H.A.L.'s Brief News
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2026年2月5日 No.1851
 H.A.L.'s One point impression & Hidden Story-MARTEN Coltrane Quintet Statement Edition- Vol.3 -

■H.A.L.'s One point impression & Hidden Story-MARTEN Coltrane Quintet Statement Edition■


                              - Vol.3 -

H.A.L.'s Sound Recipe / MARTEN Coltrane Quintet SE - inspection system				
https://www.dynamicaudio.jp/s/20260106161835.pdf

上記システム構成は変わりませんが、ウーファーの二次共振回路がもたらす変化を
どのように解読していくかという視点から、先ずは一種の伴奏楽器とヴォーカルという
シンプルなデュオの選曲から試聴開始することに。これも以前より多用している二曲。

■DIANA KRALL「LOVE SCENES」11.My Love Is
http://www.universal-music.co.jp/diana-krall/products/uccv-9378/
https://www.universal-music.co.jp/diana-krall/products/uccu-5963/

DIANA KRALLのパルシブなフィンガースナップが印象的な曲。Christian McBrideの
ウッドペースは力強いピッチカートで弾け、ぐっと重量感を伴い沈み込んでいく
ベースが実に鮮明な輪郭を描きながら冒頭から展開する。

この曲でのウッドベースはノンリバーブでドライな音質で録音されており、
ソリッドで輪郭が鮮明な低弦の質感がくっきりと表現されている。

それに対してヴォーカルには巧妙なリバーブで上下左右に拡散していく余韻感を
演出的に施しており、同時にDIANA KRALLのフィンガースナップがパシ!パシン!と
鋭い音で弾ける音に関しても長い余韻を中空に広げていくという音作りの妙がある。

同じ空間で両者が演奏したら絶対に起こり得ない絶妙な音響的コスメティックだ!
今後は前述の4段階によるクリックのノブを左回転させる次の順番で聴いていく事に。

(4)二次共振回路なし通常のバスレフ状態。上記で設計者Leif Oloffsonの作品を
 弁護する表現をしていたように「ゆったりと解放感のある音と言えなくもない」
 私のように職業柄ハイエンドと言えるスピーカーを多数聴いていなければ、
 そして私のような発想で音質評価をするような人でなければ何も問題なく
 最上級の音質評価をされるであろう再生音であることを先ず述べておきたい。

(3)同じウーファーなのか?まさかトーンコントロールのBASSを2クリック上げたのか?
  ベースの音色が変わり音像が締まり始めた変化の第一歩。これは誰が聴いても分かる。

(2)ベースに関しては上記の変化のベクトルを伸長させる変化。ただ私はここで
 ヴォーカルとフィンガースナップの質感に関して?と思われる微妙な変化の兆候を
 Coltrane Quintet SEが有する素晴らしいミッドハイレンジの再生音で感じ始めた。

(1)ベースのピッチカートの瞬間が劇的に鮮明になり以前の音像サイズより凝縮される。
 弦を弾いた瞬間の分解能が向上し、同時に楽音のテンションも高まっている。これはいい! 

 二次共振回路が機能し始めた上記の変化によりベースの重量感が増加しているのは同じく、
 その弦の響きが膨らまず長引かず的確なブレーキ効果によって制動されているという実感!

 https://www.dynamicaudio.jp/s/20260107175100.jpg

  前章で何度も紹介した上記のグラフにおいて赤いカーブ(1)がウーファーの音響出力と
 電気的な二次共振回路の出力において60Hz付近から同一レベルに合流している事を思い出す。

静特性のグラフによってウーファーの実効出力が抑えられ制動されるという見方をするのだが、
実際にはその上下の周波数帯域にも抑止力が波及しているのではないかと推測する。

(4)が最も大きな出力特性であることと対比して、耳で感じた楽音の変化はウーファーに
対するブレーキ効果を二次共振周波数の両側にあるはずの、グラフには表記されていない
Qの減衰カーブによる作用ではないかと推測する。

この曲の最初から50秒間はフィンガースナップとベースだけの演奏。上記の(2)で感じた
ミッドハイレンジの微妙な変化に私の視線が向いていく。なにかある!?

二次共振回路がオクターブ上下の周波数で機能していると仮定すると、(3)から(2)へ更に
(1)の変化もレベルの違いこそあれ、この微妙な変化が気になって来る。どういうことか?

