VOL.96 CHORD DAVE 試聴レポート



今回はCHORD社の新しいD/AコンバーターのDAVEをご紹介させていただきます。

CHORD DAVE D/A CONVERTER ¥1,500,000(税別)

                          スタンド ¥280,000(税別)

CHORD社はイギリスのエレクトロニクスのメーカーとなりますが、日本でその知名度
を上げたのはDAC64に他なりません。

その時代まだSACDが騒がれていない中、各社トランスポートの数も非常に多く
各製品に合わせるDACとして非常に評価されておりました。

その第一の理由としては、音楽性とデザインですが、それ以外にもDUALでのデジタ
ル入力が出来るというのも大きなメリットでした。

さかのぼると、dCS、ESOTERICを筆頭にCDのアップサンプリングが騒がれ、
デジタル出力1本ですと、96KHzまでの出力が出来ませんでしたので、2本使用し、
96kHz×2の考え方で、192kHzまでの伝送を行っておりました。

ESOTERICのトランスポートでいうとP-70がDUAL出しのスタートだったような記憶も
あります。

ただ初期のDAC64はBNC入力での対応もあり、変換をしなくてはいけないというとこ
ろや相性によってはロックしないなどいろいろありました。

機能面ではバッファー機能による音質向上、そして斬新なデザイン。

それからMK2へマイナーチェンジを行い、その後本体上部で切り替えできるようなデ
ザインのQBD76に進化しました。DAC64同様高い評価を得ており、H.A.L.3でも多くの
お客様にご販売させていただきました。
それから先はUSB入力のフォーマット変更、入力がDSD化対応になったりとマイナー
チェンジを繰り返してきました。

DAC64、QBD76などはCHORALシリーズという位置づけとなりますが、CHORDETTEシリー
ズということでサイズも小さく、リーズナブルな製品も多く世に出してきました

それからまだ記憶の新しい、バッテリー使用のD/AコンバーターHUGO TTの登場と続
いております。

この歴史を辿っていくと、やはりデジタルに強いブランドであるというのがご理解
いただけるかと思います。

DAC64の誕生から20年経過しましたが、その集大成ともいえるモデルがフラッグシッ
プが今回発売されたDAVEとなります。

既に2015年のインターナショナルオーディオショーで初お披露目は済んでおります
が、その時はまだ完成形ではなくプロトタイプということで伺っておりましたが、
今回はしっかりと製品化されたモデルをお借りすることができましたので、ご案内
させていただきます。

テクノロジーに関しては、代理店のページをご覧ください。

輸入代理店タイムロードのホームページは
http://www.timelord.co.jp/brand/products/chord/choral-range/dave/


さて機能面で少しお話をさせていただきます。



1)豊富な入力系統



    ●BNC入力  :4系統、(PCM384kHz/24bit)

    ●AES/EBU入力:1系統、(PCN192kHz/24bit)

    ●TOS入力  :2系統、(PCN192kHz/24bit)

    ●USB入力  :1系統 (PCM768kHz/32bit、DSD11.2MHz/1bit)

    本体の左右ボタンで切り替えが可能となります。



2)DACモード/プリアンプモード選択可能

    左右ボタンを長押ししていただくと、固定出力のDACモードとヴォリューム調整が
    可能なプリアンプモードの変更が可能となります。

    プリアンプでの使用時は左右、上下ボタンの真ん中にあるつまみをを回していた
    だきます。またそのつまみを押していただくとMUTE(消音)になります。



3)メニュー

 

 

    上下ボタンで設定したい項目を選んでいただき、左右ボタンで選択

    ●DSD PLUS/PCM PLUSの切り替え:DSDとPCMフィルターの切り替え

    ●PHASE(位相切り替え):POS(2番HOT)/NEG(3番HOT)

    ●HF Fil               :ON/OFF
                             超高域成分の補正

    ●Display              :4パターンのディスプレイの切り替え


    特に難しい設定はございませんが、DSD PLUSとPCM PLUSの音質の差はありますの
    で、こちらはお試しいただければと思います。





試聴ですが、まずは最近リファレンスのトランスポートになっておりますDELAのHA-
N1ZS10からUSB出力を出して、試聴を行いました。

操作はLINNのコントロールアプリKINSKYを使用しております。

接続後DAVEを普通に認識してくれており、DELAとの相性も問題ないようです。
また5.6MHzの再生も問題なくできました。

DAVEは11.2MHzのDSDは対応しておりますが、DELA側が対応しておりませんので、
再生の場合はPCでの再生となります。

さてその音質としては、一聴してCHORDらしい、暖かみのあるサウンドを感じること
が出来ましたが、その背景の静けさに驚きを得ました。

ピアノの響きなど自然な響きで、スピーカーの外まで音が広がり、スケール感を
もたらしてくれます。聞き方によってはタッチが弱く感じますが、滑らかさ、そし
て音の消え際の再生能力は非常に高いと思います。
これだけ聞いていると以前よりももっと、暖色系になったようなイメージを持ちま
した。

オーケーストラに関しましては、やたら分離させることもなく、ハーモニーとして
伝わってくる音作りはやはりCHORDらしいと言えます。

ここでも、背景が良く見えるのはS/Nの良さになってくると思いますが、これが進化
なのでしょう。QBD76と比較をした訳ではありませんが、圧倒的なスケールの大きさ
と、立体感を感じます。
個人的にはロック、ジャズというよりもクラシックを雄大に、聞きつかれなく楽し
みたいお客様向けのサウンドに感じます。

どうしても国産のプレーヤーで耳が馴染んでいるとスピードが遅く感じる部分はあ
りますが、逆にこの個性は他のDACでは感じたことの無い、滑らかさです。

描写の仕方としては、色彩を鮮やかに出すというよりも良い意味でぎらつかない程
度にうまく表現しており、一見地味に感じるところはありますが、これが面白くな
いという訳でもなく、引き込まれてしまう魅力となっております。

さてこのDAVEでは、DSD PLUSとPCM PLUSの切り替えがあります。これは音楽のジャ
ンルによるところもありますが、DSDの方が中域の肉厚もあり、芯が出てきますが、
PCMの方がスピード感もあり、特にフュージョンやロックなどはPCMの方が好みです。
この切り替えは10秒ほどのタイムラグがあり、一度MUTE状態になります。内部的に
は簡単な処理ではないのだと思います。
実際好みでの使い分けてください。
出力に関しましては、基本的にはバランス出力がメインとなります。比較もして
みましたがバランス接続のほうが情報量も多く、芯が出てきます。
また出来るだけXLR,RCA両方接続はしない方が良いと思います。

最後に試しに同社HUGO TTと比較を行いましたが、良くも悪くもしっかりとした価格
差を感じることができました。思ったよりも差が大きいかなと思いましたが・・・

まずご理解いただきたいところとして、他のメーカーでは感じることができない音
楽的な個性、そしてデザイン。

正直好き嫌い分れるかもしれませんが、私は以前よりこの個性に関しては高い評価
をしております。

常時展示ではございませんが、リクエストに応じて用意をさせていただこうかと思
っております。

遠慮なくお問い合わせください。

2016年1月17日 H.A.L.3 島