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H.A.L.担当 川又利明
    
2018年2月28日 No.1461
 H.A.L.'s One point essay!! - ホキ美術館と写実音楽

我が家では子供たちが小さい頃から元旦に映画を見に行くことが良くありました。
まあ、どこに出かけても混雑している中で映画館は比較的空いてるし、家族全員で
映画を見るなんてことも正月くらいしかありませんから。子供たちが見たがる
ジブリのアニメとか特撮ものとか今では懐かしい思い出になっています。

しかしながら、子供たちの成長にともなって、そんなミニイベントも近年はなくなり
娘たちは各々の友達らと出かけるようになってしまいましたが、久しぶりに家族全員の
意見が一致したというか、私が提案して話題の「スター・ウォーズ 最後のジェダイ」を
見ることにして、地元に出来た劇場の最新設備でドルビーアトモスというのを初体験してきました。
https://www.tohotheater.jp/service/tcx_dolbyatmos/

本編の上映前にデモ画面でドルビーアトモスをプレゼンするのですが、さすがに
今までの映画館の音というものとは違うな〜と感心しました。まさに音に包まれて
いるという臨場感と迫力が素晴らしいですね〜。

さて、映画が始まるまでは過日も紹介した地元に出来たショッピングモールを
我が家の女性陣とは別行動で散策していたのですが、やはり本屋が面白いという
ことで紀伊國屋書店で時間をつぶしていました。
http://www.sevenpark-ario-kashiwa.jp/web/index.html

この紀伊國屋書店はレイアウトが面白くて、ジャンルごとに平積みディスプレーが
多く取り入れられていて、そこで私はこの本に出会ってしまったのです!!

「写実絵画の新世紀 ホキ美術館コレクション」
http://www.heibonsha.co.jp/book/b238268.html

ここで思い出しましたが、今から24年前に私は次のような一節を述べていました。

             -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

私なりの文章表現で魅力の一端をお伝えしたいと思う。皆様の部屋でスピーカーが
置いてある空間をキャンバスとして例えるなら、こんな絵が浮き上がってくるのを
イメージして頂きたい。

手前には欝蒼とした大きな木立があり、その向こうには陽光をきらめかせる澄んだ湖がある。
そのかなたには裾野が延々と続く緑の山々がある。

この構図を描くのに与えられた道具が万年筆だけだったらどうだろう。
手前の木々の葉っぱが一枚一枚、克明に描かれることでは解像度と切れ味を評価できるだろう。

しかし、なだらかな斜面が深い緑に包まれている山の稜線内の色彩の変化を、同じペン先で
描けるだろうか。また逆に、二インチの平筆一本で同じ絵を描くことは可能だろうか。

湖の水面をなめるように見事に描きあげ、遥かな山の中腹から頂上に向けて段階的にボカシながら、
深い緑から明るい緑へと色彩の変化も絶妙に描けるだろう。

こんな感じが余韻や響きを再現するのに必要な要素となるわけだ。
しかし、木の葉の間から差し込む光と、水辺に映える木々の枝の重なりを描くには
細いペン先が必要になるはずである。

この様に音と音の重なりあいを奥行き感として捕らえるならば、全体的に曖昧な
響きを付け加えるのではなく、一音一音を正確に描写することによって空間の
ディティールを描くという事に結び付いていくのである。

このスピーカーが音像の各論を徹底して鮮明化する事により音楽の総論をより
理解しやすくした事で、自らの指標を見事に証明した事を皆様にご報告したい。

             -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

第十五話「音楽の絵画的鑑賞法による近代スピーカーの進化論」からの引用でした。
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/oto/oto15.html

私は更に聴覚と視覚における美意識のあり方を共有できるのではないかと考えました。

第十七話「リチャード・エステスを見て思うこと」
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/oto/oto17.html

上記の随筆で紹介しているリチャード・エステス展を見に行ったのは1990年でした。
http://www.braintrust-art.com/exhibitions/1990s/richard-estes.html

