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H.A.L.担当 川又利明
    
2016年9月10日 No.1324
 H.A.L.'s One point impression!! - B&W 800D3!!

2016年5月7日 No.1297「遂に公開されたB&W 800D3の全容をご覧下さい!!」
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/1297.html

上記の速報から三か月経ち、8月某日に遂に待ちかねた800D3を聴いてきました!!

■先ずは本日解禁の公式プレスリリースからご覧下さい。
http://www.dynamicaudio.jp/file/20160902-800D3.pdf

■800D3 dimension情報にて詳細寸法をご覧下さい。
http://www.dynamicaudio.jp/file/20160902-800_D3_dimension.pdf

さて、ここで昨年発売された同社の802D3と大きさなど比較してみましょう。

802D3 : 高さ1,212mm 幅390mm 奥行き583mm 重量94.5Kg(PB/1Pair¥3,600,000.)

800D3 : 高さ1,217mm 幅413mm 奥行き611mm 重量96.0Kg(PB/1Pair¥4,500,000.)

何と、高さで5ミリ、幅で23ミリ、奥行きで28ミリ、重量では1.5キロしか変わりません。
価格差の割に何とも物量投入したという実感はないものです。

実際に目の前で並べて見てみると、本当に見違えるほどそっくり。この価格差と
いうかトップモデルの存在価値はいったいどこにあるのか? ウーファー口径の
違いくらいしか分からないというのが今までの実感だったかと思います。しかし…。
http://www.dynamicaudio.jp/file/20160902-IMG_2428.JPG

           -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

トゥイーターとミッドレンジのドライバーと、タービンヘッドは共通なのですが、
説明が簡単で分かりやすい項目から解説していきましょう。先ずは台座!
こちらは↓802D3の台座です。正確な実測重量は台座のみ16.7kgでスパイクや
キャスターを取り付けた状態で18.6kgです。
http://www.dynamicaudio.jp/file/20160902-IMG_2422.JPG
http://www.dynamicaudio.jp/file/20160902-IMG_2425.JPG

800D3の台座は無垢のアルミニウム・ダイキャスト製で台座Assyは実測10.75kgです。
何と逆に軽量化されていますが、T.M.D.(tuned-mass damper)のコーティングが
施されていて制振性が向上し、叩くとコン!と鳴きがありません。

次に802D3の20センチウーファーのリングカバーを外したところの写真です。
http://www.dynamicaudio.jp/file/20160902-IMG_2434.JPG

新開発のエアロフォイルコーンの素材とは簡単に言うとシンタクチック・フォーム
(syntactic foam)という微小(50umくらい)な樹脂の中空の球体を、樹脂で固めて
成形するもので、潜水艦や深海探査船などの内壁の浮力層等に使われます。
任意の形状に成形可能で、軽く圧力に大変強い特長があります。

また、従来モデルで使用していた発泡樹脂シートのロハセルに比べて、固有共振の
Qが低いことも特長です。B&Wは強度の更なる向上と言った説明をしていますが、
それよりもコーンの固有音が少ないことの方が効果が大きいのではないかと思っています。

実際に、従来のロハセルコーンとエアロフォイルコーンそれぞれをこぶしでコツコツと
叩くと、その違いがよく解ると思います。でも、展示品ではやらないで下さい(笑)

さて、この802D3のウーファーですが、写真で外見だけ見ると表面のスキンは同じ
なので分かりませんが、実はセンターキャップは薄いカーボン系素材で指で押すと
ペコリとへこんでしまいます。

D3シリーズが登場した時にエアロフォイルコーンの素晴らしさを声高に宣伝して
いたのですが、B&Wが考えるフラッグシップモデルでは見た目では分からない
ここを改善したのです。↓これが800D3のウーファーユニットです。
http://www.dynamicaudio.jp/file/20160902-IMG_2417.JPG

802D3のウーファーのセンターキャップは直径58mmで、ボイスコイルの直径は
38mmということで、ウーファーコーンとセンターキャップの両方に接着されていました。

