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H.A.L.担当 川又利明
    
2020年3月18日 No.1595
 H.A.L.'s One point impression!! - CHORD ARAY Technology感動の真実!!

Chopin Piano Concertos Nos. 1 & 2
https://wmg.jp/yundi/discography/22200/

2017年6月、ワルシャワ、ポーランド国立ワルシャワ・フィルハーモニーで録音された
ユンディ・リ(ピアノ&指揮)によるショパン:ピアノ協奏曲を聴き終えた。

上記の日本語解説にあるユンディ・リを語る次の一節が印象的だ。
「曲の奥深くまで分け入り、抒情性を大切にしながら詩的な演奏をする」

ESOTERIC Grandiosoシリーズの最新技術による素晴らしい情報量とH.A.L.の
リファレンスとしてゆるぎない存在であるHIRO Acoustic MODEL-CCCSという
聴き慣れたはずのシステム構成において、私が知り得なかった音がここにある。

「人の心に響く音」をテーマとしているCHORD COMPANYの存在が聴き慣れている
はずのHIRO Acousticに新たな生命力を与えたと言ったらオーバーだろうか。
https://www.andante-largo.com/product/audiocable/

しかし、上記のユンディ・リの音楽性を語る一節に共通する感性の一端を私は
感じてしまったのだから仕方ない…。

同社のトップモデルChord MusicシリーズをGrandioso D1Xの出力からスピーカー
ケーブルに至るアナログ信号のシグナルパス全てに導入した下記システムでの演奏だった。
https://www.andante-largo.com/product/audiocable/audiocable-gradelist/#chordmusic

H.A.L.'s Sound Recipe/CHORD ChordMusic & GroundARAY-inspection system Vol.1
https://www.dynamicaudio.jp/s/20200308140952.pdf

このショパン:ピアノ協奏曲第一番の第二楽章の導入部での弦楽五部による演奏が
ことのほか美しく、それを最初に聴いて正に抒情性を大切にした詩的な演奏により
私の心に響いた音という事だろうか。

私にとって音楽はもっぱら聴くだけであって、楽器演奏も出来なければ譜面も読めない私。

音楽的素養は中学生レベルというお粗末なものであり、専門的かつ優れた鑑賞家としての
知識や経験がないので、感動した音楽を語る時にはどうしてもオーディオ的解釈による
ものとなってしまうことを今更ながらにお断りしておかなければならない。

後の時代になって2020年は新型コロナウィルスによる社会的影響が歴史となって
いるかもしれないが、今年はスポーツ界でもエンターテイメントの世界でも無観客と
いう言葉がよく用いられていた。

クラシック音楽の録音作品でも観客・聴衆をホールに入れたコンサート形式の実況
録音というのがライブレコーディングであり、音楽作品を商品化する前提では
パッケージメディアとしてだけでは収益性が薄いので昨今のクラシック音楽では
ライブ録音がほとんどであろう。

しかし、このユンディ・リのショパンは無観客、つまりセッションレコーディングであり、
聴衆のいないホールでの細やかな響きを存分に取り込んだ優秀な録音であるということ。

その演奏と音質に魅せられて第二楽章を聴いた後に最初のトラックから聴き直し、
結局はCD一枚を全て聴き続けてしまった。

セッションレコーディングの威力は第一楽章の冒頭から音に表れており、特に
低弦楽器の残響が克明に描かれていることが大変印象的だった。

H.A.L.'s One point impression!! - HIRO Acousticにしか出せない低域!!
https://www.dynamicaudio.jp/5555-7F/news/1481.html

上記の記事でもセッションレコーディングの価値観を述べているが、HIRO Acousticの
特徴を次のように述べている。

「理解しづらい喩えかもしれませんが、重たい低音を軽く出してしまうのです!」

低音楽器の弱音での演奏による低域の再現性が素晴らしく、このショパンでも
ホールの空間に漂うようなコントラバスの残響が広まっていく情景描写が極めて
リアルであり、再生システムの情報量の大きさを再確認しつつ“高度”なケーブルを
使用することで得られる空間再現性の素晴らしさに息を飲みながら聴き続けていた。

