VOL.113 CHORD Blu MkII 試聴レポート

本日はChord Electronics社(以下CHORD)より発売されたBlu MkIIのレポートをお届けい
たします。

CHORD Blu MkII CDトランスポート/DDコンバーター ¥1,400,000(税別) 輸入代理店 (株)タイムロード ホームページは http://www.timelord.co.jp/ Chord Electronics社はイギリス1989年にジョン・フランクス氏により設立されました。 またエンジニアのロバート・ワッツ氏による独自アルゴリズムの開発、投入で、CHOR Dが繰り出すディジタルオーディオ機器は世界を牽引する存在となっています。 私がCHORDを知ったのは、D/A CONVERTERのDAC64になります。一番最初に私が販売させて いただいたのがは2002年になります。その時は私がまだ当店の6Fに在籍していた時になり ます。当時デザイン、価格も含めて非常に人気のD/Aコンバーターで多くのお客様にご購 入いただきました。当時CECのトランスポート、ESOTERICのトランスポートと組み合わせ ているお客様が多かったのではないかと思います。それから翌年にはDAC64 MkIIになって おります。発売日は定かではないですが、翌年に初代のトランスポートBluとDAC64MkIIの セットでの購入のお客様も増え、更にラックも専用のラックにマウントしておしゃれにご 使用していたお客様も多かったのではないかと思います。 それからDACに関しては、2008年にQBD76に進化し、その後はDSD対応などのUSB入力の対応 フォーマットが変わっていきました。QBD76はロングランモデルになり生産を続ける中、 廉価モデルのHUGOの発売、そして2016年2月にDAVEを正式発表いたしました。 このDAVEはCDトランスポートをお使いのお客様だけではなく、データ再生のお客様に非常 に高い評価を得ており、150万という価格でありながら、発売して1年強でかなりの出荷台 数になっているとのことです。 もちろん当フロアでも多くのお客様にご使用いただいております。 それは音質だけではなく、デザインも含めてではないかと思います。 DAVEの試聴レポートは下記をご覧ください。 http://www.dynamicaudio.jp/5555/4/rep096.html さてQBD76、及びトランスポートのBlu、そしてCODAのトランスポートはSACDが普及してい くに従い、人気に陰りを見せておりました。後半どうしても一体型のSACD PLAYERの人気 が高く、単体のD/A CONVERTERをご希望されるお客様は非常に少なかったように感じます。 それが何故ここまでDAVEが人気になったのかは、ハイレゾ音源の普及に他ならないと思い ます。SACD PLAYERからのデジタル出力は一般的に出来ませんので、DAVEのユーザーさん はSACDを意識していないということになります。ただし、SACD PLAYERをお持ちの方で、C Dを聞く時にはDAVEを使用するという方もいらっしゃいます。 DAVEの販売が伸びた理由としては、ミュージックサーバーのDELA、FIDATAの存在も大きい ところでしょう。一般のパソコンをつないで接続するイメージから一新し、このミュージ ックサーバーからUSBでダイレクトに接続し、ネットワークプレーヤーのように使用でき るといったところがお客様に高い評価を得ました、現に当フロアとしては、DELA、FIDATA を当時に購入される方が非常に多いことは確かです。フォーマット的にDSD11.2Mの再生が できるということも魅力の一部になっておりました。 そういう中で今年2017年の1月に輸入代理店である(株)タイムロードより Blu MkIIに発売の案内及びお披露目会の案内をいただきました。 内容的には ・Robert Watts により新開発されたWTA M-Scaler テクノロジープログラムを、  強力な演算能力を持ったFPGA Xilinx XC7A200T に実装。 ・740 ものDSP が稼働し、フィルタータップ長は驚異の1,015,808 タップを実現。 ・最大705.6kHz のアップサンプリング伝送を実現し、DAVE と組み合わせた際に最大の  パフォーマンスを発揮するよう設計。 ・BNC インプットを備え、独立した高性能アップサンプラーとして使用可能。 ・シンプルな機能に一新されたスタイリッシュなトップパネル。 SACD PLAYERは不動の人気を得ておりますが、CD再生のみと考えた場合に正直にどうなん だろうとも思ってしまいました。 1月26日に神楽坂で開催された新製品発表会には代表のジョン・フランクス氏とエンジニ アのロバート・ワッツ氏も来日され、解説をしてくれ、試聴も行いました。 その後に輸入代理店タイムロードさんのご厚意で、ジョン・フランクス氏とエンジニアの ロバート・ワッツ氏に当フロアにご来店いただき、Blu MkIIを試聴させていただきました。 更に世界的な事情とこちらでのユーザー様のお話をさせていただきました。   