VOL.112 Sonus faber Tradition シリーズ 製品レポート

今回はSonus faberの新製品 Traditionシリーズのご紹介をさせていただきます。

Amati Tradion ¥3,600,000(税別) Serafino Tradition ¥2,600,000(税別) Guarneri Tradion ¥2,000,000(税別) 私がダイナミックオーディオに入社したのは、今から遡ること21年ほど前になります。 入社まもない私は初代のGuarneri Homageを上司の配達ということで多い時には一日3件ほ ど納品した記憶がございます。そのデザイン性、その音楽性、そしてこれだけお客様に受 け入れられている製品であることに驚きを得ておりました。 それから4F H.A.L.3に就任したのが、2004年の9月になりますが、その一年後の2005年に Guarneri Mementoとして2世代目が登場いたしました。 この時の喜びを今でも覚えております。 http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/4f/island_check-old04.html#35 大理石のベースを使用し、色はもっと鮮やかになり、音としてもHomageの良さも残しつつ、 小編成だけではなく、大編成の音楽も大分聞けるようになりました。 正直ヴァイオリンを聴くだけならHOMAGEの方が好みの部分もありましたが、全体的に試聴 してみると進化したという言葉を使いたくなる製品でした。 色もレッドヴァイオリンとグラファイトと2色あり、レッドヴァイオリンが人気でしたが、 グラファイトも多くのお客様にご購入いただきました。当時はGOLDMUNDとの組み合わせが、 非常に多く今でもそのままご使用のお客様も多くいらっしゃいます。 一部ではございますが、お客様宅をご紹介させていただきます。  http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/4f/island_houmon011.html  http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/4f/island_houmon019.html  http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/4f/island_houmon023.html  http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/4f/island_houmon024.html  http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/4f/island_houmon032.html  http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/4f/island_houmon038.html 実はこの次の世代になる前にGuarneri Palladioというのが台数限定で発売されました。 多少の変更を加えておりますが、シックな色でこちらを好まれるお客様もいらっしゃいま した。 当時CREMONA、そしてCREMONA Mというモデルも人気でしたが、このH.A.L.3ではその2倍以 上の出荷台数がこのGuarneri Mementoではございました。 さてその大人気のGuarneri Mementoですが、2011年の9月にGuarneri Evolutionというこ とで3世代目のGuarneriを発売開始いたしました。 前後関係ははっきりは解りませんが、創始者のフランコ・セルブリン氏はSonus faber社 を退社し、FRANCO SELBRINというご自身のブランドを立ち上げ、まずはKtemaというモデ ルを第一弾としては発表しました。その後Guarneri Evolutionとほぼ同時期にACCORDOと いうモデルを発売いたしました。 Guarneri Evolutionは今までと違い、現代的な仕上げで天板がクロームメッキ仕上げで、 スタンドも改良を加え、大理石から花崗岩に変更になっております。  http://www.dynamicaudio.jp/5555/4/GUARNERI_evolution.html 今までの音のイメージも、オールマイティーなイメージに変化し、低域の厚みもかなり違 う印象を持ってしまいました。このサウンドが新生Sonus faberではないかと思います。 このサウンドを耳にした時に今までのGuarneriファンではない、引き継いだパオロ・テッ ツォン氏の芯を感じることが出来ました。長年フランコ・セルブリン氏の元で培ったもの と、自分の音へのこだわりが融合されたのではないかと思います。 その後精力的に製品を出してきました。Cremonaシリーズに変わるOLIMPICAシリーズ。  http://www.dynamicaudio.jp/5555/4/olympica.html そしてVENEREシリーズ。ハイエンドモデルではLILIUM。そしてIL CREMONESE。 IL CREMONESEやVENERE SIGNATUREなどは非常に評価も高く、従来のSonus faberファンに もご納得いただけております。 初代Homageが1994年、Mementoが2005年、Evolutionが2011年、そして今回ご紹介させてい ただく、2017年登場のGuarneri Tradionとなります。 Homageとは「捧げる」Mementoは「記憶にとどめるべきもの」Evolutionは「進化」 そしてTradionは「伝統」という意味になりますが、その言葉の意味はとても興味深いもの ですね。 前置きが長くなりましたが、Traditionシリーズのご紹介をさせていただきます。 Guarneri Tradition             Serafino Tradition         Amati Tradition        従来のシリーズではGuarneri、Amati、Stradivariということで位置づけられております。 Guarneriも世代による違いがあり、またAmatiもHomage、Futura、Aniversarioなど変わっ てきました。ただStradivari Homegeに関しては、一世代(限定色も含めて)にて終了し ております。 今回はGuarneriとAmatiの間にSerafinoというモデルが追加になります。 ニコロ・アマティに師事したサント・セラフィーノから名前をとったということです。 さて資料によると、今回は「Tradition」ということになっておりますが、正式には 「Homage Tradition」ということで、初代のモデルのDNAを引き継いだモデルとなってお ります。 