《HAL's Hearing Report》


No.0205 - 2005/10/27

東京都世田谷区 S 様より


「“エフコン”参加者の皆様より感想を頂きました」

Vol.3「比較してしまえば、この魅力には抗し切れないでしょう!!」

川又様

世田谷のSです。昨日は第1回Fコンに参加させて頂き、ありがとうございました。
また、川又様には、お一人で電源コードの差し替えをされるなど、お疲れ様でした。

仕事を少し早く切り上げて駆けつけましたが、なかなか興味深く、収穫もあった
2時間でした。もちろん楽しめました。

なぜ第1回のFコンに参加させて頂いたかといいますと、一つはWisdom Audioの
M-50をどう料理してくれの、という興味からです。

先日のハイエンドショーで、偶然これを聴いたときの印象は「わっ、トンネルだ」
でした。1曲しか聴けなかったのですが、小さな箱からよくぞこんな低音が、とは
思ったものの、それ以外は音像も定位も大雑把。

ただ、迫力はかなりのもので、例えは悪いのですが、普通のスピーカーが土管の出
口程度の大きさの解放口から音が放出されてリスナーに向かってくる感じとすると、
M-50はトンネルからボワーッと出てくるような印象を受けたのです。

二つ目の参加理由は、言わずと知れたPEIP。

今年、8N-PC8100を3本いただいたばかりなので、怖いものみたさ(聴きたさか)
からです。怖いけれど、これが一番大きな理由でした。

ところが、参加申し込み後、MAGICO Miniも聴かせてくれるというではありません
か。MAGICOにはこれまで1勝1敗の試聴感でした。最初に聴いたのはHALL4階。

室内楽が室内楽の大きさで鳴り、ボーカルがほんとに点で聞こえる。
それでいて音の粒が虹のように広がる。何より音楽が楽しい。

まず先勝でした。

大きなスピーカーか、扱いやすい小さなスピーカーか、ともうかれこれ2年以上も
結論が出ず「なんとしても欲しいスピーカーはない」と、のんびり構えていました。

でも、MAGICOに出会ったとき、「もしかしたら」という気になったものでした。
 
次の出会いはマラソン試聴会。会場が広すぎたのか、「ありゃー、あかん」。
必死にいい面を探そうとしたのですが、早々に会場を出ました(ごめんなさい)。

これが1敗。

で、FコンではMAGICOを聴けるのが6時からということで、仕事場を早めに抜け
出したのでした。

前置きが長くなりました。駆けつけて7階に上がると、すでに3、4人の先客がい
らっしゃいました。ロビーでみなさん座っておられます。

見ると、卓上に秋葉名物カツサンドとビールやお茶が置いてあり、川又さんが
「どうぞ、どうぞ」。

これには感激しました。そう、この時間におじゃまするには、夕食は採れないので
すよね。心配りに感動しながら、「カツサンド食ってもスピーカーは買わんぞ」と
己を戒めながら、パクパクいただいてしまいました。おいしかったですよぉ〜。

食べるのももどかしくMAGICO席へ。ボーカルとギターなどのシンプルな構成のCD
がかかっていましたが、座った途端、「2勝目」の旗をあげました。

ボーカルがほんとに中心の1点から聞こえ、伴奏楽器も左右に点で広がります。
それもスピーカーのはるか外側にです。聞けたのはこのCD1枚で、左右をQRDで
囲まれたニア・フィールド状態でしたので、もう少し広い環境だとどうなるのか、
などなど本格試聴が楽しみです。

さて、本番のWisdom Audio「M-50」。料理人はさすがでした!!

