発行元 株式会社ダイナミックオーディオ
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H.A.L.担当 川又利明


2009年12月6日
No.687 「小編随筆『音の細道』特別寄稿 *第69弾*」
 
『The Horizon Sound!!』
 
             ■ 序章 ■
 
2009年12月某日の朝、私は思わず30年前の自分の休日を思い出してしまった。
ダイナミックオーディオに入社して一年か二年たった頃に、念願かなって買い
求めたマイシステムでレコードを聴くのが楽しみだった。
 
JBLにサブウーファーとスーパートゥイーターを追加して5台のパワーアンプで
鳴らすという変則的なシステム。当然アナログレコードしかない時代であり、
プレーヤーはLINN  LP12で私が愛用していたカートリッジは発電機構を持たず
フォノイコライザーも使用しない特殊なWIN Laboratoryというメーカーのもの。
 
この話しをすると長くなってしまうが、そもそも私がレコードを聴き始めよう
という時に先ず最初にやったことはなにか? 実は掃除だったのです。
 
新入社員として店舗内の掃除と整理整頓を徹底して叩きこまれた私は、自分の
休日であってもオーディオで音楽を聴こうとする前には必ず愛用システムを
いつものようにきれいにしないと気が済まなかった。
 
良い音を出すコンポーネントはきれいにしないと音質も埃っぽくなってしまう
ような気がして、休日でも愛器を磨きあげることが音楽鑑賞のための儀式の
ように感じていたものでした。
 
当時の心境を思い起こしながら、久しぶりに自ら拭き掃除をしてから聴き始め
ようと思えるスピーカーが現れたのです!!
 
その名はTAD-CR1、私の体験と記憶のファイルにも存在しなかった音が未来の
オーディオシーンを導いていくだろうと予感させる音です!! だから…
 
12月のある日のこと、私にしては珍しく何と五時間も聴き続けてしまった。
 
TAD-CR1をセッティングしたのは昨日の事。搬入して一時間もしないうちに音
は出たのですが、最初にセットしたポジションに納得がいかず周辺のアンプや
スピーカーをわざわざ移動し、微調整をしながらこれは!!というリプレース
メントが決まるまでざっと二時間。結局はリファレンススピーカーたちを少し
ずつ移動させて↓このようにセッティングした。
 
http://www.dynamicaudio.jp/file/091202/831.jpg
 
実は、今回の試聴の本来の目的はTAD-D600を次週のイベントに先駆けて再度
聴き直ししたいということだったのだが…
 
http://www.dynamicaudio.jp/file/091202/826.jpg
 
CSTドライバーはジャストに耳の高さとなり左右のトゥイーター間隔は3.1m。
リスニングポイントとの距離は他のスピーカーたちと同様に約4.5m程度。
正面から見ると↓このようになった。
 
http://www.dynamicaudio.jp/file/091202/823.jpg
 
私がなぜそれほどの時間をかけて聴いたのか、いや聴き続けたいと思ったのか。
 
それは今までに聴いてきた膨大な選曲コレクションを一枚一枚聴き直す度に
そこに新しい発見があったからに他ならない!!
 
            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-
 
2009年11月25日の事、TAD-D600を聴いた私が直感とともに実感し分析と評価を
下した結果として今までのH.A.L.リファレンスたるディスクプレーヤーたちに
勝るとも劣らない音質であり、しかも、それを電源分離型・DAC内臓一体型と
いうコンセプトでまとめ、更に価格的にも250万円という音質対比で考えれば
相当高レベルの作品に仕上げたということ。
 
それを再度聴きたいという希望を同社に依頼した際に「あの小型スピーカーも
いっしょに聴かせてもらえませんか?」と、この段階では製品名も頭に入って
いなかった(失礼!!)スピーカーを聴いた瞬間に私の好奇心から探究心へと切り
替わる頭の中のスイッチが全てオンになってしまった。
 