もちろん質感の素晴らしさは弦楽五部全てのパートで引き立っているのだが、
ヴァイオリンの音色に関しては他の録音にはない魅力があると感じた。

オーケストラの録音ではマスタリングによって弦楽器の量感と質感もスタジオで
調整することが多いのだが、この作品のヴァイオリンは26人の演奏者集団が発する
響きのオーラというか独特な空気感をはらんだ雰囲気を感じる。

スタジオでのイコライジング次第で明るくも暗くもなる弦楽器だが、上記システムで
再生するとマスタリングの意図が音になって分かってしまうことがしばしばある。

あたかも、チョークの白い粉が微量に残っている拭き残しのある黒板がもどかしく、
それをさっと雑巾で水拭きしてしまった時のような黒板の鮮やかさが目に浮かぶ。
そんな音場感における清浄効果がChord Musicシリーズによってもたらされたと実感した。

人工的なリバーブをマスタリングで追加したという事ではなく、セッション録音の
環境の素晴らしさが微細な楽音をマイクが拾う事に貢献し、弦楽器の音色と質感に
得も言われぬ美しさを与えている。それを“高度”なケーブルは正確に伝えてくる!

そんなオーケストラを背景にしてユンディ・リのピアノが展開するが、決して
ソリストとしてのピアノを拡大表現することなくオーケストラと空間を共有し、
ピアノのサイズ感は主演であることを尊重しつつも交響楽団に敬意を払う程度に納まる。

それはサイズ感という音像の在り方だけではなく、ピアノの打鍵の一音ずつに
素晴らしい分解能を確保しつつ、ユンディ・リの両手が絶妙な柔軟性をもって
鍵盤の上で躍動する情景が脳裏に浮かんでくる。これは素晴らしいです!

ピアノが放つ響きが拡散していく空間はオーケストラと同じステージであることが
自然に聴き手に分かる対比であり、ユンディ・リが指揮することで正にワンチームとなり
協奏曲としての調和が音場を共有する素晴らしい録音作品として感動しました!

仕事がら様々なケーブルを取り扱うものだが、CHORD COMPANYのように純白の
シースをまとっているものは他にはないだろう。私は思うのです…

一流の画家はチューブから絞った絵の具をそのままキャンバスに乗せることはない。

光と色は三原色によって全ての色彩を表すことができるというものだろうが、
芸術家たる画家はパレットにとった数種類の絵の具を納得いくまで調合し、
自分の感性で作り出した色によって作品を描くものだろう。

自然界の緑や茶色、人肌の色合い、海や空の青、果実の赤、どれを描くにも原色
そのままという事ではなく自分の色というものを作り出している。

そこに創造があり芸術として感動を他者に伝える技術と感性があり、作者によって
作り出す色とは無限の種類と広がりがあるものだろう。そこに未知なる魅力がある。

音楽の音色、いや再生音の音色というものも同様で、私が組み合わせるシステム構成
にもコンポーネントという原色の絵の具があったとしたら、それを調合して自分なり
の音色を作ろうとする際にケーブルという要素は大きな働きをしてくれる存在となる。

私がChord Musicシリーズで統一されたシステムで聴いた音は、自分の経験の中で
明らかな新色であり、演奏される楽音個々の音色を調合する役目をケーブルが
担っていたという事実を改めて実感した。

極めて高い透明感を持ちながら、しなやかでありながらテンションの強弱も見事であり、
素晴らしい情報量を持ちつつ誇張感のないバランス感覚を持ち、聴き手の感性に寄り
添うような自然体での音楽表現という“高度”な色彩表現を見せるCHORD。

もしかしたら今まで一生懸命に原色だけをパレットに絞り出していたのではと、
コンポーネントの性能追求に終始していたユーザーの心境を推し量り、それに対して
まさにCHORDは純白の一滴を原色に調合させたような変化をもたらすことだろう!

その白い一滴がまじわったことは見た目には分からないのですが、原色と並べて
初めて気が付く変化であり、それが音楽を聴く上でこの上もない快感をもたらす!

