発行元 株式会社ダイナミックオーディオ
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No.236 小編『音の細道』特別寄稿 *第十九弾* 
「第一印象の“不細工”から“絶世の美女”への大変身!?」
1.なぜ私はホーン型スピーカーを取り扱わないか!?

1895年にオリヴァ・ロッジが研究に着手したといわれるダイナミック型
スピーカーの開発は営々と続けられており、遂に一九一九年イギリスで電気
吹き込みレコードの世界初の実験が行われたのである。

ライオネル・ケスト及びH・O・メリマンという二人の青年技師がその実験
を行って成果を上げ、同時にベル研究所においても同じような実験が行われ
た。ベル研究所では1924年にマックスフィールドとH・C・ハリスンの
努力が実り、レコードの電気吹き込み技術が完成の域に達した。

           -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

突然何の話だ!? と思われるでしょうが、これまでの「音の細道」では実に
様々な話題を取り上げてきたのだが、上記はその第22話からの引用である。
お時間のある方はぜひ再読して頂ければ幸いです。

http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/oto/oto22.html

そして、その後の展開としては1947年にベル電話研究所からのバーディーン、
ブラッテイン、ショックレーらが歴史的な発明であるトランジスターの原理
を発見するのだが、それが一般大衆の日常生活に大きく関わってくるのは
さらに後年のこととなる。今、思い出したが私が子供のころのテレビは真空
管であった。ラジオも真空管であり、出力は数ワットということから、いか
に音量を大きくして大勢で楽しむことが出来るかということは、映画館の
音響をはじめとしてスピーカーに求められた重要な開発目標でもあった。

さて、スピーカーにとって時代の要求となった“能率”“sensitivity”
であるが、上記の蓄音機の時代から古代の補聴器の原理、またラッパとい
う楽器の原理からも推測できるように“ホーン”はそのために考案された
最もシンプルな高能率化の手段だったのである。

           -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

私は皆様が既にご存知であり、取引先各社も長年のお付き合いで理解して
頂いていることなのだが、日本における最も有名なブランドと言われてい
るいくつかのメーカーのスピーカーは展示していない。いや、正確に言え
ば求められれば販売はするが、自分自身のポリシーとして実演し推奨する
ということをしていないものである。

それらメーカーの作るスピーカーの大半はショート・ホーンを採用したも
のが多い。オーディオの基礎知識としてホーンにはドライバーを取り付け
る「スロート」と呼ばれる部分、ホーンの根本の部分と「マウス」と呼ば
れる開口部、いわゆるホーンの前面であり広がりの終端部からなっている
ものだが、このスロートとマウスの面積の比率が比較的小さく、マウスの
開口面積が小さいものが多い。具体的な製品名を挙げれば簡単なのだが、
そこはそれ紳士的な物言いから対象となる商品は特定したくないものだ。

しかし、それらのスロートとマウスの距離も短く、開口比率も小さいもの
については、どんなに広帯域でスペックがよろしくても、私にはなじめな
いものがある。まず、それらのホーンに共通して言えることは、音源の位
置関係を自己主張し、そこから音を出しているということをつぶさにリス
ナーにわからせてしまうということ。言い換えれば、音が出ている場所と
定位感をリスナーは指差し確認できてしまうことである。つまり、ドライ
バーの存在しているポイントの軸上に音源がまとわりついてしまい、
ステレオフォニックな中間定位がなかなか感じられないということだ。

次に、その指向性のあり方から、ドライバーの主軸から耳の位置が外れて
しまうと大変大きく高域特性が変わってしまうということ。特に市販の製
品では水平方向の指向性にはけっこう気配りしているのだが、垂直方向の
指向性は前者よりも大変見劣りするものが多いのである。これは単純な現
象として、適当と思われるセッティングをしてから、ちょっとした拍子に
落としてしまったものを拾おうとしてかがみこんだりすると瞬く間に高域
が大きく減衰して聴こえることで思い当たると思う。

市販のショート・ホーンを採用したスピーカーでは、あたかも懐中電灯の
光が当たっているうちはよいのだが、姿勢を変えたりスピーカーの位置を
変えたりして、一旦そのビームから耳が外れてしまうと高域がなくなって
しまったかのように聴こえるものだ。それでいいのだろうか?