第一印象の素晴らしさに驚き、久々に聴き込みたいという願望に火が付いてし
まった私が随所に妥協なく選択したシステム構成がこれだ。
 
 
 ◇ Technical Audio Devices-inspection system Vol.2◇
 
………………………………………………………………………………
Technical Audio Devices TAD-D600(税別\2,500,000.)
http://tad-labs.com/
     and
TRANSPARENT PLMM×2+PI8(税別\846,000.)
http://www.axiss.co.jp/transparentlineup.html#POWER
     and
Project“H.A.L.C”H.C/3M(税込み\560,000.)
http://www.dynamicaudio.jp/audio/halc/
………………………………………………………………………………
                ▽ ▽ ▽
 
STEALTH Sakra  balanced XLR / 1.0m     $13,000
http://www.stealthaudiocables.com/products/Sakra/sakra.html
 
                ▽ ▽ ▽
………………………………………………………………………………
JEFFROWLAND  Criterion (税別\2,780,000.)
http://www.ohbashoji.co.jp/products/jrdg/criterion/
     and
TRANSPARENT PLMM×2+PI8(税別\846,000.)
http://www.axiss.co.jp/transparentlineup.html#POWER
     and
Project“H.A.L.C”H.C/3M(税込み\560,000.)
http://www.dynamicaudio.jp/audio/halc/
………………………………………………………………………………
                ▽ ▽ ▽
 
ESOTERIC 7N-A2500/XLR 7.0m(税別\2,280,000.)
http://www.esoteric.jp/products/esoteric/7na2500/index.html
 
                ▽ ▽ ▽
………………………………………………………………………………
MARKLEVINSON Reference Monaural Power Amplifier No.53(税別\7,200,000.)
http://www.harman-japan.co.jp/product/marklev/no53.html
          and
TRANSPARENT PLMM×2+PIMM×2(税別\1,440,000.)
http://www.axiss.co.jp/transparentlineup.html#POWER
………………………………………………………………………………
                ▽ ▽ ▽
 
TRANSPARENT REFERENCE Speaker Cable RSC8 (2.4m)(税別\755,000.)
http://www.axiss.co.jp/ftran.html ウーファー用
          and
TRANSPARENT REFERENCE XL Speaker Cable RXL8 (2.4m)(税別\1,500,000.)
http://www.axiss.co.jp/ftran.html ミッドハイ用
 
                ▽ ▽ ▽
………………………………………………………………………………
Technical Audio Devices TAD-CR1+TAD-ST1(税別\3,940,000.) 
http://tad-labs.com/corporate/press/090707_02.html
http://tad-labs.com/ 
………………………………………………………………………………
 
これから述べるインプレッションは一日の試聴で得たものではなく数日の時間
をかけている。それは前述のように聴き慣れたディスクであればある程、過去に
聴いてきた音とは違う世界を弾き出してくるTADシステムの計り知れない潜在
能力を小出しに引き出していくということだった。いや、違う!!
 
聴けば聴くほど、聴いた曲の数だけ私の記憶にない音が増え続けていくという
状況にたじろいでいるというのが実情と言える。これは腰を据えて聴かなくて
はならないHi-End Audio Laboratoryにふさわしい研究対象だということだ!!
 
 
         ■ 耳で感じる着目点とは!? ■
 
先ずは、いつものようにマーラー/交響曲第一番《巨人》指揮:小沢征爾/ボス
トン交響楽団を聴くことにした。しかし、第二楽章だけではない。私は時間を
かけても第一楽章から最後までを聴きとおすことにしたのである。
 
弦楽器奏者が自分の楽器がどれだけ小さい音、ピアニッシモに挑戦することに
集中し、楽器そのものに耳を近付けるように自然に前傾姿勢となり、手首の
スナップだけでppの細かいアルコの刻みを引き続ける導入部。
 
チャイコフスキーが交響曲第6番「悲壮」でppppppを使ったと言われているが、
このパートでマーラーはいくつのpをスコアーに記しているのだろうか。
小沢征爾が要求した最も小さい音を弦楽器群に要求している演奏だろう。
 
