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H.A.L.担当 川又利明
    
2017年10月25日 No.1427
 H.A.L.'s One point impression!! - Sentimental Reasonsの魅力!!

「私の仕事は聴く事から始まる!!」というのは不肖、私の格言ですが…。
それはコンポーネントだけではありません。良い音楽ソースの発見という事も
皆様に対するプレゼンテーションの一環だと考えています!!

そして、それらの良い録音とは何か? ということに関しては、私が主に試聴に使用
しているCDというジャンルに関して、特に高音質を謳っていないディスクに関しても
実際には再生装置のクォリティーと完成度に再生音質は依存しているものという
体験を数多くしてきました。

つまりは、ごく普通に市販されているCDであっても、ここで再生すると驚くほどの
情報量が記録されているという事実に直面することが度々あるのからなのです。

ここで流れている音楽を聴いたお客様から「これはSACDですか?」と尋ねられる
ことが本当に多いのですが、世の音楽ソフトに記録されている情報とは果たして
どのようなものか、それを全てを引き出した再生音という実態を経験して初めて
音楽ソフトの本当の音を聴いたということになると思います。

更に重要なことは、それらの音楽ソフトを制作している現場、スタジオでの音質は
設備として備わっているスピーカーとアンプというハードウェアの性能によるものであり、
今一歩踏み込んで考えればスタジオの音響的環境にも左右されているということです。

これまでにも多数のレコーディングエンジニアが自分で手掛けた録音をここで
試聴してみると、仕事場であるスタジオでは聴こえなかった音の世界があるという
評価を頂いたことが何度も、何度もありました。

従って、私は特に高音質と自画自賛しているディスクに対して触手が動くかというと、
まったくそのような宣伝文句には目をくれず、実際にここで聴いてみて音楽作品としての
真価を評価し自分の選曲としてコレクションを増やしてきたものでした。

ですから、今回ご紹介するCDもwebサイトの謳い文句を鵜呑みにして試聴したわけ
ではなく、ある人物からの依頼によって知ることとなったソフトであることを
最初に述べておきたいと思います。

それでは、先ず今回私が感動し皆様にもお知らせしたくなったソフトとは何か?
こちら↓です!   “Mayo Nakano Piano Trio / Sentimental Reasons”
https://www.briphonic.com/

実は、このサイトで紹介しているソフトの4タイトルの全てがここにありますが、
この一連の仲野 真世のシリーズに関してはハルズサークルで9年前に取り上げた
ことがありました。初出は2008.2.2-No.1661-で次のように紹介していました。

以下はこのブリーフニュースからの抜粋です。
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/568.html

             -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

さあ、どんな曲でチェックしようかと考えつつ、DACにおける部分的な回路の
進化を見定めようとするとき、立ち上がりがハイスピードであり余韻感を多分
に含むもので総合的な情報量を判断したかった。そこで、このディスクだ!!

http://www.briphonic.com/

このレーベルの特徴はwebでも十分に述べられているが、とにかく実物を聴くと
リアルな音場感と楽音の鮮明な質感、そしてホール録音の素晴らしい余韻感が
味わえるという三拍子揃った傑作と推薦の言葉を申し上げたい。

私が今回使用したディスクは「SCABIOUS」ジャズでもなくクラシックでもなく、
仲野 真世の全曲書き下ろし演奏は私の記憶する数多くのピアノ作品でも出色の
出来栄えであり、ベーゼンドルファー“インペリアル”モデル290の質感が空間に
描き出すオーロラのような色彩感と空間表現のリアルさには驚かされる。

このピアノトリオの録音はピアノそのものの質感が素晴らしいことはもちろん、
ホールエコーとのバランス感覚が素晴らしく、バックのウッドベースとドラム
は適度なテンションを保ちつつ距離感を巧妙に感じさせるレコーディング職人
の技として際立っている。

私は微妙なDACの相違点をチェックするにはと、このアルバムからの選曲から
こだわり、トラック2.Inner Bells を使用することにした。

              ≪中略≫

私がこの曲を選んだのはタイトルのベルをモチーフにしたものか、冒頭で仲野
真世の右手が高速で叩き出す鋭いアタックの連続があったからだ。

ペダルをあえて使わず、鋭い連打の繰り返しがそのままホールの空間に見事な
放物線を描くような残響を漂わせ、その繰り返しが続くと気がついたら私は
思わずスピーカーの上に目線をさまよわせるほど美しい余韻を残していく。

