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H.A.L.担当 川又利明


No.232 小編『音の細道』特別寄稿 *第十六弾* 
      「新製品は五日間以上かけて吟味すべし!!」
1.やっぱり必要なバーンインのこだわり

2003年2月8日、このレビューNo.0573でも速報したHALCRO dm8のファイナル
バージョンが遂にやってきた。しかし、これまでの経験から初日の音質は
評価に値しないものと考えており、システムエンハンサーをリピートして
のバーンインをさせて次のシステムで様子を見ることにした。

http://www.harman-japan.co.jp/products/halcro/halcindx.htm


                   Timelord Chronos(AC DOMINUS)
                ↓
              Word sync only→dcs BNC Digital Cable
                ↓
                      dcs 992/2(AC DOMINUS)
                ↓
              Word sync only→dcs BNC Digital Cable
                ↓
 Esoteric P-0s(AC/DC DOMINUS & RK-P0 & MEI Z-BOARD & PAD T.I.P)
                ↓*VUK-P0 Version
                  Digital DOMINUS PLASMA-SHIELDING
                ↓*88.2KHz伝送
                  dcs Elgar plus 1394(AC DOMINUS)
                ↓
               Balance DOMINUS(1.0m) PLASMA-SHIELDING
                ↓ 
                HALCRO dm8 (AC DOMINUS)
                ↓
               Balance DOMINUS(7.0m) PLASMA-SHIELDING
                ↓
                    HALCRO dm68(AC DOMINUS)
                ↓
                 DOMINUS Bi-Wire Speaker Cable(5.0m)
                ↓
                  B&W Signature 800(With BRASS SHELL)
        
そして、翌日…。だめです、まだ。もちろん悪いということはないのだが
私の感性に響くものはまだ出てこない。それだけ、ここのフロアーの音質
評価のハードルは高いということだ。バーンインの待ち時間によろしかっ
たらHALCROとの出会いを下記にてご覧下さい。

http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/oto/oto49-01.html


2.ハイエンドオーディオに求められる情報量とは?

私は、前回のshort Essayでこのように述べている。

           -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

以前RELAXA2PLUSを試聴した時の印象はバックナンバーNo.0343でも
述べているのだが、ある楽音が発したエコー成分が更にこれほど残さ
れていたのかという驚きがあり、それが空間表現のスケールアップに
貢献していたものだった。

しかし、“付帯音”がつきまとってしまう、という事では決してない
ことを最後に申し上げたい。私の経験では、“付帯音”というのは
録音されているエコー感が空中に拡散していく過程で、最初の音色
から質感が変わってしまう場合を示すものである。

しかし、RELAXA3PLUSではあらゆる楽音の余韻感が空中に滞在して
いる間に、その質感を何ら変えることはなく、ただフェードアウト
していく時間軸が延命されるだけなのである。

それも、スピーカーという音源から周辺のあらゆる方向に向けて、
そこにある空気にさざなみを起こすように自然に減衰していくので
ある。この正確さに裏打ちされた心地良さをどう表現したら良いの
だろうか…。

           -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

すなわち、二日目までのHALCROの演奏では、これらが不十分である、
いや…、私が常日頃ここで実演しているレベルには達していなかった
ということなのである。

プアーなリアスピーカーや中途半端なセンタースピーカーを使用しての
5.1chの音では決して体感できない2chの空間表現が近代のハイエンド
オーディオに求められるものであり、それを具現化するのが録音に
含まれる余韻成分である。

そのエコー感とも言い換えの出来る余韻感が豊富であればあるほど、
再生音量の大小に関わらずスケール感を再現してくれるのである。
スケール感とは大音量で迫力を無理強いするような聴かせ方では
ない。楽音の残滓が消滅するまでに、スピーカーの周辺に漂う演奏
者の放ったエネルギーが空気に色彩感を帯びさせることを示すものだ。

HALCROのdm68には、その可能性を示す兆候が他社のプリアンプを
使用してもちゃんと感じられたものなのである。


3.熟成に要した時間

昼間の営業時間にシステムエンハンサーの奇妙な音を流しておくわけ
にはいかないが、昼間は音楽を鳴らし夜にはシステムエンハンサーを
徹夜でリピートする。これを繰り返して五日目の今日、私は何とか
時間を作ってHALCROペアの試聴を間に合わせることが出来た。