色々な経緯からBlu MkIIの仕様変更が伝えられ、当初の3月発売から遅れること2か月経過 し、5月20日に正式発売となりました。 仕様変更は当初TOS(光入力)の端子での出荷でしたが、こちらをUSB入力に変更しており ます。 前置きが長くなりましたが、Blu MkIIについて解説をさせていただきます。 1)トップローディングメカ     独自のデザインで手動でオープンします。ドライブメカ ̄に関しては、フィリップスでメ カの設計をしていた人間が立ち上げた別の供給元からのドライブになります。 設計そのものはフィリップスのPro 2と全く同一ですが、唯一の違いはドライブのシャ シーのみCHORDが新たに製作しているとのことです。 2)リアパネル(端子)     端子 USB入力:1系統 〜PCM768 kHz/32bit、〜DSD11.2Mhz/1bit BNC入力:1系統 〜192kHz/24bit (背面から見て左上) BNC出力:1系統 〜192kHz/24bit (背面から見て左下) BNC DUAL出力:1系統 3段階での調整でMAX768kHz/16bitまで(背面から見て右側の列)            DAVE専用とお考えください。 AES/EBU出力 :2系統 DUAL出力の場合192kHzまで デジタル出力スィッチ:3段階の選択(ノーマル、2倍、4倍)            但しフォーマットによっては違う場合がございます。(左側) ディザースィッチ  :ON/OFF 3)テクノロジー ●驚異の100万タップ  CHORDの心臓部はFPGAという設計者が構成を設定できる集積回路で独自のテクノロジー  を組み込んでおります。その中で色々なプログラムが入っておりますが、そこでの処理  がDAVEでは約16万タップ。それがBlu MkIIになり約100万タップになっております。  初代モデルのDAC64は1000タップ、CODAは100タップとのことです。  これだけのタップ数になると、それだけノイズ対策も必要になり、アナログ回路を持っ  たDAVEに採用することは音質的にも悪影響を及ぼすとのことで、DAVEのアップグレード  は考えていないとのことです。 ●独自のアップサンプラー    最大 705.6kHz のアップサンプリング伝送を実現し、DAVE と組み合わせた際に最大の  パフォーマンスを発揮するよう設計しております。  こちらは背面スィッチで3段階の切り替えとなりますが、CD再生の場合は44.1kHzになり  ますので、4倍のDUAL接続となりますと、352.8kHzとなります。  USB入力の場合は705.6(88.2×4×2)が上限となり、96kHz、192kHzの場合は整数倍で  はなく、44.1kHzの倍数になります。PCMに関しては、フォーマットによっては4倍まで  になります。  DSD信号に関しましては、2.8M→176kHz 5.6M→352kHz 11.2M→705kHzでの扱いになり  処理されます。  DAVEにUSBで接続した場合はDSD信号の場合はDディスプレイにDSDと出てきますが、  Blu MkIIを使用した場合は全てPCMでの伝送になりますので、DSD表記にはなりません。 それでは、試聴にはいらせていただきますが、ポイントがいくつかございますので、順番 にコメントさせていただきます。 ● 1)Blu MkIIのCDクオリティとアップサンプリング 色々なところでコメントをさせていただく際に、アナログの音があるように、CDの音、 そしてデータの音を感じる時があるという話をさせていただきますが、このBlu MkIIのサ ウンドを聞くと懐かしさを感じてしまいます。 正直な話をするとメカの個性を感じてしまいます。今回フィリップスのメカではないです が、おそらく音色的には同じなのではないかと思います。 フィリップスのメカと言えばSTUDER、METORONOME、ORACLEなどに代表されるようにトップ ローディングが多いと思いますが、このBlu MkIIも同様です。 このフィリップのメカの持ち味は音の深さと、どことなくアナログサウンドをかもし出す ところではないかと思います。データ再生では味わえない音楽性、そして濃い味が音楽を 浮き出させてくれます。どちらかというと新しい録音よりも年代の古いものの方がその良 さを引き出させてくれるように感じます。 さて最初の試聴ではBlu MkIIをまずDAVEにBNCのシングルで接続して試聴しましたが、 その後にBNCのDUAL接続を行い、推奨の4倍×2アップサンプリングで試聴しました。 音が薄くなった感じはあまりせずに、空間表現と奥行感がまします。実際この変化は各社 のアップサンプリング機能と似たような変化となります。こういったアップサンプリング のデメリットは音が痩せたり、位相特性が悪くなったりするところもありますが、さほど 音が痩せた感じにもならず、位相特性は逆に良くなったように感じました。低域はうまく コントロールされ、沈み込みが良くなっております。アップサンプリングとしては2段階 (スイッチは3段階)ありますので、比較を行いましたが、私は最高の4倍モードが一番好 みでした。