「11年前の回想から現在へと続く思い。芸術って何だろう!?」
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/180.html

スーパー・リアリズム、ハイパー・リアリズムなどと称される彼の作品を知り、
実物を見た時の感動は今でも鮮明な記憶となっていました。
https://en.wikipedia.org/wiki/Richard_Estes

Richard Estes - Not photos...paintings !!!
https://www.youtube.com/watch?v=q00a0qYntjE

そんな写実主義の絵画に触れる機会がずっとなかったのですが、上記の日本の画家に
よってこんな素晴らしい作品が描かれていたということを初めて知ったのです。

このムック本に出合ったことで、28年前の感動が蘇り、Amazonで検索して同類の
本を見つけて注文してしまったのが下記の一冊でした。

「写実絵画のミューズたち」
http://www.heibonsha.co.jp/book/b314298.html

紀伊國屋書店で写実絵画の新世紀を購入し、ホキ美術館とはどこにあるんだ!?
と最後の方を見てみると何と千葉県にあるという。正月休みも親戚への年賀を
済ませれば1月4日は自由時間がとれる。これは行ってみなければとカーナビで
検索すると自宅から約90分程度で行ける。これは行かなくては!!

ホキ美術館 詳細はぜひ下記サイトでご覧下さい。
https://www.hoki-museum.jp/

何だか昔の恋人に再会するようなわくわく感というか、一種の興奮状態で出発。
道路も空いていてカーナビの到着予定時間がどんどん早まって結果的には一時間
程度で三日前から憧れとなったホキ美術館に到着したのでした。

せっかくだからと来館した記念にマイカーとのツーショット。
http://www.dynamicaudio.jp/file/2018.01.04.01.jpg

開館直後に到着しましたが、連れ立ってやってくる人たちはカップルが多い。
モダンなデザインの建物です。冬晴れの良い天気でした。
http://www.dynamicaudio.jp/file/2018.01.04.02.jpg

私も家内を誘ったのですが、趣味が一致しないとのことで一人で来ましたが正解です。
28年前に新宿で開催されたリチャード・エステス展には家内と幼い長女を連れて
行ったのですが、私がじっくり見入っていても先に行ってしまうので落ち着いて
鑑賞できなかったという思いがあり、気が済むまで作品の前から動かない私なので
今回は一人で行った方が良かったようです。

何時間もかかるだろうと思って館内にあるレストランも予約しておきましたが、
これがまた正解でした。九つもあるギャラリーを午前中に全部見られるわけはないと
思っていたのですが予想通りの展開になりましたから。

それで午前中の早い時間にレストランに行くと誰もいないので、この美術館のweb
サイトで紹介しているレストランの写真に写っていた一番奥の席に座りました。
https://www.hoki-museum.jp/facility/index.html#section01

その席からベランダの彫刻が間近に見えるので記念撮影。
http://www.dynamicaudio.jp/file/2018.01.04.03.jpg

ビールかワインでも飲みたいものですがノン・アルコールで我慢。
http://www.dynamicaudio.jp/file/2018.01.04.04.jpg

ランチコースで最初に出てきたオードブルがこれ。逆光なので色彩があまりよく
ありませんが、これも記念にということでパチリ!
http://www.dynamicaudio.jp/file/2018.01.04.05.jpg

その後の魚介のスープを撮影するのを忘れてしまいましたが、カキのグラタンが
熱々で美味しかったですね〜。
http://www.dynamicaudio.jp/file/2018.01.04.06.jpg

メインは豚肉のミルク煮込みということで、これも中々に美味しかったです!
http://www.dynamicaudio.jp/file/2018.01.04.07.jpg

このデザートを食べるころには満腹状態。いいレストランでした!
http://www.dynamicaudio.jp/file/2018.01.04.08.jpg

さて、話は戻りますが午前中から順路の表示に従ってギャラリー1の風景画から
鑑賞を始めました。どの作品も想像以上に素晴らしい!!