それがしばらく続くうちにクラリネットが、そしてオーボエが短い旋律を交互
に演奏する。導入部からの数分で私の耳という受容器官は一瞬ごとの音質を
記憶のファイルと照合し類似した音があったかどうかを10分の1秒で完了した。
 
「ない!!こんな音はなかった!!」
 
第一楽章が始まったばかりだというのに、私の眉間には緩やかに縦じわが浮かび、
この一言に含まれる二つの意味合いに自分の不注意を呪い、同時に心中を揺る
がす感動が微小な音を発し続ける弦楽器のように最初は小さく、そして次第に
フォルテを迎える予感のように脳裏に < このクレッシェンドが浮かんだ!!
 
ひとつは、同じ音階を細かく刻む弦楽器、そしてぽっかりと中空に出現する
木管楽器の両者の質感がはっと息を呑むほどに鮮明であるということ。
 
そう、TAD-CR1が聴かせる弦楽器は国産スピーカーというカテゴリーを脱して
おり、かと言って心地よいだけという虚飾に満ちた弦楽器を奏でるスピーカー
とも違う。定位感と輪郭表現が素晴らしいということが弦楽器に対して一種の
透明感を与えているようであり、弦楽五部編成の楽員50名が自前のマイナス
イオン発生器を椅子の下に置いているような清々しい見事な質感が素晴らしい。
 
そして、この後にも共通する驚きとして随所で感じていくことになるのが木管、
後述では金管楽器も含んで管楽器全体の存在感を私は見直すことになった。
同じディスクなのに、この10年以上に渡り聴いてきた曲なのに、管楽器すべて
の質感がこれほど研ぎ澄まされ鮮明に聴こえるというのはどういうことなのか。
 
その鮮明さという表現は管楽器が発音した瞬間に生じる周辺情報として、自らの
余韻感とホールエコーの両方をきっちりと聴き手に認識させるという情報量の
大きさに由来するものだと考えられた。しかし、この謎解きをこの時点で全て
語るのではなく、後述する機会を設けたいと思っている。まだ早いだろう!!
 
「ない!!こんな音はなかった!!」とは上記のようにこんな素晴らしい質感の音
を聴いたことがなかったという意味がひとつ。そしてもう一つは楽音以外の
こんな音はなかった、いや気が付かなかった…という新発見があった。
 
「これはライブ録音だった!!」
 
第二楽章を聴くことが殆ど、その次に回数を聴いていたのは第四楽章、次は
第三楽章ということで、この第一楽章は一番聴いた回数は少ないのが事実。
 
そして、前述のように冒頭から、あるいは楽章の途中でもピアノッシモの
パートが複数あり、録音エンジニアからするとデジタル録音という素晴らしい
S/N比の録音機材の性能を考えればボストンシンフォニーホールの中で発生した
どんな微弱な音でも捉えておこうという発想があったと思える。
 
ダイナミックレンジの底辺が大変低く抑えられ、ノイズに埋もれることのない
極めて微弱な音量の演奏も捉えられる。それはリアルであり素晴らしい技術進歩
であるわけだが、マイクロホンは楽音とノイズの見分けはつかないという事実。
 
この第一楽章では至る所で人間の気配を感じ取ることのできるピアノッシモの
ノイズ、いや楽音以外の何かの音が録音されていることに初めて気が付いたのだ。
 
なんだろう、この音は!? 
想像力と好奇心を掻き立てられる音であり、しばし考えあぐねてしまった。
 
ライブ録音だから客席で誰かが身じろぎした音なのか、あるいはプログラムを
床に落とした音なのか? いや、違う!! よくよく聴くと、その音にはわずかに
余韻のような残響が付随していることが分かった。客席ではない、とすれば
ステージの上か!?
 
と、聴き続けていると指揮台があるステージの中心を取り囲むように、その音は
違う位置から何回も表れてくるではないか。言葉にすれば「カリッ、パサッ、
パリッ」というものなのだが…。そこではたと集中すると…、おー!!そうか!!
 