深いリバーブがかけられたフィンガースナップが発する余韻の拡散領域が広くなり、
音像が小型化したヴォーカルの残響成分が広がっていくエリアが拡大されているのでは?
低域の変化だけでなく何かがある!? さあ、次の選曲だ!

■Cheryl Bentyne「THE COLE PORTER SONGBOOK」より11.Bigin The Bigin

2009年リリースされたアルバムに納められている一曲ですが伴奏はドラムだけ!
そのドラマーの名はDave Tull。下記にてアーチストのリンクを紹介しておきます。
https://davidtull.com/

このCDは大分前に廃盤となっておりレーベルのデータも現在は存在していない。
適切なURLの掲載は出来ないのでネット検索して内容をご覧頂ければと思います。

冒頭の7秒間はドラムソロ。このキックドラムは印象的であり、スタジオでの音質的
加工が施されていない空気感をはらむアコースティックな打音。ビーターがドラム
ヘッドを叩く瞬間から周辺に残響が広がっていく過程が観察できる好サンプルでもある。

(4)通常のバスレフ状態。4拍子のリズムで響くキックドラムで私はたちどころに
 バスレフポートの存在を感じてしまう。無理やり言葉にすれば「ボッ!」の一語。
 残響が存在するのは承知の上だが、これこそエンジンブレーキのかからない音。

(3)前記のグラフで言えば(黄)という特性で、二次共振回路とウーファーの出力特性は
 90Hzくらいで合流しているもの。やはりキックドラムの質感は重くなり打音の音像は
 センターに集中してくるが言葉にすれば「ドッ!」か。推測通りで結構冷静に聴いていく。

(2)更に打音の時間軸は短縮されている二番目(緑)で二者のカーブは85Hzくらいで
 合流しているという特性。瞬発的なドラムの低音でも前曲同様の変化を確認する。

 ここまで観察していると、どうも(3)と(2)の違いは議論するほどではなかろうと
 いう気持ちになってくる。これも言葉にすれば「ドッ!」と表現できるだろう。

 そして、同じくキックドラムの背後で軽快に叩かれる切れのいいタムの質感と
 肝心なヴォーカルの質感も微妙に変化し始めたのが感じ取れる。これは…!?

(1)これです!この打音!無理やり文字お越しすれば「バッ!」だろうか。閉じた唇から
  発する破裂音に近い?稚拙な表現ではあるが最も短い時間軸での打音として言いたい
 キックドラムの音像が凝縮され同時に重量感とテンションの高まりが発揮された音!

  前曲のベースとは違い打楽器の低音に関して赤いカーブ(1)の特性が瞬発的なドラムの
 打音に対してもたらした変化は、共振峰の両側にあるはずの減衰特性によって
 定量化やグラフ化が出来ないブレーキ効果をもたらしいてるのではと推測が強まる。

私より音響工学、電子工学に見識のある方々であれば、共振周波数特性を単独で
測定すれば見えるはずの急峻な減衰特性があるとしても、総合的な出力音圧特性の
エンベローブとして測定グラフに表れないのであれば、その作用を断定することは
出来ない、と言われてしまえばそれまでですが、それは静特性においての事。

多数の倍音と複雑な波形とダイナミックな動特性による音楽信号が共振回路を経ることで、
どのような影響を受けるのかという事は誰しも断言出来るものではないでしょう。

ここで私は設計者Leif Oloffsonのコメントを思い出すのです。

「その理由は、多くの楽器や人間の声が140Hz以下にサブハーモニクス成分を持っており、
 それが知覚される音色バランスに影響を与えるためです。今回の調整機能は、この音色
 バランスを部屋ごとに適正化する上で非常に有用であると感じました。」

自然界の音、楽音、人の声、などには倍音があり、基音の整数倍の周波数を持つ音の
成分が存在しますが、逆に基音の整数分の一という低い周波数に向けて存在するのが
サブハーモニクスです。

一般的なスピーカーで2ウェイ以上のマルチウエイスピーカーでは、この倍音に関しては
各帯域を受け持つスピーカーユニットとクロスオーバーネットワークの設計によって、
高い周波数に向けての忠実性という追求がなされますが、サブハーモニクスに言及する
スピーカーメーカーというものは私の経験からも初めてかもしれません。

