発行元 株式会社ダイナミックオーディオ
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H.A.L.担当 川又利明


No.131  「4wayのノーチラスを何と5wayで駆動する?? 効果抜群の戦略兵器とは?!」


さあ、まず思い出してください。私が配信した『H.A.L.'s Circle Review』の No.0027にmurata ES103のハルズモニター・エントリーの記事がありましたね。 そもそも、この新製品をモニターの対象にして販売していこうと考えた理由は 私のフロアーでは実演が出来ないために、皆様のご自宅で試聴していただき ご判断と評価をして頂こうと思ったからなのです。何事にも実体験をもとに オーディオ製品を販売していきたいとする私の信条では試聴なくして販売は したくない、しかし店頭では実演できないということでした。なぜ実演が出来 ないか、それは私のフロアーで使用しているスピーカーのデザインでは簡単に ES103を乗せることが出来ないからです。皆様お分かりですよね。

従って、上記のエントリーした際の記事にも以下のようなくだりがありました。 「マイクホルダーのように、ES103をオリジナルノーチラスやノーチラス800シ リーズにも使用できる特製ホルダーの試作を快諾してくれた…。」この特製 ホルダーというかアダプターが出来ました、と連絡を下さったのが《HAL's Monitor Report》No.0037 仙台在住palcat 様のレポートに登場してくる
http://www.dynamicaudio.com/hal/hf_moni0037.html
株式会社村田製作所の技術開発本部・第3開発グループ商品開発室の中村室長 その人であった。10/25に到着する試作品のセッティングに立ち合わせて欲しいという熱心な申し入れがあり、当日はわざわざ京都からお越しになったのである。

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実は、10/12には村田製作所においてES103用のスタンドを試作したとの画像添付のメールを頂戴していたのだが、このデザインを拝見して私は以下のような意見をお返ししていた。まず、このような前置きから始まっている。「私のように特定の方面にこだわった人間でなければ、むしろ今回のような形状のほうが一般的なのでしょうが…。」そして、「先ず、このスタンドは床にはT字型の台座部分があり、このT字の縦棒にあたるところから斜めに支持部分が上に伸びていますね。
使用しているスピーカーの真後ろからマイクのブームスタンドのように途中で 自由に旋回する棒があり、その先端にマイクの変わりにES103を取り付けるのであれば、スピーカーの真後ろから上を回りこむようにしてメインスピーカーのトゥイーター付近にセットできるものと思います。」更に「しかし、今回の写真ではブームスタンドのように自由旋回できる横棒がないのでスピーカーの背面に置くということは出来そうもないですね。そうするとスピーカーの横にこのスタンドを置くということでしょうか?? そうすると、ES103に特定の高さを得ようとするとメインスピーカーより横方向に距離を開けなければなりませんよね。
そうすると一般家庭では使用しずらいですね。また、ES103本体を乗せる板は不必要な面積があると思います。ES103が発生するような超高域は、それでなくても波長が短く隣接する平面では一次反射が起きやすいものです。ES103の底部と極力同面積で最小にするべきだと思います。」まあ、お目にかかったこともない業界の大先輩に向かって何と生意気な発言をしてしまったことか。 実際に中村室長にお目にかかって、そのお人柄と誠意と仕事に対する情熱を知ることになった今日では、かえって私は恥ずかしさを覚えるものです。 「どうも、その節はご無礼申し上げました。どうぞお許しください。」

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さて、そんなわけで出来上がった特殊スタンドにセッティングしたものがこれ。
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/pho/001026/es103_set.jpg
ノーチラスの右側に見えているのは市販品のブーム・マイクスタンドの本体で あり、その先端にES103が取り付けられているのである。
さあ、ここで肝心なセッティングのノウハウであるが、この画像はリスニング ポジションからノーチラスを見たものである。そうです、ノーチラスのトゥイ ーターとインライン上にES103が位置を占めているのがお分かりでしょうか。 正面から見るとこのような状態だが、もうひとつ重要なポイントであるのが
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/pho/001026/es103_r.jpg
この側面のアングルである。このときのノーチラスのトゥイーターの振動板と ES103の前部との距離は42センチであった。実は、私は一番最初にはノーチラスのトゥイーターの真上にごく接近させる形で、ノーチラスの向きと同じ方向を向かせてES103をセッティングしたのである。つまり、ES103にもクロスセッティングを行なったと言うわけである。ES103の主軸が交点を結ぶ角度は90度であり、極端な内振りになる。さあ、第一声を聴くぞ、と意気込んで試聴実験を始めたのだが、ほとんど、いやまったくと言っていいほどES103の効果は感じられないのである。
http://www.iijnet.or.jp/murata/speaker/faq1.html
15キロ以上から100キロHzまでの超高域、その指向性からでは、この角度のセッティングはやはり何のご利益も得られそうもないようだと結論した。
http://www.iijnet.or.jp/murata/speaker/spec.html
ここにES103の周波数特性と指向特性があるので、ご覧になるとおわかりかと思われるが、私が実験した状態では約60度くらいの角度で聴いたことになるのだが減衰量がはなはだしく大きくなってくることがわかる。
http://www.iijnet.or.jp/murata/speaker/faq2.html

