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H.A.L.担当 川又利明




2007年3月7日
No.474 「Dynamicaudio完全オリジナル商品
       ハイエンドオーディオ仕様超高級ラック登場」
 ◇Excellent takeoff- H.A.L. development Project“H.A.L.C(ホーク)”◇

     ■ Project“H.A.L.C”Development story ■

◆開発者が語る編集なしのオリジナルストーリーを公開致します◆


Vol.3「音質決定の要!! “H.A.L.C-Shelf”にかけた情熱とは!?」

“H.A.L.C”シリーズの使命とは何か!? 次世代のH.A.L.のリファレンスとして長期
に渡り音質的なステータスを維持し、お客様にとっても飽きの来ないシンプルで
あり高級感あるデザインと仕上げを目指し、安定価格にて末永く供給できるという
ことを重要視した。当然のことながら、その中で最も重要視したのが音質。

そして、そのキーポイントになるのが棚板(Shelf)であることは想像に難しくない。

ここで、最初に結論から述べれば“H.A.L.C-Shelf”は次のような仕様に決定した。

■サイズ W525m(横幅)×D420mm(奥行き)×H(厚み)28.7mm ■重量:一枚 10.5Kg

*サイズはzoethecusと並べて併用しても良いように横幅は同一としたが、dCSの
 Elgar/Delius/Purcell、そしてWadiaの921/931など、わずかにzoethecusのz.slab
 では奥行き不足でウッドフレームにはみ出してしまうものまで搭載できるように
 2センチ程大きくしてある。ただし、これは棚板のみの寸法であり本体の仕上がり
 寸法は W645m(横幅)×D540mm(奥行き)×H655mm(三段の場合/スパイク含み)となる。

■下記詳細による素材として6層/特殊な接着面を含めて11層合板仕上げ
http://dyna5555.cocolog-nifty.com/photos/secret/halc_shelf_01.html
◇この写真は試作品のために正式な仕上げをしていません。

*上から順に断層構造の詳細/ただし接着面は含まず。
1)1.5mm:アルミ板(マイクロヘアライン仕上げ)
2)9.0mm:高密度MDF合板(密度:0.69g/cm3)
3)6.0mm:特殊合成樹脂によるコア材
4)2.0mm:高比重11340 kg/m3を有するダンピング用金属シート
5)9.0mm:高密度MDF合板(密度:0.69g/cm3)
6)1.2mm:ブラックメラミン仕上げシート

             -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

このようにポンと述べてしまうとあっけないが、妥協なき設計の結果で棚板一枚で
10キロを超えてしまったというのは我ながら驚きのスペックとなった。そして、
最上面のアルミ板の仕上げにもこだわり、1.5ミリと肉厚感を与えホットスポット
の反射光がないようにしっとりとした質感でキズも付きにくく無言の高級感を醸し
出している。すべすべした肌触りはGOLDMUNDの感触を思い出すようだ。

この結論を出すために試作した枚数は実に9枚に及び、それらを下記に述べるシス
テムで入念な試聴の上で追求していった。


       ◇“H.A.L.C-Shelf”検証システム◇

ESOTERIC G-0s(税別\1,200,000.)*Rubidiumオンリー
http://www.teac.co.jp/av/esoteric/g0_g0s.html
      ↓
7N-DA6100 BNC(Wordsync用)
http://www.teac.co.jp/av/esoteric/mexcel/
      ↓
ESOTERIC X-01D2 (税別\1,400,000.)■ここに“H.A.L.C-Shelf”使用
http://www.teac.co.jp/av/esoteric/x01_ux1/x01d2.html
      ↓
ESOTERIC 7N-DA6300 MEXCEL RCA 1.0m
http://www.teac.co.jp/av/esoteric/mexcel/
      ↓
HALCRO dm8(税別\2,200,000.)
http://www.harman-japan.co.jp/products/halcro/dm8_10.htm
      ↓
ESOTERIC 7N-DA6100 MEXCEL RCA 7.0m
http://www.teac.co.jp/av/esoteric/mexcel/
      ↓
HALCRO HALCRO dm88 ×2 (税別\7,600,000.)
http://www.harman-japan.co.jp/products/halcro/dm38_68.htm#dm68
http://www.halcro.com/productsDM88.asp
      ↓
STEALTH Hybrid MLT Speaker Cable 5.0m H.A.L.'s Special Version
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/290.html
      ↓
 MOSQUITO NEO(税別\4,800,000.)
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/oto/oto54.html