最後に、これらのホーンが発する楽音に私はストレスを感じてしまうこと
が多い。ドライバーから発せられた音波がホーン形状の内側に強力な一次
反射をしているものと推測できるのだが、それらのショート・ホーンの内
側にフェルトのような素材を貼り付けると高域特性が減衰してしまう。
これも言い換えればホーン内側の音を反射している面の素材や形状によっ
て高域が大変大きな影響を受けているということであり、私にはそれが
聴き辛い歪感、ストレスとして感じられてしまうのである。簡単な例えと
して、皆さんの口を両手でラッパの形を作って声を出すと音声の質が変わ
ってしまうという、あの現象に他ならない。これでいいのだろうか?

ホーンの開口部が広がっていくカーブにそって、マウスの前方で測定用
マイクを設置して周波数特性を測っただけでは解決できない要素がこれ
らの現象から推測できるものなのである。

           -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

私は、このような考え方からスピーカーユニットが発した音波を、スピ
ーカー自身の顔面やボディーに反射させてしまうデザインはダメなんで
すよ、と解説してきた。そして、そのような考え方でデザインされた
スピーカーが世界的な視野で見てもハイエンドという位置付けて評価さ
れ私も推奨しているものなのである。

B&W、AVALON、 WILSON、Theil、などなど、彼らのデザインを見てみると
音波が球面波で拡散していくという自然の摂理を上手に取り入れている。
反面、球面体として丸く広がっていきたい音波を発するドライバー、正確
にはダイヤフラム(振動板)の周りに手をかざしたように音波の進行方向を
ホーンという強制的な手段で囲ってしまうことで上記のような聴感上での
問題点を私は感じてしまうのである。

だから、それらの製品はここにはないし、これからも扱っていくつもりは
なかったのである。しかし…。


2.最初は仕方なく…(^^ゞ

P-0sをはじめとする国産屈指のハイエンド・コンポーネントを開発し販売
するティアック・エソテリックカンパニーの大間知社長は、これまでにも
その名前を随筆やこのレビューでも度々ご登場頂いていたのであるが、今
から二ヶ月ほど前のこと今年の中期的な戦略を相談したいということで来
訪されミーティングを行っていた。そのときに、新たに同社が輸入販売を
検討しているという新ブランドがこれ、ドイツのAvantgardeであった。
このメーカーの存在は数年前から知ってはいたのだが、前述のような分析
と経験からまったく興味関心の対象外であるホーン型スピーカーとして、
旧態依然とした設計原理の音だろうとたかをくくっていたのである。

http://www.avantgarde-acoustic.de./

しかし、相手が大間知社長であってはそっぽを向くわけにはいかない。
内心では「やっかいなものを持ってきてくれたな〜」という心境だったの
である。

「とにかく私が惚れ込んだ音なんですよ!!」とおっしゃる大間知社長に
対して、これまでのP-0sを中心としたお付き合いの歴史からしても、私は
むげに否定することは出来ず、とにかく聴いてみましょうということで
サンプルの到着を待つこと二ヶ月、そして同社の中核であるDUOがいよいよ
4月16日に搬入されることになったのである。
http://www.avantgarde-acoustic.de./produkte/01.php?sprache=en&produkt=duo

           -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

最初にDUOがここのドアから入ってきた瞬間には、思わず笑ってしまった。
「このデザインにして、この大きさ!? こんなもの部屋にに入れようと
 するユーザーがいるはずないじゃない!! 」
http://www.avantgarde-acoustic.de./produkte/03.php?sprache=en&produkt=duo