上記では一枚のCDを聴いての感想を述べたものですが、もちろん多くの課題曲を
聴き込んでの分析であり、他の多種多様な録音においても同様な印象をもって
確認してきたということを追記しておきたい。

これは聴いて頂かなくては分からないことでしょう。そして更に…

           -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

上記では音色ということに着目してCHORDケーブルの魅力と特徴を私なりに表現した。

これは言わば音像の中身というか質感に関しての評価なのだが、絵の具の色彩感に
例えたものであり、実は更に“高度”なケーブルであるという事が色を取り囲む
線画としてのディティールの再現性にもあるという事が重要なことなのです。

■ARAY Technologyの詳細は下記をご覧下さい。
https://www.andante-largo.com/product/audiocable/aray-technology/

上記にてARAY Technologyの素晴らしさを実感した私は、そもそもCHORD COMPANYが
提唱する技術がどのように音質に関わっているのか納得出来ないでいました。

上記リンクの図解にあるようにアレイ線として表現されていますが、オーディオや
通信技術の分野では昔からドレン(ドレイン)ケーブルとして高周波ノイズ対策として
利用されているものなので、特に画期的というものではないと思います。

しかし、CHORD COMPANYはその原理に関してアレイ線と称しているケーブルに関して、
長さや材質、絶縁法などに関して研究した成果としてARAY Technologyと称する
特徴を商品化したことに何も異論はないものです。

その中で私が今回試聴した同社のトップモデルにSuper ARAY Technologyが搭載
されているという事なのですが、出来合いのケーブルを聴いても実感がわかない。

それを輸入元担当者に話していたところ、ChordMusic XLRケーブルと全く同じ
導体と構造でアレイ線を取り外したテスト用サンプルを作ってくれたのです!

見た目は通常のChordMusic XLRケーブルとなに一つ変わらないのですが、
そのテスト用ケーブルをシグナルパスの最上流であるGrandioso D1Xとプリアンプ
Grandioso C1との接続に使用して比較試聴することができました。

この実験も多数の課題曲で行いましたが、結果としては唖然とする違いがあったのです!

アレイ線なしのテストケーブルに変えると音像の輪郭がぼやけてしまうのです。

ディティールが不鮮明になるという事は音像サイズがあいまいになり、膨張した
ように感じてしまい、定位感と奥行き感が損なわれてしまい空間再現性も劣化します。

これには驚きました!
簡単に言えば下記の記事で述べていることがケーブルそのもので確認されたということです!

H.A.L.'s One point impression!! - これは高度(CHORD)なアクセサリーです!!
https://www.dynamicaudio.jp/5555-7F/news/1583.html

見た目同じケーブルなのにハイエンドケーブルとして何が必要なことなのかを
教えられたのですから。既製品だけしか聴かなければ、その真価を理解する
ことはできないでしょうが、この実験によって私はCHORD COMPANYに対する私の
評価は最高レベルとなりました。

           -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

さあ、これでSuper ARAY Technologyを搭載したChordMusic XLRケーブルで
シグナルパスを統一して、念願だったGround ARAYを使用しての最上級の音質を
検証することが出来るようになったのです!

H.A.L.'s One point impression!! - これは高度(CHORD)なアクセサリーです!!
https://www.dynamicaudio.jp/5555-7F/news/1583.html

私は勝手にAnti radio frequency itemと命名しましたが、モノ構成のプリアンプに2本、
モノDACにも2本、トランスポートにも1本と合計5本のRCAタイプを使用し、さらに
BNCタイプも1本マスタークロックジェネレーターにも使用し、今まではwebでは
公開していなかった-No.4413-掲載の下記エピソードも併記しておきます。

            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

Chord Musicシリーズを導入してからの音質は私が経験したことのない素晴らしさで、
インプレッションを書かなければと思いつつ中々集中しての執筆が出来ない状況が
続いていたのですが、今日はGround ARAYシリーズ初というBNCタイプをスポットで
上記システムにて試聴しました。ここでまた発見が!

