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H.A.L.担当 川又利明

No.1168 2014年11月13日
 「H.A.L.'s One point impression-HIRO Acoustic Laboratory MODEL-CCS Vol.2」


     《進化し続けているスピーカーMODEL-CCSの最新状況とは!?》

「音楽を裸にするスピーカー登場!!その名はHIRO Acoustic Laboratory MODEL-CCS!!」
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/1160.html

上記にて紹介しているように10月3日に初めて体験したMODEL-CCSでした。
http://www.dynamicaudio.jp/file/20141005-MODEL-CCS_01.jpg

この段階ではトゥイーターのハウジングは未完成であったわけです。
http://www.dynamicaudio.jp/file/20141005-MODEL-CCS_02.jpg
http://www.dynamicaudio.jp/file/20141005-MODEL-CCS_05.jpg

昨日(11/11)のこと、このハウジングが完成したので交換したいと廣中さんが
来店されました。交換前に撮影したのが下記の画像。左側が正式なものであり
トゥイーターユニットを180度上下を反転させることが出来るように内部配線の
ケーブルを端子に取り付けるための半円形の切り込みが追加され、入念にアル
マイト仕上げされたものです。
http://www.dynamicaudio.jp/file/20141112-ccs.01.jpg

http://www.dynamicaudio.jp/file/20141005-MODEL-CCS_03.jpg
カタログ写真とは違い、FOOT STABILIZERは新開発されたものをこの日初めて
装着したもの。写真では四点支持に見えるが、実はスピーカー低部後方にもう
一本のスパイクがあり、基本的には三点支持とし後方の二つのスパイクは転倒
防止用ということで荷重を与えずに緩やかに接地させている。
http://www.hiro-ac.jp/fot2014.html
この写真と同じスパイクが組み込まれているが、床面にキズを付けることなく
フラットな円形低部が床に接し内部ではピンポイントにスパイクが一点支持。

さて、ここでセッティングする前に今まで未公開だった新開発のFOOT STABILIZER
の画像を撮影しました。ひっくり返してみるとこのようになっているのです。
http://www.dynamicaudio.jp/file/20141112-ccs.10.jpg

この写真で左側がフロントとなりますが、右側リアサイドには真ん中に一個の
スパイクが取り付けられています。これは高さが固定されておりフロントの
二個との三点支持になるものです。リアの上から見える二個は緩やかに接地
させるもので転倒防止の役目として機能しています。

さて、組み立ててみると完成したトゥイーターハウジングにもミッドレンジと
同様なタイムアライメントのゲージが彫り込まれているのがお分かりでしょうか。
http://www.dynamicaudio.jp/file/20141112-ccs.02.jpg

下記のように全体の仕上がりが統一された立ち姿をご覧下さい。
http://www.dynamicaudio.jp/file/20141112-ccs.03.jpg

ただし、同行された職人の森さんの話では、これ程大きな面積にホワイトアル
マイト仕上げを完璧に同一な色彩感で施すのは大変困難なことで、どうしても
微妙な誤差が出るということでした。私には分からない程度ですが職人の目は
こだわりのレベルが違うものだな〜と感心した次第です。
http://www.dynamicaudio.jp/file/20141112-ccs.04.jpg

そうそう、セッティングする際に廣中さんが取り出したiPhonに注目です。
このように水準器として精密に水平を測れるアプリケーションがあったのです。
http://www.dynamicaudio.jp/file/20141112-ccs.11.jpg

私のリスニングポイントからの眺めはこのようになりました!!そして試聴!!
http://www.dynamicaudio.jp/file/20141112-ccs.05.jpg

Scan-speak社のソフトドームトゥイーターD3004/660000(イルミネーター
シリーズ)は裸特性で40KHzまでフラットの伸びているという優秀な周波数特性。
http://www.scan-speak.dk/datasheet/pdf/d3004-660000.pdf

メーカーの公開データでは40KHzまでしか測定していませんが、私の推測では
-3dBから-6dBという範囲であれば優に70-80KHzまでレスポンスはあるもの。

そのような高域の波長は3-4mm程度という細かさであり、スピーカーを格納する
ハウジングの微妙な仕上げの変化でも音質に影響があるものですが、私の本音
からすれば、アルミ削り出しのピカピカした試作品の段階でも素晴らしい音質
だったので、このミクロ単位のアルマイト仕上げだけで音質が変わるのか?
という従前の音質を高く評価しているので逆に過度の期待はしないようにとの
思いがあったのです。しかし、見た目の色だけの変化ではないのです。