ところが、今度の800D3のウーファーでは下記画像のように直径90mmのセンター
キャップなのですが、厚みがあるため口径75mmのボイスコイルとほぼ同口径であり
エアロフォイルコーンと一か所で接合されているのです。なんと800D3のウーファーは
センターキャップまでもがエアロフォイルコーンでと同じ材質で出来ているのです!!
http://www.dynamicaudio.jp/file/20160902-bassdrive.jpg

800D3のウーファーは新設計によるもので、エアロフォイルコーンのメリットを
追求し、センターキャップも同質として完成度を高めているのです。

次に、この新開発ウーファーの駆動系ですが、円盤形ネオジム・マグネットが
前後に二個、ボイスコイルを中間にして配置されています。横から見ると二個の
マグネットの磁束は同一にならなくてはなりませんが、前方の振動板近くには
ボイスコイルを挟むギャップがあるので磁束展開がギャップのない後部マグネット
とはどうしても異なることになってしまいます。

800D2のラインでは、前部マグネットのヨークのギャップに面する幅を広くする
ことで調整していたのですが、800D3ではポールピース・ハウジングの後端を絞り
込みテーパーをかけることで磁束形態が前後で等しくなるように改善したという。

解説用の画像がないので言葉だけでは分かりにくいと思いますが、下記の画像に
おいて手前側のウーファーが800D3であり、後部が細くなっていることがお分かり
頂ければと思います。
http://www.dynamicaudio.jp/file/20160909-IMG_1212.JPG

さて、次はクロスオーバーネットワークにおいても従来と違う設計ポイントがありました。
先ず、この写真で右側が802D3、左側が800D3のクロスオーバーネットワークです。
http://www.dynamicaudio.jp/file/20160902-IMG_2413.JPG

配置が違っていますが、使用されている回路構成は同一です。ここが違うという所を
拡大したのが次の写真です。ドイツのムンドルフ社製の特注キャパシターが採用
されて堂々たる存在感を発揮しています。
http://www.dynamicaudio.jp/file/20160902-IMG_2421.JPG

このキャパシター(コンデンサー)はクロスオーバーネットワークの中でスピーカー
ユニットに対して直列で使用すればローカット・フィルターに、並列で接続すると
ハイカット・フィルターとして機能するわけですが、この写真を撮っている最中に
質問しました。

「ウーファーを強化した800D3のクロスオーバーネットワークに、こんな豪華な
 キャパシター使うのはおかしいのでは? このキャパシターはどこに入っているのですか?」

すると、澤田さんの回答は明確であり、私にとっては意外だったのです!

「これはミッドレンジ用キャパシターなんですよ!」と簡単におっしゃる。

今までの説明では800D3が下位モデルと最も異なるのがウーファー口径だとしながら、
実はミッドレンジ用ローカット・フィルターに対してこんな強化策を実施していたとは!

ちなみに、B&Wの3wayスピーカーのクロスオーバー周波数は350Hzと4KHzであり、
スロープ特性はウーファーのハイカットは-18dB/oct、ミッドレンジはローカット
ハイカットともに-12dB/oct、トゥイーターは-18dB/octです。

ミッドレンジのローカットフィルターのスロープ特性が穏やかという事は、175Hz
でも-12dBで約1/4の音圧が出力されているということで、その周波数はウーファーと
同時出力された音を聴いていることなります。

3ウエイスピーカーでの低音、あるいは中・低域というのはウーファーとミッド
レンジの共同作業にて再生されるものなので、低音のボリューム感だけを上げると
いう単純なことではなく、スピーカーシステムとして必要な高品位化のノウハウが
ここにあるという事なのです。

そこで、D&M シニアサウンドマネージャー澤田龍一さんが実測したデータを入手したので、
皆様に本邦初公開としてご紹介しましょう。

■B&W 802D3の諸特性
http://www.dynamicaudio.jp/file/20160903-802D3.pdf

■B&W 800D3の諸特性
http://www.dynamicaudio.jp/file/20160903-800D3.pdf

800D3と802D3のD&M試聴室での実測データーであり、無響室測定ではありません。
また、よくメーカー発表データーにあるような平均化処理を行なっていないので、
鋭いピークディップがそのまま記録されています。

マイク距離は、0.5mで音圧レベルは通常の1mに比べて6dBアップ、マイク位置は
mid-rangeとtweeterの中間くらいです。測定項目は 出力音圧特性、インピー
ダンス特性、二次高調波歪率特性、三次高調波歪率特性、となっています。