私は以前から輸入元にGround ARAY BNCのサンプルが欲しいと要請していたのですが、
このシステムのどこに使いたかったかというとマスタークロックジェネレーター
Grandioso G1に使用したかったのです。
https://www.dynamicaudio.jp/s/20200209135842.pdf

現在Grandioso G1の出力4系統をフルに使用しているので、まず装着したのは下記の
ように空いていた「EXT-IN」の端子でした。
https://www.dynamicaudio.jp/s/20200223170807.jpg

マスタークロックジェネレーターという単機能の製品、かつオーディオ信号は
全く伝送されていないところなのですが、いや〜驚きました!

下記にて述べていた各項目が更に進化しての再生音に思わずニンマリしてしまいました!
これはイケます! Grandioso G1に限らず過去の他のマスタークロックジェネレーターでも
当然同様な効果が期待できるわけです!
https://www.dynamicaudio.jp/5555-7F/news/1583.html

さて、空き端子だった「EXT-IN」にて実験した段階でGround ARAY BNCの効果を
思い知ったものですが、実はこの段階で私の頭の中では更なる課題が浮かんでいました。

それを説明するために、ちょっとこの画像を見て頂きたいと思います。
https://www.esoteric.jp/images/products/_esoteric/g1/gallery/g1_interior.jpg

Grandioso G1の内部が見られますが、BNC出力端子は基板に直付けとなっていますが、
私が試した「EXT-IN」はリアパネルの端子からケーブルにて基板に接続されています。

上記の私のインプレッション記事から下記を引用します。

「CHORD COMPANYの設計者たちからすれば、同社が開発したARAY Technologyを前提にすると、
 本来ならばコンポーネント内部の基板に直接取り付けたいくらいだという。
 https://www.andante-largo.com/product/audiocable/aray-technology/

 だからARAY Technologyの基幹部分をケーブルで外部に接続させるようなことは
 開発意図に反する行為となり、同社の技術理念からすれば最も基板に近いところで
 ARAY Technologyを作用させるということが必要不可欠であったという。」

この理想からすれば、上記のように内部でケーブルによって基板に接続されている
「EXT-IN」よりは出力用BNC端子に直接使用した方が良いのでは!?で下記の写真。
https://www.dynamicaudio.jp/s/20200223170757.jpg

たったこれだけの使用法の変化なのに音質は激変!

さっきまでの「EXT-IN」でも効果は感じられましたが、基板直結のBNC端子に使用したら
次元の違う情報量の拡大と音像の鮮明化、質感の充実、空間表現のサイズ拡大と私が
志向している音質変化のベクトルにジャストミートしてしまったのです!

さあ、マスタークロックジェネレーターをご使用になっている皆様。
たった? ¥88,000.で皆様の愛機に新しい可能性が生まれることになります!

今日の実験試聴は面白かったですね〜。輸入元サイトにもない出来たばかりの
公式カタログを下記にてハルズサークルの皆様にお知らせ致します。
https://www.dynamicaudio.jp/s/20200223173219.pdf

             -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

上記はしばらく前のハルズサークル配信に掲載したものですが、このような経験を経て
合計6本のGround ARAYを駆使した下記の試聴システムで検証を行ったものです。

H.A.L.'s Sound Recipe/CHORD ChordMusic & GroundARAY-inspection system Vol.2
https://www.dynamicaudio.jp/s/20200308170542.pdf

さあ、このシステム構成において課題曲の一曲ごとに合計6本のGroundARAYを付けたり
外したりという作業を繰り返し、同じ曲を何度も比較するという作業を開始した。

こんな目的で試聴していると知らない人が見たら、何とバカなことをしているのかと
笑われてしまうでしょうが、そのこだわりこそH.A.L.の所以なのです。

■Espace 溝口 肇 best
http://www.archcello.com/disc.html
http://mizoguchi.mystrikingly.com/

上記の「これは高度(CHORD)なアクセサリーです」という記事の中に次の一節があります。

「これから先の近い将来にGround ARAYを皆様のシステムで試してみようとする時、
 ぜひ選曲の中にチェロの録音を含めて試聴されることを強くお薦め致します!」

そして、前述ではオーケストラのセッションレコーディングの魅力も述べていましたが、
この溝口 肇の曲を多用することに共通の意味合いがあるのです。

ソロ演奏によるチェロの録音は当フロアーのディスクコレクションにも何枚かありますが、
これらはほぼホール録音によるもの。ホールエコーという響きの要素が環境によって
加わったものであり、その余韻感を尊重した音作りの作品となっているものが大半です。

