《HAL's Monitor Report》


No.0213 - 2004/5/9

神奈川県川崎市 M Y 様より

モニター製品 ESOTERIC  X-01

川崎のM,Yです。いつもお世話になっております。

実は過日、川又店長が企画されたCSIのAOPに便乗し、どさくさ紛れでX-01の
自宅モニターを申し入れたところ、相変わらずの素早い対応で数日後にはなんと
「新品」のX-01が自宅に届きました!いつもながら店長には恐れ入ります。

さて、今回の自宅モニター申し入れのきっかけはというと、現在私が愛用する
システムに大いなる不満がある訳ではありません。

しいて云えばフロントエンドが少々くたびれて来ていること。それから「SACD
第二世代」といえる最新機器を、自分のシステムに組みこむとどういった表現
(結果)に成るのか?とても興味があったからです。

場合によっては購入も検討せにゃならんのかなぁと・・・そんなところです。

私が現用するSACDプレーヤーは2機種あります。
1台はSONYのSCD-1でもう一台はマランツのSA-1です。共にSACD創世記の物であり、
音的にも対極に近いモノですが、ジャンルによって使い分けを楽しんでいます。
尚、2台共マスタークロックを社外品に交換しており、いわゆる「改造品」です。
オリジナルと比べてSNや解像感がアップし、それなりに満足のゆくものです。
「改造」は邪道かも知れませんが、自分の求める音を模索するにはあれこれ試す
のもまた一興かと私は考えています(当然ですがメーカー修理は受け付けてく
れませんが・・・)

さて前置きはこのくらいにして簡単なレポートを記したいと思います。
『使用機器』
* PRE LUXMAN C-9II
* POW KRELL FPB700CX
* SPK B&W N801(HALブラスシェル仕様)
各機器は専用電源より200V及び100Vにて供給。
使用コンセントはPAD他PSオーディオ・FIM等を機器別に振り分け、ケーブルは
キンバー・MIT・ACデザイン等混用

『試聴ディスク』
まずスタンダードCDより以下の2枚
(1)ピエール・アラン・ゴルシュ・トリオ/Voici ma main(澤野工房ASO28)
より1曲目「Mama」
(2)ハーヴィー・メイソン・トリオズ/with all my heart(VACM1236)
より2曲目「IF ISOULD LOSE YOU」
次にSACDお気に入りの2枚
(3)スティーブ・デイヴィス・プロジェクト/Quality of Silence(dmp SACD-04)
より3曲目「One Two Free」
(4)MARK ELDER指揮THE HALLE ORCHESTRA/The Planets(Hyperion SACDA67270)
より16曲目「Pluto」

以下現用機(2機種)と「X-01」の比較である。
ウォーミングアップもそこそこに(1)を聴く。日本では非常にマイナーなジャズトリオ
だが、演奏のクオリティは素晴らしく、特に私が注目するのはドラムの音である。

自分自身生ドラムを長年叩いているのでこの録音はなかなか良い方だと思っている。
SACDではないのが残念だが、シンバルとタムの音が生々しく、しかもダイナミクスが
豊かな録音なので大きな音で聴くとスタジオにいる気分に浸れる。

ワクワクしながらスタート!

「ホントかよ!」いきなりピアノとドラムの遠近感に違いが感じられる。
「X-01」は奥行が出る。左右の広がりには余り違いが無いように感じるが、しかし
それは奥に広がるというか音の密度が高まり、情報量の違いでそう感じさせるものと
推測する。

また、音の粒立ちがとても素直で淀みが無い。シンバルの音は現用機の場合、両機と
も妙に拡散し過ぎる感があったが「X-01」は事もなげに淡々と芯を伴って表現する。

「シャァーン」が「シャーーン」といった違い。録音マイクがカッチリ固定されたか
のように音のフォーカスがシャープに決まるのでピアノとベースの動きもより一層鮮
やかに浮かび上がる感じ。

一つ驚いたのはあまりにスムーズな音の出方なので拍子抜けしたこと。従来のエソテ
リックのミドルクラスにあった「ゴリゴリ感」が全く無く、旧VRDSメカを搭載するワ
ディアの音に近いと感じた。

続いて(2)。このアルバムはハーヴィーが久しぶりに4ビートを叩きまくっていて、
ファンにはたまらないCDだ。

またこのアルバムの録音は曲によって人工的な味付があるし最高とはいえないが、彼
の別バンドであるフォープレイとはまた違ったチューニングが施されていて興味深
い。

私が注意して聴くポイントは、ピアノのチックコリアとの熱いインターバルだが、
タムとスネアそしてハイハットのキレに注目したい。

はやる気持ちをおさえてスタート・・・「おっイイじゃん!」
ハイハットの質感がかなり違う。

上下のシンバルが重なる瞬間の空気感がよりリアルでスムーズ。しかしそれ以前に
現用機で気に成っていたバスドラの音が違う。
結構オーバーダビングされたベタ付き気味の録音にちょっと「?」だったのが
かなりマシに感じたのである。

N801のウーファーは重いので、軽やかに鳴らすのはなかなか至難の業である。
ところが、まずその部分の変化に驚いた。決して「軽くなった」という訳ではなく、
コシが据わって音の抜けが速く感じた。

トランスポートの構造と強度の違いがそのまま音に成って現れたという事か?

