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H.A.L.担当 川又利明


No.126  「KRELL“LAT-1”が私に見せてくれた驚愕の新世界とは」

2000.9.20 この日は当社の年度決算日であると同時に後日まで記憶に残る一日 となった。自社のホームページはおろかアメリカ国内外でも未発表と言う新製品 が、前例のない店頭における世界初公開のためにここにやってきたのである。

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この姿を見て実際の大きさがなかなかイメージできないと思うが、横幅32センチ、 高さ138センチ、奥行き36センチ、と占める床面積は大変小さなものである。 フロントグリルの変わりにSonusfaberのガルネリ/アマーティ・オマージュと 同様なゴムのストリングスが張られている。聞けばSonusfaberの社長である フランコ・セルブリンとは親しい仲であり、意匠デザインに関しても一言断りを 入れてあるとのこと。
さて、このストリングスを取り外して各ユニットを見てみると、

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皆様にはあらかじめ図面をお送りしているが、実物はこのようになっている。 スピーカーの両サイドは縦方向に溝が刻まれており、デザイン的にもアルミの 素材感を残しながら見事な仕上がりとなっている。

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これはリアパネルにある入力ターミナルであるが、真中の二つはジャンパー用 であり、ここから上下のターミナルに付属のジャンパーを接続することによって シングルワイヤーとして使用でき、それを付けなければご覧のようにバイワイヤー 接続が可能となる。そして注目すべきはバインディングポストそのものである。 何とクレルのパワーアンプに使われているターミナルをそのまま使用し、何とも がっちりとケーブルをくわえ込んでくれる。

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これはミッドハイユニットを拡大したものだ。“LAT-1”はすべてのユニットを スキャンスピーク社に特注で作らせているとのことであるが、この15センチ・ ミッドレンジは三層構造の振動板を採用してあり、放射状にリブのようにプレス 補強がなされている。マグネシウムとアルミニウムのダイキャスト製フレーム を採用し、ビデオシールドが施されている。このミッドレンジユニット二つに はさまれる形の「ダポリッド・コンストラクション」でトゥイーターが中央に 位置しているが、このトゥイーターは見て驚きの構造なのである。

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25ミリ口径のトゥイーター中央に突起しているのは「ウェーブガイド」または 「フェイズプラグ」と呼ばれているものだが、あのノーチラス801のミッドレンジ ユニットにも取り付けられ、コパーヘッドとしても注目されているパーツである。 それが何とトゥイーターに付けられているのはこの私でも始めて見る光景であった。 そして、このトゥイーターは何と50キロHzまでをフラットに再生すると言う。 いままで1インチ口径のトゥイーターでは良くて35キロHz程度の高域再生能力で あったが、何と一挙に50キロHzまでレスポンスを拡大したスキャンスピーク社の 開発力と、それを真っ先に採用したクレルの快挙であろうと思われる。
「あと二、三年したらこれがスタンダードになってくるよ。」とはクレルの社長 ダゴスティーノのコメントである。その50キロHzという超高域再生のために必要 不可欠とされたのが「ウェーブガイド」なのである。外形からおわかりのように このトゥイーターの実質的な振動板はリング状であり、この「ウェーブガイド」は しっかりと基部に固定されている。通常の1インチ・トゥイーターよりも振動面積 が小さいのだから出力音圧レベルが低いのではないか、とダゴスティーノに尋ねる と、「ノー・プロブレム」と言う。彼らのテストでは、このトゥイーターに単独で 100Wのピークパワーを入力しても何ともないという。思わず「リアリー??」である。

さあ、それではなぜこのような「ウェーブガイド」が必要なのか。最高域が50キロHz ということは、計算すると出力される音波の波長は何と6.8ミリとなる。この6.8ミリ の波長を持つ音波が25ミリ口径のドーム型振動板から放出されると、前方に直進する 音波はドーム型振動板の中央と周辺の高低差から位相が乱される可能性が大変に 大きくなってくる。単純に考えてもドーム中央部と周辺部に突状の高低差があれば 約7ミリ音波が進行したところでは逆相になってしまう。まずリング・ダイヤフラム にすることで振動板の高低差をなくし、更に「ウェーブガイド」にそって音波を進行 させることによって位相の乱れを軽減させ50キロHzという超高域のレスポンスを 安定獲得したと言うものである。素晴らしい!!

