《『ESOTERIC & MEXCEL Special 納得のレポート新着!!』》


No.0220 - 2004/5/23

横浜市青葉区在住 J W 様より


モニター製品・1.ESOTERIC P-70vu+D-70vu
            ・7N-DA6000 MEXCEL  BNC \140,000. ×1ea
            ・7N-A2500 MEXCEL XLR \360,000. ×1pair
            ・7N-A6000 MEXCEL RCA \280,000. ×1pair

■はじめに
  まずはじめに、私は昨年秋に初めてオーディオショウに行き、ハ
  イエンドの音に衝撃を受けて以来、本格的にオーディオを始めた
  もので、経験は約半年ほどです。ですので、聞き分ける能力、オー
  ディオ的な表現力などかなり稚拙ではあると思いますが、私なり
  の印象ということで、どうぞご了承下さい。

■目的
  そのオーディオショーの後、CDプレーヤーとアンプを新調しまし
  た。その際にCDを入れ替えるに当たっての条件は、今から導入す
  るのであればSACD対応であること、DVDプレーヤーが貧弱なので、
  DACとして使用できることでした。これの両方を満たす製品は比較
  的限られており、試聴の結果、  Accuphase DP-85を導入すること
  にしました。

  導入した当初は音の抜けが良く、クリアな音場に満足していたの
  ですが、だんだんと以下のような不満点が出てきました。

  ・音の厚みがない
  ・低音のしまりがない
  ・高音、特にエコー成分がざらついている

  また、実際のところ現状SACDソフトをほとんど持っておらず、CD
  と比較して明らかに優れるソフトもそれほど多くないこともあり、
  CDのみ対応のプレーヤーでも良かったのでは?と思い始めていま
  した。
  そんなところに、ちょうど以前から興味を持っていたP-70vu &
  D-70vuモニターの案内がありましたので、今回貸し出しをお願い
  させていただきました。

■試聴レポート
  ゴールデンウィークの前日、川又様より直接お電話を頂き、なん
  とゴールデンウィークの初日よりお貸し出し頂けるとのこと!
  思っても見ない幸運でした!

  翌日午前中に予定通り到着してみると、ほぼ全ての機材が新品で
  恐縮次第です。

  とりあえず設置、電源投入後、1時間ほどしてからCDをかけ始め
  ましたが、低音はぼよぼよ、音場は濁り切っており、音の切れは
  まったくなしという、正直首をかしげたくなるようなものでした。

  まぁ、新品ということで最初はこんなものだろうと思ってとりあ
  えずいろんなCDを掛けまくっていたのですが、その日の夜くらい
  から少しずつ音が改善され、翌日には低音のしまり、音の切れが
  劇的に良くなり、3日目には音場の濁りがほぼなくなり、広大な
  音場が広がるようになりました。たった3日間でこれほど劇的に
  良くなったのは驚きでした。DP-85導入の時にはこれほどの変化
  は感じなかったのですが。

  4日目以降は比較的音が落ち着いてきたようでしたので、DP-85
  との比較評価は5日目に行いました。

  また、返却日前日、半日ほど電源を切っていたのですが、電源投
  入後、それなりの音が出るまでに3時間ほど掛かってしまいまし
  た。DP-85の場合、1時間ほどでそれなりの音になるのですが、
  こんなものでしょうか?となると、もしP-70&D-70を導入した場
  合、電源入れっぱなしになってしまいそうです。

■比較評価
□試聴ソフト
  今回試聴に使用したソフトは以下の通りです。

・enya「water mark」/「Orinoco Flow」
・Sting「THE SOUL CAGES」/「Island Of Souls」
・斉藤由貴「ripple」(リマスタリング版)/「さよなら.さよなら!」
・「THE DIALOGUE」(SACD Hybrid版)/「The dialogue with bass」
・村治佳織「アランフェス協奏曲」(xrcd2版)/「Allegro con spirito」