余談だが私はかなりの大音量で聴く。当然各機器は振動の影響を受けまくっている。
ラック関係はそこそこの物を使用しているが、数ヶ月程前に現在のシステムで「古い
A社・高級セパレートCDP」を繋いで鳴らしてみた事がある。

通常の音量では全く問題無いのだが、いつものボリュームに上げていくと、まず
ウーファーが楽音に合せてフィードバックする様にフルフルと揺れ始め危険を感じ
る。

不思議だが事実である。

まるでアナログプレーヤーをいい加減にセッティングした感じの状態といえばわかり
易いと思う。怖いので必然的にボリュームを絞ってしまう。しかしそれでもバスドラ
などの連打が来ると音飛びまでは起きないが完全に解像感を失った、フヌケな音に成
り下がってしまう。

まぁそれくらいの音圧(振動!?)がかかっている状況なので、大抵「ポン置き」は
ダメで、何らかの振動遮断措置を講ずる事になる。しかし「X-01」は先程のA社の
ものとほぼ同じ条件にもかかわらずそういった現象は起きなかった。

もっとも比較するに「次元が違い過ぎる」と云われてしまえばそれまでだが、何しろ
そのセパレートCDPは約8年前に登場した定価120万以上のシロモノである。

私見だが、今日の我家での再現性の違いは新旧のDAコンバートetcの差はともかく、
躯体構造の違いこそが、あのフォーカスがビシッと決まった音と成って現れた
ものと判断した。

もともと振動には影響され易いはずのVRDSメカだが、NEOに成って相当強化されたも
のなのか?

当然ながら我が現用機でも無縁ではなく「ポン置き」ではダメである。
バスドラの音をボリュームを変えながらリピートし、3機種を交互に比較するたび
「X-01」の頑強な躯体構造とトランスポートの優位性をヒシヒシと実感した。

もっとしっかりしたセッティングを施してあげたら更に次元の違うパフォーマンス
を見せてくれたに違いないだろうと、残念な思いもあって少々ペナルティも考慮し
つつ、あら探しを含めて聴き込んでいく。

(1)でも記したが、密度感(情報量)も凄い。コシのあるバスドラを軸にタムとスネアの
コンビネーションによる連打が実に安定していて音の粒立ちがニュートラル。

スネアの「スカッ」とした抜けが気持ち良く、ドラムのダイナミクスと淀みの無さが
全ての楽音に清々しい印象をもたらす。ピアノとタムタムのユニゾンがあるフレーズ
では、それぞれの音をくっきり分離し、より細やかなテクニックが見えて来るようで
ある。

また、これは良い装置にめぐり合うと度々体験する事だが、いままで聴こえて来な
かった音が聴こえてきてしまうから困ったものである(笑)

まぁ違って当たり前といってしまえばそれまでだが、時代の進化をまざまざとみせつ
けられた。

「あ〜あ、CDでこれだけ違うのだからSACDなんて比較するのがバカバカしぃ〜」

と考えつつ、いよいよSACDへ突入!

ここからは女房も参加しての試聴。まず(3)から・・・・

結構古い(5年前)のCDだが、私の機器チェックソフトでもあるので、ここでは
「音楽を聴く」のではなく「音」を聴く。さすがドラマーのアルバムだけあって、
妙にドラムの音がリアルにクローズアップされ録られている。

そこが好きだ(笑)ドラムの他、ギター&ベースとパーカッションによる編成で、
独特の世界である。但しこのソフトはある程度の大型ウーファーを搭載したシス
テムで「大音量再生」しないとその真価が発揮されないので、あまり一般的では
ないと思う。

おっと!その前にこれもレポートしておかなくては・・・X-01のずっしりしたアルミ
と皮革貼りのハイブリット仕上げによる「リモコン」である。

品があって知的な感じ。触感が「良いモノ」を手にしたある種の喜びを伴うものだ。
操作性については好き嫌いがあるかも。私的には好きな部類。電池の交換は面倒
だが、これも「らしく」て良い。

ではスタートボタンをそっと押す・・・・すると・・・・「やっぱり違いすぎる!」

3曲目イントロのヒュルヒュルというパーカッション音をもとに、私はこれから
盛り上る演奏のリスニングボリュームの目安にするのだが、まずこの時点で音像
がいつもより小さく、音量設定に戸惑いを覚える。

続いて左側のSPからベースが静かにおどろおどろしく現れるのだが、これも音量
は変わらないのにひと回りコンパクトである。しかも音の重心が低い。

「これはいい!」と同時に「なんで?」と考えつつも演奏は進んでいく・・・

ベースシストの指が弦に触れる様が目に見えるようで音の強弱に関わらず、くっ
きり鮮明に音のフォーカスを決めてくれる。アタックのリアリティと質感が別モ
ノだから今まで染み付いていたこのソフトのイメージが一気に更新されてしまう
感じである。

次にシンバルの質感が変わって聴こえ、荒々しさが無くなった。人によっては
この変化は「ただ事ではない」はずだ。私もその1人でさっきから戸惑っている。

それとこのソフトに含まれている超低域成分が、まるで風のようにN801から聴こ
えたのは初めての経験であり驚いた。「ブルンッ」という類の楽器の付帯音にここ
まで違う表現があったのか!?