譜面をめくる時に親指と人差し指が平面の紙を挟みこんでめくり上げようと
した瞬間に、挟まれて折り曲がってシワになってしまう一歩手前で解放された
時の反発力で紙が弾けるような音、そんな音にも似ているのだが演奏の流れか
ら察すると譜面をめくるようなタイミングであるのかどうか?
 
また、ステージの上で楽器と同じように床の反射音がわずかに付帯する!!
もしかすると楽団員が体重を移動したときの椅子のきしみの音だろうか?
何度聴き直しても正体不明の音なのだが、これも情報量のうちというもので、
スピーカーのトランジェント特性の素晴らしさ故のエピソードかと思われた。
 
ライブ録音という意味は客席の気配が含まれているものと、真っ先に考えて
しまったが、実は一発録音ということでもあり、取り直しや修正が難しいと
いう性質も含んでいるという理解だろう。
 
楽音が連続する他の楽章では演奏そのものの音量感にマスキングされてしまう
ものが、第一楽章という極めて微弱な楽音を求める演奏箇所、そして数瞬音が
途切れるような合間を縫って聴こえてくる正体不明の音の存在に初めて気が
つかされたという驚き。
 
これが「ない!!こんな音はなかった!!」のもう一つの意味だ!!
 
長年知っていたようで情報の全てを聴いていなかった私の不注意を痛感し、
そんな極めて短時間の瞬間的な雑音に正確に反応するTADのコンポーネントの
潜在能力に驚愕する第一楽章となってしまった!!
 
営業中にも関わらずエアコンと換気扇を止めてしまい、室内のノイズフロアー
を出来るだけ確保し、アンプが発する熱が暖房替わりに試聴室の気温をじりじり
と引き上げていくのを覚悟の上で第二楽章を聴き始めた。
 
弦楽器群すべての合奏で始まる冒頭から新鮮な感動が湧き起こり、聴き慣れた
旋律に新たな発見が…
 
 
        ■ 発見と驚きが気力の元になる ■
 
後ほど理由は述べるが、ここで唐突ながら選曲がガラッと変わる。
久しぶりにCDラックから取り出してきたディスクはこれ、Fourplay!!
 
http://www.fourplayjazz.com/
http://www.universal-music.co.jp/jazz/artist/fourplay/index.html
http://www.sonymusic.co.jp/Music/International/Arch/BV/FOURPLAY/index.html
 
Best Of Fourplay (1997年 Warner Bros.) このアルバムの5. Chantを聴く。
先ず最初の聴きどころは冒頭のHarvey Masonの強烈なフロアータムの打音。
 
この打音はスピーカーの低域の再生能力をユニットの許容入力、つまりは
ウーファーの振動板の大きなストロークによる再生限界をチェックする時に
良く使用したものだったが、TAD-CR1の20cmウーファーは再生音圧以外のパラ
メーターに関しても一瞬のうちに私の記憶をアップデートしてしまった!!
 
先ず、この打撃音の立ち上がりにおけるスピード感の何とも素晴らしいイン
パクトであることか!!
 
私は大変古くからウーファーのエッジの特徴と音質が高い関連性を持っていて、
コルゲーションエッジを採用した数々のウーファーで同様な思いをしたことが
あったが、3層構造アラミド振動板とショートボイスタイプのOFGMS(Optimized 
Field Geometry Magnet Structure)磁気回路を主軸とした新開発ウーファー
のパフォーマンスの素晴らしさがのっけから私を圧倒した。
 
まるでウーファーのボイスコイルにはスチール製クランクが連結されていて、
シーソーのように支点を介して前後運動するその一方をハンマーで叩いたよう
に強烈な打撃音が炸裂する!! この高速反応は何たることか!!
 