そして、プリアンプのボリュームは-19dBで聴き始めたが、冒頭のピアノソロ
のパートではピアノのフレームの音なのか、それともステージの床が鳴って
いるのか、低周波のさざめくような音がきっちり再現される。もしかしたら、
モニタースピーカーとそのシステムでは聞き取れていなかったものかもしれ
ないが、空気を震わせる低周波にちょっと驚いてしまった。

このピアノの打音からして前者とはまったく違う質感と解像度の素晴らしさに
比較する前の私が想像していた微妙な違いという先入観は吹き飛んでしまった。

数瞬後に馬場 高望のドラム、正確にはシンバルが静かに登場するが、ここで
も質感があまりに違う。きらめくシンバルに専用のスポットライトを当てたか
のごとく、押さえた音量での演奏ながら鮮明さ、いや明るさも違っている。

ブラシとスティックを持ち替えているのか、ドラムのタッチやハイハットの刻みの
様子が音源としてのスピーカーユニットが存在しない中空にくっきりと浮かぶのだから参った。

ピアノを主役として距離感をおいているはずが、前者では薄いカーテンの向こう側で
演奏していたのでは、という程に演奏空間の空気が澄み渡り視界が鮮明になっている
のだから呆れてしまう。

池田 芳夫のウッドベース、高音階の打音とは違い低い音階での楽音ではDACの
違いはどう聞こえるのか? これは愚問だったかもしれない。

倍音をより多く含むベースだからこそ、その変化を察知することが容易だった
のではないかと思ってしまった。そう、ごりっという個体感を増している。

言い換えれば、輪郭が鮮明であり重量感が増している。そして、音像が縮小
されているという私の好みの方向にばっちり進化しているではないか!!

叩く楽器の立ち上がりが高速化し、逆に余韻感の保存性が恐ろしく向上している
のに驚かされる。だから、ピアノの打音、これは弦の太さと例えたらいいのだろうか?
一つの弦が見えるように楽音の輪郭に黒い線を書き込んだようにくっきりしている
のに驚かされる。本当か!?

ベースのように弾く楽器の輪郭表現が、カメラのフォーカスを熟練したカメラマンが
マニュアルで合わせていくように、一切のにじみを拒絶した領域までジャスト
フォーカスを極めて私の目と耳に飛び込んでくるのだから堪らない。

このディスクのお値段は4,000円ということでSACDよりも高い。しかし、この
音質であれば私は納得できるものであり、かつ、SACDに対応しないプレーヤー
の開発と設計に情熱を傾ける人々には素晴らしい可能性を提供するものだろう。

なぜか!?

母体を同じくするD/A Converterの進化をこれほど鮮明に描き出すにふさわしい
情報量を封じ込めることに成功しているからだ!!

これはハードウエアの能力を引き出すということにも、あるいはソフトウエアの
可能性としてもノーマルCDフォーマットでここまでできるという到達点の高みを
実現したということを私はしみじみと実感させられた。

             -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

大変申し訳ないことに、当時このディスクを教えて下さった方がどちら様であったか、
あるいは私がネットを見ている時に偶然見つけたものであったのかは記憶がありません。

http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/568.html

http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/fan/hf_hear0428.html

その後、たびたび試聴ディスクとして愛用していた仲野 真世の全曲書き下ろし
「SCABIOUS」を購入して聴いたら素晴らしかったというメールを何通も頂きました。

当時、ハルズサークルでご紹介して会員の皆様にも素晴らしい音楽情報として
このアーチストの存在をお知らせすることで喜んで頂いたというエピソードでした。

さて、この仲野 真世のオリジナル曲にて時代の進歩に伴って最新最高を目指して
録音されパッケージ化された“Mayo Nakano Piano Trio / Sentimental Reasons”を
当時から比べれば何倍も進化した下記の再生装置にて聴くことになったのです。

http://www.dynamicaudio.jp/5555/7/H.A.L.'s_Sound_Recipe_H.A.L.'s_E.S.Insulator.pdf