しかし、この溝口 肇のチェロはスタジオ録音であり、ミックスダウンとマスタリングの
過程におけるスタジオワークで曲ごとにチェロの音質と存在感を変化させています。

特定のホールで常に一定の残響成分を背景にして演奏したチェロではなく、スタジオで
コントロールされたチェロの在り方が克明に聴き取れるものであり、言うなれば
セッションレコーディングのように観客の存在による限定的な状況下における音場感に
支配されない一曲ごとのチェロの質感というものが鮮明に聴き分けできるのです。

先ずはChordMusicシリーズでアナログ系シグナルパスを統一したinspection system Vol.1で
課題曲を聴き、しっかりと記憶に焼き付けてから6本のGround ARAYを差し込んで全く
同じ音量でVol.2システムで比較するという手間暇かかる試聴を始めたのでした。

1.Espace

一見すると溝口 肇のソロ演奏のように聴こえるが、Maxine Neumanのセカンドチェロが
途中から寄り添うようにセンター左側からピッチカートとアルコの両方で加わり、
低音階でのゆったりとした音像から高い音階ではセンターに音像が凝縮してくるという
近年私が多用している課題曲がこれ。

先ずはVol.1システムで冒頭で述べたオーケストラの美しさがチェロの演奏でも存分に
感じられる音質を確認し、6本のGround ARAYを差し込んでいった。すると…

「おー! 広がってしまって当たり前と思っていた出足の低音階での音像がこうなるのか!」

ゆったりとアルコで弾かれる低音において、今までは周辺に広がっていく余韻が
音場感の展開として好ましい拡散効果だと思っていたのだが、Ground ARAYを投入
した途端に撒き散らしていた響きがセンターに集束してくる! これはいい!

更に摩擦感をもった弦の響きが音像の中心点に楽音の核、コアとして音に求心力が
働いたかのように濃厚濃密な楽音の重要拠点を形成する。ばら撒いていた砂鉄の中に
磁石を置いたら、磁力線に沿って細かい砂鉄が集中し整列するような印象に近い!

そのチェロの楽音のコアでは以前になかった弦のバイブレーションが力強く感じられ、
音像サイズの凝縮だけでなくエネルギー感としての集約も同時進行で行われている。

今まで散漫に響きの拡散が行われていたのだろうか、音像が膨張していたことに
初めて気が付いた。散らばっていた響きの粒子が左右スピーカーのセンターに
現れたマグネットに吸引されていくように濃密な音像に変化すると、今度はチェロの
周辺に浮遊していた残響が楽音のコアに集中することで視界が開けるという変化が伴う。

すると空中に滞空していた響きが一か所に集約されると、チェロの周辺に音なしの
空間が表れ、音像のシルエットを鮮明にすると同時に無音部分の空間が出来るので
奥行き感がぐっと深まってくるという副産物が得られる。これは素晴らしい!

そしてセカンドチェロにも変化が表れた!

溝口 肇のうねるようなアルコによるチェロがセンターで躍動している傍ら、
左側でピッチカートのチェロが登場するが、その弦の質感とテンションが何とも
素晴らしい解像度となって克明な音像を再構成していた!

その後にMaxine Neumanのセカンドチェロはアルコに転じるのだが、今までふっくらと
して淡泊に感じられた音像がぎゅっと引き締まり独立した音像として存在感を示す!

このMaxine Neumanのチェロの変化は前述の溝口 肇が放った響きが集束されることによって、
空間の透明度が高まり奥行き感が向上したことに起因するものであり、主役として
センター定位するチェロという楽音の造形が精密になったことで伴奏者的なセカンド
チェロの分解能が大きく向上したということだろう。

名レコーディングエンジニアSEIGEN ONO(オノ セイゲン)のサウンドデザインによる
スタジオ録音とは思えない素晴らしい音像と音場感の両立が素晴らしい感動を生む!