             -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

zoethecusをどのくらい超えることが出来るか!? このテストのためにメカニズムと
エレクトロニクスが共存するSACD/CDプレーヤーを載せかえることで比較試聴して
行くことにした。これでトランスポートのようなメカ重視のコンポーネントもプリ
アンプのように純粋に電気的コンポーネントの両方に対してのベクトルをつかむ
ことが出来る。


            〔試作第一段階〕

試作No.1とNo.2 : 二種類のコア材の比較

1)1.5mm:アルミ板
2)9.0mm:高密度MDF合板
3)6.0mm:合成樹脂を二種類選択しコア材の違いを確認する
4)9.0mm:高密度MDF合板
5)1.2mm:メラミン仕上げシート

最初の試作段階ではMDF合板とコア材のみという構造で、先ずは二種類のコア材を
決定することから始めた。ここで、過去にzoethecusに挑戦しても私が採用に至ら
なかった数社のラックを試聴した時の体験を思い起こしてみた。最も大切なことは
低域の輪郭表現や重量感という音像の絞り込みという面でzoethecusが大変優れて
いたということだった。

その上でエコー感という情報量の豊富さという次の段階で評価を進めるべきであり、
肝心な音像の解像度自体が確立されなければ楽音の芯とエコー感のセパレーション
を感じ取ることが出来ない。

ここでテストに使用する課題曲は多数あるが、ヴォーカルとギター、エレキベース
というシンプルな構成の録音を中心に複数の曲を聴き続けた。その度に25Kgもある
X-01D2を載せ換えて何度も何度も試聴を繰り返す。

比較の対象はもちろんzoethecusのz.slabであるが、この段階では圧倒的にz.slab
の方が低域の解像度に優れており、今までリファレンスにしてきたことに改めて
自信を深めてしまうということになってしまった。


            〔試作第二段階〕

試作No.3とNo.4 : 二種類のコア材の比較で第二ラウンド

1)1.5mm:アルミ板
2)12.0mm:高密度MDF合板
3)6.0mm:合成樹脂を二種類選択しコア材の違いを確認する
4)12.0mm:高密度MDF合板
5)1.2mm:メラミン仕上げシート

z.slabよりも分厚い12.0mm:高密度MDFでコア材をサンドイッチした第二段階のもの。
だか、z.slabよりも重厚に作ったはずの試作品は期待外れだった。重量と32.7mmと
いう厚みが勝れば良いというものではなかった。棚板自体のダンピングを上げなく
ては低域の引き締まり効果は得られないだろうと、思い切って次の段階の試作品を
リクエストした。

しかし、ここで二種類のコア材のうちで少なくとも楽音の質感と輪郭表現に優れて
いる素材ということは確認できた。今後はこの高分子化合物の合成樹脂でコア材を
特定して試作を進めていくことにした。これを試作No.4としておこう。


            〔試作第三段階〕

試作No.5

1)1.5mm:アルミ板
2)9.0mm:高密度MDF合板
3)2.0mm:高比重11340 kg/m3を有するダンピング用金属シート
4)6.0mm:特殊合成樹脂によるコア材■上記No.4による
5)2.0mm:高比重11340 kg/m3を有するダンピング用金属シート
6)9.0mm:高密度MDF合板
7)1.2mm:メラミン仕上げシート