そして、以外に小口径の21センチウーファーが三個。このウーファーがまた凄い。 コンポジット・カーボファイバー・コーンをゆったりとしたエッジが取り囲み、 最大振幅で何と1インチのストロークを可能としている。そして、ミッドレンジ と同様にマグネシウムとアルミニウムのダイキャスト製フレームを採用し、ビ デオシールドが施されている。後ほど、このウーファーが叩きだす低域に私は しびれてしまった。こんな低域は聴いたことがない。

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いつものことであるが、「あと5センチ右、ああ、そこはもう少し角度をつけて」 と、私のところに持ち込まれたスピーカーは先ずリプレースメントで時間が かかる。この辺のノウハウは皆様にもお伝えしなければいけないものだろうが、 まずヴォーカルを聴きながら口元の大きさとフォーカスの出方を見ながら位置 と角度を設定していく。従って、この段階では“LAT-1”のスパイクは取り付けて いない。ちなみに“LAT-1”のスパイクは手前が一点、後方が二点の三点支持で あり、特に後方二つのスパイクはこのように大き目のノブがあるので本体を
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ひっくり返さなくても正立した状態で上から貫通する形でスパイクを挿入し まるでジャッキのように、ねじを回していくことによって徐々に114キロの本体 が浮き上がってくるという便利な形式となっている。

さあ、やっと納得できるポジションが決定した。それでは定番となっているCDを 聴き始めようと、最初にヨーヨー・マの「シンプリーバロック」(SRCR2360)の 一曲目をかけた。この一曲目からして今までのスピーカーとは一線を画す相違点 が観察される。すべての楽音に関して反応が素晴らしく早いのである。打撃音の 圧縮された瞬発力をハイスピードなスピーカーとして誤解しがちであるが、そんな 単純な比喩では例えようもない新鮮さがあるのである。

先ず、その第一の証しとしてエコー感の細密な保存性があげられるだろう。チェロ の背景に浮かぶバロックオーケストラの個々のパートは真っ白な壁に跳ね上がった ペンキの斑点のようにぽっ、ぽっ、と空間にジャストフォーカスで浮かび上がる様は なんと気持ちのよいことか。これもスピーカーのキャビネットがエネルギーを蓄積 することなく、リアルタイムに音波を放出していく再現性の真実であろう。

そして、やはり私の心をひきつけるのはチェロの表現力である。ヨーヨー・マの 魔法の指がかもし出すヴィブラートが何と細やかに、そして軽やかに演奏される ことか。スピーカーのエンクロージャーにまとわりつくことのないチェロは、 音階の低い方向への移行があってもプロポーションが変化することがない。 同様な音像が肥大しないタイプのスピーカーは何種類か私も知ってはいるのだが、 意識的にダンピングしているという感触がなく音色が大変に開放的なことから 私の驚きは懐の奥へ奥へと侵入してくるのである。

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ここで“LAT-1”のクロスオーバーネットワークについて触れておかなければ と思う。ウーファーのハイカットは300Hzから始まりオクターブあたり6デシベル の減衰特性である。このウーファーの上側とクロスするミッドレンジのローカ ットは300Hzのオクターブ下である150Hzまでは6dB/octであるが、その150Hzから は3rd-orderつまり18dB/octで急峻に低域側をカットしているのである。 そして、ミッドレンジとトゥイーターも2.9キロHzを境にして同様な手法でフィル タリングされているのである。ミッドレンジの上側は2.9キロHzから6dB/octで、 トゥイーターの下側は2.9キロHzのオクターブ下である1.45キロHzまでは6dB/oct であるが、更にそのオクターブ下の0.725キロHzからは3rd-orderの18dB/octで カットされるという具合である。