グラフ右下の囲みを説明するとSPL:出力音圧特性、IMP:インピーダンス特性
2nd:二次高調波歪率特性  3nd:三次高調波歪率特性という色分けです。

私から簡単に観察点というかヒントを解説しましよう。
SPL:出力音圧特性では中・高域特性は当然のごとくほぼ同一です。
無響室測定ではないので20Hz付近のレスポンスは多少の誤差を含みます。

しいて言えば35Hz付近のポートチューニングの効果が800D3の方が1dBくらい高い。
インピーダンス特性もそのあたりが一番高くなりますが、ほぼ同形状です。

そして、最も注目して頂きたいのが赤いラインの二次高調波歪率特性です。
200Hz付近でも800D3の方が802D3に対して10dBも低く、更に100Hz、50Hzと低くなる
につれて何と20dBも低歪という相違点が実測されています。澤田さんの見方では
ならして10dBくらいの差だという事でした。

二次高調波歪が下がっているのは主に磁束の対称性と大口径化によるストロークの
違いによるもので、三次高調波歪が下がっているのは主にセンターキャップの違いです。

ウーファーとミッドレンジのクロスオーバー周波数は350Hzのなので、両ドライバーが
同時に再生する低域においてのオーバーオール特性として、この低歪率特性の大きな
改善による品位の向上が800D3における最重要ポイントであると考えられるのです!!

■以上の概要を分かりやすくまとめた公式プレゼンテーション用ファイル
http://www.dynamicaudio.jp/file/20160902-800D3_Presentation.pdf

           -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

この日はあらかじめD&M担当者にお願いして802D3と800D3の比較が出来るように
セッティングして頂いた。上記の詳細が分かる前の事前情報としてはウーファーの
口径が大きくなったということで、私が持参した課題曲は低域のチェックに使用する
選曲とし、必然的に私の注目したところは以前に当フロアーで鳴らしていた802D3に
対して重厚な低域が付加されたことに期待するものでした。

それがある意味では推測通り。そして、ある意味では想像以上だったのです!!
先ずは小手調べにHIRO Acousticが登場した当時から使用していたこの曲。

UNCOMPRESSED WORLD VOL.4 - 18.Kirk Montreux / ETERNAL DESERT(LA CALIMA EDIT)
http://accusticarts.de/audiophile/index_en.html

あるパワーアンプでHIRO Acousticを鳴らした時に、このアンプのメーターで瞬間最大
1,317Wという音量で鳴らしてきた、私にとっては普通のボリュームで最初に802D3を
聴いて800D3に切り替えて頂くと…。

「おっ! ディープですね〜。でも、最低域の重厚さと同時に低音の分解能が!」

ピアノの弦をグィーンとひっかく冒頭の一音に続き、叩き付けるような重厚な
低音が湧き起こり、ピアノとギターが左右の空間で踊り出す興味深い演奏。

その打楽器による重々しく厚みのある低音が更にぐっと音階を下げて沈み込む。
ふと気が付くと、より濃密に濃厚に空間に染み渡る低音の最も重たい音が浮遊する。

そう、ダーン!と弾かれたように飛び出した重低音は実は一色ではなく、多様な
音色の色彩感があることが直感されたのです!!

今までは雄大な低音の広がりとダイナミックでインパクトのある立ち上がりで、
投げ付けられた低音を群像として捉えてきましたが、いやいや…、その中に
床に向かって沈み込むような低音と、床にワンバウンドしてから上空に向けて
飛散していく低域の余韻成分がこれ程含まれていたのかと新たな発見です!!

特にピアノの左手が切り刻むような連打を展開すると、パーカッションの鋭い
瞬発的な楽音に以前にはなかった分離感と分解能が備わり、私が求める音量でも
音像の破綻がなく、爽快に響き渡る切れ味と長引く余韻感の両立に絶句です!!