よって私はColtrane Quintet SEのウーファーが170Hzのクロスオーバー周波数で設定され、
二次共振周波数を80Hzから90Hzに設定するという発想と設計を行ったLeif Oloffsonは、
それら周波数の1/2、1/4と言う下方の低い周波数に存在するサブハーモニクスを意識して
いるからこそ、それを制御するための手段としてポート共振の他にも電子的な共振回路を
開発し、その二次共振は低音の増量という目的よりは意図的な減衰効果、つまり私が言う
ところのブレーキ効果によって他社が出来なかった低域再生の新機軸を開発したのでは
ないかと考えているのです。

そして更に上記に述べているように(3)から(2)へと試聴するうちに、ミッドハイレンジに
関する微妙な変化というポイントを指摘しましたが、これも前述の二次共振周波数が
上方向の倍音に作用しているのではないかと次なる仮説を私は唱え始めたのです。
そこで同じアルバムから次の選曲です。

■Cheryl Bentyne「THE COLE PORTER SONGBOOK」5.You'd Be So Nice To Come Home To

上記の一種の伴奏楽器とヴォーカルのデュオという最小編成の選曲とは違い、
ピアノトリオにギターが加わったカルテットの録音。これがまたいかしている!

冒頭から40秒間は前曲同様にヴォーカルとドラムだけだが、この時Cheryl Bentyneが
スキャットで歌うのはバッハのパルティータ第二番のシンフォニアのメロディー!

1942年発表のCOLE PORTERの原曲に大変おしゃれなアレンジを加えた一曲で私は更に
Coltrane Quintet SEの魅力を発見することに…!

(4)二次共振回路オフでの音。ただMARTENというブランドと設計者を弁護するのであれば、
 この曲での冒頭のドラムの音に関しては曲の雰囲気を損なうものではなく、
 ステージに近い残響をイメージさせる音像サイズの配分が行われているという
 要素を述べておかなければならないだろう。

 冒頭でのスキャットのヴォーカルに対して、ややゆったりした音像のキックドラムは
 再生音場感のあり方を肯定的に提示しているもので違和感はない。これはこれでいい!

(3)二次共振回路の存在感がいきなりキックドラムで示され、変化の方向性は上記同様。
 ただ驚くべことにヴォーカルの質感が変化し、続くギターの音色も変わったことに驚く。

 その両者ともに音像の輪郭がくっきりはっきりしてくる。これはとてもいい!
  ウーファーに及ぼす変化がミッドハイレンジまで到達しているという事実を直観する。

(2)これはどうも(3)と(2)の違いは議論するほどではなかろうと前述したが、楽音の数が
 増えたことにも関係してか、低域の変化量は大差なしとして特にギターの質感が大きく
 変化したように私は感じ取った。(3)でのギターは開放的な鳴りっぷりであったが
 ここでは多少残響感が減少しピックの弾き方がおとなしくなったように聴こえる。

(1)いやはや…、この変化量は以前よりも大きい。キックドラムの打音は明確に一打
 ずつが区切られて音像がすっきりし、インパクトの一瞬後にブレーキがかかる!

  つづくスキャットのヴォーカルは(3)と(2)よりも更に透明感を高めた音像が光り、
 ベースラインのコードがきっちりと聴きとれる解像度の高まりが追加されている。
 
 ドラムのハイハットとシンバルが刻むリズムには周辺を明るくするほどの輝度の
 高まりがみられ、トゥイーターの領分に何が起こったのか戸惑うような変化が凄い!

  あくまでも私の主観であるが、このポジションが私の理想に近いと直観する素晴らしさ!

Coltrane Quintet SEのクロスオーバー周波数は170/1000/6000Hz、ピュアダイヤモンド
トゥイーター、ピュアベリリウム・ミッドハイドライバー、コンベックス・カーボン
ファイバーミッドロードライバー、アルミニウム・サンドイッチウーファーと最新鋭の
スピーカーユニットを搭載し、それらを6dB/octというファーストオーダーのスロープ
特性でつなげている基本設計を思い出す。

これまで特殊な二次共振回路を含むウーファーのあり方にフォーカスしてきたが、
170Hzのオクターブ上で340Hzは-6dB、680Hzで-12dBで、更に1,360Hzでは-18dBという
音響出力を出しているというクロスオーバーネットワークの設計を考えると、
上記の(3)から(1)へという変化の要因が二次共振回路による倍音成分への活性化と
いう副作用と言えるのではなかろうかと思うのです。

Leif Oloffsonはサブハーモニクスに対して「知覚される音色バランスに影響を与える」
と述べていましたが、高域方向へのハーモニクスへも影響していると私は推測したのです!