実は、試作段階の光沢感のある表面にサンドブラスト処理を施し、微粒子の
研磨剤を吹き付けることで表面に微細なオウトツを付けてからアルマイト処理
を行っているので、無垢のアルミとは全く手触り感触が違っているのです。
さあ、このような表面処理だけで音質はどうなるのか!?直ちにこれを聴きました。

■マーラー交響曲第一番「巨人」第二楽章  小澤征爾/ボストン交響楽団

「激変ではない。しかし、確実に良くなっている!!」

という程度にしておきましょう。確かに弦楽器の質感が数パーセントしなやかに
なったということが感じられました。そもそも、二つのハウジングのビスを
何本も着脱してユニットを入れ替えて試聴しようと思ってはいなかったので、
あくまでも確認という程度です。これまでの音質の素晴らしさの絶対量を凌駕
するような激変では基本設計のまずさを露呈することにもなりますから。

そして、実は表面仕上げの変更よりも、ある意味では衝撃的な事実がこの後に
判明することになったのです!!こちらの方が何倍も変化量が大きいのです。

             -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

さて、次の写真をご覧下さい。これもカタログなどにはない画像です。
これはMODEL-CCSのウーファーエンクロージャーのトップパネルです。
http://www.dynamicaudio.jp/file/20141112-ccs.06.jpg

次にこちらはミッドレンジドライバーのハウジングの上面です。
http://www.dynamicaudio.jp/file/20141112-ccs.08.jpg

両方ともにステンレスのキー(森さんはそう呼んでいました)が取り付けられて
います。この突起物がミッドレンジとトゥイーターのハウジングの底部に掘ら
れた同形状の穴にはまり込む形になり、前後にはスライドするが左右にはぶれ
ないようにガイドの役目を果たしているわけです。

「H.A.L.'s One point impression-HIRO Acoustic Laboratory MODEL-CCS Vol.1」
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/1166.html

私は上記の記事で次のように述べていました。

「どんなに剛性が高く質量があっても振動します。毛足の短いフエルトを
 ハウジングの下に貼り付けたらいかがですか…」と。

そんなアイデアを提供したら廣中さんは早速やって下さったのです。ご自身も
変化の大きさに驚いたということで、今現在ここにあるMODEL-CCSは簡単な事
ですがミッドレンジとトゥイーターのハウジングを機械的にアイソレーション
されたものなのです。そして、その効果は予想以上のものでした!!

このようにフエルトを貼るだけで音質が豹変したという事実を森さんも承知し
ていたのですが、上下の面はフエルトでアイソレーション出来たとして、この
ステンレスのキーはミッドレンジとトゥイーターのハウジングの金属部に接触
してはいないだろうか、という疑いを森さんは持ち始めていたようなのです。

そこで森さんは既にステンレス以外の非金属性のパーツを発注してあり、この
キーの存在が音質的に影響があるかどうかに関心を持たれていたというのです。

考えてみれば、完全にキーと上に乗せるハウジングが並行であればコンマ数ミリ
の隙間が出来るかもしれませんが、いったん重ねてしまうと確認のしようが
ありません。わずかに角度がずれても最低二か所の対角線でキーと接触して
しまっているというのは事実でしょう。そこで私は提案しました。では…

ウーファーエンクロージャーのキーを取り外してしまいました。
http://www.dynamicaudio.jp/file/20141112-ccs.09.jpg

同じくミッドレンジ・ハウジングのキーも取り外してみました。
http://www.dynamicaudio.jp/file/20141112-ccs.07.jpg

廣中さんは我が子のように親しんでいるMODEL-CCSですから、特段このキーが
なくとも適正位置にぴったりと乗せて頂き、再度の試聴となりました。

やはり最初はオーケストラで定番のマーラーを聴きました。すると…

「おいおい! この変化は何なのよ〜。たったあれだけの接点でしょ!!」

これには驚きました。たださえ空間への浸透力が抜群のMODEL-CCSによるオー
ケストラの質感は私の予想を超える変化の大きさ! それでは選曲をこれに…

■Marian Cantata Arias:Anne Sofie von Otter / Musica Antiqua Koln
http://www.arkivmusic.com/classical/album.jsp?album_id=5512
Donna che in ciel, HWV 233 by George Frideric Handel 

この12トラックに収録されている「ARIRA CON CORO」という曲は古楽器の
清々しい弦楽器の導入部からオッターの透き通るような歌声が大変美しい曲。

特にスピーカーの高域の振る舞いや位相関係のテストによく使用するものです。
つまり濁りがあれば直ちに分かりやすく聴かせてくれるという長年の経験から
ここ一番という時に使用する曲なのです。

疑り深い私は再度キーを取り付けてから、この曲を聴き再度取り外してから
もう一度聴き直すという執念深さで比較しました。そして驚きました!!