究極のアナログレコーディングという内容に関しては下記を是非ご覧下さい。

https://www.briphonic.com/images/Readme_6page.pdf

この中でテープレコーダーと2インチ磁気テープの説明がありますが、それと合わせて
下記の画像も是非ご覧下さい。上からカセットテープ、家庭用オープンリールデッキ、
そして、業務用の1インチテープと比べて2インチテープがいかに凄い媒体かという
ことが実感できるものかと思います。

http://www.dynamicaudio.jp/file/20171001-tape.jpg

このレーベルでは下記のように直販をしていますが、最新盤は大手CDショップや
通販サイトでは流通していないものです。

http://briphonic.ocnk.net/

そして、今回私が試聴したのは下記の三種類のCD-Rと工場で量産された通常のCDと
いう四種類のディスクです。

https://www.briphonic.com/direct_writing.html

更にレコーディング風景とガラスCDの特徴を解説した公式ファイルもご覧下さい。
https://www.briphonic.com/BriphonicCatalog.pdf

             -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

ディスクメディアに収録した“Mayo Nakano Piano Trio / Sentimental Reasons”は
次の四種類があり、何とも物好きな試みですが同じ曲を四回繰り返し聴くことにしたのです。

仲野真世ピアノトリオ CD(通常盤) ”Sentimental Reasons” [BRPN-7006]
http://briphonic.ocnk.net/product/24

仲野真世ピアノトリオ CD-R ”Sentimental Reasons” Limited Edition [BRPN-7006R]
http://briphonic.ocnk.net/product/25

仲野真世ピアノトリオ CD-Rゴールド ”Sentimental Reasons” Premium Edition [BRPN-7006RG]
http://briphonic.ocnk.net/product/26

仲野真世ピアノトリオ ガラスCD-R ”Sentimental Reasons” [BRPN-7006GL]
http://briphonic.ocnk.net/product/32

High-Resolutionという流行語は本来はHDDやNASというストレージに記録された
音楽ファイルのスペックを示すものであり、CDプレーヤーでのディスク再生では
CDの規格が決定しているので、ソースとしてのディスクへの記録方式に対して
使用する表現ではありません。

しかしながら、近代のCD/SACDプレーヤーにおいては内部でアップコンバートして
DACにて高次元の再生を行うということが一般的手法になってきており、私が高く
評価しているESOTERICの再生システムにおいても下記の記事のようにネットワーク
オーディオという分野では実現し難い情報量の素晴らしさを誇っている。

「H.A.L.'s impression-壮大で緻密なESOTERIC Grandiosoを聴く-Vol.1」
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/1088.html
上記より抜粋

「さて、ここで量子化ビット数はミクロのスイッチと例えましたが、それは実数
 にすると一体いくつになるのかということを調べてみました。

 16bit:            65,536
 24bit:     16,77万7,216  ESOTERIC P-01+D-01 X-01
 32bit:  42憶9,496万7,296  ESOTERIC K-01&K-03
 35bit: 343億5,973万8,368  ESOTERIC P-02+D-02
 36bit: 687億1,947万6,736  Grandioso P1+D1

 そして、それら複数のDACにデジタル信号を入力する前の段階でサンプリング
 周波数がより高度になり、演算誤差が少なくなることで更に音質が向上して
 いくという事実が近代のCDプレーヤーに生かされているわけです。これらは
 1980年代におけるアップサンプリングの目的とは大きく変化してきていると
 いうことで、積極的な音質向上策として今は定着している技術と言えます。」

このように音楽データファイルのスペックや再生するソフトによって音質が変化する
ネットワークオーディオの世界とは違い、ディスクプレーヤーの内部処理による
膨大な情報量の再構築という解釈にて、上記の通常盤の音質評価ということに
なってくるものです。CDのプレス工場で量産化されたディスクでさえも再生装置の
技術進歩によって高次元の音質からスタートするということが大きな前提となっています。

             -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

何とも長大な前置きとなってしまいましたが、ホール録音であり超高品位アナログ
レコーディングのSentimental Reasonsにおいて、同じ曲を四種類のディスクで
比較試聴していくことにしました。

1. September / CD(通常盤) [BRPN-7006]

冒頭から49秒は仲野真世のピアノソロ。今回の試聴システムでプリアンプのESOTERIC
Grandioso C1のボリュームは-32dB。これは録音レベルの高いポップスなどで聴く
ポジション。この段階ではテープヒスはほとんど聴き取れないほどのレベルであり、
アナログ録音ということはノイズからは分からないものだろう。

しかし、このピアノソロのパートが驚くほどに美しい!!一音ずつの打鍵の瞬間から
立ち昇る余韻感が素晴らしく、コンポーザーとしての仲野真世の感性がバラード調の
旋律からにじみ出るような情緒感が胸を打つ!!いや、私の胸にしみ込んでくる!!