これが率直な第一印象であった。この段階で私はセールスへの期待が
急速に萎えてしまったものであり、音を出すまでもないだろうに…。
と、内心では早く試聴を片付けて他のことをやらなくては…、と思っていた
ものであった。私は納得できないものは取り扱わない!! この方針はティアッ
クが輸入する某社のスピーカーを私が販売しないことを承知していながら、
P-0sに関しての国内最高の実績を出している私のこだわりとして大間知社長
も理解してくれているものであり、私がNO!!と言えば問題なくお引き取り頂
けるという遠慮のない信頼関係もあったものだ。とにかく聴いてみましょう、
ということでセッティングしたのがこれ。

http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/op-pho/ag.jpg

別に同じドイツ製だから…、ということではなくコンポーネントの性格と
して高域にジェントルな質感を持つ「Burmester」を私の選択としてコーディ
ネイトすることにした。


               << CD Transport 969 ¥3.900.000.>>

http://www.burmester.de/english/productlines/cd-transport-969.html
                ↓

              << D/A Converter 970 SRC \4.400.000.>>

http://www.burmester.de/english/productlines/da-converter-970.html
                ↓

                 << Pre-Amp 808 MK5 \3.700.000.>>

http://www.burmester.de/english/productlines/pre-amp-808-mk5.html
                ↓

                << Power-Amp 911 MK3 \2.700.000.>>

http://www.burmester.de/english/productlines/power-amp-911-mk3.html
                ↓
        Avantgarde DUO 予価\2.800.000.

 当然のことながら使用したケーブルはすべてPAD DOMINUSのフルセット


3.最初の一口…

まず、最初は前作できしくもドイツ製のアンプの新星としてご紹介した
Accustic Artsのインプレッションで紹介し、今ではここのテストディスク
として定着してしまったラッセル・ワトソンの「ヴォラーレ〜ザ・ヴォイ
ス2」からタイトルナンバーである「Volare」をかけてみることにした。

http://www.universal-music.co.jp/classics/watson/index.htm

この時の心境は“半信半疑”などというものではなく“一信九疑”?
こんなものであり、これまでいやというほど体験してきたホーン型スピー
カーの特徴がどうせ最初から聴き取れるものだろうと決め付けていた。
さて、どうかな〜(-_-;)

ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団のチェロが最初に右側から登場し
左側からヴァイオリンが群れとなってイントロが流れだした。

「あれ!? おかしい? ホーン特有のヒステリックさがなくて気持ちいい!」

そして、雄大な声量のヴォーカルが始まった。

「Volare oh oh! Cantare oh oh oh! 」

その瞬間…、驚いたことに私の聴覚は耳にしたものがおいしいものだと
いう信号を大脳に送り、それが数瞬後には顔面の筋肉に指令を送り、私
の口元の筋肉を思わず弛緩させよといっているではないか!!

まずい!!
あれほどホーンスピーカーだから…ということで今まで散々理屈をこね
て大間知社長に慎重論を述べてきた私が、たった数秒間の演奏で自説を
根底から覆すような反応を後ろに控えているティアックの面々に表情で
悟られてなるものか!!

私は賢明に胸のうちに湧き起こる歓喜と感動が顔に出ないように、もく
もくと次のディスクをP-0sに入れては聴くということを繰り返した。

ホーンスピーカーで最も私が懸念している、ホーンであるが故の歪感、
ストレス感、それが一切このAvantgarde DUOでは感じられないのである。

う〜ん、最初に一枚で何がわかるもんか、次だ!!
と…。すぐさま選曲を変えた。

チャイコフスキー:バレエ音楽《くるみ割り人形》op.71 全曲
サンクトペテルブルク・キーロフ管弦楽団、合唱団
指揮: ワレリー・ゲルギエフ CD PHCP-11132

http://www.universal-music.co.jp/classics/gergiev/discography.htm

1トラック目の序曲が始まったところで、予想外の展開が私を襲った。
ホーンでこんなことがあるのか!!
弦楽器の質感がとにかく滑らかでありスムーズなのだ。しかも、そこに
見られる弦楽器はことさらに粒子が細かく、すこぶるつきの透明感で
ヴァイオリンのアルコを奏でていくではないか。そして、トライアングル
の軸棒は決して太くならず、これが本当にあのホーン型トゥイーターから
でているのだろうかと、スーパートゥイーターの必要性など微塵も感じ
させないような鮮度の高さでこともなげに演奏を続けていく。
これはまずい!!