□機器構成
  今回の試聴に当たって、以下のような構成で使用しています。

                Esoteric P-70vu
                 │        │
  MEXCEL 7N-A2500 XLR    7N-DA6000 BNC
   for Digital   ↓        ↓ for Word Sync
                Esoteric D-70vu          Accuphase DP-85
                                   │
                            MEXCEL 7N-DA6000 RCA
                                   ↓
                            Accuphase E-530
                                   │
                            PAD MIZUNOSEI SPK Plasma
                                   ↓
                            SPENDOR LS3/5A

  なお、P-70vu & D-70vuの設定は下記の通りです

  Up Convert : ON, 4fs
  Clock Mode : RAM + Word Sync
  Word Sync Clock : 176.4k

  また、P-70vu & D-70vuと比較するとDP-85の出力が若干大きめの
  でしたので、DP-85のデジタルボリュームを-2dB絞っています。
  -2dB程度でしたら音質的な劣化はほとんど感じませんでした。

□P-70vu & D-70vu VS DP-85
  まずはP-70vu & D-70vuの組み合わせと、現在使用している
  Accuphase DP-85の比較を行いました。

◆enya
・P-70vu & D-70vu
  エコーがふわりと広がり、空気感が実に良く表現されています。
  音場がクリアで全く混濁感がありません。
  ヴォーカルには艶があり、実に美しいです。
  音のつながりが実になめらかです。
  低音が非常に良く出ており、なおかつ引き締まっています。

・DP-85
  ヴォーカル、エコーがかさついていて、艶が無く、荒れた印象を
  受けます。
  また、奥行き感が薄く、全体的に薄っぺらな音になっています。
  低音はP-70 & D-70と比較すると明らかに出ていないにもかかわ
  らず、締まりが無くぼよぼよしています。
  唯一、音が消える時のすっと抜ける感覚はなかなか心地よいです。

enyaに関してはP-70vu & D-70vuの方が圧倒的に優れています。

◆Sting
・DP-85
  音の抜けが良く、クリアな音場はなかなか好印象です。
  ヴォーカルやQ Soundという位相をいじってスピーカの間以外に
  音を定位させる技術を使って耳の横に定位させたギターなどリア
  リティがあります。

・P-70vu & D-70vu
  DP-85でも十分クリアな音場だったのですが、それに比較しても
  さらに一枚ベールが取れたような、クリアで澄み切った音場です。
  また、よりピンポイントで音像の位置がわかり、特にQ Soundで
  位相をいじってある音が、左右、上下、後ろなどから聞こえてく
  るのがはっきりとわかります。
  ヴォーカルがぐっと近づいた印象を受け、さらにリアリティがあ
  ります。

Stingに関してもP-70 & D-70の方が優れていますが、enyaの時ほど
の圧倒的な違いは感じませんでした。

◆斉藤由貴
・P-70vu & D-70vu
  ヴォーカルに艶がありすぎ、みずみずしさが感じられません。
  音場は実にクリアです。
  コーラスのエコーは良く広がっているのですが、なぜか音の抜け
  が若干悪く、こもった印象を受けます。

・DP-85
  ヴォーカルにはリアリティがあり、10代らしいみずみずしく、キ
  ュートな感じが実に良く出ています。
  コーラスはかなりざらついた印象を受けますが、音の抜けは良く、
  こもった感じはありません。

斉藤由貴に関してはコーラスのざらつきなど気になる点はいくつか
あるのですが、ヴォーカルの表現力だけでDP-85の勝利です。

◆Dialogue
・DP-85
  なかなか音に切れがあり、楽器の位置関係が良く表現されていま
  す。

・P-70vu & D-70vu
  DP-85に比較して奥行きがぐっと出て、楽器の距離感がさらによ
  くわかります。
  ドラムの切れはすばらしいです。
  ドラム音がぐっと前へ出てきて、実にリアルです。
  ドラムをこするブラシの表情が実に良く出ています。
  エコーの広がりなど、スタジオの空気感が実に良く出ています。
  低音の濁りが全くなく、実にクリアです。

Dialogueに関しては全ての面でP-70 & D-70の方が圧倒的に優れて
います。

◆村治佳織
・P-70vu & D-70vu
  ギターの音がこもり気味で、切れが今ひとつ良くない印象を受け
  ます。ただ、弱音の細やかなニュアンスの違いは実に良く再現さ
  れています。
  オケはホールの空気感が良く出ています。
  ギターとオケの前後の距離感は実に良くわかります。
  DP-85と比較して、全体的に音の歪みが明らかに少ないです。
  音場に少しベールが掛かったような感じで、見通しが今ひとつな
  印象を受けます。

