りつくすのに困ってし
まう。いったんポーズをかけてデスクに戻り、導入部で受けた感動をキーボー
ドに叩き込んでから再び試聴室に戻っていった。

            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/298.html
ここでも述べているがMOSQUITO NEO のミッドレンジとトゥイーターは厚さ
4センチに及ぶアルミのメインとサブバッフルの頑強なボディーからフロー
ティングされている。これらユニットの取り付けには一切のボルト、ナット
は使用されておらず、Nautilusと同様にスピーカーユニットを本体からアイ
ソレーションさせているものだ。その成果として、中高域の質感には一切の
共振を持たないスムーズな連続性と、金属バッフルに取り付けられたドライ
バーでありながら弦楽器が木で作られた楽器だという質感を見事に再現する。

そして、バッフル面を持たずに中空に突出した形で取り付けられたNEOのトゥ
イーターはサウンドステージを大変広く再現し、同時に奥行き方向と上下
方向にも三次元的な空間表現を見せるものである。更に特筆したいのがNEOが
全帯域で共通したスピード感を持っていることである。

アンプなどのハイスピード化とは何を示すのか? 物理的にもコンポーネント
の内部を進行する電気信号を加速するコンポーネントなどはありはしない。
エレクトロニクス・コンポーネントで言うところのハイスピード化というこ
とは、伝送する周波数帯域のすべてにおいて遅れを出さないということ。
これは群遅延特性(グループディレイ)として示されるが、ハイスピード化と
いうのは実は伝送する周波数帯域の中で部分的な遅れを出さないという逆説
的な表現なのである。この特性が良くないと何が起こるのか? これを簡単に
言えば伝送する信号波形が変化してしまうということだ。アンプの場合には、
それ自身の伝送周波数特性が十分に広帯域でないとパルシブに立ち上がる波
形が正確に伝送できなくなって歪みの要因となってしまう。

さて、アンプでのハイスピード化の目的が正確な波形伝送を行うためという
引用を行ったのは、スピーカーにおいても同様にハイスピードが実現すると
どのような印象になるのか? という例え話がしたかったからである。NEOは
以前にも述べているように、低域の再現性が大変に高速反応するからだ。

スピーカーの場合でもアンプと同じように、入力されたオーディオ信号が
スピーカー内部で加速されることはない。同時にどの周波数の音波でも
音速は同じなので放射したあとに音速を加速するようなこともない。ただ、
スピーカーシステムでは低域のスピード感というものは製品によって大変
大きな違いがある。

これはNautilusの理屈を語るときにも散々言い古していることなのだが、
ウーファーの背面に放射される音波は正面に出力される音波と同じエネル
ギーを持っているものだ。これを背圧(パックプレッシャー)というのだが、
ウーファー後方に放射された音波をスピーカーキャビネットの中で折り返
して外部に放射するタイプがほとんどである。これは低域の増強・補強と
いう考え方であり、ウーファーの前後両方に出力された音圧を合成させる
ことで低域の再生能力を高めようとしているわけだ。

しかし、このウーファーの後方に出力された音波がスピーカーのエンクロ
ージャーの内部で変調を受けることが多々ある。それは位相的なもの、周
波数特性的なもの、そして時間軸にそって考えてみてもウーファー正面の
音波よりは遅れが出てしまうことがある。これらを放置しておくと、その
スピーカーでは低域が膨張して解像度がなくなり、質感は低下して楽音の
輪郭は形を失い、空間表現に必要な定位感もなくなってしまう。もちろん
作者の感性として、そのような低域を好む人が演出的に質感よりもボリュ
ーム感ある低音を欲していたとしたら仕方ないが…。

さて、ここでNEOの低域を考えてみると、2個の22センチ・ウーファーが強靭
なボディーに絶えず25キロのプレッシャーで圧着されていて、最小容積の
二種類のバックキャビティーによって各々違うチューニングが施されており、
私が多種多様な楽音をどのようなパワーで再生しても、極めてハイスピード
な演奏を可能としているものだ。言い換えれば特定の周波数や楽音の性質に
よって部分的な再生音が時間的に遅れしまうということがないのだ。

