《HAL's Monitor Report》


No.0202 - 2003/9/1

東京都世田谷区在住  H・N 様より

HAL’s モニター夏休み特別編 試聴レポート

モニター製品 マランツ SC-7S1, MA-9S1

川又店長のHAL’s circle reviewを毎回楽しみに拝見させていただいています。
特に音の細道、いいですよねー。川又店長のオーディオに対する情熱と興奮が
ぎゅっと、瑞々しく凝縮されている感じです。

眼前で奏でられる美しい音の響きを巧みな文字に置き換え、あたかも自分が
その音楽を聴いているかのような気にさせてくれます。何よりも実際にその音
を聞いてみたい!という気にさせられてしまうんですよねー
(まさに川又マジック!)。

そんなわけで、HAL’sモニター夏休み特別編の案内をいただいたときには、
以前より試聴してみたいと思っていたマランツSC-7S1, MA-9S1を一も二も
なくお願いしていました。

私の現在のシステムは、他の会員のみなさんに比べるとまだまだ駆け出し
ですが・・・

Esoteric P-0s → DENON DCD-S10/IIIL (DACとして使用) → Luxman 509fSE
 → B&W signature 805
ケーブルはAC Dominus, AC Tantus, NBS Statement, Digital Tantus, etc など。

まだまだ発展途上でアップグレードを必要とする機器ばかりですが、まずは
アンプかなということで・・・今回の試聴となりました。

当日夜、帰宅すると玄関に大きな輸送用トランクケースが3つ積み上げられ
ていました。てっきり段ボールケースで届くと思っていた私は、玄関がとん
でもないことになっていてまずびっくりです。

そしてその横には「今度は一体何を借りたの!」と言う、怒りに満ちた妻の
顔が・・・。子供たちは「これじゃまー!」。

のっけから家族全員の不評を買い、さい先の悪い出だしです。
一人で興奮している私は、怒りを通り越してあきれ顔の妻をそっちのけで、
「まあまあ、とってもいい音するんだから、これは」、と皆をなだめながら
セッティングに取りかかります。

汗をかきながらなんとかセッティングを終えたところで、早速音出し。

アンプのスイッチを順番に入れてゆくと、フロントパネルの真ん中にあるメー
ターに、きれいなブルーの明かりがぽっとともりました。

とてもきれいなのですが、ちょっと明るいですね。メーターの存在をことさら
に主張している感じもしてしまいます。音質にも良くないだろうと思い、とり
あえず明かりは消しておくことに。

さすがにウォームアップなしだときついかな、と思いながら近くにあった
「くるみ割り人形 (キーロフ歌劇場管弦楽団、指揮ワレリー・ゲルギエフ)」
をかけると、いきなり目の前に広大なサウンドステージが出現しました。

「これが、モノーラルセパレートアンプの世界・・・」と、しばし絶句。

今まで聞いていたプリメインアンプとは全く別世界です。あたかも楽器と
演奏者が、アコーディオンの蛇腹の上に点在しており、それが一気に開か
れたように、それぞれの居場所をピンポイントに確保したままパーッと横
に広がっています。

しかもそれは横方向だけではなく、奥行きもともなっています。ちょうど小学
校の運動会の準備体操の時のように、運動場に整列した子供たちが、「開け!」
の号令とともに一斉に縦横に展開していく様子と言い換えてもいいかもしれません。

普段は音に鈍感で、ケーブルなどを変えても「違いがわからないわー」と言って
いる妻も、「あら、この音きれいじゃない。んー、いいわねこれ。」と感動した
様子(やれやれ、先ほどまでの怒りは収まったようで、とりあえず一安心)。

音場感の広がりと同時に、即座に感じたことは音が優しくスムースで刺激感が
ないこと。弦楽器のきんきんした感じが全くと言っていいほど感じられなくな
り、まるで弦がベルベットの上を滑っているような感覚がします。

そして、見事なまでのホールエコー!楽音の余韻がたっぷりと、眼前の空間に
拡散していきます。川又さんの表現を借りれば、「いいですこれ!」

その後10日ほどのあいだに、手持ちのCDを聞きまくりました。
以下はその印象です。

ベートーベン ピアノ協奏曲第5番「皇帝」(ベルリンフィル 指揮:アバド、
ピアノ:ポリーニ)

オーケストラの空間表現とピアノの質感をみるためによく用いるCD。出だしの
ピアノでポリーニの指が鍵盤を駆け上がっていく様子が手に取るようにわかり
ます。ピアノの透明感と余韻がすばらしい。この録音ではヴァイオリンの硬質
さがときおり顔を出すのですが、このアンプでは全くそれがないです。
気持ちいい、の一言。

ドヴォルザーク 弦楽セレナーデ(ウィーンフィル 指揮:チョン・ミョンフン)

このCDは録音がすばらしく、ムジーク・フェラインの壁に反射するたっぷりと
したホールエコーと、豊かな低域をともなって流れるように演奏される弦楽器
群に陶酔できる一枚。マランツのもつすばらしい空間表現と余韻感が、みごと
にはまりました。ヴァイオリンとビオラの滑らかに流れるような質感に脱帽。

ベートーベン ピアノソナタ「熱情」(M. ポリーニ)
これもピアノの透明感と余韻の表現が見事。しっかりと芯をもっているが、
硬質さはみじんも感じられない。ポリーニがステージ上で演奏しているのが
目に見えるようでした。

My heart will go on/ Beauty and the beast(Celine Dion)
Celineの豊かな声量が波のように押し寄せてくる感じ。特に歌い終わった後
のエコーが幾重にもこだましていく様子がはっきりとわかりました。
今までははっきりと意識していなかったので、ちょっとびっくりです。

涙そうそう (夏川りみ)
前奏から、楽器の定位感が全く違います。上下左右の空間に楽器が星空のよう
に点在。夏川のボーカルは口元がキュッと結ばれ、遙か上方(普段より1メー
トルほど上!)に定位。これにはちょっとびっくりしました。

他にもいろいろ聞きましたが、卓越した空間表現と音の滑らかさには最初から
最後まで感動しっぱなしでした。

感動しているだけでは能がないので、最後に無理矢理難点を見つけると、やは
り大きくて重いことでしょうか。Hi-End componentとしては当然のことかもし
れませんが、LinnやOrpheusなどのコンパクトなアンプが存在することも考える
と、私のように専用のオーディオルームを持たない家にとっては大きな問題です。
でも音は本当に魅力的ですよねー。しばらく悩ましい日々が続きそうです。

最後になりましたが、このような素晴らしい機会を与えていただいた川又店長、
日本マランツの山神様に深くお礼申し上げます。特に今回感じたのは川又店長
とマランツ山神様のすばらしい信頼関係です。販売店とメーカーの信頼に裏打
ちされた良好な関係があるからこそ、大勢のお客様に支持されているんだな、
ということがよくわかりました。今後の一層の発展をお祈り申し上げます。


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