《Kiso Acoustic HB-1 Hearing Report》


No.0515 - 2009/7/16

大阪市 T.K 様より


■Kiso Acoustic HB-1 試聴記

良いオーディオ機材は、経験上、まず良いアピアランスをしてなくては…
いつも思うことです。

Kiso Acoustic HB-1を一目見て思ったことは、ステレオサウンドの表紙からは
想像がつかなかった大きさ…というか小ささです。

しかし、それよりも、ある種の美術品が持つ、力強さ(カリスマ性と言っても
良いでしょう)と共通の迫力を感じることが出来ました。

小さいのに周囲の風景の中で、一際光って見えるような風格。
このスピーカーは品格が高い、まずそれが第一印象。

言葉にするのは難しいですが、Kiso Acoustic HB-1は、素材や製作者の技量に
より、設計者の品性、それが具現化されているスピーカーではないか?そんな
印象を持ったのです。

小さなスピーカーは、デメリットもありますが、それを補うメリットも持ちます。
音の広がり、空間再現性では、もしかして小さいほうが良いんではないか?
と思うこともしばしば。

エンクロージャァが小さいと、邪魔もしないんですね。只、そうは言っても、
ユニットの力量が発揮されないでデッドな音になっているスピーカーの多いこと。

さて音を出してもらってまずは思ったこと。
例えば、料理でも、素材が良くても、余計な仕事をすると、素材が死んでしま
うことが良くあります。

ユニットはフォステックスらしいですが、その素性のよさを伝えるために徹底
的な聞き込み、開発がなされてることがすぐ分かりました。

音が(素材が)生きている。その上で、調理(チューニング)が絶妙である。
中々、小型で生きている音がするスピーカーって無いんですね。

例えば、モニター調の音という表現を聞くと、どう思いますか?

アキュレートだけど、無機質で冷たい音。そんなネガティブな表現で表される
音というイメージをもたれる方も多いんじゃないでしょうか?

でも、モニターに求められる音は、録音者の意図に沿ってディスクに記憶され
た情報が、正確に出る、そんな音ではないか?と私は思います。

例えば、ある種のボーカル物。ボーカルが生き生きとした音(オンな音)で
表現され、伴奏は前面におしでない表現(オフな音)。

これが録音者の意図であるなら、そう鳴らないといけないんですが、大多数の
スピーカーでは、そのボーカルと伴奏が全く同じ次元で鳴ってしまいます。
表現がのっぺりして、これが死んでる音というべきものでしょうか。

このスピーカーはその点見事としかいえない表現力で、その点をクリアします。

弦楽器の胴鳴りが再現されること、そして弦の張力がどれ位張られてるか?
なんて所まで再現してくれますし…ボーカルはくっきり、空間に再現され、
伴奏はそれにしっとり寄り添う。

録音時に違うマイクで、音の処理も違うから当然なんですが、でも、それを
あらわにするスピーカーの少ないこと。

この表現をするSPこそが真のモニタースピーカーではないか?
録音者はこのスピーカーでモニターしてくれたら、もっともっと良い録音の
音楽が楽しめるのに…という思いを持ちます。

ちなみにやはりギターの表現が一番良いです。
あまりに当たり前すぎて言いにくいぐらいですが。

後、蛇足ですが、もしかして、この小さなスピーカー、ワットパピーみたく
下にパピーの様なウーハーがついてると、ハイエンドSPとして十分通用する
のでは?なんて妄想さえいだきます。

ま、勿論、それは鳴らす部屋の状況その他で、このスピーカーで十分である
場合も多いでしょう。

いずれにせよ、このスピーカーは小型スピーカーの中では孤高の存在になるか
もしれない…そんな印象です。

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川又より

T.K 様ありがとうございました。Hawaiian Koa & Goldener Madronaのご注文
にも改めてお礼申し上げます。そして、ここでの試聴体験は過去に何回もある
にも関わらず、T.K 様がこのように熱心なレポートを送って頂けたということ
は私の記憶でも大変稀なことでした。それほどインパクトがあったということ
かと思われます。まさにおっしゃるとおりですね。
では、納品まで少しお待ち頂きますが、どうぞ楽しみにしていて下さい。

ちなみにユニットはトゥイーターはフォステクスですが、構成パーツの半分は
捨ててしまっているというもので、ウーファーがフランス製の某社のものです。



HAL's Hearing Report