オーケストラのバス、ドラムやウッドベースなどの様々な楽音において私が
知りえる数多いスピーカーの中でも最も高速である、いや、遅れが生じない
のである。従って、楽音の輪郭表現は鮮やかであり、引きずるような強調感
もなく、ブレーキが利いているので次の再生音に出遅れた低音がオーバー
ラップすることもない。

そんなNEOを使って、ハバネラのフォルテを聴いてみたら!?

前述の導入部でも実感されたのだが、ピアノッシモにおける弦楽器が発する
エコー感と小さな打楽器のたたずまいを表現するNEO周辺の空気感に初日と
は違った背景のあり方を述べておきたい。それは静かなことである。不思議
だが8N-PC8100のバーンインが進んでいくとノイズフロアーが低下している
ということをまず実感した。そあ、そしていよいよハバネラのフォルテが
炸裂する!!

「おお〜!! これは!? 」

思わずこれまでに数え切れないほど聴いてきた過去の同じ演奏の記憶のファ
イルを高速で検索していった。そして同類の音質がなかったことが直ちに
頭の中で解答として点滅し始めているのである。

ここで言う同類の音、というのが前述で述べてきたNEOを持ってして更に
感じる再生音のスピード感なのである。初日の演奏では、このオーケストラ
が一斉に叩きつけるようなフォルテを奏でるときに低域方向へのエネルギー
のあり方が不満であったのだ。それはホールにおける低音楽器のエコー感が
希薄であり、同時に低域の楽音の輪郭も感じられず、楽音の核の部分と余韻
とにセパレーションが感じられないので茫洋として鮮明さがなかったのだ。

ところがどうだろうか!! 今日は同じシステムが演奏しているとは思えない
ほどオーケストラのすべての楽器の演奏者がピンと背筋を伸ばしたかのよう
に見事な立ち上がりできりっとしているではないか。そして、一斉に放出し
た数多くの楽器のエネルギーが正確に時間軸を同一化し、すべての楽器が
同時にミュートした瞬間が見えるようなのである。その中でも低音楽器群が
ガツン! とパニックブレーキを踏み込んだように一斉に体の動きを止めた
あとに、低域から高域に至るすべてのレンジでのホールエコーがふ〜っと
NEOの周辺に溶け込んでいくのである。

このフォルテの瞬間的なエネルギーの放出から残響の細部までを頭の中で
リピートすると、暗闇で目を凝らしているときに突然強烈なライトが瞬間的
に目の前でパッシングしたときのようなものだろう。自分の網膜に光の残像
が残っているのだが、時間の経過とともに強烈な光の輪郭が消え再びもとの
状態にもどる数秒間のように鮮明なエコー感を通じて楽音の残滓を感じること
が出来るのである。夏の夜空の花火が広がって消えていくようなものだ。
録音されている楽音が再生系を通じて録音以外のものを再生音に含めなけれ
ば、低音の余韻感とはこれほど鮮明になるものだろうか。これは美しい!!

しかし、何と不思議なことか!!

X-01とG-0sに対して、8N-PC8100がバーンインを完了するまではこんな
ことはまったくなかったのに。これほど電源ケーブルが支配力を持つとは!