センターキャップというのはウーファーのトランジェント特性に楽音の質感として、
ここまで大きな変化量をもたらすものなのかと、ウーファー口径の違いを忘れる
程の高速化された描写力に舌を巻いてしまいました。

それは前述のようにミッドレンジとの共同作業によって精製された低域の質感であり、
ウーファーのセンターキャップが第二のミッドレンジ的な仕事をし始めたという
スピーカーユニットに対する新たな研究項目を他メーカーにもたらすものと思いました。

■FIFTY SHADES OF GREY ORIGINAL MOTION PICTURE SOUNDTRACK
  3.THE WEEKEND / EARNED IT(TRADUCIDA EN ESPANOL) 
http://www.universal-music.co.jp/p/UICU-1262

この曲でも同様に、スタジオ録音ながら巧妙なリヴァーヴによる圧倒的な音場感と
スネアーの打音と同期した重厚な低音弦楽器の濃厚さと空間に散りばめられた
多数のパーカッションがダイナミックに展開します。

今まで多数のスピーカーやコンポーネントで聴いてきた、この曲の新たな一面が
800D3によってもたらされたようです。上記に述べた低域の分解能の向上がここでも
私の耳と視覚を引き付けます。

先ず、この曲での低域の量感そのものが一回り802D3よりもスケールアップされて
いるという事実。低音弦楽器のエネルギー感が左右スピーカーの中央に見事に
凝縮する密度感の高まりが素晴らしく、802D3のウーファーに100g程度のマス
ウエイトを貼り付けて鳴らしても、こうはならないだろうという重量感の増加!

そして、スケール感がアップしているという私の表現は、前述の重量感を高めた
低域でありながら前曲同様に低域の余韻成分の増量がはなはだしい変化なのです!!

その低域の余韻が広がる空間が広大であり、極小レベルの響きが構成する音場感が
一回り802D3を上回って展開するのですから、もうギブアップです!!

特に何度も繰り返す低音のアタックが左右ウーファーの位置から発祥しているのは
分かるのですが、低域の重厚なエネルギー感の空間における保存性が素晴らしく、
放たれた低音が試聴室の床上1メートルくらいの高さに滞空しながら拡散していく
描写力はウーファー口径の違いだけではないと実感させてくれるものです!!

重たさ濃密さを最初に印象付ける低域の中には、個体感のある音源の立ち上がりを
高速反応で提示する部分と、その後に続くリブァーヴによる低音の残響が構成する
空間の壮大さに微小信号まで拾い上げる800D3の新設計ウーファーの底力を実感しました!!

これまでは低域にチェックポイントのあるスタジオ録音のダイナミックな再生音で、
比較してきましたが、今度はホール録音とスタジオ録音の中間的な音場感を形成する
迫力ある低音がぎっしりと詰まっているこの録音です。

Martin Grubinger - Drums 'n' Chant  
http://www.deutschegrammophon.com/html/special/grubinger-drumsnchant/
http://www.youtube.com/watch?v=v9kuxJYLsuA

関係リンク
http://www.martingrubinger.com/
http://www.universal-music.co.jp/martin-grubinger

ミュンスターシュヴァルツァハ大修道院の聖歌隊が歌ったグレゴリオ聖歌を
1981年にドイツ・グラモフォンが録音し、アルヒーフ・レーベルで発売された。

その音源にMartin Grubingerが率いるパーカッションを中心としたアーチストたちの
ホールでの演奏を多重録音して重ね、対極的な音楽を見事に融合したアルバム。

1 イントロイトゥス:「見よ、支配者たる主が」

このアルバムの主旨と性格を最も象徴するのが冒頭のこのトラック。
大口径のドラムの重厚な低域が最初に叩き出されますが、800D3の強靭なウーファー
による低域再生能力の素晴らしさがD&M試聴室の空気を揺さぶります!!

何度も繰り返しますが、800D3の低域は深々とした重々しい漆黒の黒という一色を
表す低音だけでなく、その中に含まれる多様な要素を克明に再現することで、
打撃の瞬間と数舜後に空間に拡散していく成分を見事にふるいにかけて再生する。

その後に続くティンパニーのテンションの高まり、スネアドラムの切れ味のいい連打、
Martin Grubingerのビブラホンの独特の旋律が始まったと同時に聖歌隊の単旋律の
歌声が荘厳に響き渡ります。

この時の音場感の素晴らしさは当然B&Wならではの中高域の素晴らしさであり、
何と深みのある声楽をこんなにも大きな空間表現で聴かせるとは驚きです!!