「一般的なスピーカーで2ウェイ以上のマルチウエイスピーカーでは、この倍音に関しては
 各帯域を受け持つスピーカーユニットとクロスオーバーネットワークの設計によって、
 高い周波数に向けての忠実性という追求がなされますが、サブハーモニクスに言及する
 スピーカーメーカーというものは私の経験からも初めてかもしれません。」

と私は前述していますが、今まで低域再生における二次共振回路を中心に考えてきましたが、
それを有効手段として発揮するための土台としてColtrane Quintet SEの4ウェイという
構成にスポットを当てる必要性があるのでは考え始めました。

MARTENのCOLTRANEシリーズをはじめとする上級スピーカーにてなぜ4ウェイが多いのか!?

この論点としてスピーカーにおける「変調歪」という視点を私は考えています。
「変調歪」とはどういうことか、スピーカーの動作原理から簡単に分かりやすく説明します。

多くの3ウェイスピーカーの場合、一般論としてクロスオーバー周波数を考えると
大体が300Hzから500Hzくらいと4KHzから5KHzくらいに設定しているメーカーが多いと思います。

説明しやすいように仮に400Hzと4KHzのクロスオーバー周波数とすると、ミッドレンジ
ドライバーはこの周波数帯域でのバンドパスフィルターにて駆動されるという事になります。

この場合にワイドレンジな音楽を再生したとしたら、ミッドレンジトライバーは
400Hzと4KHzの音を同時に再生することになりますが、ピストンモーションを繰り返す
振動板は一秒間に400回の往復運動をしながら、その一往復の間に毎秒4,000回という
10倍の細かい振動をしながら前後運動している事になります。

その挙動を1ストロークの時間軸で見ると振動板が前方に動く際にも4,000回の前後運動を
していることになり、同様に後方に動く際にも細かく4,000回の振動を伴っているという事です。

ここで音波のドップラー効果が発生します。振動板が前方に押し出される際には10倍の
細かい振動の周波数が高くなり、逆に振動板が後方に引き込まれる際には周波数が低く
なるという原理です。

この10倍の周波数の格差によって発生するドップラー効果による再生周波数の変調が
再生音の歪という事になり、振動板のストロークが大きいほど音量が大きくなるほど
その歪率は大きくなるという理屈です。

この「変調歪」の対策として2ウェイ以上のマルチウエイスピーカーへの発展という事が、
大分昔からハイファイ再生の手段として多くのスピーカーが誕生してきたものですが、
クロスオーバーネットワークによる位相のずれや各帯域のユニット設計による再生音の
質感の連続性の確保などのデメリット、言い換えれば課題が以前からありました。

上記ではミッドレンジを例に挙げましたが、同様な原理からウーファーにおいても
トゥイーターにおいても「変調歪」発生の原理は存在しているわけであり、それを
いかにして制御していくかはスピーカー設計者の技量と感性次第であると言えます。

以上の観点から私はColtrane Quintet SEを最初に聴いた時から、低域調整機能の
存在は別項目として置いておいて、ミッドハイレンジの再生音の美しさ素晴らしさを
直観的に認めていたものであり、MARTENの上級スピーカーにおける4ウェイ設計の
目的はここにあったのではないかと推察していたものです。

再度Coltrane Quintet SEのクロスオーバー周波数を見直します。

170/1000/6000Hzという設定にて25センチのダブルウーファーによって、3ウェイの
ウーファーよりも半分程度の低い帯域を受け持たせるメリットの大きさ。
しかも前述のように二次共振回路という斬新なテクノロジーを搭載したこと!

更に18センチのミッドロードライバーによる低域再生のトランジェント特性の
素晴らしさが寄与している見事な低音の威力の大きさ!