スタジオ録音にしてチェロの紡ぎ出す余韻感をどのように録音に封じ込めるのか、
それはレコーディングエンジニアのセンスでありマスタリングの妙でもある。

1988年にニューヨークのメディアサウンドスタジオで録音されたこの曲では、
チェロの楽音に尾を引くようなリバーブではなく、聴き手に演奏空間をイメージ
させるような巧妙な余韻感が施されていた。そして音像も見えるのが凄い!

シンプルなチェロの録音だけでGround ARAYの威力がこれほどかと実感され、その
マスタリングには恐らく真空管のラインアンプを使ったのではないかと推測した。

その証拠に微量なノイズが背景に漂っており、そのノイズの質感もGround ARAYに
よって鮮明に聴こえるのだから驚く。

なぜ、そのノイズが印象に残ったのかというと、2トラック目がスタートした瞬間に
全くの無音状態になり、強烈なキックドラムが飛び出してくるからなのです。

2.世界の車窓から

6本のGround ARAYをいったん外し、前曲とは全く違う編成での課題曲を聴き、
記憶に焼き付けて再度Ground ARAYをセットする…。すると…

「なにこれ! たった15秒で誰でも解ってしまうじゃないか! ピンボケだったのか!」

たった15秒というのは冒頭からのキックドラムの連打が続く時間。
チェロが入ってくるまでの15秒間だけ聴けば歴然とした違いが解ってしまう。

前曲の印象からも想像がつくだろうが、キックドラムのテンションがこれでもか
というくらいに引き締まり、同時に音像もぐっと集束して密度感の違う打音となる。
この違いは本当に誰でも気が付いてしまうだろう。そして、更に…

15秒過ぎからチェロとエレキベースが加わり、背後では一定のリズムでスネアが
叩かれるのだが、ドラムも含めてこの四種類の楽器は全てセンター定位となる。

それを前提にセンターという一か所に定位する楽音の一部としてチェロの音像は
前曲とは全く異なる質感となり、音階によって音像の大小という変化はない。

それはGround ARAYをセットしてからベースにもドラムにも言えることであり、
低音楽器の音像サイズと濃厚な質感への変化はここでも鮮明に表れている。

そして、センター定位の楽器を軸にして左右スピーカーの軸上では多彩な
パーカッションが展開するが、その金物の鋭いインパクトが段違いの変化を見せる。

更に途中からギターが最初は右寄り、その後には左寄りの位置関係で小気味よい
カッティングで演奏するのですが、まあ…その鮮明さが段違いなのに驚く!

それが今まで聴いていたのがピンボケに思えるという事なのです。
オーケストラでの弦楽器の美しさは前述していましたが、パルシブな立ち上がりの
打楽器やギターの切れ味でも呆れるほどの変化を示す! これは素晴らしい!

センター定位の楽音と左右スピーカーのオンアクシスの位置で展開する楽器でも
コンポーネント内部の高周波の存在感を示し、それを除去したらこうなるという
見せつけをするGround ARAYの威力はセンターと左右という三か所以外で展開する
中間定位の楽音に関してもジャストフオーカスの威力を見せつける。

それはギターでありキーボードの和音の展開であり、最終部近くに表れるピアノの
質感にとっても大きな貢献が感じられる。これは後戻りできない!

10.Offset Of Love

先ずはルーティーンとなってしまった6本のGround ARAYを取り外して、
最近聴くようになった新たな課題曲をじっくり聴く。

唐突ですが私は「Offset Of Cello」と題名を変えてみたくなってしまったわけです。
それは…

先ずはセンター左寄りからのギター、右チャンネルにはコンガとパーカッション、
真ん中ではエレキベースという布陣でスタート。

そして、センターに溝口 肇が登場するのですが、他のトラックのチェロとの違いに
驚いてしまった。

1.Espaceでの深く広い音場感に躍動するアコースティックな雰囲気でのチェロ、
2.世界の車窓から での高忠実感で引き締まった音像でのチェロと、同じ楽器で
あっても録音スタイルによってこれほどの違いがあるのだと実感していた。

ところが、この10.Offset Of Loveでは伴奏楽器に施したリバーブは浅く微量で
あるのに対して、チェロには深く長いリバーブがかけられており、他の伴奏楽器が
スピーカーの距離感と同程度の奥行き感で録音されているにも関わらず、チェロの
立ち位置は遠くに感じるほど他曲に比べて遠近感がある。

