発行元 株式会社ダイナミックオーディオ
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H.A.L.担当 川又利明


No.191「私のレベルで酔いしれる音、ここに現る!!」

2002年3月8日私が待ちに待った瞬間がやってきた。
そう、GOLDMUNDのフルMillenniumシリーズの初めての体験である。
まずは今回セッティングされたラインアップを以下にご紹介しましょう。

・GOLDMUND Millennium mono power amp     \13.000.000.

http://www.stellavox-japan.co.jp/goldmund/gmproduct/index.html#Anchor564958

・GOLDMUND MM22 Millennium Evolution pre amp \4.300.000.

http://www.stellavox-japan.co.jp/goldmund/gmproduct/index.html#Anchor509861

・GOLDMUND MM20 Millennium Evolution DAC   \4.300.000.

http://www.stellavox-japan.co.jp/goldmund/gmproduct/index.html#Anchor483709

・GOLDMUND EIDOS38  CD/DVD TRANSPORT     \1.980.000.

http://www.stellavox-japan.co.jp/goldmund/gmproduct/index.html#Anchor915965


フロントエンドの電源ケーブルはすべてAC DOMINUS、デジタル/インターコネ
クトはいずれもGOLDMUND LINEAL 、パワーアンプの電源ケーブルのみGOLDMUND、
スピーカーケーブルはDOMINUSバイ・ワイヤーという布陣でB&W Signature 800。

昨日、セッティング完了時にちょっとだけ試験的に音を出したものだが、その時
点で既に極上の演奏がのっけから始まったのには脱帽と思いであった。そして、
例のPAD SYSTEM ENHANCERによる約15時間のバーンインを終えたのが今朝。

私はそそくさと試聴室にこもり各曲でのチェックを始めたものだった…。

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                            << 2002.3.9. >>

最初はやっぱりこれ!!「Muse」UCCS-1002 の一曲目、FILIPPA GIORDANOの
カルメン「ハバネラ」をかける。
http://www.universal-music.co.jp/classics/muse/muse.htm

「おいおいおい〜、ちょっと桁が違うぞ!! これは!?」

Signature 800(以後S800と表記)で聴くFILIPPAは以前のレポートでも
取り上げたように耳に大タコが出来る程に数え切れないほど聴いてきた。
しかし…、今この眼前で展開されているヴォーカルのクオリティーを
どのように言葉にしたらいいのだろうか…!?
ありふれた表現だが「実在感」というのはどうだろうか…。

今までFILIPPAの歌声によってイメージされる彼女はCDジャケットと同じ
顔が見えていたものだったと、今日の演奏を聴いて再認識させられた。
そして、フルMillenniumシリーズで聴く今日のFILIPPAは彼女の等身大
の姿を思い浮かばせるのである。ちよっと、月並みな表現であるが、
実はそのような印象を感じるためには次に述べるような情報量が必要
であるということだ。

まず、ヴォーカルも含めたすべての楽音の色彩感が見事なほどに色濃い。

S800の発する空間表現はオリジナルNautilusを除く他のスピーカーに
比べれば極めて広大な空気感をもたらしてくれる。それを前提にS800
に対して望むべき能力のコンポーネントとは何か!? 今、この目の前で
演奏されている音楽には楽音の発するエネルギーが空間に無駄に拡散
してしまうことがないのである。限りなく極小の音像を結び、一ミリ
のずれもなくフォーカスが決定し、その結果中空に浮かび上がる音像
は大変に濃厚な色彩感を持っている。乾燥した砂で、砂山を作ろうと
しても、さらさらと砂が崩れてしまい山の頂は一向に高くなっていか
ないもどかしさがこれまでの再生音だとしよう。つまり、上から俯瞰
すると砂山の裾野はサラサラと広がる一歩で面積が大きくなっていく
だけという例えでご理解頂ければと思う。ところが、フルMillennium
で再生される楽音では、砂に霧吹きで湿り気を与えながら鋭く切り立
った頂の形を苦もなく砂で作り上げているようなものなのである。
これを俯瞰すると、面積は最小でありながら砂山の高さはそそり立つ
程であり、地図の等高線がそうであるように標高が高くなるにつれて
楽音の色彩感は濃厚になっていく。こんな例えでいかがだろうか!?