           -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

続く15トラック目の「お茶(中国の踊り)」で、やっと私が付け入る
ポイントが見つかった。いや、実はそれは弱点ではなかったのだが。

ファゴットの独特のリズムが繰り返さ、それをコントラバスのピッチ
カートでファゴットの背景を埋めていくのだが、この低域の弦楽器群
のバランスがおかしいのだ…。早速ティアックの面々にお手伝い頂き
本格的にDUOのサブウーファーの調整をすることにした。

左右にお一人ずつDUOのかたわらに待機して頂き、私がサプウーファー
のコントロールに関して次々と指示をしながら設定を変えていく。

http://www.avantgarde-acoustic.de./produkte/02.php?sprache=en&produkt=duo

後述するが、このサブウーファーは流行のホームシアターなどで5.1ch
システムで使用されるレベルのものではなく、純然たるハイファイ用と
してAvantgardeが設計したものであるということが次第にDUOの素晴ら
しさを実感させていく音質の根底となるものであったのだ。

上記のwebの画像はサブウーファーのリアパネルであるが、上から順番
に各端子の機能を説明していくと次のようになる。

画面の最上部に半分隠れているのはスピーカー入力端子であるが、これ
はパワーアンプとクロスオーバー・ネットワークを内蔵している、いわ
ゆるアクティブ型ウーファーなので、上のドライバーから並列にパワー
アンプからの信号を導き入れるためのスピーカー・レベル入力端子である。
もちろん、プリアンプの出力が複数ある場合には、直接ラインレベルで
入力することも可能であり、そのバランスとアンバランスのライン入力
端子の下に見える小さなトグル・スイッチが「スピーカーレベル」と
「ラインレベル」の切り替えとなっている。

その下の二つ目のトグルスイッチはサブソニック・フィルターの設定で
あり、選択としては25Hz 20Hz 30Hzの選択が可能となっている。

その下の黒いボリューム・ノブだが、上が周波数切り替えで60Hzから
220Hzまでを連続可変としており、一番下のボリュームはMINIからMAX
という表示で出力を調整するようになっている。

映画を見るときに使用するサブ・ウーファーは恐竜の足音がズシーン
と響き渡るような、ちよっとオーバー・ブーストでもいいのだが、こと
音楽再生では大事な要素となってくるので調整は微妙なものがある。

皆様にも低域調整での教訓となると思うのだが、オーケストラで
豊かな低域を前提にして設定すると、今度はスタジオ録音のポップス
やジャズでは出すぎてしまう。

逆にポップスやジャズでのベースを中心にして調整すると、今度は
オーケストラでは全然物足らない低音になってしまうのだ。ここでは
幸いにして、お二人がサポートしてくださったので、上記の各設定項目
について、次から次へと指示をだして変化させ下記のような調整に落ち
ついたのである。ちなみに、ここではスピーカーレベルで入力している。

・サブソニック    20Hz
・フィルター周波数  100Hz
・ボリュームレベル  角度にして三時

これでも、オーケストラでのバランスでは控えめな低域なのだが、この
後に続く試聴で更にこのたった25センチ二発のサブ・ウーファーには驚
きのパフォーマンスが発見されてくるのである。


4.Avantgarde DUOの構成要素を簡単に説明すると…

DUOは外観からもお分かりのように、サブ・ウーファーを含む3ウェイ
構成であり、その核となるのは同社がM2と呼称しているミッドレンジ
ユニットである。これをドライバーがM2、ホーンをH2と命名している。

このM2はDUOのために特別に開発されたものであり、直径170mmに及ぶ
大型の磁気回路、ロングトラベル・ショートボイスコイル構成となって
いる。これは簡単に言うと、磁束が長いボイスコイル・ギャップに対して
短いターン数のボイスコイルがロングストロークで駆動され歪率を制御
するということであり、サブ・ウーファーとの連係を配慮してカットオフ
周波数は何と170Hzという低いレンジまでを再生可能にしているものである。

