発行元 株式会社ダイナミックオーディオ
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H.A.L.担当 川又利明

No.1048 2013年7月10日
 「アナログレコード再生の概念を変えるか!?光カートリッジとは!?」


この仕事を長らく続けておりますと色々な人々がやってきます。昨年の今頃、
こんな方が私を訪ねてきました。

             -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

ダイナミックオーディオ 川又様

私本日お邪魔させて頂いた株式会社デジタルストリームの青柳哲秋です。

本日はお忙しい中貴重なお時間を割いて様々な説明を頂き本当にありがとうございました。
生まれて初めてあのような音質に触れてすごく感動したと共にオーディオ
業界の奥の深さを感じました。

まだまだオーディオ業界には「初」が数百個つくような素人ですが少しずつ
勉強して、あの音の良さをもっと理解していければと思っております。

またオーディオ業界について全くの初心者であり川又様に対し失礼な質問を
してしまっていたら申し訳ありませんでした。
今後ともよろしくお願い致します。

株式会社デジタルストリーム 青柳哲秋

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ハルズサークルの皆様も耳慣れないメーカー名だと思いますが、詳細は下記の
サイトをご覧頂ければと思います。

http://www.ds-audio.biz/ownerInformation.html

ここで紹介しているディスク評価用光ピックアップを私の元に持ち込まれて
きたわけですが、本日の事…この青柳氏から下記のメールが届きました。

             -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

ダイナミックオーディオ 川又様

お久しぶりです。
株式会社デジタルストリームの青柳哲秋です。
(昨年一度ピックアップを持ってお邪魔させて頂いた者です。)
急な連絡で申し訳ありません。

この度私共は光カートリッジというレコードカートリッジを販売開始しようと
考えております。

光カートリッジは昨年から開発を開始しようやく最終試作ができつつある
段階まで辿り着きました。

最終試作に辿り着くまでに様々な方に試聴して頂きながら開発してきたのですが、
販売開始を前に川又様に一度御試聴頂けないかと思い連絡させて頂きました。

もしご都合がつくようでしたら、光カートリッジを持参致しますのでご検討の
程どうぞよろしくお願い致します。

DS Audioホームページ(仮) http://www.ds-audio.biz
光カートリッジYOUTUBE  http://www.youtube.com/user/dsaudio777 (実験音声を御試聴頂けます)

株式会社デジタルストリーム
青柳哲秋

             -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

ほほ〜、そんなものを開発していたのですか〜。まあ、youtubeの音質はご愛嬌
というものでしょうが、私はいたく関心があります。と言いますのは…

第28話「アナログ世代の疑心暗鬼症候群」  
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/oto/oto28.html

光カートリッジの説明に振幅比例型カートリッジである、という事が書かれて
いますが、実は私は30年前から同方式のカートリッジを使っていたというお話し。
http://goo.gl/izMO9  ←これです。

長い引用で恐縮ですが、上記本文より下記を転載致しました。

             -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

さて、レーザーターンテーブルの原理を文章だけで解説するのに、どうしたら
良いものかと考え、参考事例として私の自宅のアナログピックアップのお話を
する事にした。

私が使用しているカートリッジは、自重がわずか2.5gしかないのだ。
有名なデンオンのDL−103が8.5g、オルトフォンのMC−30Sが
10.5g、同じくSPUシリーズが約30gと、大変軽量であることが
不思議であろうと思われる。

そのカートリッジとは、アメリカのウィンラボラトリーという小規模メーカー
のSDT−10というもので、SDTとはセミ・コンダクター・ディスクトラ
ンスデューサーの略なのである。

なぜ、これほど軽量かというと、ブロンズ色の半透明なプラスチックのボディー
には2枚の金属片が入っているだけで、一切の発電機構を持っていない。
この金属片の厚みは数十ミクロンと不明だが、幅が約1.5mm程度で長さが
10mm程度の小片で、ストレインゲージと呼ばれる半導体である。