上記のような原理でトゥイーターにおける「変調歪」発生の負担を大胆に軽減させた
8センチミッドハイドライバーの活用など、スピーカーの音色や質感を妥協なく追求した
MARTENのモノづくりへのこだわりを私は再生音の事実として認め高く評価してきました。

このような視点からウーファーの二次共振回路の存在が、どのように4ウェイの
Coltrane Quintet SEの音質に貢献しているのか、最後の試聴を大編成のホール録音で
確認しようと選曲したオーケストラの課題曲がこれです。

■ベルリオーズ:幻想交響曲/ラヴェル:ラ・ヴァルス [UHQCD]
 指揮者:クラウス・マケラ  楽団:パリ管弦楽団
 https://www.universal-music.co.jp/klaus-makela/products/uccd-45035/
 この幻想交響曲/第5楽章:サバトの夜の夢/魔女の夜宴の夢 

前述のシステム構成紹介でも記しているように今回の試聴ではストリーミング再生は
採用せず、CH Precision D10とC10 Conductor full monoでのCD再生にて行っている。
https://zephyrn.com/ch-precision-d10-sacd-cd-mqacd-transport/
https://zephyrn.com/ch-precision-c10-conductor/

今までの体験からRoonサーバー、LANケーブル、スイッチングハブ、アイソレーターなど
ストリーミング再生における音質変化の外部要因を排除し、ディスク再生という
固定化された音質を私は最も信頼しているという事。

そして、何よりも同じCH Precision C10という同じDACを使ったにしても、今まで何度も
ストリーミング再生とCD再生を比較してきたが、D10におけるディスク再生の音質を
最も高く評価してきたという私の感性による判定に基づくリファレンスを信頼しての事。

9:56という長いトラックですが、この試聴に関しては妥協できず4回も最後まで聴いた。
その結果、前述してきたような4種類の再生音に対して思わぬ新発見と感動があった!

(4)二次共振回路オフでの音。今まで国内でColtrane Quintet SEを実際に聴いた人間が
 何人いたか、またどのようなセッティングと環境で聴いたか分かりませんが、
 上記に述べてきたように本スピーカーの本質的な素晴らしさを知らずに聴いていたのか。

 ここでも最初にMARTENを弁護するのであれば、このオーケストラでも今まで輸入元が
 何も疑わずに他所で鳴らしてきたポジションでの再生音としては上出来としておきます。

 「ゆったりと解放感のある音と言えなくもない」と述べていたようにホールにおける
 大編成オーケストラのスペクタクルな展開は初めて聴いた人々に感動を与える事でしょう。
 
 ところが、以上のような多項目の分析と評価を行ってきた私が当フロアーの環境と
 贅沢なコンポーネントによる厳密な比較の土俵で聴き始めると…!?

(3)二次共振回路が始動開始。これまでのスタジオ録音の課題曲で感じ取ってきた変化が
 オーケストラでも表れてくる。それは先ず最初に冒頭部のささやくような不気味な低弦
 楽器のパートから、木管楽器の鋭いソロパートの発声から、弦楽五部の高音パートの
 かすれるような細かいアルコが展開する情景描写で、不思議なことにステージの照明を
 ふ〜と微妙に暗くしたように感じる空気感の沈静化という現象。これは意外でした!

  この傾向は2:50から始まる荘厳な鐘の音にも継続され、ほんのわずかですが響きを
 抑制したように残響時間が短くなったような印象を受けるのです。

 更に3:17から登場する低音金管楽器チューバによる印象的な主題の提示部に関して、
 (4)よりもしとやかな響き、微妙な余韻感の減少があるように感じられる。なぜ!?

  ただし4分過ぎから展開するコントラバスの重厚な合奏、6分過ぎに繰り返される
 グランカッサの重量感ある響きという低域の制動感が効き始めていることは確認した。

(2)ここでも(3)と(2)の違いをどのように表現するかに悩むところなのだが、ウーファーの
 ブレーキ効果という視点で観察してきた以前の課題曲と同じく、低音楽器の各パートに
 おける(4)との違いは議論するほどではなかろうと思われる。

 ただ上記の課題曲において(3)でのギターの質感が(2)では変化したと述べていましたが、
 同様にオーケストラにおけるヴァイオリンの音色に多少の陰りが生じている事を確認。

 以前のスタジオ録音では高い音階の楽音に関して、二次共振回路が高い周波数に向けて
 ハーモニクスの整理を行っているのではという推測を述べていましたが、ホールの
 空間におけるオーケストラの各パートの楽音に対して残響成分を微妙にコントロール
 することで「変調歪」の抑制効果につながっているのではと考え始めたのです。

 (3)と(2)を聴いた段階で言えることは、(4)の再生音では響きに華やかさがあったという事!