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さて、次は早速注目の課題曲が待っていた。
「IZZY」の「リベラ・メ」UCCL-1008 の一曲目「バイレロ」である。
http://www.universal-music.co.jp/classics/special/izzy/index.htm

「ちょっと待ってよ!! これなんで…こんなに…!?」

出だしのハープのテンションはピンと張り詰められ、ピッチカートの
瞬間に弦が空気を切り裂くような勢いが感じられる。そして…、そう
トライアングルが叩かれたときの鮮明さは本当にこれまでに経験の
ない鮮やかさではないか!! そして、そこから噴出するエコーの何と
長く美しい消え方であることか…!! そうなんです、前述のように
砂山は切り立っているだけではなく、実は山脈のごとく余韻という
なだらかな裾野が広大に砂山の周辺に広がっているということが
ここでわかってきたのである。

そして、IZZYのヴォーカルが入ってくると…。「おおっ…!!」と私は、
思わず天井を見上げてしまったのである。

えっ、こんなに広かったの!?

とスタジオワークで絶妙に脚色された擬似ホールエコーがまあなんと
も広がる広がる…、それも上に奥に、天井の向こう側まで伸びていく
エコーがたなびいていくではないか!! 今までに私でも経験がない。
再生音楽に鮮度があるとしたら、正に活魚のごとく目の前の中空の
水槽で楽音が泳ぎまわってキラキラとその美しい体表の輝きを愛でる
思いである。これは経験しないとわかって頂けないものだろう!?

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さて、流れていくような楽曲の美しさは前例がないレベルで十二分に
私を説得してくれたフルMillenniumは打楽器の表現性でも私を打ちの
めしてくれた。いや、そのときの驚きの方が大きかったと言っても

「TRIBUTE TO ELLINGTON」DANIEL BARENBOIM AND GUESTS」
http://www.daniel-barenboim.com/recordings/398425252.htm

次にはドラムを聴きたい…ということで13トラック目の「Take the
'A' Train」の冒頭、ドラムロールを聴いてみることにする。

このイントロ部分も色々とテストに使ってきたものだが、トランジェン
トを最も重要視したS800の低域再生において、正直に言ってこれほど
引き締まった叩かれる低音を聴いたことはなかった。今まで、これで
十分に締め込んだと思っていたボルトが、大きなレンチに持ち替えた
とたんにふたまわりも余計にきゅっと締め付けが出来たような印象
なのである。とにかく、今までの常識では最高に締め上げた状態と
思っていたはずなのに、更に高速化したウーファーの反応には驚く
ばかりであった。

             -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

さて、何とか今日の感動は即日中にお知らせしたいと思っていたの
だが、店頭での接客も相次ぎ時間が迫ってきた。そして、先に配信
したT・I様のご来店もあったりと、本日はいったん締めくくり、
PAD SYSTEM ENHANCERによる二晩目のバーンインをすることにした。

何といっても、以下で述べているように三日目から本領発揮という
経験があるので、今一晩の熟成は価値あるものになるだろう。
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/146.html

                            << 2002.3.10. >>

好天に恵まれた日曜日、いよいよ三日目のバーンインの進捗状況に
期待しつつ試聴室に入る。昨日の夕方から、例の真鍮製のフェイズ
プラグに交換してS800も含めたシステムの浄化が進行したようだ。
不思議なもので、小さな音量で鳴らしていても、試聴室に入った
瞬間から演奏されている楽音の質感に新鮮さを感じるから不思議だ。
まずは「Muse」、FILIPPA GIORDANOの「ハバネラ」、そして「IZZY」
の「リベラ・メ」を聴きなおす。

「あれ〜、ほぐれてるな〜これ!!」

と第一印象で昨日との相違が安心感を高める。続いてBARENBOIMの
「Take the 'A' Train」の冒頭でもチェックする。…なるほど。

昨日のキリキリッとした引き締め効果は同様なのだが、打撃音の
あとに更に余韻感が豊富に感じられるのでドラムの連打でも潤い
を感じることが出来る。刺激成分が極限まで払拭されると、ボリ
ュームを上げていっても全然苦にならない。気がついてみると
MM22 Millenniumのボリュームは最大の99.9までになっているが
爽快なドラムは破綻する兆候など微塵も見せずに抜群の切れ込み
とブレーキングでS800のウーファーをがっちりとコントロール
している。これはいい!! この低域の制動感に触発されて、また
もやちょっとした実験が頭に浮かんできた。