一般的にマルチチャンネル録音された多数のトラックを2チャンネルにミックス
ダウンする際に、個々の楽音に対して遠近感をつける時には音量を下げてリバーブを
施すことによってステレオ再生時での距離感をつけることができる。

ありていに言えば遠くから間接音を含んだ音が小さく聴こえるようにして前後感を
演出するという方法が取れられるのですが、この曲では正にそのようなリバーブを
深く長く施したチェロがセンターの奥に表れるのです。

他の楽器が横一線に並んだ距離感であるのに対して、遠ざかっているチェロという
奥行き方向にオフセットさせたチェロという構成が私に「Offset Of Cello」と
言わせたという事なのです。ただし、主役であるチェロの音量感は他の楽器と
同程度なのですが、遠くに感じながら音像は今までの曲の中で最も小さい。

こんな三次元的な奥行き感の録音でありながら、伴奏楽器を含めてGround ARAYの
威力は冒頭から炸裂するがごとくの変化として訴えかけてきた!

イントロでセンター左寄りに中間定位するギターの質感の変化に驚く!

一弦ずつの分離感と分解能の素晴らしさ、低い音階では弦の振動がありありと示され、
生々しさが倍増した音質に度肝を抜く! これは是非お聴かせしたい!

右チャンネルでのパーカッションの切れ味は鋭くなり、しかも叩いた後に尾を引く
余韻感が空間を構成していく聴き応えが堪らない!

センターでどっしり響くベースの音像は前曲で経験したと同じく濃厚な音色となり、
そのサイズ感が凝縮されていることに今までの分析結果を肯定する安堵感がある!

そしてロマンチックな旋律を奏でるチェロは音階が上下しても音像サイズはびしっと
一定であり、深いリバーブによって上空にたなびく余韻のオーラをまとっている!

改めてGround ARAYによるコンポーネント内部の高周波を除去するという効果は
音像を明確化するということと、同時に空間再現性を高めるという効用を両立
させているということが実感された! いやいや…、本当にこれを聴いたら戻れない!

曲の中ほどからセンター右寄り奥からオーボエが登場するが、この音色がなんで
こんなに滑らかになるのか!? 音像の集束と鮮明化とオーボエにも当然表れており、
澄んだ音色が中空に溶け込み消えていく美しさに惚れ惚れする!

その背後にしっとりと展開するストリングスは逆にGround ARAYによって明るさを
増したように鮮やかになり、リバーブが施されたチェロと巧妙にからんだ音場感で
HIRO Acousticの後方に音楽のオーロラとしてたなびきながらきらめきを放つ!

この他にもお馴染みの課題曲を聴き続け比較していくが、上記に述べた効果の
ありようと共通する最大公約数的な素晴らしさを確認するに至った。いいです!

             -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

多数の課題曲で分析してChordMusicとGroundARAYがもたらす美的変化に感動し
納得した私はどうしても再度これを聴きたくなってしまった。

Chopin Piano Concertos Nos.1の第二楽章: II.Romanze (Larghetto)です。
https://wmg.jp/yundi/discography/22200/

この第二楽章のトラックタイムは10:08、6本のGroundARAYをいったん外して聴き始める。
まさにロマンスというタイトルに象徴されるような一種の儚さを感じさせる秀麗で
あり流れるような旋律がこの上なく美しい。

今まで多数の課題曲で検証してきたGroundARAY有り無しの違いをしっかりと確認すべく、
先ずはケーブルのみChordMusicの状態で二回も繰り返し聴いてしまった。

そして、もう慣れてしまった手順でGroundARAYをセットして、数日前にケーブル
だけで感動した弦楽の導入部が流れ始めた時、前回よりもGroundARAYを追加して
の方がノイズフロアーが低下したのではと直感する。

静寂の中から正に湧き起ってきたような印象であり、しっとりと奏でられる弦楽の
美しさはそのままに、不思議なのだが弦楽器の色艶が増しているように感じた。

それは無人の客席が功を奏した響きの熟成あってのことか、ホールでの微小な響きの
残滓を克明に描いているという事、聴き手の感性にすっと入り込んでくる魅力に
身をゆだねるほど心地いいのだから堪らない!