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ジェット戦闘機のエア・インテイクを連想させるES103の前面デザインであるが、その中を覗くとノーチラスのトゥイーターの半分程度の大きさの振動板が見える。いやいや、普通のスピーカーと原理が違うのだから振動板と言ってよいものだろうか?? ダイナミック型として磁石とボイスコイルとダイヤフラム(振動板)を使用しているスピーカーとは原理が違う。何々、圧電型??それ何??という方は
http://www.iijnet.or.jp/murata/speaker/faq3.html をご覧下さい。
ダイヤフラム(振動板)にはどんな周波数帯域でも、あるいはどんなパワーでもその形を変形させてはいけないという大きな前提がある。だからどのメーカー も軽量で剛性が高く音速の早いダイヤフラム(振動板)の開発に余念がない。 しかし、このES103の「呼吸モード」って一体何のことなんだ。私も最初は理解していなかった。ところが話しを聞いてみると、これが中々画期的なのである。
http://www.iijnet.or.jp/murata/speaker/faq4.html
簡単に言えばダイヤフラム(振動板)??ではなくドーム型の呼吸球は自身の形状を大きくしたり小さくしたりして音波を発生させると言うものなのである。 この図を見るとわかりやすいだろうが、呼吸球の中心点を音源とすれば、ノーチラスと同じように球面波の拡散に近い放射パターンの実現ということになろうか。

それでは、何でこの方式がいいのか??
接続とセッティングが簡単!! 
http://www.iijnet.or.jp/murata/speaker/faq6.html
http://www.iijnet.or.jp/murata/speaker/faq8.html
http://www.iijnet.or.jp/murata/speaker/faq7.html
http://www.iijnet.or.jp/murata/speaker/manual.html
そうなんです。何と言っても500グラムという超軽量な設計が前述のような理想的なセッティングを可能としたのですから。数年前に脚光を浴びた某社のリボントゥイーターは10キロもありましたね。それに比べたら何とハンドリングしやすいことか。
このような取り回し簡単なことは機能上のメリットとして列挙できるのだが、私はそれだけが取り柄の品物であったならば皆様にお知らせしたいとは思わなかっただろう。そうです。音質的な評価で最も強調したいことはトランジェント・レスポンスの素晴らしさなんです。これをすべての帯域で実現させるためにノーチラスはサイレンサー(消音管)としてトランスミッション・ロッドという長いツノを用いたわけです。各々の振動板の背面に放出される背圧(バックプレッシャー)から逃れ、過渡特性(トランジェント・レスポンス)を従来のスピーカーではあり得ない領域まで向上させたのですから。とすれば、当然ノーチラスにあわせるスーパートゥイーターには十分すぎるほどの過渡特性を求めなくては、というのが私の考えであった。そして、このES103は聴感上でも測定上でも、物凄いハイスピードを実現しているのである。さあ、それほどのハイスピードが実際にはどうなのか??
http://www.iijnet.or.jp/murata/speaker/faq5.html

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実は、私は前回のゴールドムンドによるノーチラスの大変身と、このES103とのペアリングを速報としてノーチラスオーナーの皆さんにメールでお知らせした。自身の部屋で日々ノーチラスを聴いておられるオーナーの皆さんは私からの情報にはすこぶるのレスポンスで反応され、28・29日の週末はさながら試聴会の様相でこのフロアーは満席状態となってしまった。

「さあ、皆さん最初は聴き慣れたヨーヨー・マから行きましょう。」と駆けつけた皆さんにのっけからES103を使用した状態で聴いて頂く。ここに到着してすぐに演奏するノーチラスには皆様ご満悦の表情で、何の不満もなく心地よいひと時が流れていく。私流のセールステクニックでは、AとBの比較試聴をする際には、最初に劣勢の方を演奏し、後から優勢の方を演奏するのが定石である。しかし、このES103の場合にはまったく逆のほうが効果が大きいのである。おもむろにES103の接続を外して「さあ、皆さん、これが先週ゴールドムンドで感激した音です」と私は前置きをしてから再度曲をスタートさせる。以下はオーナーの皆さんの一声!