M2のドーム型の直径100mmのダイヤフラムは、そのドームの後面に特殊な
コーティングを施し強度を高めており、シグナルパスに余分なフィルター
を用いることなくロールオフ周波数を2キロHzまで拡大することに成功
している。つまり、直径100mmもあるダイヤフラムであるが、同社のテク
ノロジーでパッシブ・フィルターで高域を押さえることなく自然な形で
2キロHzというレンジまでをカバーしてトゥイーターにつなぐのである。

トゥイーターのH2は上級機であるTRIOのH3の派生型であり、わずかにスペ
ックを縮小したものである。まるでエレクトロスタティック型スピーカー
のようにスムーズでフラットな周波数特性でありながら、1インチのドラ
イバーに対して何と、3Kgという超重量級の磁気回路を有しており、微小な
信号にもアキュレートなー反応を示し、強力な音圧に対してもホーンの
コンプレッション効果に頼らない再生を可能としている。

このトゥイーターのホーンはSH1801と呼ばれており、このサポートにより
下は900Hzまでを再生可能にしながら、パッシブ・ネットワークによって
2キロHz以上を受け持たせるという余裕を与えているのである。

これらのホーンは高品位ポリマーである高純度ABSで作られており、その
整形の過程では2,500トンの圧力で鋳造の樹脂が高精度の鋼型に注入され
100%同一なホーン形状を生産できるようにしている。これはチャンネル
間のわずかな誤差を完全に取り去るために重要なポイントとして同社は
力説しているものだ。

そして、サブ・ウーファーはSUB225 CTRLという名称であり、リアルタイム
で25センチウーファーの挙動を察知するフィードバックループを有する250W
の内蔵パワーアンプによって駆動される。これによって18Hzまで再生可能と
しており、振動板はロングストロークを可能として相当な音圧にも高速反応
を可能としている。

このSUB225 CTRLのボディーは幅30センチ、奥行き55センチと大変にコンパ
クトでありながら、厚みが30mmというMDFによってエンクロージャーが構成
されている。これほどの小型なサブ・ウーファーながら驚くほどのパフォー
マンスを発揮し、DUOの音質を根底から支えているのである。

最後に、DUOの独特のデザインである二つのホーンとサブ・ウーファーを
両側から挟みこんで固定している三本のスティール・フレームだが、場合
によってはミミッドレンジとトゥイーターの上下位置を逆転させることで
色々な部屋での最適ポジションを設定することも可能である。つまり直径
67センチの大きなミッドレンジを下にトゥイーターを上に取り付けること
でDUOの全高をわずか90センチ程度まで小型化することもできるのである。

また、強力なサブ・ウーファーもこのフレームを使って床からフローティ
ングさせるという固定方法もあり、またはSUB225 CTRLを直接スパイクで
床に置くという二通りの設定も可能ということで、様々な室内環境への
対応を可能にしているのである。実に巧妙な設計がシンプルなデザインに
隠されているということをぜひ述べておきたい!!


5.苦手から一挙に推奨スピーカーの筆頭に…

今回のDUOの滞在期間は短い、しかもセッティングした翌日は私は定休日。
更に毎月20日の締め日で営業の実績追求にまず全力を挙げなければならず、
更にじっくりと試聴しようと思った矢先にお客様が来られたりで中々腰を
すえて聴けない時間が続いていた。しかし、そんな私を強制的に席に着く
ように考え方を変えさせた出来事があった。

ラッセル・ワトソンのヴォーカルは私がこれまでに抱いていたホーン・
スピーカーへの疑念をあっという間に突き崩すだけの魅力があったのだが、
オーケストラをバックにした雄大な広がりと展開の曲であれば、私の求め
る要素の半分しか満たしたことにならない。

スタジオ録音の緻密な定位、鮮明な輪郭表現、演出として付加されたリヴ
ァーブのいわゆるエコー感の再現性、そしてリズム楽器の目が覚めるほど
鮮烈なアタック、これらの要素が確認できなければ、たえず広角レンズで
とらえた風景のごとく、遠目の視野で心地良いだけのスピーカーというこ
とになってしまうだろう。そこで、この選曲である!!