            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

これは他の曲も聴きたくなってしまう。1.前奏曲8.ファランドール10.アラゴ
ネーズといつものトラックに直ちに飛んで行った。

1.前奏曲の冒頭では弦楽器群のアルコが左右からうねるように繰り返され、
システムの能力によってホールの大きさがどれほど違って聴こえるか、と
いうことを痛切に感じさせる場面でもある。この時に表れたX-01による
ホールの大きさの表現に私は一瞬たじろいでしまった。これは、もしかしたら
P-0s+VUK-P0を使った際のシステムを上回っているのではないだろうか、と
いう一種の恐怖にも似た期待感でもあった。

木管楽器、打楽器、そして弦楽器のピッチカートと、広いステージの上で
フォーカスが絞り込まれた音像は“点”として楽音が始まり、それに対して
オーケストラにおける弦楽器の集団がアルコでの演奏を始めると音の“面”
として表現される。連続音がホールにおいて録音され、それが2chのハイ
ファイシステムで再生されると、オーケストラの各楽器のシルエットには
このような違いが感じられるものだ。しかし、ここで感じたことは…!?

よく水中撮影のドキュメンタリーでダイバーが海中の模様を捕らえた映像が
あるが、カタクチと言われるセグロイワシのような小魚が数百数千の群れを
作り海中を遊弋する姿を思い浮かべてしまった。

遠くから見れば、あたかも一つの生き物のように密集体型の群れは瞬時にし
て姿を変え、方向転換を盛んに繰り返しながらも均一な距離感で一尾ずつの
間隔を保ち衝突することもなく完全に同調した動きで素早く反転している。
自然界の不思議というか小魚の本能がこれほどの密集体型で完全な“同期”
をとって行動しており、私がこの時に感じ取った弦楽器群の演奏の印象が
まさにこの小魚の集団行動のイメージだった。

弦楽器の群れは“面”としてイメージされるその外形をメロディーによって
瞬間的にシルエットを変えながら演奏するのである。あるときはステージ
いっぱいに広がり、あるときは木管楽器とのからみでファーストヴァイオリ
ンが小刻みにアルコを繰り返し、そしてあるときはセカンドヴァイオリンが
フルートとピッコロに合わせてピッチカートを奏でる。連続して長い旋律を
弦楽器群すべてがうねるように演奏すると、スタジアムでスポーツ観戦をす
る観客がウェーブをしてマスゲームの人並みが揺らぐようにエネルギー感が
左右スピーカーの間を往復する。しかも“個”の集団が完全に同調して一つ
の旋律を演奏しているということが、個々の弦楽器の存在感を分離して聴か
せるという離れ業を8N-PC8100によって実現したことで鮮明に認知できるのだ。

これが私の頭の中では小魚の集団行動の映像として描かれ、陽光が差し込む
水中で一尾ずつがキラキラと光を反射し個体であることが見て取れる。
しかし、密集した群れは指揮者のタクトによって方向や大きさを一つの生き
物のように瞬間的に変化させ、左右スピーカーの周辺で弦楽器群のシルエット
が千変万化の変異を見せるのである。その集団のシルエットの描き方と、群
れの中の個体としての演奏者一人ずつの分離感の両方が8N-PC8100によって
私が経験したことのないレベルまで高められているのである。これは凄い!!


3.X-01の潜在能力

いつもはハイブリッドディスクのCDレイヤーをP-0sで再生しているAudio lab
の「THE DIALOGUE」から(1) WITH BASSをX-01のSACDレイヤーで聴くことにした。
http://www.octavia.co.jp/shouhin/audio_lab.htm

これまでは大体が同じ曲のCDレイヤーをP-0sからdcs974でDSDに変換し、それ
をElgar plus 1394でアナログ変換して使用していた。しかし、そのシステム
全体で使用できる本数の8N-PC8100はそろっていないので、デジタル系すべて
を8N-PC8100の影響下におくにはX-01がちょうどいい。そしてSACDを直接再生
できるのも面白い。期待を胸に早速ディスクをローディングする…。そして

「ちょっと待って!? これP-0sでの音より…!? 」

叩き出されたキックドラムの音像は、今まで再生していたP-0sシステムの半
分程度に小型化しているのである。ウッドベースもそうだ。プリアンプ以降
を以前のシステムの変えていないものだが、私がイメージしたのはドラムと
ウッドベースの音像が左右のNEOの真ん中に定位しているのだが、その両端を
ハサミで切り取ったように音像が小型化し濃密感が高まっているのだ!!