軍需用のミリタリースペックを満たす高精度な物が採用されており、通常の
半導体が電荷と電流によって大きく抵抗値を可変するのに対して、ストレイン
ゲージは機械的な変位によって抵抗値を変化させるのである。

従って、SDT−10には電源部が付属され、直流15Vのバイアスが供給されている。
この電源部に出力端子が設けられており、最大で3Vの出力を取り出せるのだ。

従って、私は世の中にCDプレーヤーが登場するはるか以前から、カートリッジの
出力をパワーアンプに直結してレコードを聴いていたのである。

こんな概要でご説明すれば、2枚のストレインゲージは90度のアングルで
音溝の壁面に平行に配置され、ステーを介してカンチレバーと連結されている
という構造で納得して頂けると思う。

つまり、カンチレバーを介して1本の音溝に対して1枚のストレインゲージを
あてがい、音溝の変位に対してストレインゲージの小片が極微小な折れ曲がり
という機械的変位を起こし、この変位が半導体として抵抗値を大きく変化させ、
バイアス電流に変調を与えて音声信号として出力されるのである。

従って、一般的なカートリッジのように、磁束を切る速度によって出力電圧の
大きさを変化させないので、フォノイコライザーによるRIAA補正も必要と
しない完全な振幅比例型であり、針先からパワーアンプまで完全なモノラル・
コンストラクションが得られるのである。

自慢話しが長くなってしまうので、結論を言うと素晴らしい音である。
さて、レーザーターンテーブルの原理であるが、やはり発電機構は持っていない。
原理としては光をLP盤上に照射してから、どの様にして電気信号に変換する
かという点に絞って解説してみる。

まず、光学系のあらましだが、位置検出用と信号検出用の二つの半導体レーザ
ー発振器から、
波長が785ナノ・メーターというレーザービームを照射する。

それをコリメータ・レンズに導き、ビームの平行化を行うが、この時のレーザー
ビームの径は2mm×6mmの楕円形をしている。

そして、キューブ・スプリッターを経過し左右チャンネルに分光される。
その後、4枚のミラーとスプリッターを経由して円筒系フォーカス・レンズへ
と導かれ、最終的にLPの音溝には6ミクロン×20ミクロンに収束されて照射される。

1チャンネルあたりのビームはこの通りだが、左右チャンネルの幅はVSO
(バリアブル・スキャナー・オフセット)システムにより、レコードの種類や
年代によって柔軟に対応出来るようになっている。

この信号検出用のレーザービームに一定の間隔(信号用ビームの上方向)で
対となり、サーボ用のビームが音溝の肩の部分をトレースしている。

よって、サーボ用ビームが傷で損傷したりへこんだりしている部分にさしかか
ると、それ自身の変動と同期して信号用ビームを音溝の深いところに瞬時に
誘導し、傷の影響が無いようにコントロールするのである。

そして、レコードの反りに対しては、先行してもう1本のビームが照射されて
おり、その反射ビームを位置検出してサーボに働きかけピックアップの可動部分
を上下動させて反りを難なくかわしてしまうのである。

詳細はカタログの図を見ながらご説明しないと文章表現では限界があるので、
それでは音溝の変位をどうやって電気信号に変換するかを解説したい。

まず、皆様の頭の中で縦方向に引き延ばされたアルファベットの「S」の字を
思い浮かべて欲しい。この「S」の字の中心点から真横に位置するところに、
レーザービームの発射点がある。

この発射点から間横にまっすぐビームが放たれた時には、「S」の字の中心点
からまっすぐ反射が返って来るものと仮定して欲しい。次に、「S」の字が
連続して縦方向に移動する、つまり上から見た音溝の一波長のうねりがレコード
の回転と共に移動していくわけだ。

すると、「S」の字のカーブの部分にビームが当たるので、反射角度が変化し
ていく状態がご理解頂けると思う。この反射ビームを受け取るのが、PSD
(ポジション・センシティブ・ディテクター)と呼ばれる位置検出センサーなのである。