メロディーメーカーとして自身の情熱をスコアに刻み、しっとりと儚い憂いを含む
ピアノソロが広大な空間に広がっていく快感に思わず聴き惚れる。これはいい!!

でも、この音量による情報量では物足りない。更に-28dBまで上げるが、これは
オーケストラの課題曲を聴く時のポジション。

若干だがテープヒスを感じるようになるが、引き換えにピアノの一音一打から
溢れ出す情報量がまだこんなにもあったのかと通常盤CDのレベルの高さを思い知る。

ホール録音ということでベースとドラムにはホールエコーの響きのみでリヴァーヴは
かけられていないが、ミックスダウンの段階でピアノのみリヴァーヴを施している。

日頃オーケストラを聴くボリュームで瑞々しい響きがHIRO Acousticの得意技とする
極めつけの音場感を提示する。いや! まだこの先があるのでは…。

数デシベルずつボリュームを上げて-22dBとして再度リモコンでスタートすると!?

「何なんだ! このピアノソロのしっとりした質感と響きの多重構造の物凄さは!」

微弱な動作音からディスクが回転し始めたことを察知した瞬間に、明確なテープヒスが
さーっとスピーカーの背景に半透明のスクリーンを張るのだが、ヒスノイズさえも
心地よく聴こえるようなワイドレンジの証として自然に受け入れた私だった。

再び仲野真世の登場。ここまでのボリューム調整で何回聴き直したことか!

そして、ピアノが宙を舞うように展開し始めると、もうこの後にはテープヒスを
感じることはなくなってしまうという不思議。この導入部だけで聴き応え十分!!

先程の-28dBに比較して-22dBという、たった6dBの音量差が誰も想像しえなかった
音楽のダイナミズムと情報量の爆発的拡張をもたらすのだから驚いてしまった!

トランスポートGrandioso P1のカウンターが00:50となった瞬間、この曲は炸裂する!!
池田芳夫のウッドベースと馬場高望のドラムが強烈な躍動感で参戦する!!

導入部のイメージを脱ぎ捨てた仲野真世のピアノはハイスピードかつ力感ある
演奏へと一変し、ベースとドラムの圧倒的エネルギーがホールに響き渡る迫力!!

目まぐるしく三者が絡み合う絶妙なアップテンポで加速するリズムが私の体温を
一度高め、分析的な聴き方をしていたはずの私のハートはたちどころに沸騰する!!

ウッドベースはどちらかというとピアノの背後でサポート的な音量感で少し控えめ。
音像もどちらかというと距離感をもってゆったりと広がる印象で展開する。

ただ、それはあいまいな低音ということではなく、質感はしっかりと捉えられており、
特に01:30程からスイングするリズミカルなピッチカートで存在感を打ち出してくる!

ピアノとベースの見事に同期したコード展開とリズムに合わせて、シンバルの
細やかなスティックワークが華々しく空間に飛び散っていくのがドラムだ!

2インチ8トラックのアナログマスターレコーダーは76cm/secという高速回転で
三者のダイナミズムを克明に記録しているが、ドラムに配したマイクは5本。

そのうちの2本はオーバートップで頭上からシンバルとハイハットなど金物を狙い、
2本でフロアータムからスネアまでのシェルものを狙い、キックドラムに1本と
いう構成だろう。

オーバートップのマイクが狙ったトップシンバルはベルなし、そしてハイハットは
左右HIRO Acousticにオンアクシスで定位し、ベル近くかエッジを叩いたのかも鮮明
に聴き分けることができる解像度の素晴らしさがある。

金物の輝く響きはオンマイクの印象でスピーカーの軸上でくっきりと鮮やかに
近接した距離感での分解能が素晴らしい音像を浮かばせる。こういうところは
H.A.L.'s E.S.Insulatorが効いている証拠だろうか!

同じドラムセットなのに、それとは対照的にタムとスネアは距離感をもって再現され、
オフマイクの印象なのだが決してたるんだ音にはなっていない。マイク5本で収録した
ドラムのミックスダウンにおいて、この両者の対比をもっとも顕著に表しているのが
キックドラムの音だろう。そして、私はこのようなキックドラムの音が大好きなのです!!