  私は(4)の音質を肯定的に捉え「華やかさ」と表現したが、これには表裏一体の意味がある。

 上記では「変調歪」を簡単に説明しましたが、これは聴感上で誰でもすぐに分かるノイズ、
 ひび割れた音というような極端な異音として認知されるものではなく、楽音の質感や
 音色の変化、そして残響成分の色彩感の変化というもので感じ取れるものが多いのです。

 そして、「変調歪」を回避するための4ウェイ構成とするならば、クロスオーバーネット
 ワークでの帯域分割におけるスロープ特性の傾斜をもっと急激にすべきところですが、
 MARTENは敢えてファーストオーダーの-6dB/octという緩やかなフィルター特性を選択し、
 各ユニットの連携を重んじるという設計方針をとっています。

 このような設計思想がオーケストラ、ホール録音に対する残響成分の取捨選択という
 再生音の傾向として(3)と(2)に表れているのではと考えたのです。

 言い換えれば録音信号により忠実なのは(3)と(2)、それを承知の上で楽しみたい音楽の
 ジャンルとして響きを重視したいクラシック音楽に関して一種の演出的なチューニング
 として(4)の音質を評価してもおかしくないという考え方です。聴いて頂ければ分かります。

 しかし、その論理では今までの低域調整機能は何だったのか? と思われるかもしれませんが、
 次の展開は私の予想を上回るものだったのです!

(1)いやはや…、この変化量は以前よりも大きい。と前述したコメントを再度使いたいのです!
  弦楽器による不気味な音型で始まる冒頭部からしてホールの空間を感じさせる余韻感が凄い!

  クラリネットで奏される固定楽想の変幻自在の旋律は、演奏者の存在感をステージの大空間
 として残響の連鎖をスピーカー中央に展開させ、弦楽器の細かく切り返す音が空間を満たし、
 ホールの空気感を静々と醸し出してくる描写力の向上に驚く!これは素晴らしい!
 
  2:50から始まる鐘は音像を鮮明化し、その余韻はノンブレーキで左右のスピーカーを包み込む
 ように拡散していき、ファゴットが奏するグレゴリオ聖歌『怒りの日』の一節が前回よりも
 豊富な響きとなる!これは素晴らしい!

  そして、3:17から登場するチューバの音源位置は右側のColtrane Quintet SE近くありながら、
 その響きは左側のColtrane Quintet SEがホール対面にある壁面からの反射音として跳ね返し、
 チューバの定位感を(3)と(2)に比べて明確にしながらも芳醇な残響をもたらす威力に驚く!

  低弦楽器の重厚な合奏がうねるように展開し、グランカッサの音像は最も鮮明に描かれ、
 低音の重量感は変わらずに音像が引き締まるという二次共振回路の効能が見事に表れた!

  弦楽器による急速なロンドとなりフーガを交えながら、スピーカーに求められる忠実度を、
 限りなく抑制された「変調歪」への対策として設計された4ウェイ構成によって、
 その最終目的である再生音の美化として結実させた演奏に時間をかけた試聴の成果を見た!

  とにかく自然で滑らかな弦楽器の質感は他に例を見ないものであり、流麗なアルコの音色は
 素晴らしい美しさで再現され、対照的に終結部近くで弓の木部で弦を叩くコル・レーニョ奏法が
 用いられる場面では細かい摩擦音が際立ちながら余韻を残す絶妙な演奏をこなす!

  ミッドハイレンジの二個のスピーカーユニットが連携して醸し出すオーケストラの質感は
 4ウェイ構成の根拠を再生音で示すことに成功しており、長時間の試聴に達成感をもたらした!

 (3)と(2)で感じ取った(4)との対比において音楽鑑賞で許容される演出効果の是非を考えたが、
 何と…それらを包括して(1)で聴いた素晴らしいオーケストラを感動の結論とした!

                                                       Vol.4 へつづく



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