大昔インターナショナル・オーディオショー(といったかどうかわかりませんが)
が九段のホテル・グランド・パレスだったでしょうか、そこで行われていた時代、
広い一室にマッキントッシュのXRTがセットされ、空間にヴァイオリン一挺の音が
実像大にポンと浮き上がって聞こえていたことに、たいそう驚いた記憶があります。

上下方向にユニットをいくつも並べた音源で、どうして音像が上下に伸びないで
聞こえるのか、不思議で印象的な経験でした。

M-50もプレーナー型、もう少し狭い言い方をすれば、上下の線音源とでもいえると
思いますが、音像は明確だし、なによりその鳴りっぷりはほかでは味わえないもの
がありました。

音がともかく分厚い。にもかかわらず、ディテールが十分すぎるほどわかる。
目線と天井との中間点あたりから、音が降り注いでくるといった感じです。
これは一聴に値します。

メニューは主にボーカルでした。一曲だけヴァイオリン・コンチェルトを聴かせて
いただきました。その瞬間、バイオリンの中、低域はいいが、高域のニュアンスは
ちょっと違うなーと思いました。このスピーカーはどちらかというと弓弦楽器より
は撥弦楽器や鍵盤楽器、たたく音、特に声にえもいわれぬ持ち味があるのだろうな
と思っていると、川又さんが「このスピーカーはボーカルが得意なんです」とドン
ピシャリの解説をしてくださいました。

とはいえ、この分厚くて緻密な鳴り方は、値段相応の魅力です。同じボーカル曲で
NEOに切り替えたとき、これまで何回も聴かせていただいたNEOに対して、「えーっ、
これがNEOなの」と我が耳を疑ったくらいです。

川又さんの予告付きだったのですが、ボーカルが比べものにならないくらい、M-50
の方が口元が小さく聞こえます。試聴位置にもよるでしょうが、NEOに切り替えた
ときのボーカルは一瞬、どこで歌っているのかわからないくらいでした。

それほどの変化でした。これは耳の慣れにも大いに関係があるようです。
NEOでも慣れてくればはっきりするのです。

また、音の出方そのものが違うわけですから仕方ありませんが、NEOの音が貧弱な
ように感じました。これも慣れですぐ解消しましたが。

機器が変わったときの比較で、その機器の特徴がよくわかるというお手本のような
プレゼンテーションでした。

さて、最後がNEOを使ってのPIEPの実力。

川又さんのめがねにかなったアイテムだし、多くの試聴者から絶賛されているのだ
から、その力を疑うものではありませんが、どの程度なのか確かめたかったのが本
音です。

はじめはPケーブル、PI、PDを駆使した構成で。次にこれをすべてはずし、パワー
をAC DOMINUSに、その他を8N-PC8100に変えて同じ曲(村治佳織だったでしょか)
をかけた瞬間でした。

「あー、古い録音だ」と思ったほどでした。

この印象がすべてといってもいいくらいです。
評判通り、いえ、思っていた以上の変化がありました。

評判通りですから細かいことは書きません。同じCDにもかかわらず、見通しがよく
なると、音楽のデコボコまではっきりします。

「古い録音」と感じた方は、音楽がべたーとしてしまいます。
8N-PC8100信者としては、がっくりでした。

1年近く前、自宅試聴で8N-PC8100を1本ずつ増やしていくたびに、クリアになる
こともさることながら、音楽にコクが出てきて、「これ、これ。これなんだよ」と
鳥肌寸前ニンマリ感覚を体験したものでした。

それがこんなにあっさり敗れ去るとは。

あとは、どなたかが書かれていましたが、曲によってはあっさり、さっぱり、細身
という感じを受けるかも知れないな、とは思いました。

それにしても、比較してしまえば。この魅力には抗し切れないでしょう。
いずれは私も自宅試聴ということになるのだろうなあ、と指を折りつつ(お金の
勘定です)小川町の駅に向かいました。

ともかくFコンありがとうございました。特徴ある極上の機器類を、完全に鳴らす
この企画は、自分の中に上等な音の引き出しをたくさん作ることになります。

これほど短期間で引き出しの数を増やす機会は、これ以上は望めないでしょう。
その引き出しのどれを取り入れるのか、あるいは複数の引き出しをブレンドする
方向を指向するのか。今後のFコンにもせいぜい足繁く通うことにしましょう。


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