キックドラムのヘッドからすぐビーターを離すオープン奏法の醍醐味なのか、まさに
大砲のように炸裂するバスドラムの打音は演奏しているホールのエアボリュームを
示して、大空間に放った打音が自然減衰していく時間軸を聴き手に印象付ける。

インパクトのある低音が広いホールの空間を駆け巡り、それを着ぶくれしない
低域を最大の特徴とするHIRO Acousticが極めて忠実に再現していく爽快感!!

バスレフタイプのスピーカーではバラけてしまう低音のインパクトが抜群のテンションで
キックドラムの重厚かつ瞬発力ある打撃音を空中に放つ解放感に私はしびれた!!

5チャンネルで収録したドラムの各パートにおいて、2チャンネルにミックスダウン
する際のテクニックで、同じドラムセットの中に遠近法を表現させた妙技が存分に
聴けるのが3分過ぎから展開するドラムソロのダイナミックな演奏!!

馬場高望のドラムはピアノとの掛け合いで、シェルなしの薄く小口径のロータムを
小気味よく叩く破裂音のようなパシッという連打が実に鮮明で爽快にリズムを刻む!

前述したシンバルとハイハットが眼前で叩かれるような鮮明さと、レベルを押さえて
距離感を持たせた各種タムの強烈なサウンド、そして空中を舞うようなキックドラムの
雄大な低音の余韻感に見とれる私がいた!!

そして、5分過ぎからぐいっとリーダーシップを取り戻す仲野真世のピアノが主題の
旋律を奏で始めると、解放感あるベースがゆったりと背後に寄り添い、逆にドラムの
テンションは一打ごとに高まりながらクライマックスを迎える07:30のこの曲!!

通常盤のCDがソースコンポーネントのアップコンバートによって、ここまで多彩な
情報量と質感の充実、音色のバリエーションの豊富さをもって演奏されるとは一体
どういうことなのか!!

44KHz/16bitというCDの基本フォーマットにおける最高位の音質とは再生装置の
進化によって、ここまでの表現力を持つものなのかと演奏の素晴らしさと絶妙な
録音技術をパッケージ化するメディアとして一種の興奮をもたらしてくれたのです!!


1. September / CD-R Limited Edition [BRPN-7006R]

記録する信号のフォーマットは全く同じであり、究極のアナログレコーディングという
前述のマスターテープの音源はそのままで、射出成型機で量産するCDとは違い一枚ずつ
データを書き込んだCD-Rで全く同じ録音を聴く。

以前、私は市販のCDをCD-Rにコピーした時の音質劣化という経験をしていたので、
CD-Rというメディアに対する価値観では完璧なコピーは出来ないものという印象を
持っていたが、五年前の下記のディスクの登場によって私の認識は大きく変わった!

No.990 2012年12月5日
【新企画⇒High quality CD by H.A.L.'s Recommendation-石川さゆり!!】
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/990.html

一枚ずつ管理しながらデータを記録していくCD-Rは、そこに記録する信号の
クォリティーが高ければ高い程、その品位を維持するには好都合なメディアなのだと。

だから、このディスクのお値段が税込み¥7,000.だとしても、まったく高いとは
思わなかった。いや、上記の事例からすれば当然のことと思われる期待感があり、
物好きなことに同じ曲を聴くことにした。さて、どうなるか!?

仲野真世ピアノトリオ CD-R ”Sentimental Reasons” Limited Edition [BRPN-7006R]
http://briphonic.ocnk.net/product/25

冒頭49秒の仲野真世のピアノソロ。先ずはアナログ録音特有のテープヒスの質感が全く
違うことに驚く。「さー」を「サー」という表現にしたらイメージして頂けるだろうか。
そうです! 単純に表現すると同じテープヒスのはずが明るくなっているのです!!

物理的にはアナログマスターをA/D変換する際の量子化歪は全く同じであり、マスター
テープの高域特性を何ら変化させるものではない。つまりはデジタル化された信号は
まったく通常盤と同じはずなのだが、それをCDというメデイアに焼き付ける時の
精度に由来するものだろうか。音楽を描く空間の透明度が圧倒的に違うという期待の
もとにピアノの最初の一音が放たれた!