浜松ホトニクス株式会社が製造するPSDの中で、一次元位置検出用PSDと
称される走査幅12 の小さな受光素子である。また、発生する電荷は入射す
る光量によって変動するため、レーザーターンテーブルでは1枚ずつLPを
変える度にキャリブレーションが働き、レコードの反射率の誤差も補正しているのである。

このPSDには両端と中心点の三か所に電極があり、真中の電極に5Vの直流
バイアスが供給されているのである。

PSDは平板状シリコンの表面にダイオードの表面効果を応用した層が形成
されており、光スポットが入射すると光電変換され、両端の電極に向けて
光電流として出力される。

前述の「S」の字の中心点から反射したビームが、このPSDのセンターを
捉えた場合にはPSD両端に流れる出力電流は同レベルとなるが、「S」の
字が動いて反射した結果、センターを外れて入射した場合にはPSD両端の
電流誤差が発生する。

この電荷の変化がバイアスによって強化搬送されて、音声信号として取り出せ
るというものだ。これを後段の回路で電圧変換して音声出力としているのである。

音溝の変位に対して反射ビームが記録信号の周波数分だけ高速でスキャンする
ということは、一般のカートリッジの磁気回路がもつ構造上の宿命とも言うべき、
速度比例型発電と同様の出力変動が発生することになる。

簡単に言うと、周波数が高くなるほど単位時間内に反射ビームが走査する速度も
回数も増加するため、周波数が高くなるにつれて出力電圧も 高くなるということだ。

従って、レーザーターンテーブルにはRIAA特性を有するフォノイコライ
ザーが必要となるのである。さて、この様な概要を解説したところで、私が
使っているウィンラボラトリーのSDT−10のお話を、参考事例として取り
上げた意味がおわかり頂けるかと思う。

SDT−10もレーザーターンテーブルも発電機構を持っていないという所が
共通点であり、信号系は完全なモノラル伝送が可能である。また、両者共に
バイアスを必要としており、一定の電気エネルギーの流れに変調を与えて音声
信号として取り出しているのだ。

従って、発電機としての従来のカートリッジのように、発電効率のバラツキから
微弱な信号の取りこぼしが無く大変豊富な情報量を引き出すことが可能となる。

そして、大変なハイスピードである。また、バイアスの電力に支えられて信号
が伝送されるため、カートリッジによる発電直後の微弱な信号を、増幅段まで
導くアーム内部のケーブルやピックアップケーブルを含めた伝送系からの影響
も受けにくい。

ただ、両者の音質比較を想像する上で、SDT−10はパワーアンプに直結
出来るが、レーザーターンテーブルはフォノイコライザーが必要になるという
点で安易な比較は出来ない。

つまり、レーザーターンテーブルはフォノイコライザーのグレードによって
再生音質の変化があること、逆に言えばフォノイコライザーの選択によって
個人の好みとグレードの上下が発生するということだ。

レーザーターンテーブルの原理をご理解いただく上で、音質の決定要因に従来
のカートリッジと同様な一面がある事を強調しておきたい。

             -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

ピックアップカートリッジの発電機構に関する原理は下記をご覧下さい。

第10話「天使の謀りごとと悪魔の真実」  
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/oto/oto10.html

時代は変わってもオーディオの基本原理は変わりません。このように体験と
知識を持つ私から見ると、上記のDS Audioの光カートリッジのメリットばかり
をwebサイトで述べていますが、基本原理の説明が何もありません。

もちろん、企業秘密と言われてしまえばそれまでですが、前述の随筆のように
アナログ時代からこの仕事をしている私は光カートリッジの動作原理に関して
大変興味があります。レーザーターンテーブルの原理と共通するものがあるの
ではないかとも推測しています。

株式会社デジタルストリーム青柳氏には試聴を快諾する返信を送っておきましたが、
近日中にH.A.L.に光カートリッジが持ち込まれることでしょう。

新技術だから音がいい、ということにはなりません。あくまで音質本位という
私の価値観と、ここのリファレンス・ターンテーブルTechDAS Air Force One で
の試聴の結果はいかなることになるのやら!!続報にご期待下さい!!


担当:川又利明
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