「全然違うじゃない、これぇ!!」
「いいですねぇ、これ」
「これほど違うとは思ってなかった!!」
「これ安いですよね。ドミナスの半分だものね。」

私は思わず笑みがとまらず、してやったりという心境で再びES103をつなぎに行く。そうなんです。ヨーヨー・マの演奏している空間の余韻が更に濃密感を高めて、奥行き感がポーンと今新たなドアを開いたように一層の深まりを見せる。しかも、高域だけの変化ではなくチェロの音色にも変化が表れるではないか。そうなんです。みずみずしくなるんです。気持ちよーくなるんです。

さて、それでは激しい演奏ではどうだ??と、先週の試聴でMIMESIS 29.4EVOLUTIONの素晴らしさを思い知ることになった「GRPオールスター・ビッグバンド・プレイズ・ジャズスタンダード」(MVCR99)の6曲目、「ザ・サイドワインダー」をかけることにした。最初にES103をつなげた状態で聴き始める。内心「うん、いいぞ」と私は曲の出足のエコー感の広がりにほくそえみながら皆さんの表情を横目で見つめていた。「川又さん、これっていいですよ!!」と曲が終わる前に声が上がる。
「ではES103を外してみましょうか」と私は立ち上がった。さあ、どうなるか。 では…、と言って再度スタートすると…。「………!?」あれま、沈黙ですね。 「川又さん、もう戻れないですよ、これがないと…」とギブアップの一言。

そして、ノーチラスオーナーのお一人、吉祥寺のSeikoさんが大好きなウィントン・マルサリスのCDをかけてみようと言うことになった。もうそのころには勝手知ったる場所ということで、オーナーの皆さんがご自分でES103をとったり付けたりの比較実験をやり始めていた。「私、ない方がいいわ」とSeikoさんの一言に男性陣は顔を見合わせる。「ない方が何かフォーカスがはっきりしているみたい」と極めて明敏な反応を示すSeikoさん。おお、強敵あらわる、恐るべきレディである。 しかし、私もプロの端くれ、「ハイ、それは承知の上でセッティングしたんですよ。スタジオ録音よりも、むしろホール感を優先したセッティングにしたんです。」と私はES103のポジションを前述のトゥイーターから42センチからぐっと接近させて、トゥイーターのすぐ真後ろで3センチ程度の至近距離に移動させた。この辺の使いこなしでは抜群に使いやすいスタンドである。さあ、もう一度スタート。「ああぁ、ほんとだ。川又さん、この方がウィントンのピントがちゃんとあったみたいでいいわ!! それでいてトランペットの音色が滑らかになったみたい」そうでしょう、と私は予測された反応にほっとして一言。そうなんです、元々のトゥイーターに対して新たな音源が追加されたことを意識させてしまうようなスーパートゥイーターの使い方はだめなんです。メインスピーカーのトゥイーター以外の場所から盛大に高域がシヤンシャン響いてくるような使い方では意味がない。本来のトゥイーターをサポートする形で鳴らしてこそ、スーパートゥイーターの価値があるのです。ですから、追加することで高域の音像が大きくなったように膨張するとか、定位感が特定方向にずれるとかがあってはだめなのです。そんなことから、前方から見てインラインでのポジションが大切なのです。でも、それってノーチラスやN800シリーズ以外のスピーカーではちょっと工夫が必要になってくるものですね。そして、クラシック音楽とスタジオ録音の双方に適合するということで、この時からノーチラスの後方20センチ程度のポジションにES103が落ち着くことになったのである。

「本当のハイスピードというのは入出力波形における完全な相似形を意味する。 つまり、歪として理解できる最小単位の波形の粒子においても、その相似性を完璧なものにするという概念なのである。この追随性が高まれば高まるほど再生音は滑らかに潤いを帯びてくるものなのである。」私は前回の配信でこのように述べているのだが、ゴールドムンドが志向するハイスピードの概念に偶然のごとくマッチしてしまったのがこのES103であると言える。とにかく、ノーチラスの反応の素晴らしさにぴったりと追随し、MIMESIS 29.4EVOLUTIONが要求する正確な再現性に何の苦もなく応えてしまうES103をつなぐだけで本当に質感が滑らかに変化してしまうのである。これこそハイスピード・トゥイーターだ。

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