           -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

思えば、デビュー当時から大ファンでありながら、ことオーディオシステ
ムの試聴評価には一度も登場せず、しかし、ここの試聴ディスクのラック
には何枚もコレクションがある“山下達郎”の登場である!!

http://www.warnermusic.co.jp/artists/domestic/tatsuro/index.html

こと音楽に関しては貪欲で雑食主義の私は、ハイファイを追求するにして
も多種多様な選曲でコンポーネントを評価しているのだが、“山下達郎”
は当社のお得意様でもあり、敬称を付けてお呼びしなければいけないの
だろうが、お取り引きをさせて頂くずっずっと前からのファンとして、
あえて親しみを込めて“達郎”とここでは表記させて頂こう。達郎さん
を担当する当社の営業マンには、まずここでお許しを得ておかねば(^^ゞ

さて、達郎の最新アルバム「レアリティーズ」をかけたことからDUOの
評価は不動のものとなった。その5トラック目、達郎のヴォーカルに
ほとんどリヴァーブをかけていない「MISTY MAUVE」が凄い!!

まず、強力なドラムのイントロがDUOのサブ・ウーファーがたった25セ
ンチしかないということを完全に記憶からもぎ取ってしまった!!
このドラムスの何と重たく、しかもハイスピードな展開であることか。
数百リットルという内容積の大きさ、そして38センチ口径という
大きさを声高に吹聴していた時代のスピーカーから発する低域とは
比較にならないハイ・テンションのドラムが目の前で叩き出される。
このイントロを聴いただけで私はノックダウンしてしまった!!

こんな低域を叩き出すホーン・スピーカーはなかった!!

ミッドレンジと高域のホーンをエンクロージャーに組み込んでみると
必然的に大きなキャビネットになり、かつ大きなキャビネットの内部
で蓄積された低域がチューニングされたバスレフ・ポートからたいそう
位相を遅らせて排出される音とは根底から違うのである。

この低域の強烈なアタックがたった幅30センチ、高さ55センチ、奥行き
55センチ、という小さな? 箱から叩きだされているとは誰も想像できな
いであろう。そして、前述のようにサブ・ウーファーのコントロールに
よって色々なルームアコースティックに対応できるという柔軟性は私た
ち日本のユーザーにとってどれほどありがたいことか!! 更にミッドレン
ジをトゥイーターの下にもってくることで高さも90センチ程度に抑える
ことが出来るのであれば、ハンドリングできる部屋の大きさもずっと
小さくてすむであろう。

そして、「MISTY MAUVE〜!!」とバックコーラスとギターが入ってくるが、
意外にもNautilusシリーズなどに比較すれば奥行き感の再現は苦手であ
ろうと思っていたのに、このバックコーラスが十分なエコー感をともな
っているので遠近感は十分に達郎のヴォーカルとの対比を付けて奥に位
置してくれるのがうれしい。

達郎のヴォーカルがやってきた!!

「おー!! こんな達郎は聴いたことがないぞ!!」

この時のリアルさをどのように表現したものか、体験したことがないだ
けに言葉に困ってしまった。一言で言えば、ヴォーカルのすべてがそこ
にあるということだろうか。言い換えれば、私がこれまでに推奨してき
たハイエンド・スピーカーと言われる音場感を克明に描き出すタイプの
スピーカーは三次元的な音波の拡散によって、空間に楽音を浮かび上が
らせるという再現性が魅力であったはずだ。

しかし、Avantgardeを一度聴いてしまうと、スピーカーに求められる要
素として1インチのトゥイーターが360度の空間に向かって音波を放射し、
リスナー以外の空間にいかに多くのエネルギーを発射してきたのかを
考えされられてしまうのである。

つまり、今まで私が主流としてきたスピーカーたちは、ヴォーカルの
エネルギーを、あたかも両手ですくい上げた砂が指の間からさらさら
とこぼれ落ちてしまっていたように感じさせられるのである。しかし、
Avantgardeはヴォーカルの質感をハイビジョン画像のような鮮明さで
私に平然と投げかけてくるのである。そのエネルギー感、躍動感、
温度感、ヴォーカルのすべての要素がこれほどまでにも多様であった
のか、そして、それが聴き取れると言うことは何と感動的なことか!!