リチャード・エステスは取材の折に撮影した写真をもとに描くということは以前
から知っていましたが、恐らくはホキ美術館に所蔵されている作家の人々も同様に
取材時の写真を元に制作したのでしょう。

解説にもありますが写実絵画は作品を仕上げるのに膨大な時間を使うということで、
その筆致の繊細さと観察力、そして想像力の素晴らしい作品を目にして私は興奮しました!

リチャード・エステスは都市の風景を描いていましたが、ここで見られる作品は
ヨーロッパと日本の田園風景、自然の中で作者の視線が捉えたものを描いています。

接近すると筆触が確かに感じられ、人間が描いたという実感がキャンバスの上に
認められるのに、一歩、さらに一歩と遠ざかるとリアルさが満ち溢れるようになり、
カメラのレンズではなく人間の目が捉えた風景の存在感が迫ってくるのです。

カメラのレンズでは視点は一つ、人間は両目で全てを見るので左右の目の視差があり、
風景のすべてのポイントに焦点が合い、カメラで捉えられない克明な描写が可能となる。

そんな解説を思い出しながら、4ミリ程度の筆を使って樹木の表面、葉の一枚一枚を
克明に描く作家たちの情熱に尊敬の念を抱きながら鑑賞を続けました。素晴らしい!

さて、前述の「写実絵画の新世紀 ホキ美術館コレクション」の表紙になっている
作品は森本草介の≪光の方へ≫です。ギャラリー2の人物画コーナーにあります。
https://www.hoki-museum.jp/collection/morimoto.html

「写実絵画の新世紀」では多数の人物画が掲載されていますが、森本草介の作品こそ
印刷物と実物の違いが大きなものはないでしょう。

筆触という言葉を私は初めて知りましたが、森本草介の描く女性の肌の質感には
本当に驚き感動しました。筆で描いたという感触がなく、まさに艶めかしい程の
きめ細かい女性の美しい肌の質感を目の前にして私は言葉を失いました。

そして、私の鑑賞法で悪癖かもしれませんが、最初は三歩下がって全体を見てから
どんどん接近して、しまいには30センチくらいまで顔を近づけて観察してしまうのです。

そこで森本草介の描く女性たちの肌の美しさが至近距離でも変化しないことに気づき、
もっと驚いたことは女性の裸体の輪郭に塗り絵のような輪郭線が全くないということ、
いや! 肌と背景の境目では肌色が次第に背景に溶け込むようなグラデーションをもって
描かれているということでした!

接近してみると少し焦点がずれた写真のように裸体の輪郭がぼやけているのですが、
一歩ずつ遠ざかっていくと、その微妙なグラデーションがあることで立体感が尊重
されていることにはっと気が付くのです。

正に裸婦がキャンバスの中から浮き上がってくるような女性の肌の実在感の盛り上がりと
いいましょうか、塗り絵のように輪郭線がくっきりしていると平面的2Dに見えますが、
筆触が感じられない絶妙な肌色と背景の色の交叉というか、体温が女性の体から
立ち昇る揺らめきのような情景は描写ではなく作者の創造によるものだと実感したのです!

私にとってはギャラリー2の人物画の回廊で感じた驚きと興奮が当日の最も大きな
感性の収穫であったかもしれません。

二つのギャラリーを見るだけで一時間以上かかってしまい、予約した時間よりも
大分早くレストランに行って昼食をとりました。前述の通りです。
https://www.hoki-museum.jp/facility/index.html

さて、気が付くとこんなに長い文章になってしまっていましたが、写実絵画の
素晴らしさを堪能した一日でした。是非皆さんもネットで検索して私が出会った
「写実絵画の新世紀 ホキ美術館コレクション」を手に取って頂ければとお薦めします。

そして、下記の過去の作品展のページも是非順番にご覧頂ければと推薦致します。
https://www.hoki-museum.jp/past/index.html

更に作家たちが語る下記の動画も良かったらご覧下さい。
https://www.youtube.com/watch?v=KAjvCS9sXi4

というのは、視覚的な写実、リアリズムということは写真に勝るものがあるという
考えを私は持っているということなのですが、それは聴覚という耳で感じる世界観にも
共通することが確かにあるということなのです。

絵画における風景やモデルの人物たち、それらを描く際に作者の魂というか感性が
キャンバスに移入することで、自然でも人物でも被写体の魂が作品に宿るということ
なのだと思うのです! 

