発行元 株式会社ダイナミックオーディオ
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H.A.L.担当 川又利明


No.242 小編『音の細道』特別寄稿 *第22弾* 
「世界初の店頭試聴テスト!! 合格しましたジェフの新作!!」
1.念願の試聴

7/25に配信したNo.0710で、Jeff Rowland D. G.のweb site更新前という
最速のスピードで実施した公式ファイル配信サービスには通算で212件と
いう過去最高の応募を頂き、その関心の高さを示した同社の新製品MODEL
201であった。

http://www.ohbashoji.co.jp/products/jrdg/model201/index.html

輸入元に無理をお願いして雑誌取材の隙間に実物を持ち込んでもらった
が、まず私の第一印象は…!?

「かわいい!! 小さい!! きれい!!」

という三拍子そろったデザインと見た目の仕上げの良さであった。
喜び勇んで小脇に抱えてみたのがこれ…。
どうです〜、かわいいでしょう!!

http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/op-pho/001.jpg

さて、今回の新製品は何といっても一台46万円という価格であり、何と
比較しようかと悩んだのだが、セット価格92万円のモノ・パワーアンプ
というレンジでは比較対照する適当なものがない…。

私の試聴室に常設しているパワーアンプとの比較では価格的にも離れて
いるので無理があろう…。そこで、はたとひらめいたのが同社のインテ
グレーテッド・アンプとして定評のあるCONCENTRA2 \1,250,000.である。
早速、当社の他の支店から展示品を拝借してきたのであった。

http://www.ohbashoji.co.jp/products/jrdg/concentra2/index.html

寸法 / 445(W)×146(H)×362(D) というCONCENTRA2のそばに並べて
みると再びModel 201 のコンパクトさが引き立つことになった。

http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/op-pho/003.jpg

           -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

さて、土日の二日間しか滞在できないというのに初日はAvantgarde
TRIO+6BASSHORNの試聴希望が相次ぎ、なかなか私が時間を作ることが
できず、やっと本日じっくりと試聴することが出来たのだった。

その試聴システムとは…

     -*-*-*-*-今回のリファレンスシステム-*-*-*-*-

第一段階は…

Esoteric P-0s(AC/DC DOMINUS)→PAD DIGITAL DOMINUS AES/EBU
(88.2KHz伝送)→Esoteric D-70(AC DOMINUS)→PAD BALANCE DOMINUS
→JEFF ROWLAND CONCENTRA2(AC DOMINUS)→PAD DOMINUS BI-WIRE3.0m
→B&W Signature 800(With BrassShell)

第二段階では、このフロントエンドを同じくして、次の段階では…

→JEFF ROWLAND CONCENTRA2(AC DOMINUS)→PAD BALANCE DOMINUS
→JEFF ROWLAND Model 201(AC DOMINUS)→PAD DOMINUS BI-WIRE3.0m
→B&W Signature 800(With BrassShell)

第三段階ということで、CONCENTRA2のプリアウトを使ってModel 201を
駆動した。

→JEFF ROWLAND Synergy 2i(AC DOMINUS)→PAD BALANCE DOMINUS
→JEFF ROWLAND Model 201(AC DOMINUS)→PAD DOMINUS BI-WIRE3.0m
→B&W Signature 800(With BrassShell)

このように同社のプリアンプを最終的に使用して、本来のセパレート
アンプとして駆動するという三段階のテストを行ったのである。


2.信じがたい…という第一印象!?

今回は日曜日という稼ぎ時に他の支店からCONCENTRA2を拝借してきた
ので、第一段階の試聴に数時間もかけるわけにもいかない。音場感の
広がりを確認しやすく、いっぺんに多数の楽音とヴォーカルがチェック
できて、比較的軽い曲から試聴を開始しようと考えていたが、最近お気
に入りのヴォーカルでまず感触を確かめることにした…!?

「夏川りみ」てぃだ 〜太陽・風ぬ想い〜http://www.jvcmusic.co.jp/rimi/

3トラック目の「ファムレウタ(子守歌)」と7トラック目の「楽園 〜
マカル・サリ〜」で各々の段階を聴いてみることにした…!?

しっかりしたドラムのリズムに全体が支えられて、オカリナの楚々とした
響きが演奏にまろやかさを演出するとギターのピッキングがアコースティ
ックな背景描写に遠近法のスケール感をかもし出す。これらの選曲では
ギター、ベース、オカリナなどは生のプレーヤーが演奏しているのだが、
その他は恐らくサンプリング音源での録音のようだ。

しかし、キックドラムからトライアングルやウィンド・チャイムなどの
きらめくような高音楽器まで多種多様な楽音がふんだんに用いられて
いるので、短時間のうちにアンプの駆動力を検証するには好都合なので
ある。さて、もしかしたら初めてかもしれないH.A.L.でのプリメイン
アンプでの演奏が始まった!?