録音のあまり良くないものや、古い録音であれば2倍でも良いと思うところも ございますが、何もしないという選択にはあまりならないのではないかと思います。 何度も申しますが、これはこれで新鮮さを覚えてしまいます。 2)CD再生とCD Rippingのデータ再生 ここは今回気になるところだと思います。 Blu MkIIにはUSB入力が急遽仕様変更で装備されておりますので、CD Rippingした音と CD再生時の音の比較をしております。 データ再生はFIDATA HFAS1-S10(SSD)をAIM電子UA3(USBケーブル)で接続しておりま す。またCD Rippingに関しましては、サーバーへのダイレクトリッピングしたものになり ます。 FIDATA http://www.iodata.jp/fidata/ AIM電子 http://www.aim-ele.co.jp/avd/products/shieldio_ua3.html 何枚か試聴を行いましたが、非常に面白い違いを感じます。 まず音の質が違い過ぎてコメントが難しのですが、CDでそのままかけた方が良い音源と、 CD Rippingした音が良い音源に分かれてしまいます。 CD再生はやはり音が熱く音楽性を感じることが出来ます。データの場合は純度が非常に高 く、全体的な臨場感は出てくれます。これはもちろんサーバーによるところも多いかと思 います。 あまりお話はしたくはないのですが、NAS(ミュージックサーバー)やパソコンによる音 質の違い、そしてCDのリッピングの方法で音質は正直違います。あまり良い状態でリッピ ングしていない場合やNASやパソコンのクオリティではCD再生の方が音質的に良いケース も多いのではないかと思います。そう考えると十分にCDトランスポートとしての意味合い を感じることが出来ました。 ただし同じ音源でハイレゾ音源があれば、そちらで楽しみたいと思ってしまいます。 3)Blu MkIIとDAVEのUSB入力の違い DAVEのUSB入力とBlu MkIIにUSB 入力してアップコンバートしてBNC伝送にてDAVEに送った 場合の音の違いは非常に気になるところです。 今回Blu MkIIとDAVEに関しては、付属のBNCケーブルで伝送を行っております。 CD Ripping音源とPCM系のハイレゾリューション音源、そしてDSD音源と試聴しましたが、 やはり100万タップの能力は音に現れます。 音が滑らかになり、更に立体感、音の前後感、静寂感など非常に効果がありました。 ただDSD音源に関しては、Blu MkIIとDAVEでは処理が変わってしまうためにDSDの質感が変 わり、変化が大きく感じました。DAVEではDSDフィルターとPCMフィルターで音質が変わっ てきますが、DSDをPCMフィルターで試聴した時の違いと似たところを感じます。 ただ個人的にはDSD信号がPCM処理されたとしても、Blu MkIIを経由したほうが音のクオリ ティは上がり、こちらの方が好みですね。当然と言えば当然です が、やはりアップサンプラーとしての能力の高さを感じます。 特にクラシックなどの生楽器、女性VOCAL、アコスティックギターなど響きが自然になり、 もっと聞いていたい気分になりました。 3時間ほど色々試聴しましたが、良い、悪いという判断よりまずは面白いという感想です。 以前CHORD社のお二人と話をした時に、持っているディスクを楽しみたいという気持ちは 一趣味人としてあるとおっしゃっておりました。もちろんハイレゾ音源は評価していると のことです。ただストリーミングで楽しんだり、CDをリッピングして楽しむよりもディス クで楽しみたい。それであればやはりトランスポートが必要だということで今回発売に踏 み切ったそうです。 実際ディスクメディアの売り上げは世界的に見て落ちているとのことですが、データ再生 に移行したからではなく、今持っているディスクはそれなりに楽しんでいるという話も聞 きます。 あるメーカーのCD/SACD PLAYERにデジタル入力が装備されているモデルと、そのモデルか らディスク再生機能を外したモデルが併売されておりました。実際の出荷台数は予想を裏 切りプレーヤー機能を持ったモデルの方が価格も高いながら出荷台数は多くなっていると のことでした。これが答えなのかもしれません。 これには色々な理由が考えられます。CD Rippingのクオリティ、ディスクへの愛着。 リッピングの面倒なところ。 私自身も色々とやってきておりますが、その答えは出せないでおります。 今回のBlu MkIIに関しては、単純に290万のCD PLAYERとしての見方もございます。 それにUSB入力としての付加価値がつきます。 そういったイメージで考えていただいても良い製品となっております。 DAVEをお持ちのお客様だけではなく、CD PLAYERを検討しているお客様にも是非ご試聴い ただきたい製品です。 近々展示予定となっておりますので、製品が入荷しましたらホームページ等でご案内をさ せていただきます。                            2017年5月21日 H.A.L.3 島