「このヴォーカルは“凄い!!”を何乗しても言い尽くせないよ!!」

この曲「MISTY MAUVE」では演奏の途中でまったく無音になる演出が
あるのだが、そこから再度ドラムが左右チャンネルを駆け巡るパート
があるのだが、その切れ味たるや気分爽快の一言である。これはいい!!

           -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

さて、次は15トラック目の「いつか晴れた日に」にジャンプする。
これは達郎が気軽なリハーサルでもしているのだろうか? と思われる
物音がしたと思うと、リズムボックスが軽妙なリズムを刻みはじめ
達郎自身のギターがイントロを引き始めるアンプラグド風の曲だ。

ノン・エコーの達郎の声は私も多分始めて聴いたと思うのだが、これ
がAvantgardeから放射されたとき、私は背筋にぞくっとするような感
動が這い上がってきた。これは凄い!!

陳腐な表現だが、達郎がそこで歌っているような…、ではない!!

「Avantgardeの前に表れたのは達郎そのものなのである!!」

冷静で正確なギターとリズムボックスの伴奏とは裏腹に、達郎の声の
テンションが躍動し、時折鼻にかかった息抜きがジュルッとマイクに
拾われた音までありのままに、いや!!ありのままという実体験を私も
初めてAvantgardeによって得ることが出来たのである。


6.この私を“やみつき”にしてしまったAvantgarde!!

私は新製品の評価を終えてしまうと、試聴室には接客とシステムの
調整・セッティング意外には入り浸りになることはない。皆様も
ご存知のように私のデスクワークの大半は、数分ごとに次々に受信
される皆様からのメールへの応答と、このレビューや種々のwebの
更新、もちろんマネージャーとしての仕事もたくさんあるなかで
コンピューターの前で過ごす時間が仕事の大半を占めることが普通
になっているのである。

しかし、Avantgardeがここにあるうちに聴きたい、聴きなおしたい
という誘惑にかられてヴォーカル・アルバムを次から次にと持ち出
してきては試聴するということを繰り返していたのである。達郎の
奥様である竹内マリアを筆頭に? その数たるや今までになかった程
の曲を“楽しんでいる私”がそこにいたのである。

コンポーネントを分析・評価することが終われば、後は接客の必要
に応じてシステムを演奏する…、そんな私が心から音楽を聴きたい
という誘惑に抗し切れなかった数日間は前代未聞であろう。

私はホーン・スピーカーに大いなる偏見を持っていたのだろうか!?

いや、違う!! それはAvantgardeであるからこそ、私の理想に対して
他社とは異なるアプローチで見事に正解を導き出せたに過ぎない。
やはり、冒頭で述べている特長を有するスピーカーは厳然として
存在しているのである。

スピーカーのデザイン、プロポーションを洗練することで三次元的
な音場感を再現する一群のスピーカーに対する評価は変わることは
ない。しかし、Avantgardeの出現は、もっとダイレクトに演奏者の
パッションを聴き手に伝えてくれるスピーカーの進化形であろう。

それはホーン・スピーカーをどのように理解し、どのようにシステ
ムとして組み上げていくか、既存のボックスキャビネットにホーン
を格納したスピーカーとは一線を画するものであり、まさにハイエ
ンド・オーディオにおける前衛的スタイルを確立したAvantgardeの
名に恥じない音楽性を日本のユーザーにも提供できるようになった
ということなのだ!!

          -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

さあ、これで私の仕事を私自身が仕事量として増大させ、皆様に
ご紹介していくという大いなる動機が宿ったことになる。積極
果敢にAvantgardeを皆様にご紹介することで、どうか一人でも
多くの皆様に私と同じ感動を共有して頂ければと願うのみだ!!

きっと皆様を虜にする Avantgarde の日本における発祥地として
私がセットアップした Avantgarde を皆様に体験して頂くために
ここH.A.L.があるのです!!


このページはダイナフォーファイブ(5555):川又が担当しています。
担当川又 TEL:(03)3253−5555 FAX:(03)3253−5556
E−mail:kawamata@dynamicaudio.jp
お店の場所はココの(5)です。お気軽に遊びに来てください!!

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