今日は貴重なサンプルのdm8を輸入元に返却しなければいけないとい
う最終日である。引取りの時間を夕方まで遅らせるように要請し、
期待のうちにセッティングを進めていく。それは比較対照として
昨年私が始めてHALCROのdm68の試聴に使用したJEFFROWLANDの
COHERENCE2を同じ環境にセットアップするということなのである。

http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/pho/030212/halcro.jpg


さあ、五日間のバーンインで目覚めてくれたろうか!??
前述のように空間表現を検証するということで、今回は迷わず最初の
曲はこれを選択した。

チャイコフスキー:バレエ音楽《くるみ割り人形》op.71 全曲
サンクトペテルブルク・キーロフ管弦楽団、合唱団
指揮: ワレリー・ゲルギエフ CD PHCP-11132

http://www.universal-music.co.jp/classics/gergiev/discography.htm

1トラック目の序曲からスタートする。

「おお!! 出た、出ましたよ!!」

と、感激の一瞬。この演奏の冒頭をよ〜く注意して聴くと、左側から
のファースト・セカンド両ヴァイオリンの楽音が発せられると、右側
のホール壁面と天井から反射される弦楽器の投影像が反響音として
聴こえてくるのがお分かりでしょうか。

あたかもヴァイオリンの放った楽音が一拍の間をおくように右側から
も聴こえてくるのだが、そこはチェロとバスの低音弦楽器群が居並ぶ
場所であり、数瞬後にはちゃんと低音弦楽器が演奏を開始するそこで
ある。このホールエコーがどれほどみずみずしく聴けるのか、これは
私がこのディスクで行う最初のチェックポイントなのである。

五日目のHALCROペア優秀です、素晴らしいです。
さて、ここで直ちにCOHERENCE2に切り替える。

「お〜、そうだよね〜。このくらいは出来て当たり前だ!!」

と、当然のようにチェックポイントを通過したCOHERENCE2との演奏に
私は待ったをかける。むむ、再度HALCROペアに…。

「ああ〜、ここが違うよ!!」

同じJEFFのプリ・パワーであれば気にならないことなのだが、同じ
作者のHALCROペアに戻したときに、それは聴き取れた。

「ヴァイオリンのアルコが美しい、滑らかじゃないか!!」

そうなんです。繰り返す旋律を奏でるヴァイオリンは確かにHALCRO
ペアの方に軍配が上がります。しなやかな手首と腕の動きが表れ、
聴きやすく芳醇な余韻も伴ってくる。HALCROペアの腕を上げました。


さて、連続する弦楽器の質感にHALCROペアの優位性を見出したら、
次はアタックの鮮烈さを確認しなければ、と次の選曲。

http://www.jvcmusic.co.jp/cincotti/

最近お世話になっているPeter Cincottiのアルバムからトラック4
「Sway」である。最初はCOHERENCE2に期待する俊敏さとフォーカスの
引き締まりを配慮して聴き、次にHALCROペアに切り替えたその時!!

ピアノのイントロ…
「うん、いい!! 太い弦のヒットの瞬間、右手のアタックの立ち上がり、
 それらの質感とテンションを維持したまま一音一音にエネルギー感
 を込めて演奏しているようだ。スピード感があるのに優しいぞ!!」

リムショットの一瞬…
「お〜、切れてる切れてる、スパッと…。しかもスティックをちょっと
 太いものに取り替えたみたいにこちらに押し出してくるアタックが
 何とも気持ちいい!!」

そしてベース…
「おお!! このベースは重い、しかもピッチカートの瞬間が鮮やか!!」

ピーターのヴォーカル…
「ありゃ〜、これはちょっと勝負ありだよ!! だって、三歩くらい
 ステージに近づいたようにヴォーカルの肉付きを感じるし、しかも
 オンマイクでの息遣いに続くエコー感が作るシルエットが大きくな
 ったり小さくなったりと、ヴォーカルの抑揚の変化をバッチリと
 とらえている。COHERENCE2では、小さいままの口元だったよ」