「高音階の弦楽器が滑るように滑らかに、そしてオッターの美声が更に…」

アルミの上に固定されたステンレスの小片、この上に乗ったアルミの塊が
わずかな二点で接触しているだけなのに比べて、楽音の純度は二桁アップです!!

オーケストラと古楽器の弦楽器と声楽で連続する楽音における変化を確認したら、
今度は瞬間的な音、インパルス応答に近い楽音でアタックの変化を試そうと、
最近多用しているこのディスクを取り出しました。

■UNCOMPRESSED WORLD VOL.4 - on the piano
http://accusticarts.de/audiophile/index_en.html
18.Kirk Montreux / ETERNAL DESERT(LA CALIMA EDIT)

この曲の突入部はピアノの弦をハンマーではない他のもの、もしかしたら
指で弾いているのかもしれませんが、正に強靭な金属の、しかも低音階の
かっちりした打音から始まるのですが、この瞬間的な立ち上がりのスピード感
ある音だけで既に違いが出てしまうのですから驚きました!!

ステンレスのキーが接触していると「ガーン」のように聴こえていたのですが、
外すと「ガイイーン」と複数の音色が混在しているのが分かってしまいます!!

リモコンで何回もリピートして確認しましたが、アタックの瞬間に音圧のピークがあり、
その後に見事な余韻を残して消えていく明らかな金属の音。ステンレスのキーが
ある状態だと瞬間的な立ち上がりが遅れて音圧のピークが後からやって来る
ような傾向を感じてしまうのです!! 数秒間の単純な一音の比較でも明らかです!!

その後には高速で演奏される軽いタッチのピアノ、ギターの爪弾きがぱらぱらと
空間で分離して聴かせる変化の大きさ、ぐっとせり上がって来るような雄大な
低域の重量感と拡散領域の増大。聴けば聴くほど違いが見えてくる驚きに私は
ここまで反応するのかとMODEL-CCSの敏感さに舌を巻いてしまいました!!

MODEL-CCSはここにやって来てからというもの、自身の精密な構造と音質の
関係をつぶさに見せてくれるようになり、実にコントロールしやすくなってきた
ようです。つまり使い手に選択肢を提供し、聴き手のセンスによって磨かれ
成長していくという特異なスピーカーであると言えます。

言い換えれば、まだどこかに追求すべき課題が残っているかもしれず、私は
毎日のように聴きながら、私に出来る範囲でのトライアルを繰り返しています。

そして、職人のこだわりから更に用意されるパーツでの検証も今後続けていきます。
商品として皆様にご提供できる音質は今以上に完成度を高めていきますので
将来性にどうぞご期待下さい。

HIRO Acoustic LaboratoryとH.A.L.、つまりHi-End Audio Laboratoryの
共通項は正にこのような音質追求姿勢にあるわけです。

私が提案したアイデアは実はまだありまして、それも近い将来に試作が出来て
試聴するのが楽しみです。廣中さんと森さんに商品としての納期はどのくらい
かと質問したところ、具体的に何週間とは言えないので三カ月以上の時間は
欲しいということでした。そして、極めつけの一言…!!

「現在のMODEL-CCSは壮大な試作なんです…」

いいですね〜、それこそLaboratoryではありませんか!!

             -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

「第38回マラソン試聴会の企画内容が次第に見えてきました!!」
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/1167.html

毎年のマラソン試聴会では私がオオトリ、アンカーを務めるのですが、最も
大型で高価なシステムで、あのステージにふさわしい音量で演奏してきました。

ところが、今回のラストは幅24センチ、奥行き45センチ、高さは117センチと
いうコンパクトなスピーカーを皆様にお聴かせしようと思っています!!

ぜひぜひご来場下さい。皆様に新しい音、未体験の音を味わって頂きましょう!!


担当:川又利明
TEL 03-3253-5555 FAX 03-3253-5556
kawamata@dynamicaudio.jp

お店の場所はココです。お気軽に遊びに来てください!!


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