しかも、インパクトの瞬間にほぼ直角という急角度で立ち上がった打音が今度
は非常に長い消滅のスロープを実に長い時間をかけて下ってくるように、微細
な余韻感を伴ってたなびくように空中に響きの金粉を振りまいていく!!
 
くっきりと輪郭を描く打撃音の連続がなぜか爽快無比に心地いい。
思わずリモコンでじりじりと音量を上げていくのだが、相当な…私がここで
テストする時の音量は相当なレベルだが一向に破綻する気配を見せない。
こんなリニアリティーは他のスピーカーではまず体感出来ない領域だ!!
 
打撃音の解像度と高速反応、微小レベルまで減衰していく様を克明に描く情報量
の素晴らしさ、たった数回の打撃音を聴くうちに私の頭の中では驚嘆の思いが
ピンボールマシンで弾けるポールのように記憶のあちこちに衝突しながら分析
を加速していく。私の頭脳にこんな刺激を与え反応を誘発するスピーカーには
中々巡り合うことはなかった。
 
その数瞬後に表れるNathan Eastのペースがまた凄い!! インパルス性の打音と
は違い、連続する大きなストロークをウーファーの振動板に求めるわけだが、
英語ではその挙動をロングトラベルと称することがある。
 
大きなストロークを確保するためには大別するとボイスコイルとギャップの
関係は対照的な二種類に分類される。
 
磁気回路のギャップを長くとりボイスコイルのターン数を少なくするショート
ボイスコイルという方式。逆にギャップの発生させる磁束密度を強力にして
短距離のギャップを設定し、ロングボイスコイルをその中で振幅させるという
方式の二つである。
 
磁気回路の設計としては一か所に磁束密度を集中させる方式の方が比較的容易
に出来るものであり、昔のJBLがアルニコマグネットからフェライトに移行す
る時代には良く用いられていた。そこにターン数を多くしたロングボイスコイル
を配置するということで高い音圧の発生には利点を持たせたものだが、TADが
採用したのはまったく逆の方式。
 
つまりショートボイスコイルにロングギャップという技術的に難易度の高い
方式を敢えて採用し独自の技術力をそこに集結させた。私が推測するところで
決定的な要素はショートボイスコイルにすることで振動系の質量を極力小さく
することができるので、その利点が高感度なウーファーの再現性へとつながる。
 
この高感度という意味は毎秒繰り返されるピストンモーションの高速運動を
支えることになり、また同時に微小信号に対してもレスポンスを確保できると
いうメリットを連鎖的に発生させる。
 
とにかく重量感があり、極めて明確にNathan Eastのペースの輪郭を描き、
音程を正確に聴きとれる安定感を有しているという惚れ惚れするような低域が
連続音としてTAD-CR1からほとばしるのだから堪らない!! 快感だ!!
 
Bob Jamesのキーボードがスピーカーのやや上の空間にちりばめられるように
展開し、オーケストラ同様にCSTドライバーが実に広帯域で緊密な連携をもって
トゥイーターとミッドレンジをシームレスに駆動しているかを私は耳で理解した!!
 
まるでBob Jamesの右手が演奏する特定の2オクターブ位のキーボードの鍵盤を
撮影し、そのビジュアルを拡大して右チャンネルのTAD-CR1の周囲に画像として
定着させ、その鍵盤を残像を残すほど高速で動き回るBob Jamesの指が見える
ようなリアルさと言ったらいいだろうか!! これには驚いた!!
 
快調に少しずつボリュームを上げていくとセンターにはLee Ritenourが登場する。
ギターの弦一本にごとに弾かれた瞬間のエネルギーの開放時間が極めて短く、
だからこそ絶妙のフレットワークが際立ったセパレーションを見せて連続する
楽音の一つずつに時間軸のクサビを打ち込んだようにくっきりしたピッキング
のビジュアルをイメージすることができる。
 
弾き響きを伴うギターの解像度はCSTドライバーのメリットを理屈なしに聴き
手に感性で訴えてくるのだから、私は素直にLee Ritenourのテクニックとスピ
リットにひたりながら聴き続けてしまった!! 素晴らしい!!
 