アナログマスターなのか、聖歌隊の歌声があるパートでは録音のS/N比が低下して
うっすらとテープヒスが聴こえるのですが、こんなにも遠近感と響きの奥行き感を
ともなって聴く男声合唱の素晴らしさに息を飲む思いです。

Martin Grubingerはグレゴリオ聖歌のラテン語のテキストを研究し、単旋律で
あるがゆえに音楽的装飾とハーモニーの手掛かりが一切ない聖歌に対して、
パーカッションの演奏をどのように並列させるのかに苦心したとライナーノーツに
あるが、神秘的な聖歌の流れに沿って多種多様な打楽器が奏でる様は素晴らしい
調和を聴かせる。800D3が得意とするのは、この響きの調和をもたらす空間再現なのです!!

5分間の聖歌に合わせるための録音は16時間もかかった演奏の中から抽出して
オーバーダビングしたという本作品は、峻烈な打撃音と大聖堂に響く聖歌隊の
見事なコラボレーションとして見事に800D3の特徴を引き出している。

2 イントロイトゥス:「主は私に言われた」

この曲では何と意外なエレキベースがグレゴリオ聖歌とマッチングされている。
単旋律でハーモニーをもたない聖歌なので伴奏とは言い難いが、ベーシストの
感性が絶妙にグレゴリオ聖歌の土台を支えるように展開し、恐らくはジャンべ
の一種ではないかと思われる打楽器の二拍の合間を縫って「カツーン!」という
鋭い打音が長い余韻を引いて展開する。

オーケストラの楽員くらいの数と種類を集めたらしいパーカッションの多様さは
私の知識の及ばない様々な楽音を聴かせてくれるが、前曲の膨大に広がる低音の
打楽器の音とは全く対照的にエレキベースの音は800D3の中央にしっかりと根付い
たように定位している。

打楽器だけでなく、エレキベースのように楽音の固体化による音像の明晰さを示し、
更に余韻を空間に広げるべき低音と音像の輪郭をしっかりと描く低音とをきちんと
鳴らし分けてくれます!!いいです!!

3 コンムニオ:「聖なる輝きの中で」

このアルバムで唯一のヴォーカルが入っているのがこの曲。しかも、トルコ人の
歌手と尺八のような音色のトルコの民族楽器の縦笛であるネイという楽器も含まれている。
イスラム神秘主義とグレゴリオ聖歌という宗教的ミスマッチを音楽的ベストマッチと
する試みをMartin Grubingerはこの曲に仕込んだ!!

ドイツの田舎、ヴュルツブルクの東20キロ程のところにミュンスターシュヴァルツァハ
大修道院は位置するが、トルコ人の女性を妻にしたMartin Grubingerは西欧の聖歌と
東欧の文化を融合させる音楽を作った。そんな歴史的音楽性と文化的な背景をB&Wは
800D3という完成形で言葉に出来ない説得力で私に切々と訴えてくるのだから参った!

正確には分かりませんがトルコ人歌手はハッキ・オピナーと発音するのだろうか?
テノールの音域と思われるヴォーカルがセンターにびしっと定位する。
しばらくすると寄り添うように縦笛ネイがわずか左寄りに登場します。

しかし、ここで聴く800D3の中・高域の点音源による再生音の定位感が本当に
素晴らしいことに驚かされます。いいですね〜低域だけではないのです!!

この曲はパーカッションの伴奏はタブラと思われる打楽器と、最後に小さな
金物での鳴り物が入るだけ。後は縦笛ネイだけというシンプルなもの。

編成が小さい録音だと楽音の数も少なく各個の定位感の素晴らしさが見事に
認識されるのです。タービンヘッドに搭載されたコンティニュアム・コーンと
ダイヤモンド・トゥイーターによる、あたかもフルレンジドライバーのような
ピンポイントな音源配置が広帯域であり素晴らしい解像度と音場感を両立しています!!

私は音場感の再現性にこだわり、空中に浮かぶヴォーカルが大好きなのですが、
800D3が聴かせる人間の声には何も文句のつけようがありません。

しかし、トルコ人歌手がセンター定位でイスラム教のモスクで歌われるような
伸びやかで見事な声楽を聴いていると、どこでグレゴリオ聖歌と関連があるの
だろうかと不思議に思っていると…!?