これには驚いた。電源以外の各種ケーブルの検証にも、そしてコンポーネント
の新製品を検証するにも、この曲は色々なことを教えてくれるのだが、過去に
P-0sでピックアップしてのフロントエンドの再生音と比較しても明らかに今
ここのX-01の方が音像と小型化とスピード感、テンションと重量感、そして
打撃音の後の瞬間に飛来するエコー感という各要素のどれをとってみても私の
記憶の中で最高のパフォーマンスではなかろうか。

実は、この原稿を書き進むにつれてバーンインの時間も積算され、間もなく
170時間に達しようとしているのだが、この時の猪俣 猛のドラムの切れ味
は過去に覚えのないものとなっていた。NEOを使っての試聴では低域のハイ
スピード感に驚嘆していたが、それが中高域の打音に関してもこれほど爽快
な切れ味が電源ケーブルによって実現されるとは私とて予想していなかった。

前述しているように、オーディオシステムにおいては録音されている楽音に
対して聴感上での加速という現象は起こり得ない。あるとすれば録音の通り
のスピード感が戻ってくるだけなのだが、それがこともあろうに電源ケーブル
によってもたらされるとは何ということだろうか!? ということは、他の曲で
はどのようなパフォーマンスとして表れるのだろうか? 更に好奇心がうずく!!

            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

インターコネクト、デジタルケーブルなどのパフォーマンスを語るときに
私はケーブルの情報量としてエコー感、余韻感による空間表現のあり方と
いう視点を以前にも述べていたが、スタジオ録音で一本の楽器を巧妙な手法
で広大な音場感として聴かせ、かつ色々な要素を教えてくれるのがこの曲。

押尾コータロー『STARTING POINT』6.Merry Christmas Mr.Lawrence
http://www.toshiba-emi.co.jp/oshio/

先ほどはSACDの再生で、さすが!!という見所があったがノーマルCDにおいて
再度8N-PC8100がもたらした影響力の大きさを聴いてみることにした。さて…!?

「おお〜、なんなんだ!! このエコー感の広がり方は!!」

今までNEOを使って何度となく同じ曲を聴いてきたが、冒頭に30秒程度を
聴き始めたときに私は思わず呆れてしまった。ギター弦一本一本を弾く
時のエネルギー感が過去のどの記憶よりも力強く、かつ鮮明であり、その
余韻感が空間に広がっていく容積が以前の倍近くに感じられるのだ。

オーケストラで前兆を捉えていたものの、ソロの楽音が発するエコー感が
電源ケーブルの変化でこれほど拡大されてもいいものだろうか? いや!!
音像そのものが肥大化しているというのなら説明も付くが、この時の押尾
のギターはボディーの共鳴まで描き出す描写力が格段に向上しており、それ
自身の解像度が背景の透明感に比例して素晴らしく向上しているのである。

楽音の“芯”“核”とも言える最も濃厚な音像を提示しながら、NEOの周辺
にビデオ・プロジェクターで押尾の演奏する姿を白いオーラのスクリーンに
映し出しているように、8N-PC8100が何かをこのシステムに与えたのである。
それを一言で言うなら、CDでSACDのパフォーマンスをということだろう!!

叩く楽器から弾く楽器での立ち上がりのスピード感が音場感を倍化させた。
それでは、次に私が選曲するものは!?