とにかく低域を先ずは引き締めて、この分野だけでもz.slabを追い越したい。
そんな願いから試作No.3の到着を待ち受けた。そして、試作No.5が到着した。

まあ、とにかくNo.5が重たいことに驚いた。これだったら文句ないだろう!!
と、耳にタコというほど聴き込んだシステムと選曲で聴き始める。

「おー!! これだったら低域はいけるぞ!!」

この可能性が見えたところで本当に私の心境からすれば光が見えてきたというもの。
z.slabに秘められた音作りの上手さはzoethecusのノウハウなのだろうが、彼らは
どんな環境とシステムで音質を決定したのだろうか? と興味も深まった。しかし…

ベースとドラムの質感に注視して試聴していて一旦はほっとしたもののどこかが
違う。直ちにディスクを余韻感が美しいと評価しているヴォーカルものに換える。
すると、私が追求しているもうひとつの要素、エコー感がまるで昔のドルビーノイ
ズリダクションをオンにした時のようにふっと消え去っていることに気が付く。

「ダメだ、これじゃ〜」

再びz.slabにすると、すーっと拡散し消えていく余韻感が戻ってくる。癪に障るが
今までリファレンスにしていたzoethecusを敵に回すということがこれほど大変な
ことだったのかと改めて痛感させられた。さて、この先はどうすべきか!?

ダンピング量を減らせば余韻感が戻ってくるだろうか? この方法にすがるしかない。
ずうずうしくも妥協できない私は次なる試作品をお願いする電話をかけていた。


            〔試作第四段階〕

試作No.6

1)1.5mm:アルミ板
2)9.0mm:高密度MDF合板
3)2.0mm:高比重11340 kg/m3を有するダンピング用金属シート
4)6.0mm:特殊合成樹脂によるコア材■No.4上記による
5)9.0mm:高密度MDF合板
6)1.2mm:メラミン仕上げシート


試作No.7

1)1.5mm:アルミ板
2)9.0mm:高密度MDF合板
3)6.0mm:特殊合成樹脂によるコア材■No.4上記による
4)2.0mm:高比重11340 kg/m3を有するダンピング用金属シート
5)9.0mm:高密度MDF合板
6)1.2mm:メラミン仕上げシート

ご覧のようにダンピング用金属シートをコア材の上にするか下にするかという配置
で二枚を試作した。私自身も3)と4)の順番を入れ替えただけで音質に影響するだろ
うか? ということに何の確証もないまま、到着した試作品をいそいそとセットした。

すると… 「おー!! これだ!!」

ほっとするように余韻感と低域の解像度が両立する音が出始めた。
そして、試作No.6と7も比較してみると不思議なことに試作No.7の構造のように
テスト機であるX-01D2との接点よりもダンピング用金属シートを離した方が余韻感
が勝り解像度も素晴らしい!!

「求めていたものが見つかったぞ!! 試作No.7これだったらz.slabを凌駕したと
 大きな自信が持てる音だ。10人に聴かせて9.9人までが支持してくれる音だ!!」

ダンピング用金属シートを二層とすることで低域の改善を確認するも音場感を発揮
させるにはオーバーダンピングということが新たな課題として表れ、それを一層に
したことで当初の目標が達せられたという安堵感がわいてきた。

しかし、このダンピングシートの配置でこれほど音質変化があるとは思ってもいな
かった。ラックを、それも棚板だけの変化で起こる各種の変化は私には大変貴重で
あり良い勉強になった。しかし…

私は、まだ執念深く疑り深い。低域の質感と音場感の両立という判定において、
まだzoethecusを引き離せる可能性はないのか!? エコー感のあり方についてはまだ
追求できる余地はないのか!?