音楽という一瞬にして消滅してしまう芸術を録音し保存する。その作業の中にも
ミキシング、マスタリングなどの過程においてプロデューサーとエンジニアの感性に
よっての実物の楽音に勝るような美化作業があります。

そして、それらを再生する時にもオーディオ装置の設計者による再生芸術の舞台が
存在し、同時に再生音を鑑賞する際にもシステムコーディネートと環境づくりによる
ユーザー(鑑賞者)の感性の発露があるのです!

2018年の年頭に私は大変素晴らしい体験と勉強をしてきました。写真にはない
写実絵画の魅力、データにはない写実音楽の魅力というものを追求していきます!

私が推薦したホキ美術館コレクションの本を手に取られた方、そして実際に同館を
訪問されたという方がいらっしゃいましたら感動を共有できればと呼びかけます。

私と同じ作品を見て、どう思われたかの一言を頂ければ大変嬉しく思います。
そして、私がここで描く写実音楽を体験して頂いた皆様にも同類の感動を提供
出来るように頑張っていきたいと思います!

なぜか!? 

残念ながら美しい写真と印刷による本の誌面では本物の感動は得られません。
本物の絵を見なければ…。

ライブ・生演奏の感動はアーチストと時空間を共有する一瞬が全てです。
では、録音された音楽には魂はなくなってしまうのか。違います!

写実絵画で作者が取材の折に撮影した写真の存在が録音データと言えるでしょう。

それを執拗に見続け描くことで作家の感性と魂が、写実という手法を借りて
見る人に内面から湧き上がる感動を提供するのです!

オーディオの世界では固定化された録音データを再生するという行為が、
写実絵画の作家たちがアトリエで行う作業と同じなのではないでしょうか!?

今まで、私は再生音楽の評価をする時に音に対する美意識という表現をすることが
何度もありましたが、その美意識の表れを私は「写実音楽」と呼びたいのです!!

私は使い手という作者が描き出す写実音楽の世界を追求していきます!
H.A.L.を「写実音楽」のギャラリーとして多くの人々に感動を与えたいのです!

ホキ美術館では作品が仕上がった際に、その時折の企画展を催しています。
https://www.hoki-museum.jp/exhibition/index.html

そして、ここH.A.L.においても、私は「写実音楽」の表現方法として私が認めた
オーディオコンポーネントたちによる作品展として皆様に提供していきたいと思います。

その第一弾としては私が史上最高と評価した、このスピーカーの作品展を2018年の
初頭に行ったということでしょうか。

H.A.L.'s Special Release - HIRO Acoustic Laboratory MODEL-C4CS 
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/1449.html

H.A.L.'s One point impression!! - HIRO Acoustic Laboratory MODEL-C4CS!!
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/1457.html

それを鑑賞した皆様の感想も下記のNo.680からNo.685にて紹介させて頂きました。
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/fan/hf_hear.html

これから私は「写実音楽」というテーマに沿って、これはという作品が登場した
時にはH.A.L.での企画展を実施していきたいと考えています。

2018年は私がダイナミックオーディオに入社して40年という節目の年になりました。
「写実音楽」という私なりの表現でハイエンドオーディオの世界を更に高めながら、
皆様の人生における音楽鑑賞レベルも同時に高めていければと願っています!

川又利明
担当:川又利明
TEL 03-3253-5555 FAX 03-3253-5556
kawamata@dynamicaudio.jp

お店の場所はココです。お気軽に遊びに来てください!


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