            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

電源ケーブルたった二本がもたらしたインパクトの後で、多用な楽器が背景
を埋めてヴォーカルも同時にチェックできるものをと「Muse」からフィリッパ・
ジョルダーノ 1.ハバネラをかけることにした。
http://www.universal-music.co.jp/classics/healing_menu.html

エアコンが静かに唸るだけという時間帯になって、私は試聴室とデスクを
何往復もしながら、近来稀に見るケーブルのマジックに驚きながら、それ
を早く皆様にお知らせしたいという心境と、もっともっと曲を聴き続けた
いという心理があいまって、どこまで試聴レポートを書き続けるのかと
自問することがある。今のコンディションを聴き続ける限り、新しい選曲
をするたびに新しい感動が湧き起こりきりがないのだ。

さて、これも私の耳と頭にはすっかり音の記憶のテンプレートが出来上がっ
ているフィリッパをかけてやろうと席についてX-01をスタートさせた。
そして、冒頭の多重録音のヴォーカルのイントロが始まった…!?

「ええ!? そんな…。どうして? なんで? でもうれしい!!」

この曲が始まった瞬間に、やはり私は過去の記憶のファイルに同レベルの
演奏はなかったという答えが瞬時にはじき出された。

一枚の完璧に透明なガラスにセンターに定位するフィリッパの口元を赤い
ルージュを使って書き付けたとしよう。もう一枚の同じガラスには同様に
左右に展開するオーバーダビングしたフィリッパの唇を今度は少しピンク
に近いルージュで左右同じ位置に広げて書き付けた。同じようにより間隔を
更に広げた左右両翼に、また新しいガラスにオレンジに近いルージュで彼女
の唇を描こう。こうして10枚くらいのガラスの重複しない位置にフィリッパ
の唇をすべて色合いの違うルージュでたくさんの口元の輪郭を描いたとする。

さあ、それを私の目の前から3.5メートル離れたNEOから私に向かって、NEOの
ユニット前面から唇が左右に離れている間隔の大きなものから順に10センチ
ずつの間隔で並べてみたとしよう。一番手前がセンター定位のフィリッパだ。

左右のNEOの間にきれいに並んだフィリッパの音像はどれも重複することなく、
しかも各々の口元には立体的に浮き上がったフォーカスによって前後にも
間隔を開けて見事に空間に定位するのである。これほどフィリッパのヴォー
カルを文字通り“浮き彫り”にした演奏は経験したことがない!!

それから展開されるセンターのドラムは軽く空間に舞い上がり、しかも
彼方から響いてくるカスタネットはズームアップしても解像度が落ちない
ほどの鮮明さであり、オーケストラが盛り上げるフォルテが放つエコーの
滞空時間は私のデータバンクで新記録を樹立した!!

         「こんなことがあっていいのか!?」

            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

バーンインが進むにつれて表れる新たな8N-PC8100のパフォーマンスに私は
どこでピリオドを打って文章化すればいいのか、今になって際限がないこと
に気が付いた。私が聴き込めば聴き込むほどに新たな感動がドラマチックに
わきあがってくる。

ここで肝心なことは、すべての曲を過去に錚々たるシステムで聴いてきたに
も関わらず、私の記憶にない立ち上がりのスピード感、フォーカスの絞込み、
聴こえていなかったエコー感の新たな発見、高域と低域両方に渡るエネルギ
ー感の自然なエクステンション、アイソレーション構造を持たないくせに
ノイズフロアーを低下させる不思議、などなど私が電源ケーブルに対する
チェックポイントのすべてで過去の評価をすべて塗り替えてしまったという
ことだ。こんなACケーブルがあったのだ!! いや、今ここに誕生したのだ!!

さあ、私が聴けば聴くほどに物語りは続いてしまう…。この辺でそろそろ
幕引きとして物語の舞台を皆様のシステムに譲り渡そう!!

            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

2004年8月オーディオシステムは歴史に残るエネルギー革命に遭遇する。

http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/op-pho/8npc8100b.html

http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/op-pho/8npc8000b.html

しかも、それは世界中で250人、いや場合によってはもっと少ない人々しか
体験できないものとなるだろう!! それが悔しい…!?

 なぜならば…。このケーブルを数十本も独り占めして、ここで使い続ける
ことができないからである!!


    ■ 8N-PC8100はハルズサークルの皆様に捧げたい!! ■


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