VOL.116 Platanus Platanus2.0S 試聴レポート

本日は昨年発売されたPlatanusをご紹介させていただきます。 Platanus 2.0S MCカートリッジ ¥360,000(税別) 発電方式: ムービング・コイル型 出力電圧: 0.3mV (1kHz, 3.54cm/sec, zero to peak, 45°) 再生周波数: 10Hz 〜 50kHz 内部インピーダンス: 2.5Ω チャンネルセパレーション: 30dB以上(1kHz) チャンネルバランス: 0.5dB以内(1kHz) コンプライアンス: 7 x 10-6cm/dyne(100Hz) カンチレバー: A2017アルミニウム合金、テーパー形状 針先: ダイアモンド/ラインコンタクト (曲率半径 3μm x 30μm) マグネット: ネオジウム 筐体: A7075アルミニウム合金(ベース部) A6063アルミニウム合金(ボディー部) 針圧: 1.9g 〜 2.1g(標準2.0g) 自重: 16.0g 代理店 楫音舎(しゅういんしゃ)のホームページ http://www.shuinsha.com/contact.html ここ最近評価の高いPlatanus2.0Sですが、設計、及び制作を行っているのは助廣 哲也氏 となります。先日のアナログ試聴会にもご参加いただきましたが、まだ38歳とお若い方で す。とはいえキャリアはしっかりお持ちで、長きに渡りOEMで多くのカートリッジの製作 を行ってきております。ある意味業界の跡取りとも言える存在です。 先日のイベント内容は http://www.dynamicaudio.jp/5555/4/event20170430rep.html そのPlatanusの販売代理店になっているのが、楫音舎となります。楫音舎の代表の長尾 修武氏とは20年以上お付き合いをさせていただいておりますが、当時はある輸入代理店の 営業担当で、それから退社を期に別の代理店のお手伝いをしておりました。そこからご自 身の代理店を立ち上げ、アナログ関連を中心に現在展開しております。 以前より長尾氏はご自身がプロデュースしたカートリッジを世に出したいというのが夢と 語っておりましたが、今回助廣氏とタッグを組んで発売したのがこのPlatanus2.0Sとなり ます。 なかなかデモ品が空かずに私が最初に試聴したのは2017年に入ってからなのですが、雑誌 でも多くの賞賛の記事は拝見しておりましたので、早く聞きたくて仕方がなかったのを覚 えております。 このクラスのカートリッジになるとユニバーサルアームではなく、アームに直づけにする ケースも多いということもあり、Platanus社側では特にシェルは用意しておりません。 さて既にイベントも開催しており、何度も試聴を重ねておりますが、今回は改めて試聴 レポートをお届けするにあたり、 ヘッドシェルはBigins UCS-10 ¥75,000 リード線はBLACK CAT CABLE Black Cat XOX Phono Lead Matrix Ultra ¥55,000 http://www.audiorefer.com/black_cat/5.html この状態で ラックスマンのPD171A http://www.luxman.co.jp/product/pd-171a で試聴を行いました。   フォノイコライザーはH.A.L.3での人気も高いAurorasound VIDA http://www.aurorasound.jp/vida.html#vida   こちらのカートリッジはインピーダンスが2.5Ωですので、VIDA側をローインピーダンス に設定して試聴を行いました。    まずはキース・ジャレットのMY SONGを試聴しましたが、その透明感と質感の良さは他の カートリッジには出せない魅力を感じました。また驚いたのはその奥行感になります。ド ラムとベースとピアノ、そして色っぽいサックスの位置関係が非常にうまく再現されてお ります。また自然な色気が良い感じでステージを作ってくれます。全体的には若干軽いイ メージを持ってしまいますが、それ以上に個性が無いようでしっかり持ち合わせている気 持ちの良い響きの良さに引き込まれてしまいます。 ダイアナクラールの歌では、妖艶というよりもしっとりした印象を持ちました。 楽器の質感も非常に良く、全体的には高域よりに感じますが、長時間聴いても飽きの来な いサウンドに感じました。こってりとしたアナログサウンドではなく、上品なアナログサ ウンドになります。 カール・ベーム指揮の皇帝円舞曲では、やはり音のセパレーションの良さと純度の高い響 きを感じることが出来ました。音の輪郭としても高解像度になり過ぎず、ごく自然に感じ ました。曲によっては個性が少なく感じてしまうところもありますが、音楽が自然に入っ てくるといったところでは非常に私の中では高い評価となります。スケール感も申し分な いですが、迫力といった面では若干控えめに感じます。 アルゲリッチのピアノですが、情報量というよりも、音の強弱をしっかり表現し、過度な 響きをつけておらず自然です。音像的には前面に音を出してくるのではなく、奥で定位し、 ピアノが持つ魅力とともにアルゲリッチの世界まで感じ取ることが出来ました。 以前試聴した時には普通に特徴のないカートリッジに聞こえてしまいましたが、試聴して いくうちに当たり前に当たり前の音を出してくれることの素晴らしさに感動を覚えました。 それぞれのメーカーは個性として「らしさ」を感じてします。 OrtofonがOrtofonである所以はそこにありますし、他のカートリッジもそうだと思います。 作り手のアナログに対する熱い思いが音として表れております。 情報量、厚み、響きなど、立体感などそれぞれのカートリッジにはありますが、このPlat anusはバランスよく、音楽が持っている素の音を出してくれているように感じます。 そのことを楫音舎の長尾氏に話をしたところ、本当に喜んだご様子で、まったくその通り のコンセプトで作ったそうです。 その中でもやはり響きという個性があるのではないかと思います。 インパクトは弱いかもしれませんが、長時間聴いてても疲れないアナログサウンドです。 色々なカートリッジをお持ちのお客様に判断してもらったところ、これはこれでありだと いう高い評価を得ており、1個しか持てないならこの中庸性が良いかもしれないというお 話もいただいております。 飛びぬけてではないものの、この安心感こそがこのPLATANUSの魅力になるのではないかと 思います。 さてご使用にあたり、自重が16gとカートリッジの中では重い方となります。 通常はゼロバランスをとり、針圧をかけますが、それが出来ない場合でも針圧計を見なが らであれば使用できるケースもあります。 またラックスマンのPD-171等でしたら別売のヘビーウェイトをご使用いただければと思い ます。 基本的に常時展示をしておりますので、興味のあるお客様はお声かけください。                             2017年7月13日 H.A.L.3 島