「あ〜!? これがCONCENTRA2の実力なのね〜? 」

プリメインアンプでも125万円という、ほぼ最高クラスのCONCENTRA2
のパフォーマンスに対して私は別に異論を唱えるつもりはない。
しかし、同じJEFF ROWLANDの歴代のセパレートアンプ、そして日々ここ
で演奏している錚々たるアンプたちのレベルになじんでしまっている
私からは、やはり…という印象はぬぐいされないものであった。

しかも、S800というアンプに多くを求める最先端のスピーカーが相手
では、いささか物足りなさが最初から感じられても仕方ないものだろう。

さあ、それではCONCENTRA2のプリアウトからModel 201に接続する。
パワーアンプのゲインは両者ともに26dBなので、CONCENTRA2の
ボリュームはそのままでいよいよModel 201が登場した。

「ほほ〜、なるほど〜!!」

一皮向けたぞ!!
キックドラムの輪郭は以前よりも鮮明になり、ギターのカットも切れ味
は良くなっている。ふむふむ、ヴォーカルも浮き上がってきたぞ!!

この変化をどう例えたらいいだろうか!?
そうだ!! 私は思わず小学校での図工で版画を作ったときの様子をイメ
ージしてしまった。まるっきり一枚の板に下絵を書いた状態、それを
CONCENTRA2で聴いた時の印象と例えると、Model 201を追加した時の変化
は下絵に沿って彫刻刀で輪郭の周辺を彫り始めたような感じなのである。

今までは鉛筆で描いた下絵は単純な黒い線であったのだが、Model 201の
登場によって黒い線の周りには影ができるように立体感が形成されるのだ。
ここで気を付けておかなければいけないのは、Model 201を追加したことで
低域が伸びるとか高域が増えるとか量的な問題ではないということだ。

モノ・アンプの特徴でもある空間表現の拡大がなされると同時に質的に
も楽音の立ち上がりが改善されているのが誰でもわかるはずである。
出力表示としてはCONCENTRA2の8ohms/150 W・4ohms/250 Wに対して
Model 201は確かに8ohms/250 W・4ohms/500 Wと二倍になっているのだが、
ボディサイズを考えると、どうしてそんな逆転現象が起こってしまうの
か不思議に思えるほどS800のウーファーは従順に反応してくれるのだ。

           -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

次は7トラック目の「楽園 〜マカル・サリ〜」で試してみると…。

イントロのギターが左右から見事な余韻の尾を引きながらカッティング
され、このカットされる瞬間の陰影感というか、その瞬間にエネルギーが
集約されてきたという肉厚感のある音質に好感を覚えたのである。

ウィンド・チャイムの鮮明さが違う。そして、トライアングルが…!?

「高域の澄み渡る質感がどうして今まで聴こえなかったんだろう!!」

更に、ずっしりとたドラムがセンターに重みを加え、リムショットが
くっきりと聴き取れるのでアタックの瞬間は間違いなく鮮明さを加えた。

そして、ヴォーカルが登場すると、そのハイトーンが何とも気持ちよく
輪郭の鮮明な口元からS800の後方にエコーが浸透する空間を作り出す。

「あ〜、これっていいかも…!!」

しかし、幅21センチ、奥行き33センチというサイズならスピーカー
の後ろに隠れてしまうだろうし、床から8センチちょっとスピーカーを
浮かせてセッティングしているのなら、その下にも置くことができる
だろうというサイズのModel 201からこんなにしっかりした音がでるとは…。


3.プリアンプの充実をしっかりと表現

さてさて、いよいよプリアンプをSynergy 2iに取り替えてみる。
Synergy 2iとのセット価格でも207万円という手頃? な価格であり
セパレートアンプに移行しようとするユーザーには価格もコンパクト?
に押さえられる格好のパワーアンプの登場ということになるだろう。

セッティングの変更も、もどかしく思いながら先ほどの変化を忘れない
うちにと二人がかりで配線を切り替えていく。

3トラック目の「ファムレウタ(子守歌)」はどうか!?