さあ、そこで私は考えた。他のメーカーではサブウーファー的にウーファーの クロスを100Hz前後に設定してミッドレンジで中低域のトランジェントを維持するか、 あるいは同様にウーファーを設定しミッドバスを入れて4wayにしてしまうという ことで素晴らしい演奏を聴かせてくれたスピーカーの数々を思い出してしまった。 しかし、“LAT-1”のウーファーは300Hz以上を6dB/octというゆるいスロープで中域 までカバーしながら何とハイスピードな反応を見せていることか。その証拠がヨー ヨー・マのチェロに見事な生命力を与えているのである。ということは…。

さあ、ここでスピーカーにとっては厄介なテストCDをかけることにした。以前にも 紹介している「ベスト・オブ・フォープレイ」(WPCR1214)の5曲目「チャント」の 冒頭20秒間のハーヴィー・メイソンの強烈なフロアータムの連打である。ここだけの 話し??だが、このパートを相応の音量で鳴らすとウーファーがバフバフとリニアリ ティーを損なって歪んでしまい音にならないスピーカーもままあるのである。 これを私が要求する過酷なハイパワーでのテストに見事に応えてくれたのはB&Wの N801であった。とにかく体が直接振動を感じるほどの音圧で迫ってくる低域の エネルギーを、破綻もせずに見事に鳴らしきる801の38センチウーファーは圧巻の 一言であった。それを3個あるとは言え“LAT-1”の21センチウーファーがどこまで 追随してくれるのか。知らずに再生を始めれば心臓麻痺を起こすようなハイパワー でのテストをしてみることにした。

既に、ここではこの強烈な打撃音の洗礼を受けたお客様が何人もいらっしゃるのだが、 たった20秒の演奏のあとでパッとP−0sにポーズをかけてその表情をのぞきこむと、 「凄い、凄いですね!!」と誰しもが驚きの声をあげる。N801と同等なパワーを放り 込んでも、その解像度と制動感は損なわれることなく、エンクロージャーがエネルギー を蓄積しないと言う実例がフロアータムの音色を究極のレベルで引き締めている のである。正直に言って、このテンションの高まりとブレーキングの素晴らしさは N801の上をいっている。フロアータムから叩き出される音の滞空時間はこんなにも 短時間であったのか。他のスピーカーはやはりキャビネットから時間差と位相差の ある低域を出していたのか、と気づかせずにはおかない再生音なのである。 この20秒間の衝撃は必ずそれ以上の時間の感動を与えてくれるものと保証します。

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さて、私は馬鹿でかい音量でスピーカーを鳴らして自己満足しているわけではない。 新車を開発するのには最高スピードでの安定性も大切だろうが、やはり一般的な 速度でのフィーリングも大切なはず。これも度々テストに使用しているReference Recordings 「tutti!!」(RR-906CD)の一曲目「Dance of the Tumblers」をかけた。 グランカッサとオーケストラ自体のフォルテが一挙に重なって重厚かつ量感たっぷり の低域をホール一杯にはじき出していくのだが、このホールの空間を襲う衝撃波の ような低域が今までと違うのである。大太鼓とコントラバスの明確な分離が実現して くれると、大太鼓の位置関係と叩かれたあとの空間を飛んでくる低音の飛翔のあり さまが何とも明確に聴き取れるのである。そして、叩かれた瞬間のドラムヘッドが ビブラートしながら次の打撃を待つ合間の情景が伝わってくる上に打撃後のエコー が何とも爽快に拡散していく分離感が手にとるようにわかるではないか。 「そうかグランカッサはあんな奥の方にいたのか」と正確な遠近法が目の前で 再現されて視野が広がるではないか。