 
         ■ 使命感を刺激した結末 ■
 
ヴォーカルで最近私のお気に入りの一枚はこれ。Keiko Lee/FRAGILE
 
http://www.keiko-lee.com/discography/
 
1.Softly As In A Morning Sunriseの粋なアレンジのイントロを聴いた瞬間に
プロデューサー兼アレンジャーとしてのKenny Barronの実に素晴らしいセンス
をうかがわせる上手い曲。
 
イントロから入ってくるウッドベースは先程までの鮮烈な低音とはニュアンス
を異にしてムードたっぷりにゆったりと響く。反面右側で叩かれるボンゴは
軽妙なリズムを刻みながら中空に見事な定位感で浮かび、鮮明な音像がテンポ
よく現れては消える。
 
曲によっては口許のサイズが色々に録音されてきたKeiko Leeのヴォーカルは
左右のTAD-CR1のジャストセンターに浮かび、両チャンネルのCSTドライバーから
メジャーで1500mmと測って彼女の写真をそこに貼り付けたように定位感良く
ピンポイントの音像をぞくっとするようなリアルさで提示するのだから堪らない!!
 
Kenny Barronのピアノは解像度重視でソリッドなエッジが際立っているのか、
というと逆にヴォーカルの邪魔にならないように絶妙の位置関係でKeiko Lee
の周辺に漂うような余韻感をふくよかに残す録音でわき役に徹するスタンスが
演奏と録音の両方に聴きとれる。
 
SACDの特徴を生かすということは、以前にも述べたように音像を鮮明にしながら
発生した余韻感の保存性が極めて高いという性質をオーディオシステムの再生
能力から引き出すことであり、最新録音の魅力をナチュラルな質感ということ
で聴き手に優しい質感と多くの情報量を提供してくれる。
 
オーディオ的満足度が極めて高いディスクであり、また同時にKeiko Leeという
シンガーの魅力を余すところなく伝えてくれる推薦できる録音と言える。
 
聴き手のテンションを引き締める方向の音楽とリラックスさせてくれる音楽の
両方を聴きながら、なぜここまで多方面のパラメーターが実にバランス良く
まとまって聴かせてくれるのかというシンプルな疑問を私の経験から推測とし
て一つのイメージが頭の中に出来上がってきた。
 
            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-
 
全帯域で球面波を発生させる理想的なプロポーションを有するB&W Nautilus。
そのトゥイーターの中心点とミッドハイユニットの中心点の距離は約7センチ、
200Hz以上を再生するミッドローの中心点との距離は約18センチ。
 
他の数社のスピーカーでも同様にトゥイーターとミッドレンジの中心点の距離
を測ってみると近いもので14〜16センチ、離れているものでは18〜20センチと
いう実態がある。
 
これらのスピーカーではトゥイーターとミッドレンジでクロスオーバー付近の
同じ周波数を再生するということは、二つのユニットが同位相、同振幅で動作
するのが理想であり、またリスナーへの距離を考えれば空中を伝播していく
音波が到達する時間軸も一致するのが理想というもの。
 
それを機械的な位置関係で補正するもの、クロスオーバーネットワーク回路の
中で電気的に制御しようとするもの、あるいはその両者の併用ということで
近代のスピーカーは設計されている。
 
マイクロホンで測定する対象としての各種パラメーターはそれでもいいと思う。
しかし、人間が聴くという状況ではどうしてもインライン状に縦方向に並んだ
二つのスピーカーという音源位置のずれがあるという印象をぬぐい去れない。
 
それはスピーカー設計者の意図するところで効果的に聴かせるためのテイスト
ということで私も評価しているものが多数あるのも事実。
 
例えば、左右スピーカーの間隔を3mとした場合に、トゥイーターとミッドレンジ
ドライバーの中心点が20センチ離れていたとしたら、単純に考えれば横幅3mで
高さが20センチという横長の長方形によって音像が定位する面が表れてくるの
ではないだろうか。このようなベルト状の面積から左右四つのユニットが発し
た音波による楽音が定位感を持って聴こえてくるということだ。
 