いやはや、驚きました!!ハッキ・オピナーの声は左右スピーカーの点音源を
結ぶ距離感で歌っているのですが、そのずっと後方に聖歌隊が登場します。

遠近法の消失点が800D3のずっと後ろに拡大され、奥深い位置からグレゴリオ聖歌が
響き渡りますが、こんな音像が立つ位置関係で耳で感じる被写界深度を表現しようとは!!

4 キリエ 第14番

通奏低音の静かな響きの中で教会の鐘のような音が遠くに小さく響くイントロ。
そこに突然右チャンネルからカウベルの鮮明な打音、続いてコンガ、ボンゴ、
シャンベなどなどアフリカのパーカッションが次々に登場します。

ハイテンポの高速演奏でアフリカのリズム感に乗って躍動するパーカッション。
しかし、大小様々な打楽器の音像と定位感の素晴らしさに目を見はります!!

その音を表す光点の向こう側にすーと引き込まれるような奥深さで聖歌隊の歌声
が浮き上がって来るのです。弾けるような眼前の激しいパーカッションと対照的な
ミュンスターシュヴァルツァハ大修道院のカテドラルの巨大な空間イメージを
見事に両立する800D3で皆様はどんな曲を聴きたいだろうか!?

6 アニュス・デイ 第14番

イントロでカリンバの透き通った楽音が印象的な一曲。ベルリン・フィルの主席
オーボエ奏者であるアルブレヒト・マイヤーの演奏が素晴らしい余韻を残しながら
瞬発力あるパーカッションと相まって聖歌隊の歌声と広大な空間に同居するという
魅力的な一曲。これは推薦致します!!

10 オッフェルトリウム:「神は喜びの叫びのなかを」

フェンダーローズのソロで始まり、グレゴリオ聖歌が背後に浮かびあがる。
フリューゲルホーンのたなびくような音色がセンターにくっきりと浮かび、
ドラムセットのキックが乾いた低音を叩き出す。

ハイハットの細かい刻みにマイク・マイニエリを彷彿とさせるビブラホンが
登場し、鮮明なリズムセクションはポップでモダンな演奏を展開する。

グレゴリオ聖歌と同じ旋律をトランペットが奏でるフレーズでは思わず鳥肌が
立つような前例のない感動が背筋を這いあがってきました!!

低域を克明に再現する800D3で Drums 'n' Chant の推薦したい曲の印象を述べましたが、
前曲までのスタジオ録音と違い、ホールエコーを含んだ低域の再現性が更に
新設計ウーファーの素晴らしさを物語ってくれたのです!!

確かに800D3は下位モデルとの違いはウーファー口径だけだと言いつつも、上記の
ようにミッドレンジのクロスオーバーネットワークに施したアップグレードが
多様な楽音による質感と音場感の進化にこれ程大きく貢献していたとは驚きです!!

限られた時間でのD&M試聴室での体験は私に夢を与えてくれました。

初代B&W Nautilusによる未体験の音場感の素晴らしさ、その後の800シリーズの
各世代ごとの進化による低域のダイナミックであり緻密な再現性、16年もの開発
期間をかけながらじっくり熟成させた新世代設計者たちの情熱がB&Wに新たな冠を
もたらしたのです。このスピーカーはただものではありません!!

冒頭で述べた802D3とのサイズ比較、これは何を意味するのでしょうか?
以前の800シリーズでは120キロを超える物量がトップモデルの証でした。

800D3 : 高さ1,217mm 幅413mm 奥行き611mm 重量96.0Kg

このサイズと重量はユーザーにとって実はありがたい仕様なのではないでしょうか?

さあ、この試聴体験で私のB&Wに対する評価は間違いなくトップギアに入りました。
あとは当試聴室で思う存分鳴らし込み、皆様の物欲もトップギアにシフトチェンジして
頂けるよう試聴による感動を提供していきたいと思います!!どうぞご期待下さい!!

川又利明
担当:川又利明
TEL 03-3253-5555 FAX 03-3253-5556
kawamata@dynamicaudio.co.jp

お店の場所はココです。お気軽に遊びに来てください!


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