さて、ファルテのパートばかりに目を奪われるわけにはいかない。弦楽器の連なりと 木管楽器の点が対照的に空間を埋めていく。「弦楽器も見事、きれいだ。」と観察を 続けるとトゥイーターの特性が記憶から蘇ってくる。フラットレスポンス50キロHz。 そう、あの珍妙な突起の鼻をもたげるトゥイーターが外見とはまったく異なる印象の 余韻を雨のように降らしてくるではないか。「こりゃあ気持ちいいの一言だね。」 アルミニウムという金属の鎧に身を包んだ“LAT-1”から、こんなしなやかでたおやか なヴァイオリンが聴けるとは誰が想像したことだろうか。正に「柔と剛」の共存が オーケストラの各パートの楽器の色差を前例がないほど高めていく。だから弦はより 弦らしく菅はより菅らしく彩りの個体差を発揮するのである。そして余韻が美しい。 このスピーカーの対応性は明らかにノン・ジャンルである。

さあ、ここまで聴いていると、もう鬼に金棒という気持ちになってくる。最後は YPM-006 OSHARENA JAZZ・TRIO の一曲目「C Jam Blues」をかけた。 以前は同レーベルのYPM-008「スウィミング・アバウト・イン・ジャズ」に 収録されている同タイトル「C Jam Blues」をよく使用していたのだが、 最近は少しオフぎみに録音されているYPM-006の方を好んでテストに使用し ている。
http://www.triode.co.jp/newrec_wn.htm
冒頭にはライブ録音の拍手が入るが、これがことのほか奥のほうからぱっと 展開してくる。そして、ウッドベースのイントロ。これがまたきりりと引き 締まって質感をよくとらえている。さあ、いよいよピアノが入ってきた。 「何これ、どうしちゃったの??」と思わず自分の耳を疑う。これほどの切れ味 のいいピアノのアタック、立ち上がりを見せるスピーカーはオリジナル・ノー チラスくらいしか思い当たらない。しかも、そのあとに続くエコーがなんと 長い時間漂っていることか。「このトゥイーターは凄い!!」と職業上の冷静 さを失いかけた私の感性が必至に平静を取り繕おうとするのだが、興奮した 体にはアドレナリンが洪水のように溢れ出してしまい汗ばむ額では嘘はつ けない。ピアノのハンマーと弦の望遠鏡の焦点つまみをちょいちょいと回し てフォーカスを合わせたように、弦が振動する様が目の前にフォログラフを 浮かび上がらせる。「このピアノは快感だ。」

「もう我慢できない、大貫妙子だ。」自分で勝手にアンコールを要求しても “LAT-1”は余裕の表情で鎮座している。彼女の最新アルバムからいつもの 5曲目「RENDEZ-VOUS」をかけた。
http://www.toshiba-emi.co.jp/onuki/disco/ensemble/index_j.htm
先ほどのピアノで見せた見事なフォーカスはヴォーカルでも当然のごとく 発揮される。サ行の発音は帯域の狭いスピーカーでは刺激臭を持つもの だが“LAT-1”はなんとも軽くその懸念を一蹴する。せり出してくるよう な彼女の口元にはオーラのようなエコー感がちゃんと彼女の存在を包み 込み、プアーなスピーカーに付きまとっているモザイクをぱっと消し去っ たようにその存在感を目前に引き立たせてくれる。「ああ、何とチャー ミングなことか…」余韻の尾をひきながら空間に溶け込んでいくヴォー カルに、私は何も注文をつけることが出来ずにいるのである。 でも悔しいとは思わない。かえって心地よいのである。 金属の塊であるはずの“LAT-1”が、緊張感を漂わせるどころか 癒しの声色で大貫妙子を聴かせてくれるとは…。

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とにかく聴けば聴くだけのタイトルについて興奮するばかりであり、 このレポートを締めくくりことが出来ない状況である。 ぜひ、皆様の愛聴盤をご持参いただき、実物の演奏によって“LAT-1” の評価を皆様お一人ずつで締めくくって頂ければと思うのみである。

展示スケジュールは担当川又にお問合せください。

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このページはダイナフォーファイブ(5555):川又が担当しています。
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