今回の色はRed(ハイグロス仕上げ)とWenge(ハイグロス仕上げ)となっております。 いくつかポイントを要約してご説明をいたします。 1)キャビネットデザイン    Red(ハイグロス仕上げ)/Walnutの突板、 ブラックレザー、ブラック・アルミニウム Wenge(ハイグロス仕上げ)/Wenge材の突板、 コーヒーブラウンレザー・ガンメタルアルミニウム 天板/側面と同じ素材を使用し、「SF」ロゴをプリントしたトップガラス   2)テクノロジー Stealth Ultraflex バスレフポートのダクトに適度なダンプをかけ、ポートのチューニングを施すことで低域 をコントロール。従来より採用しておりましたStealth Reflexが進化し、Stealth Ultraf lexに名前を変えております。 こちらは背面のアルミニウムパネルに搭載され、ダクトを通る空気の流れを制御 Z.V.T(ゼロ・ヴァイヴレーション・トランスミッション)    床からの振動伝播とキャビネット全体をデカップリング Amati Traditionには、スパイクの取り付け部にエラストマー樹脂を挟み込む 「エラストマー・サスペンション構造」を持つブラケットを採用 Guarneri Tradition、Serafino Traditionでは金属ネジ/エラストマー樹脂/金属スパイク の3重構造のSilent Spikeを採用 ユニット ・ツィーター   ドームとリングラジエーターの特性を融合した独自の 「アロー・ポイントDAD(Damped Apex Dome」を採用 28mmのムービング・コイル・ドライバー ・ウーファー      新設計のウルトラ・ダイナミック・リニアリティー150mm口径・ネオジウムマグネット (Guarneri Tradition) 複合素材であるシンタクティック・フォームの外側を自然素材のセルロース・パルプ 処理したサンドウィッチ構造ユニットをAmati Futura同様2基スタガー構成で搭載 (Serafino Tradition、Amati Tradition) ・ミッドウーファー(Serafino Tradition、Amati Tradition) 新設計のウルトラ・ダイナミック・リニアリティー150mm口径・ネオジウムマグネット (Serafino Tradition、Amati Tradition)    バイワイヤ―    スペース的なこともあり、縦に配列されております。 仕様一覧は下記をご覧ください。 また輸入代理店のホームページは  http://www.noahcorporation.com/sonusfaber/20170421_HomageTradition_release.pdf それでは、試聴レポートに入らせていただきます。 既に輸入代理店ノア主催のお披露目会では軽く試聴しておりますが、今回は当フロアで試 聴を行いました。 まずはGuarneri Traditionからスタートしました。ワイヤリングは高域の方に接続してお ります。 言葉が曖昧になってしまいますが、ヨーロッパを北上した印象を持ちました。その意味と しては初代がイタリアとすれば、Evolutionはフランス的な芯と深さを感じるサウンド、 そして今回は若干北欧系のサウンドが混ざった印象を持ちました。 じっくり試聴すると、Evolutionのようなエネルギーは感じませんが、音場の作り方が非 常にうまくステージをしっかり作ってくれます。この変化は私は好印象です。 どちらかというと初代のHoamgeというよりもMementoと比較をしてしまうのですが、 低域の出方が非常にスムースです。ただまだエージングの問題もあるかと思いますが、中 域のところで音のつながりがもう少しかなと感じる部分がございました。 ヴァイオリン、チェロ、オーケストラ、JAZZ VOCAL、ロックなど試聴しましたが、特にこ のジャンルと言えばクラシックの四重奏なんかは聞いてて非常に心地が良かったですね。 またクラシックの大編成は前に張り出すEvolutionと比較すると迫力は少ないですが、会 場の雰囲気が伝わってきます。また前後感も非常に良くなっております。 ヴァイオリン単体だけ聞けば、Mementoの方がはっとした音がしますが、今回はほっとし た音がします。楽器だけではなく、周りの風景が見えやすくなった印象です。Evolution は低域のダンピング良く、聞いててグルーブ感を感じることが出来ましたが、今回はもっ と上品な仕上げになっているのではないかと思います。 さて今回のGuarneri Traditonに関して見逃していけないのがスタンドになるのではない でしょうか。従来は石を使っており、その下はゴム系の足でしたが、今回は支柱にはカー ボン素材のものを使用し、ベース部分もスパイクになっております。ブックシェルフのス ピーカーをご使用になっているお客様はご存知かだと思いますが、このスタンドによる音 の違いは大きいと思います。今回はそれも含めて音決めをしているのではないかというこ とも試聴して感じることが出来ました。 EvolutionよりもMementoやHomageに近いかと言われたら答えに困ってしまいますが、設計 者のパオロ・テッツォン氏がこのモデルに込めたサウンドは非常に良く理解できました。 さて次に新しくラインナップに追加されたSerafinoを試聴しました。 もちろんのことながら、スケール感が出て、悠々となっております。他社メーカーでも良 くあるブックシェルフとトールボーイというイメージの違いです。やはり足の部分も影響 しているせいか、サウンドとしては、本当にそのまま大きくした印象を持ってしまいまし た。 ただGuarneriが以前より得意とする分野においては、低域のコントロール次第ではGuarne ri Traditionの方が向いているジャンルはやはり存在しました。。ただ実際Amatiとの比 較の時にもよく言われた話です。Sonus faberと言えばブックシェルフが得意というイメー ジがあるかもしれませんが、それはSonus faberが持つ、得意な音楽であればということも 言えるかもしれません。 最後にAmati Traditonを試聴しました。 こちらは正直参りました。Serafinoのユニットの口径を大きくしただけではないように感じ ます。技術資料では解りませんが、スケール感もステージ感、そして質感も圧倒的に上です。 ヴァイオリンのソロを試聴しても私はAmati Traditionの方が選択します。もちろん価格的に 当たり前と言われればそうですが、十分な価格差を感じることが出来ました。 まだ常時展示ではございませんので、ファーストインプレションとしてレポートさせていた だきました。 次回はGuarneri Traditionに絞ってコメントできればと思います。                               2017年5月 H.A.L.3 島