今年になってからだろうか…、盛んにテレビに流れる日産STAGEAの
CFソング「WE WILL ROCK YOU」が大変に気になってしかたがなかった。
日産のサイトを探してみてもCFに関する情報はなく、歌っているのが
誰なのか、わからずじまいにいたのだが、ある日お得意様のひとり
が持参されたディスクを聴いて「あー、これだ!!」と狂喜した。
そう、何とKeiko Leeだったとは想像もつかなかった。
そして、早速取り寄せたシングル盤がこれ。

「ウィ・ウィル・ロック・ユー」(マキシシングル)SICP-45
http://www.sonymusic.co.jp/Music/Arch/SR/KeikoLee/SICP-45/

しかし、曲は好きなのだが…、このディスクを試聴室で思いっきり
かけたいという気持ちにさせる音質ではなかった。私もカーラジオ
やテレビで聴く分には楽しめるなー、と思っていたのだが、ここの
システムで再生するとどうもよろしくない。ストレスを感じる。

そして、今年2/6に発売になった初のベスト・アルバムにも同じ曲が
収録されるというので、予約をしておいたのがこれである。

http://www.sonymusic.co.jp/Music/Arch/SR/KeikoLee/SICP-46/

さて、この二枚に同じ「WE WILL ROCK YOU」が収録されている。
先日もFILIPPA GIORDANOとIZZYの曲で「Muse」とオリジナル盤では
音質が違うということを発見したばかりなのだが、今回のKeiko Lee
についても同様な興味が起こったものだ。しかし…、シングル盤と
言えども12センチ盤であり、果たして音質が違うものなのだろうか?

実は、結果は簡単に出てしまった。シングル盤の「WE WILL ROCK YOU」
では、簡単に言えば「ドンシャリ」なのである。低域も解像度より
は量感をどっと振りまくような大盤振る舞いであり、高域はギラギラ
するような印象が強い。だから、こちらは試聴には使わなくなって
しまったものだった。しかし、アルバムでのは明らかにマスタリング
が違うのである。「ゴツン、ゴツン…」と聴こえなくもない低域の
リズムは輪郭が明らかになっているし、高域のギラツキもない。

シングル盤を購入される客層が使用する再生装置では、少し「ドン
シャリ」の音作りの方がウケがいいというマーケティングなのだろう
か、とにかくアルバムの同曲を聴いて、やっと私はこれまでのKeiko
Leeの作品と同じレベルで好きな曲を評価できるようになった。

その「WE WILL ROCK YOU」をこのシステムでかけてみたのである。
まず、低域に関する以前の印象はあっさりと姿を消してしまった。
S800のダイエットされた低域に更にフルMillenniumのサプリメント
が効いたのか、何らかのパーカッションをサンプリングして合成した
と思われる低域の「ゴツン、ゴツン…」というイントロがこれほど
鮮明な輪郭を表すとは思ってもみなかった。Keiko Leeの背景にギラ
ギラしていたような高音階のアクセントはなくなり、澄み切った
音色でヴォーカルの背景に星が瞬いているような美しさで展開する。

「いやはや、変われば変わるものだ!」

             -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

日頃私たちが何気なく窓ガラスを通して見ている風景があったとする。
そして、久しぶりにクリーナーを使ってガラスをキュッキュッとふき
あげて再び窓を閉めたとしましょう。そのときになって初めて、今まで
見ていた景色は認識していなかった汚れのあるガラスを通して見て
いたんだ…、と初めて気がつくような思いが今回のまとめです。

とにかく、ノイズフロアーが低下し、楽音の輪郭をにじませている
要素を極限まで払拭し、鮮明な視野を手に入れたときの驚きがフル
Millenniumのシステムによって唖然とするほど簡単に目の前に現れ
たのである。

血統を重んじるGOLDMUNDが本当に目指している理想とは何か!?

このフルMillenniumを聴いてから皆様個々のペースに合わせたコンポー
ネントの選択に進んでいかれるよう強くお勧めしたい。間違いなく
フルMillenniumは皆様に体験したことのない演奏の世界を提示し、それ
によって皆様の常識と既成概念を打ち破って新たな指標が発見される
ことと思います。どうぞ本当のGOLDMUNDが目指すベクトルを皆様の
頭脳にご記憶頂ければと願うものです。

一見の…いや、一聴の価値ありのフルMillenniumをぜひお試し下さい。

このページはダイナフォーファイブ(5555):川又が担当しています。
担当川又 TEL:(03)3253−5555 FAX:(03)3253−5556
E−mail:kawamata@dynamicaudio.jp
お店の場所はココの(5)です。お気軽に遊びに来てください!!

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