「 When marimba rhythums start to play  Dance with me,
                                           make me sway 」

これいいです、お奨めです。
さて、ヴォーカルの印象を更に多元的に評価するには…、そうこの曲。

           -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

「Muse」UCCS-1002 の一曲目。 FILIPPA GIORDANOのカルメン「ハバネラ」
もう耳にタコが十個以上出来るほど聴き込んでいる選曲だが、これがまた
多くのことを教えてくれる。

これも比較のために最初にCOHERENCE2を聴き、早速HALCROペアに切り
替えたその時!!

FILIPPA GIORDANOの多重録音のバックコーラスが広がる。不思議だが
COHERENCE2によるピンポイントのフォーカス重視の音像の絞込みが
なんだか窮屈に感じられるほどコーラスが広く展開する。

そして、FILIPPAのソロが始まった…
「あ〜、この質感いいわ〜!!」

某布団、寝具メーカーのコマーシャルではないが、手を滑らせ頬擦り
をしたくなるようなFILIPPAの歌声に思わずうっとりしてしまう。

そして、特徴のあるドラムがセンターに響く…
「あーーー!! これ決定的だ!!」

そうです、このドラムの重量感と響きが浸透する空間の大きさが違う。
大きい、広い、そして重たいの三拍子揃った抜群の低域だ。
一言追記するが、のびのびと、そして正確に…、学校教育のお手本の
ようなコメントだが、このときに比較されたドラムの質感には脱帽と
しか言いようがない相違がある。すきのないHALCROペアの圧勝である。


4.私の基本的なセールス方針

数々の雑誌で著名な評論家の皆さんが、ここのプリアンプとあそこの
パワーアンプを組み合わせるのが良い…、と特集記事を見受けることは
よくあることだ。

しかし、私はいつも「あの人たちはアンプの作者の何がわかっていて
あんな組み合わせをするのだろうか?」といつも疑問を持って眺めて
いる。どこに推奨の根拠があるのだろうかと…。

読者が体験できないことを知っている?(実際の再生音のレベルはとも
かく)という状況を演出して記事を書くのはたやすい。そして、それ
は職業としての“権威”を作り上げるのに好都合な演出でもある。

さも、難しそうに「あれとこれは相性が良い、悪い…」と語るのは
簡単だが、それを信じて購入した読者には一切責任を取る必要が
ないのも、また事実であろう。(私はしっかり責任を負いますが)

何を申し上げたいかというと、私は直接アンプの設計者たちと面識
を持ち、彼らの情熱と技術力を感じれば感じるほど、まずは彼らの
目指しているものを純正のペアによって認識することからセパレート
アンプの選択が可能になってくるものと考えているのである。

従って、白紙の状態からシステムを組んでいく場合、あるいはプリ・
パワーアンプのいずれかに対してアップグレードを検討する場合、
それらの場合に私はほとんど同じ作者の製品を推奨し販売している。

でなければ、設計者に対してプロのセールスマンとして対等に音を
語り合うことは出来ないだろうと考えているものだ。

今回も、約一年間の待ち時間はあったものの、HALCROペアの実現に
よって明らかに同社の方向性が純正ペアによってのみ聴かせてくれる
世界があるということを思い知らされた。

ハイエンドオーディオによる2ch再生の可能性、それを吟味するため
のパラメーターの吟味と確認作業。これまでの五日間、HALCROペアの
熟成を待った甲斐があったことを本日のうちに皆様にお伝えしたかった。

さあ、後は、私が感じたことを実際にここで皆様に体験していただく
という段階になってくる。輸入元と展示品の交渉を行って、HALCROの
真の魅力を皆様にご提供することが次の私の仕事となった。

                  皆様、しばし待たれよ!!



このページはダイナフォーファイブ(5555):川又が担当しています。
担当川又 TEL:(03)3253−5555 FAX:(03)3253−5556
E−mail:kawamata@dynamicaudio.jp
お店の場所はココの(5)です。お気軽に遊びに来てください!!

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