「あー、何なんだ! このピアノの粒立ちと一音一打の輝きと余韻感が全く違う!」

まさに空間に抜けるような、響きの連鎖によって広大な音場感を示すピアノに驚く!
私が求めている、音像は究極的に引き締まり音場感は広大に展開するという理想的変化!

第一ピアノの音色そのものに瑞々しさが加わり、生き生きと鳴り響く躍動感が先程とは
全く違う質感として私の記憶に上書きされていくという単純明快な違いに我が耳を疑う。

まるで仲野真世が弾くベーゼンドルファーModel290Imperialのボディーにピアノ
ワックスをかけて丁寧に拭きあげ、そこにホールの天井の照明がくっきりと鮮明に
反射するようになったビジュアルのように輝く音色に変貌した! これは素晴らしい!

テープヒスの変化からピアノの音そのものに対する予兆がまったく的中し、ピアノに
施したリヴァーヴの品位を全く変えてしまう程の魅力が盤質とデータの書き込み
精度にあったのかと、ESOTERIC Grandioso P1/D1の潜在能力に改めて脱帽の思いだ!

さあ、期待のうちにGrandioso P1が00:50をカウントした瞬間! なんだ! このアタックは!
三人のプレーヤーのアイコンタクトが演奏に同期しての爆発か! 鮮烈なインパクトがほとばしる!

ピアノとベースが低音階でシンクロしてのコード進行で、ベースの音像がさっきと
違っていることを察知した。いやいや、音像だけでなく中身の響きも違うのです!!

2インチ8トラックアナログマルチレコーダーでベースに割り当てられたのは1チャンネルのみ。
しかし、そこに記録されていたベースの躍動感たるや凄まじく、自分の響きのテリトリーを
先ほどよりも拡大し、一皮むけた存在感がベーシストをクローズアップする自然な演出か!

1チャンネルとは1トラックを示すが、実はこの録音ではマイクは一本ではなかった!

Sennheiser MD421ダイナミックマイクと管球式マイクアンプ使用SCHOEPS M222+MK4 capsule
コンデンサーマイクの二本を同時に使い、そのマイクアンプ出力を抵抗のみでミックスする
という巧妙な録音がなされたウッドベースの迫真の演奏だったのです!

音階の高低、音色の印影、そしてエネルギー感さえも通常盤と比較にならない程の
ベースはサポートではなくリーダー的な振る舞いでピアノの背後に響きのオーラを放つ!

この両者の変化だけでもLimited EditionとしたCD-Rの威力が素晴らしいものだが、
当然ドラムにも共通項の品位向上が表れている。特にシンバルとハイハットへの
ブラシの当て方が変化したり、スティック先端がサイドシンバルの上で跳ねるように
細かいリズムを刻む描写がスピーカーの存在を無視して空間に定位する鮮明さ!

ドラムソロで私が期待していたキックドラムはどうか!? いやいや、期待以上か!

少し踵を上げてペダルを踏んだ、いやキックしたのか、見えないスピードでビーターが
ヘッドを叩き、放たれた打音がホールの壁に二度三度バウンドしながら消滅していく。

この響きの遠近法がたった二台のスピーカーによる再生システムからこともなげに
発せられてしまうという情報量の拡大は、通常盤の二倍の値段というCD-Rの価格を
全く忘れさせてしまうほどの威力を持っていた!! これ素晴らしいです!!


1. September / CD-Rゴールド Premium Edition [BRPN-7006RG]

量産した通常CDとデータエラーを管理して一枚ずつ焼き付けていくCD-Rで同じ
音楽データがこれ程違うのかという経験をした後で、今度は同じCD-Rでも信号面に
金色のコーティングを施したCD-Rゴールドに書き込みをしたディスクも一万円と
いう価格にて発売された。盤質が違うが記録されたデータは同じ、さて、これは!?
https://www.briphonic.com/direct_writing.html

冒頭49秒の仲野真世のピアノソロ。もうここから違う!!

「えー! リヴァーヴが前より深くなってるぞ! この響きの美しさは別物だ!!」

最近はこの曲を聴きすぎて帰宅してもメロディーが頭の中で繰り返されるほどに
聴き続けてきたので、この違いは直ちに分かってしまった。

オートフォーカスのカメラが一、二秒で、すーっと焦点を合わせる様子をファインダーで、
今では液晶モニターで見ていたような変化で音像そのものの質感がぐっと向上している。

ピアノという楽音の音像の変化として更にサイズが小さく絞り込まれ、打鍵の瞬間に
立ち上がる音像の輪郭が素晴らしい鮮明さで再現され肉厚感が加わった!