「あら〜、ちゃんと出てるわ〜、プリの違いが!!」

これは、と思って直ちに7トラック目の「楽園〜マカル・サリ〜」も聴く。

「やっぱり、そうだよ〜、浮き彫りになってきたじゃない!!」

まず、ギターの解像度がエコー感の充実とともに感じられる。
次にはキックドラムとベースの低域が更に安定感を増して重量感をたたえる。
ヴォーカルはすっきりとダイエットしたかのように口元のフォーカスが
鮮明になり、奥行き方向への余韻感とともに浮かび上がる。

うんうん、この変化はプリアンプの存在感にちゃんと反応していると
いうことであり、逆にプリアンプのグレードが上がっていっても追随
していけるという可能性があるのではなかろうか。

           -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

先ほどの第二段階では彫刻刀の作業が進み、先ほどは下絵の線の片側だけを
彫りこんでいたもののようだ。

しかし、Synergy 2iが登場してからは更に輪郭線の反対側にも彫刻刀の刃が
あたり、どの角度から見ても立体多感が認識できるような段階まで版が仕上
がってきたような変化と言えるだろう。

私はコストパフォーマンスという表現を用いることが苦手なセールスマンで
ある。この価格だからこの程度…、というものではなく、あらん限りの英知
と技術力を投入した結果、値段を付けたらばこのようになってしまった…。
しかし、そのパフォーマンスは過去に例のないものとして…、というハイ
エンド・オーディオへのこだわりを日々追求してきたものである。

そして、その姿勢は今後も変わることはないのだが、そのような思想をもつ
設計者が過去になかったコストで、その人が目指していることが実現できた
としたら、それをハイエンドオーディオとは言わないのだろうか…!?


4.ハイエンドであることの意味とは?

こで、2年前に書いた第41話で「ハイエンド」という言葉の定義について、
傅信幸氏のコメントを引用して表現している一節があるので紹介したい。

「ハイエンドオーディオ機器は確かに高価である。しかし、金ムクのパネル
だから、ダイヤがボリュームに埋め込まれているから高価なのではない。
そんなのはまやかしだ。ハイエンドオーディオの設計者は自分に忠実でうそ
がつけなくて、妥協するということをあまり知らず、了見の狭いせいもあって
没頭し、ただし一種の鋭い感は働いているが、その結果生まれてきたために
高価になってしまうのである。」

「しかし、そうやって誕生した製品は、わかるユーザーを大変納得させる。
ハイエンドオーディオの存在価値はそこにある。ユーザーは音楽とオーディオ
に情熱を注ぐ人である。そういうあなたと同じ思いをしている人たちの作った
作品は、あなたの五感から更に第六感まで刺激するに違いない。それをハイエ
ンドオーディオと呼ぶ。」

さて、私はこれまでに何回も業界誌・一般誌の取材に応じたことがあるのだが、
その記者に「ハイエンドオーディオとは、いくら以上のことを言うのですか。」
と尋ねらたことが数え切れないくらいある。

そして、私の答えはいつも同じなのである。「金額ではありません、思想的な
意味ですよ。」と、この傅信幸氏の言葉に含まれる意味を説明したことがある。

           -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

ジェフその人は、300シリーズとModel 201に搭載されているICEパワーを第五
世代の増幅素子として表現しているのだが、ジェフの理想がまず先行し彼の理
想を実現するデバイスが世界中の部品メーカーのどこかで開発されたときに新
製品が開発されてきたという経緯がある。

例を挙げればジェンセン社のライントランスによるモデル2や6、そしてコヒレ
ンスへの流れ。インテリジェント・パワーデバイスを用いたモデル8や9の
“Ti化”への進化。PFCを用いたスイッチング電源によりモデル10と12の開発。
ジェフの理想をサポートする形で世界各国のエレクトロニクスカンパニーが
開発したデバイスを見事にハイファイ・オーディオ用として使いこなして
きたのがジェフ・ロウランドその人なのである。

私は、当然のことながらジェフの上位モデルとの比較でコストパフォーマンス
を議論しようとは思っていないし、もちろん他社比較でModel 201の優位性を
解説しようなどとも考えていない。

しかし、今私の目の前にある、この小さなアルミの塊が演奏してくれた音楽の
質を考えると、立派にハイエンド・オーディオの範疇にあると断言できるの
である。一台46万円のモノ・パワーアンプが見せてくれる可能性の大きさ。
それを何台並べて使うのか、その用途の広さを根底から支えるパフォーマンス
を私がこの試聴環境で確認したということを全国の皆様にお知らせしたい。

後は、賢明なるオーディオ・ファイルの皆様、いやビジュアルも含めたホーム
エンターテイメントを楽しまれるすべてのユーザーの判断にお任せすることに
して緊急レポートを締めくくらせていただく。

           -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

Model 201を最高レベルの環境とシステムで試聴できるスポットが東京にあると
いうことを最後に一言追記したい。全国初の体験者である私はハルズサークル
の皆様に更なる特典をご提供すべく、今後の新企画を早速考え始めている。

どうぞご期待下さい。


このページはダイナフォーファイブ(5555):川又が担当しています。
担当川又 TEL:(03)3253−5555 FAX:(03)3253−5556
E−mail:kawamata@dynamicaudio.jp
お店の場所はココの(5)です。お気軽に遊びに来てください!!

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