そこで、これでもか!!という確認を行なうために最後の試作を更にお願いした。


            〔試作第五段階〕

試作No.8

1)1.5mm:アルミ板
2)9.0mm:高密度MDF合板
3)1.0mm:高比重11340 kg/m3を有するダンピング用金属シート
4)6.0mm:特殊合成樹脂によるコア材■No.4上記による
5)9.0mm:高密度MDF合板
6)1.2mm:メラミン仕上げシート


試作No.9

1)1.5mm:アルミ板
2)9.0mm:高密度MDF合板
3)6.0mm:特殊合成樹脂によるコア材■No.4上記による
4)1.0mm:高比重11340 kg/m3を有するダンピング用金属シート
5)9.0mm:高密度MDF合板
6)1.2mm:メラミン仕上げシート


これが最終的に私が納得したいためにということで無理やり作ってもらった試作だ。
試作No.6-7とどこが違うのか、お解かりだろうか?

そう、ダンピング用金属シートの厚みを2.0mmから1.0mmへと半分にしてもらった。
敵に回したzoethecusがこれほど美しく広大な音場感を発揮しているということを
今までは当たり前のように恩恵として享受していたのだが、欲張りな私は試作No.7
でたどり着いた未体験の領域が本物かどうか。つまり、もっともっとzoethecusを
圧倒できるようなパフオーマンスの可能性があるのではないか。という思いから
エコー感の保存性という要素でダンピング量の半減という最終確認をどうしても
したくなったのである。

到着した試作No.8-9をいそいそと開梱し、早速試聴に取り掛かることにした。
今までのすべての過程において、一旦は試作No.7がベストと認証したものの、常に
リファレンスとしてz.slabを合い間に聴き、その上に試作No.7が位置するというこ
とを絶えず確認してきた。

試作No.7と同じ位置にダンピングシートを入れた試作No.9を我慢しきれずに最初に
チェックしてみることにした。今までのノウハウからも試作No.7よりもイケルとし
たら同じ構造の試作No.9に他ならないからだ。すると…!?

「えー!! うそでしょう〜!!」

結果から言えば一挙に試作第二段階の音質に逆行してしまったのである。確認の
ために直ちに試作No.8も聴いてみた。だめだ!!ダンピングシートの上下位置関係に
よる音質傾向の違いが見られるだけで本質的には第二段階と同レベルになっている。

つまり、第二段階で達成していなかった低域の質感、絞込みが一挙に崩れてしまっ
たのである。これでは話にならない。

ダンピング量と音質の関係はリニアではなかった。つまり、ダンピング量を半減
すれば余韻感が増長するだろうとの推測は期待はずれであり、一定の質量がダンピ
ングシートにないと、その存在感は1か0のように一挙に無いに等しくなってしまう
ということが確認されたのである。わずか1ミリと2ミリの違いでこれほどまでに
低域の質感が変化するとは、何とラック(それも棚板のみ)の影響とは大きな存在
なのだろうか!!そして、やってみて良かった納得したぞ、試作No.7で間違いない!!

             -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

しかし、25キロもあるX-01D2をいったい何回乗せ換えたものだろうか!?
短いときには音が出た瞬間にも質感が解ってしまうので10秒程度で棚板を交換する
ということを色々な選曲でやってきたものだ。

この作業は9枚の試作品の到着を待ちながら二ヶ月間に及び、数十回、あるいは
百回以上やっただろうか?

“H.A.L.C-Shelf”の音質、それはこのProject“H.A.L.C”の骨格を成す重要な
ポイントであり、そこに費やした時間と労力と情熱は間違いなく音質の根拠として
語れるものとなった。

しかも、このH.A.L.という環境と使用システム、そして私の耳と感性という評価
基準はzoethecus社のそれを大きく上回っているという自負がある。さあ、これで
私の目標の半分は達成された…!? と思ったら、次々にラックというものが見せる
音質変化の摩訶不思議な要素がこれからも発見されることに!!

Project“H.A.L.C”の秘密と完成度を物語るエピソードはまだまだ続く!!


このページはダイナフォーファイブ(5555):川又が担当しています。
担当川又 TEL:(03)3253−5555 FAX:(03)3253−5556
E−mail:kawamata@dynamicaudio.jp
お店の場所はココです。お気軽に遊びに来てください!!

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