HIRO Acousticがあたかも空気清浄機と変じたかのように、スピーカー周辺の空間
そのものに透明感を感じながらユンディ・リの登場を待つ一瞬に新鮮さを感じる。

「おー! なんだ! このピアノの変化は!」

ユンディ・リのピアノは打鍵の一音を引き立て更に鮮明な響きとなって空間を舞い踊り、
驚くべきは余韻の滞空時間がぐっと長く延長され、ふっと空間に消えていく響きの後ろ姿
まで見える程の情報量の拡大が広大な音場感として私の目の前で広がっていく素晴らしさ!

私はオーディオシステムで聴く音楽の美しさは楽音が消滅する最後の一瞬の余韻に
あると考えている。正に音波の一生と例えたい発生から消滅までの全てが聴けること。

スタジオ録音でミックスダウンする際に遠近感を出す方法として音量を下げて
リバーブをつけることと前述しているが、ホール録音においては余韻の再現性と
いうことが既にその役目を担っているということを実感させられた。

ピアノの余韻が遠ざかるように消えていくということはホールの空間の大きさを
示すことであり、その余韻が最後の瞬間まで耳で追跡できるということが重要な
要素なのだが、GroundARAYの追加によって残響成分のトラッキングが数段階向上
しているという事実にため息が出るほどの美意識を感じてしまうのです!

その空間再現性がピアノの弦の一本ずつを音像として認識できるほどの細やかな
描写力として提示され、その一音ずつに響きの領域があり余韻が作る空間がある。

コンサートホールに一歩足を踏み入れれば誰しも無意識のうちに天井を見上げて、
その空間のスケール感を実感するように、ワルシャワ・フィルハーモニーホールの
大きさをオーケストラの響きで感じ取り、天井の高さをユンディ・リのピアノで
思い知らされ、私は思わず視線をスピーカーの上へと向けて行ったのです!

7分40秒あたりから主題の演奏がピアノから弦楽五部に移行して、主旋律を奏でる
オーケストラに対してユンディ・リは小刻みな右手の連打で呼吸を合わせていく。

指揮者を兼ねるユンディ・リはコンサートマスターにアイコンタクトしたのだろうか、
ゆっくりと静かに迎える最後の一小節に向けて弦楽が次第に息を引き取り、ピアノの
最後の一音が長く暖かく私に感動の余韻を残して消えて行った!

             -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

CHORDのARAY Technologyはケーブルにおいて採用され、GroundARAYというユニークな
小道具によって使用範囲を広めることになった。

H.A.L.'s One point impression!! - これは高度(CHORD)なアクセサリーです!!
https://www.dynamicaudio.jp/5555-7F/news/1583.html

しかし、私は上記で述べているこだわりを最後にもう一度繰り返しておきたい。

これを推薦したい対象ユーザーはある意味で熟成したシステムをお使いの方々に
なるであろうと私は考えています。その熟成とはどういう意味か?

現用システムの音質に何らかの不満や疑問がある場合に、対処療法としての問題
解決用アイテムではないということです。

その意味で熟成とはハードウエアとしてのシステム構成だけでなく、使い手の感性と
しても比較的上級者向けアクセサリーという事になろうかと思います…。

現用システムに不満があるという事は、どうして思い通りにならないのかという
自分の理想との対比があってこその悩みでしょう。

ではユーザー個々の理想とは何か?
それは経験によって備わるものであり理屈ではありません。

ARAY Technologyを搭載したCHORDの各種ケーブルとGroundARAYを経験する事。
その経験によって未知の音を体験し新たな理想が生まれてくることでしょう。

私はそのお手伝いをさせて頂くだけです…

それはハルズサークル会員限定企画として実施致しますので是非ご入会下さい。
https://www.dynamicaudio.jp/5555-7F/circle.html

川又利明
担当:川又利明
TEL 03-3253-5555 FAX 03-3253-5556
kawamata@dynamicaudio.jp

お店の場所はココです。お気軽に遊びに来てください!


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