そんな厚みを持ったピアノが放つ余韻感の豊潤さに、ついスタジオで施したリヴァーヴが
増量されているのではないかと錯覚してしまう程なのです!!

出だしから同じCD-Rとは思えない情報量の拡大にたじろいていると、あっという間に
50秒がたち、変化の方向性を直感的につかんだ私は続くドラムとベースの登場で
推測が確信に変わった!!

ドラムのオーバーヘッドで使用された二本のマイクNeumann TLM-170iはトップ
シンバルとサイドシンバル、そしてハイハットとほぼ等距離にありながら、
スティックの先端がシンバルの中ほどを細かく、そして軽く刻むように叩く情景を
クローズアップしたビジュアルで見せるように克明に描写する。

スティック先端の残像でしか捉えることの出来ない高速な動きにピンスポットを
当てたように、各種シンバルの音色が明るく輝くようになったのはなぜだ!?

3分過ぎに展開するドラムソロで、張り詰めたタムのヘッドをパシッとヒットした
瞬間に、そのはちきれんばかりの打音のひとつひとつに、ふっと余韻感が伴う発見!

インチが異なる二種のタムの連打で先程よりもテンションが高まったことで、
インパクトの瞬間での立ち上がりが鋭くなり引き締まった打音によって、その
一打ごとにホールの残響が感じられる変化に息を呑む! どうしてだ!

ウッドベースのプロポーションが引き締まっているのも、ピアノとドラムにおける
変化の方向性と一致している。弦を弾いた瞬間に広がる余韻が増量しているにも
関わらず、音像としての濃密さが引き立ち存在感が高まっている。ぐいっとくるベース!

前述のCD-Rで起こった通常盤との違いをそっくり上書きするCD-Rゴールドでの
再生音は、僅か幅0.5ミクロンというCDのピット(突起)と反射面からのレーザー
光線のリターンにおける精度が高くなったのだろうと理屈では想像できても、
明らかにワンランク上の情報量によって再生音の品位がこれ程向上するとは誰が
想像できたことだろうか!? 同じCD-Rであれば、この両者を比較すれば歴然とした
違いに聴き手が驚き興奮してくれる再生システムであって欲しいものだ!


1. September / ガラスCD-R  [BRPN-7006GL]

下記の10ページ目から解説されているガラスCDのメリットは今までにも語られて
いたものですが、一枚10万円という価格が先ず目立ってしまうことでしょう。
https://www.briphonic.com/BriphonicCatalog.pdf

前記のポリカーボネイトでのCDとCD-Rでは大量生産か一枚ずつの手作りとなる
データの書き込みかという争点になるが、今度はレーザー光線の透過と屈折という
物理的な視点で優位性を持つガラスCD-Rでの試聴。本当に私は物好きなのでしょう。

冒頭49秒の仲野真世のピアノソロ。先ずはテープヒスの違い。「さー」から「サー」へ、
そして今度は「シー」というイメージで全然違うのです!!これも、単純に表現すると
同じテープヒスのはずが抜群に透明度が高いということでしょうか!!

「これは反則だー! 別次元です! 圧倒的な透明感と美しさ! 聴かなきゃ良かった!?」

同じデータを書き込んだCDの信号面での盤質の違いに驚いたのに続き、今度は
光学系ピックアップの命であるレーザー光線の振る舞いに関する着眼点となる。

そんな理屈が喉元まで込み上げてくるのは、この信じがたい音質格差に対して自然に
反抗心が芽生えてきたのだろうか。そうです! 信じたくないのです! この格差を!

ピアノソロだけで今までの情報量とかけ離れているのが直感される!
今までのピアノの一音一打が立ち上がるスピード感が別次元と言える。

そして、特筆すべきは楽音の質感が格段の透明感をもって空間に浸透していく素晴らしさ!