SACDはとかく超高域再現性に注目がいきがちだが、超低域再現もCDとはまた違う
ものがある(どちらも下限は同一のようだが・・・)ハイブリッドディスクなので双
方を聴き比べた結果、スーパーソニック域はSACD若干有利と思えた。

しかし「ポンッ」と置いただけのセッティングでここまで安定し、フラットで
高次元の音が出てくるとは・・・改めて「X-01」をしみじみ見つめてしまった。
もう現用機と比較するのは止めにして純粋に「X-01」のみで聴き込む。

最後のディスク(4)である。唯一のクラッシック系だが、Plutoは新曲というか
現代曲である。私はこのジャンルは初心者なので指揮者や編成、楽器など個別
に詳しくレポート出来ない(恐縮です!)
従って全体像をわしづかみにしてレポートすると、まず個々の楽音の鳴らしわ
けが見事である点。

演奏者の息遣いやホールの大きさが見えてくる点。例えば、弦楽器は艶やかだ
が厳しい音も出すし、金管楽器はそのハリのある破裂音がリアルでゾクッとさ
せる。

コシの据わった打楽器類は爆発的な直進性はもちろん、ホールに響き渡る余
韻も余すことなく再現する。そして各楽器の位置関係をはじめて意識した!

今までこのディスクの印象を悪く言えば「ダンゴ状態」と思えるパートが
所々あって「まぁこんなものか」と思っていたのだが、「X-01」はしっかり
分離させてくれるので、うるささが全く無い上、演奏者個々の距離が見えて
くるのである。この辺は内臓DACの優秀さを物語っているはず。

私は「G-0」の音を聴いたことが無いけれど、聴かなければ「これで良し」と
思う。それと楽器が鳴っていない時の空気(ホール)の質感は、このクラス
の装置でないと判らない領域であって、曲の後半静かにコーラスが蜃気楼の
ように現れるのだが、ここでの表現が絶妙極まりない。

「へぇこんなにもエコー成分が入っていたんだ」と改めてこのディスクを
見直した。後で現用機で聴き直したが、やはり「質・量共が違う」としか
思えず少々寂しかった。(笑)

以上で試聴結果は終わりますが、私なりに総括すると・・・・
とにかく音がぶれないというか、メカ精度の高さが音に出ていて「安定感」
があり、内臓DACの優秀性からか「情報量」が第一世代機を圧倒している。
久しぶりに「HiFi」というフレーズを思い出してしまった程である。

従ってオーディオ的快感は最高である。但しSACDの再生は新品のせいか既存
の装置との相性からなのか不明だが、ノイズフロアーが若干高めに聴こえた。
それと余りに超フラットな特性からなのか、一瞬レンジが狭くなった印象を
受ける。

しかしジックリ耳を傾ければ、逆に今まで入っていなかったと思える楽音や
余韻が聴こえて来るのである。

私の場合、今まで耳に焼きついた各ソフトの印象が変った程であるのでただ
事ではない。そして従来CDの再現性はトップクラスだと思った。質感はじめ、
安定感とダイナミックレンジはSACDと同等であり、高域のレンジ感と奥行の
再現性のみ若干SACD有利と思えた程度。
密度感に関してはむしろこちらの方に勢いがあるかも?

結論!デジタルとメカトロニクスは確実に進歩している。
「更新」の意義は確実にあると判断した。

反面「CDって一体何なんだ?」と思える程「装置」によってによってコロコロ音
が変わるし、可能性が見え隠れする。時にはSACDよりも良いのだから始末が悪い。
焦ってSACD機器に大枚叩いてシフトするにはもう少し様子見すべきなのか?

それとも全く違うメディアと割り切って捕らえるべきなのか?
皆さんはどう考えますか?
川又店長は??私にはいまの所答えが出そうにありません。

という訳で「あーっもっと聴きたいよ〜」という欲求を抑えてエンドとします。

最後に・・・今回は大変良い機会を与えてくれた川又店長に感謝致します。
いつもHALのメルマガに刺激されつつ「自制心」と葛藤しながら楽しく読ませて
頂いています。

また昨年は初めてマラソン試聴会に参加し貴重な経験をしました。
まだまだやるべきところがたくさんあって、ほんと「オーディオ道」は底なし
だといつも考える次第です。近々5555に遊びに行きますのでよろしくお願いし
ます。ありがとうございました!

追伸
追ってCSIとSHEER&コットンワイパーのモニターレポートを送ります。

            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

M Y 様 ご丁寧なレポート本当にありがとうございました。また、以前の
お約束のレポートを律儀にもお送り頂けるということで私も大変うれしく思い
ます。他の皆様も時間的に急ぎということはありませんが、ハルズモニターの
企画の主旨にご協力頂ければ幸いでございます。
皆様のレポートお待ちしております。<m(__)m>



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