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H.A.L.担当 川又利明


No.100 「ついに光が差し込んだノーチラス用RLSケーブル」
2月18日、待望のRLS用の光源ボックスが到着した。付属電源ケーブルはプロテウスであり、早速ノーチラス用RLSケーブルに接続する。昨年のブリーフニュースNo.077でも述べているが、それまでドミナスを最高のものと認識していた私はRLSを聴いてそれまでの分析を根本から撤回し、私が知り得る最高のケーブルとしてRLSを位置付けることになった。それは専用の光源ボックスで光を入力しなくても従来のドミナスを上回るというケーブルのコンダクターだけでの評価でもあり、そして光を入力したときの圧倒的な情報量の拡大にただただ驚かされたという記憶にもなっている。昨年10月にノーチラスを使用することで判明した数々のエピソードであったが、今回はそのノーチラスの首根っことも言えるスピーカーケーブルにRLSが導入され、このNo.098でも述べているようにバーンインが完了したRLSの素晴らしさを目の当たりにしたのである。ここで使用環境が向上すればするほど無限大に音質が進化していくノーチラス自体に改めて大きな称賛を送るものであり、正直に言ってこれが最高のノーチラスの音だと当時は感じていたのである。ところが・・・。

翌19日午前、例のごとく一晩システムエンハンサーでバーンインとウォームアップを行い、最高のコンディションで光入力を与えたRLSによるスーパーノーチラスの試聴を開始した。まず恒例のヨーヨー・マのシンプリー・バロックをかけた。「おいおい、本当かよ」と、「もうこれまで」と昨日まで思っていた自分なりの最高の再生音という認識が、ほんの一瞬で崩壊してしまった。とにかく、この曲に関しては毎度毎度より素晴らしくなったというコメントを上塗りしてきただけに、もうそれ以上に評価をランクアップする言葉が自分でも空々しく思えてしまうのである。これには参った。とにかくRLSとオリジナルケーブルの違いによって感じられた情報量としてのエコー感と余韻、そして空間表現の拡大は絞りつくしたものと感じていたのに、まだまだ聴こえていなかった余韻のエッセンスがこんなにもあったのである。しかも、フォーカスイメージは更に向上して描写力を高めているので、三次元的な解像度の極みが何と言っても臨場感をたたえているではないか。そして、グラデーション豊かな余韻の消滅にともなって楽音が限りなく純粋に透明に響いてくる快感は筆舌に尽くしがたいものがある。本当に同じケーブルとは思えない音楽表現の差異に驚くばかりである。

この数日前に懇意にして頂いているソニー株式会社のエンジニアである佐藤和浩氏(随筆No.27に登場)から、ラスヴェガス土産として頂戴したCDが最近はテストCDとして必須ソフトになってきた。リファレンスレコーディングのクラシックオーケストラ・サンプラーの「Tutti!」(REFERENCE RECORDINGS RR-906CD)である。HDCD収録による同社の代表的な作品が16トラックに納められており、オーケストラはもちろんのこと声楽のコーラスからヴィヴァルディまでテスト用として重宝するダイジェスト版である。その11トラックに収録されているのがフランスの作曲家ジャック・イベールの交響的絵画(Escals)「寄港地」の第3曲バレンシアである。この冒頭の30秒間を何度も繰り返してテストに使用したのである。木管のテンポの早い合奏からオーケストラ全体で胸のすくようなフォルテが繰り返され、スペインのリズムを用いたカスタネットが遠くに響き渡る。まず、最初にリズム感あふれる木管楽器が空間にピッと連続して出現する部分では、その1本1本の楽音が各々にエコーを伴っている印象が鮮明に聴きとれる。オーケストラ全体でエネルギーを瞬間に放出したようなフォルテが終わったあとには、サーッと余韻が引き延ばされて消滅していく時間が以前にもまして長く感じられる。そして、小気味良いカスタネットがホール全体に浸透していくような残響をともなってスタッカートを繰り返す。「こんな音、こんな描写力、こんな臨場感は聴いたことがない。」と、われを忘れて聴きいってしまった。さて、それではライトボックスの光源をオフにして、昨日まで最大限に評価していた状態に戻して再び席につき同じ曲をスタートさせた。「ちょっと待てよ。さっきまでのエコーはどこへいってしまったんだ。」ノーチラスのオリジナルケーブルからRLSケーブルに変更して、こんなにもたくさんの情報が入っていたという驚きを述べていたわけだが、今この瞬間にはそんな表現をした自分が恥ずかしくなってしまうほどの変わりようなのである。

関東地方にも大雪の可能性と天気予報が告げた2月20日、幸いにも雪は降らずに期待されるお客様の来店を待つ。昨日はノーチラスを使用されている3組のお得意様が次々に来店され、光が灯されたRLS&ノーチラスの音質に尋常ではない興奮をされていた。この日も先週まで私と同様にRLSのケーブルだけによるノーチラスの変貌ぶりを聴いていたVIPが、光源ボックスが追加されたというニュースをきき駆け付けてこられたのである。世田谷にお住まいのS・M氏は既に自室のノーチラスに10本以上のドミナスを導入され、ここと同じようにノーチラスの成長を推進されている熱心なユーザーである。昨日まで私がテストに使用してきたソフトで、私が観察してきた演奏箇所を順を追ってヒアリングしていく。「これすごいね、ノーチラスにはまだまだ引き出していない能力があったんだね。このケーブルは入れなきゃいけないね。」と率直かつ大胆な発言をされた。ノーチラスユーザーのほとんどがパワーアンプをスピーカーの中央に集結させて使用しておられるが、S・M氏も同様なので最短の1.5メートルのRLSケーブルでいいでしょう。と価格を調べると定価は575万円である。これに光源ボックスとフォトカプラーを追加すると、なんともノーチラスそのものよりも高額となる。しかし、まったく同じスピーカーでありながら、この音質の変化を聴かされてしまうとノーチラスを鳴らしきる手段としては見逃すことが出来ないという。「それでいきましょうか。川又さん、注文しといてよ!」と、何ともあっけなく世界初で世界最高価格のケーブルのオーダーが入ってしまった。私の長年の経験でもケーブルの売り上げとしては前代未聞のものであるが、これらはひとえにノーチラスという無限の可能性を秘めたスピーカーと、これもまた無限の開発力を備えるPADがなし得た再生音の素晴らしさによって聴く人に大きな感動をもたらしたからに他ならないだろう。エンドレスとも言えるノーチラスの進化と熟成、常人では考えも及ばないジム・オッド氏の開発に対するバイタリティー、一体これからノーチラスの未来には何が起こるのだろうか。

昨日までの“最高”があっというまにトップの座を明け渡してしまう。そんな経験を数えきれないほど繰り返してきた私だが、それを私だけのものとしてしまうのではなく多くのユーザーと共有することが、このフロアーの存在価値であると考えている。H.A.L.ハイエンド・オーディオ・ラボラトリーとは、そんな意味から私が命名したものである。プロとしての観察力と分析力をもって数あるコンポーネントを評価し、何年もの間に膨大な知識として私の頭の中にファイルし記憶してきた。その目的は本音の部分で営業力の強化と言わざるを得ないだろうが、日本におけるオーディオ文化のレベルアップに貢献できればと考えている。

昨年はジム・オッド氏をゲストに迎えてフロントエンドからパワーアンプまでにRLSを投入し、今回はノーチラスの直前にRLSケーブルを投入した。さて、この両者が同時に実現し、ほぼすべてがRLSシステムの光でおおわれたノーチラスは果たしてどんな音を聴かせてくれるのだろうか。これは2000年の秋に実現を目指している。

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