窓際に置いた観葉植物は朝日を浴びて緑が引き立ち、葉の一枚ずつを陽の光が照らし、
その葉脈の一筋ずつをくっきり透かすように見せるように光が差し込んでいる。
その緑に向けて霧吹きで水をさっとひと吹き。

一瞬にして葉の一枚ずつの緑の鮮やかさが蘇り、細やかな水滴が朝日をキラキラと
反射させ、かろうじて葉のふちに小さな輝く水滴を吊り下げて揺れているイメージ。

ピアノの一音ずつにも同様な潤いがもたらされたように余韻感は過去最高の長さで
リヴァーヴにも透明感が加わり、響きの消滅まで完璧なサポートで見せつける!

今までとは比較にならない情報量がピアノの音そのものに鮮度を与え、ただただ
美しくも鮮明にして力強いサウンドを表現するにのに、自分のボキャブラリーの
乏しさに嘆く私がいた。

もっと聴いていたい、そんなピアノがこれまでにあっただろうか!!
このまま50秒に達したら、一体どんな爆破をこのトリオは聴かせるのだろうか!?

「おー!!」

何ともあっけない胸の内で叫んだ一言! ピアノとベースが見事にシンクロする
コードの低音階が躍動し、ベースの音像がタイトに引き締まり重厚さを増している。

このベースの質感にもガラスCDの恩恵は確実に反映され、前述した二種のマイクで
収録したはずが、SCHOEPSのコンデンサーマイクが弦の細かい振動とボディーの
響きを拾っていたという貢献度の大きさが引き立てられる!!これは凄い!!

低音にもガラスCDの透明感が確実に効果を上げているということが間もなく分かる!
ドラムソロが始まった!

馬場高望が叩く24インチで更に両面ヘッドのバスドラムが以前よりもインパクトの
瞬間にエネルギーを集約させ、打撃のテンションを更に高めた強烈な波動として炸裂する!

いやいや、これは凄い! ピアノ同様に空中での響きの生存率が倍加して、低音の
残響がホールの空間に描く余韻の減衰カーブが直線となって滞空時間が伸びている!
これですよ、これ! 私が好きな空間の響きを伝えるバスドラムとは!!

前述したドラムセットの中でシンバルやハイハットに比べてタムとスネアに遠近感を
持たせているという録音テクニックは、このガラスCDによって最大限の効果を発揮した!

2チャンネル録音/再生のミックスダウンでは、遠ざけたい楽器の音のレベルを下げて、
その楽器のみにリヴァーヴを追加すると奥行き感が出て遠くから聞こえてくるように
遠近感を作ることができる。逆に、くっきりオンマイクのイメージで残響を乗せずに
フェーダーを上げれば、その楽器は接近してくるように演出できるものだ。

しかし、それはもっと多チャンネルで収録した場合のことで、スネアにShure Beta57と
いうダイナミック型マイクで繊細かつ迫力あるサウンドを狙い、更にハイハットにAKG 451と
いうコンデンサーマイクで細やかなディティールを拾っていくということで、わずか
5本のマイクでジャズらしいシンバルとタムのポリューム感のバランスを作り出している。

これらの打音もピアノ同様にインパクトの瞬間が極めて鮮明に捉えられているのが
ガラスCDでは更に克明に聴くことが出来るが、ドラムセットの各パートが発する
切れ味が鋭い一打ずつにも確かな余韻が感じられるのが物凄いことだ!

エンディングを前にピアノとドラムの絡みが始まると、ロータムのヘッドをパシッ!
とヒットした打音が私の眼前で炸裂すると、もう今までの三種類のCDでの音は
過去のものになってしまったのです!! これはいかん!!

仲野真世のピアノが、まるでオーケストラの指揮者が両手を下げて静止するのと
同じように、コードが違う和音を五回…次第にゆっくりと演奏し終わると、
その響きの最後の瞬間まで数秒間の長きにわたる余韻が続く!!

この最後の余韻を是非味わって欲しい!!

果たして皆様のシステムでこの四種類の、いや! せめてガラスCD以外の三種類の
ディスクでも良いので、どんな空気感と臨場感が再現できるのかに挑戦して頂きたい!!

今後、ハルズサークル特典として仲野真世のピアノトリオによる録音作品の全てを
会員特典価格にて販売していく新企画を実施致します!!この機会に是非ご入会下さい!!

★上記の比較試聴を今回のマラソン試聴会にて実演致しますので是非ご来場下さい!!

川又利明
担当:川又利明
TEL 03-3253-5555 FAX 03-3253-5556
kawamata@dynamicaudio.jp

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