・DP-85
  ギターの音は抜けが良く、晴れ晴れとしています。ですが、弱音
  の表現は今ひとつです。
  奥行き感が無く、ギターとオケの距離感が今一つ感じられません。
  音場はクリアで、P-70 & D-70で感じたベールが掛かったような
  印象はありません。

村治佳織に関してはどちらも一長一短があり、優劣付けがたい印象
でした。


全体として、以下のような印象を受けました

・DP-85
  明るい音色
  低音のしまりがない
  高音がざらつく
  奥行きがない
  抜けが良くこもりのない音

・P-70vu & D-70vu
  艶があり、響きが美しい
  細やかなニュアンスの違いの表現力はすばらしい
  豊かでなおかつ締まりのある低音
  音の切れがよい
  音場の奥行きがすばらしく広い
  音像は鋭くフォーカスしているにもかかわらず、エコーの音の広
  がりはすばらしい
  ソース次第で若干音がこもった印象を受けることがある

結果として、DP-85の斉藤由貴のヴォーカルは捨てがたいものがあ
るものの、ほぼ全ての面においてP-70vu & D-70vuの圧勝でした。
ただ、所々で感じた音の抜けの悪さが若干気になるところです。
これはエージング等で改善される問題なのでしょうか?

DP-85を導入後まだ半年ほどしか経っていないため、今すぐは無理
ですが、本気で入れ替えを検討したいと思いました。


また、ゴールデンウィークで時間が十分あったので、色々と比較を
行ってみました。

□トランスポート&DAC比較
  DP-85にもDigital IN/OUTがあるので、トランスポート及びDACと
  しての性能を比較してみました。

  なお、条件を合わせるため、P-70 & D-70もUp Convert無し、
  Word Sync無しで試聴しています。
  試聴ソフトはenyaです。

◆トランスポート比較
  DACはD-70を使用し、トランスポートをP-70からDP-85に換えて比
  較しました。

  奥行き感が明らかに薄くなります。
  弱音の表現が実に薄くなります。
  低音が出なくなるにもかかわらず、締まりが無くぼよぼよです。

◆DAC比較
  トランスポートはP-70を使用し、DACをD-70からDP-85に換えて比
  較しました。

  明るく抜けの良い音です。
  比較的音がさっぱりしているにもかかわらず、表現力はそれほど
  失っていません。

  斉藤由貴でも比較してみたところ、ヴォーカルのみずみずしさが
  出ており、好印象です。

ということで、DP-85の不満点の大部分はトランスポートに原因が
あるようです。正直、トランスポートでここまでの違いが出るとは
思っていませんでした。VRDSの威力に驚かされました。

□インターコネクトケーブル比較
  インターコネクトをPAD MIZUNOSEIからMEXCELに換えて比較して
  みました。

  高音のざらつきが大幅に改善されます。
  低音のしまりがぐっと出て、ドラムが鳴った瞬間とその後のエコー
  の広がりの違いがはっきりとわかります。
  MIZUNOSEIでは低音が強調されているような印象を持っていたの
  ですが、周波数特性が実にフラットで癖がない印象を受けます。
  音が押し出されるような感覚が無く、無理なくスムーズに出てく
  る印象です。

  価格が一桁違うとはいえ、へたに機器を変更するよりはるかに効
  果があるのには驚きました。

□Word Syncケーブル比較
  正直、Word Syncケーブルで音の違いが出るのか疑問だったので
  すが、たまたまVAN DEN HALのケーブルを知人から借りることが
  できたので、MEXCELと比較してみました。

  全体的にあっさりして乾いた音になります。
  奥行き感が薄れます。

  何度も取り替えて比較してみても同じ印象でしたので、やはり
  Word Syncケーブルもおろそかにできないことが判明しました。


最後になりましたが、川又様、今回快くお貸し出しを頂きましたこ
とを、心からお礼申し上げます。


HAL's Monitor Report