スピーカーとリスナーの距離も3mと仮定した場合には、前方の空間にある上記
の枠の中に楽音が並び、その音像の見え方も二つのユニットの共同作業で作ら
れた縦方向に引き伸ばされたものになっているのかもしれない。
 
この推測はあくまでもイメージであり、ミッドレンジから離れたところに位置
するトゥイーターが逆に空中の自由空間に近い環境にあるために大きな音場感
を発揮するスピーカーとして気持ち良く聴こえる場合も確かにあると思う。
 
と言うよりも、そのようなスピーカーが大半であり、それと比較する優秀な
スピーカーがなかったとしたら反証を述べることは出来なかっただろう。
 
左右で四つの中・高域ドライバーによって描かれる音像の定位感と輪郭は優秀
な設計によるスピーカーであれば好ましい再生音として結果オーライという
評価をしてきたものだった。
 
その音質は適度に空間を演出する四角い枠という存在感をリスナーに与えない
のであれば成功例と言える。しかし、ある意味では再生音の個々の楽音における
輪郭表現に多少の曖昧さ、ちょっぴりファジーな音像表現はなかっただろうか。
 
ここで単純な事実を述べる事にする。
TAD-CR1のCSTドライバーではトゥイーターとミッドレンジドライバーの中心点
は位置的な誤差はゼロ、全く同一の音源位置であるということ。
 
私はTAD-CR1を聴きながら、左右のCSTドライバーの中心点を結ぶ直線をいつも
意識しながら聴いていた。
 
その直線はオーケストラではステージであり、スタジオ録音ではマイクの高さ
でスタジオの床面であったかもしれない。
 
そして、あたかも地平線に上る朝日のように、あるいは陽光に揺らめく陽炎が
地平線のかなたに立ち上るように、眼前の中空に横一直線に引かれた音の基準
線から全ての楽音がわきあがってくるというイメージなのだ!!
 
そう、まさに“Softly As In A Morning Sunrise”朝日のようにさわやかに
音楽を聴かせてくれるシステムに巡り合ったのである。
 
その時に私の脳裏に去来した言葉が“Horizon Sound”だったのです!!
 
            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-
 
http://tad-labs.com/  
 
TADの正式名称はTECHNICAL AUDIO DEVICES LABORATORIES。
ここH.A.L.と同様にラボラトリーを名乗る集団が作り出した作品を語るには
ショートエッセイでは事足りないということが解ってきました。
 
彼らが開発した数々の技術と音質との因果関係を知れば知るほど、メールマガ
ジンのサイズでは語りきれないテクノロジーがたくさんあることに気が付いた。
 
日本人が設計したものを日本語で解説してもらうこと、またそれを私の感覚で
消化して解りやすい説明に翻訳していくこと。
 
どうやら、それが私の使命のようです。
 
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/oto/index.html
 
フルサイズの随筆「音の細道」は三年間新作を作ることが出来ませんでした。
 
今回のショートエッセイでは中途半端なインプレッションとなってしまった
ところがありますが、それは本格的なフルサイズの随筆を制作しようと決意
したことから後日の執筆に含みを残すという意味でもあったのです。
 
TADが聴かせてくれる世界にはそれだけの価値があるということ。
今回のショートエッセイでさえも予告編の一部にしか過ぎないということです。
 
新年からの着手になると思いますが、どうぞご期待下さい!!
そして、読んでから聴くのではなく、今だったら先に聴くことが出来ます。
 
下記よりご応募下さい。
 
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/687.html


このページはダイナフォーファイブ(5555):川又が担当しています。
担当川又 TEL:(03)3253−5555 FAX:(03)3253−5556
E−mail:kawamata@dynamicaudio.co.jp
お店の場所はココです。お気軽に遊びに来てください!!

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