《HAL's Monitor Report》


No.0147 - 2002/12/4

東京都杉並区在住 I・S 様より

モニター製品 JEFFROWLAND SYNERGY2i MODEL 12

前回、エソテリックD−70、P−70を試聴させていただいて以来、今度
ジェフローランドのアンプのモニターがあったら是非応募したいと考えてお
りました。そうしたところ11月上旬、川又様からのメールマガジン中に、

	「早版⇒H.A.L.'s Monitor --- 更に拡大版 」

と題して、ジェフローランド モデル12の試聴募集があったため、早速
申し込ませていただきました。あいにく以下のような構成であるため、プリ
アンプもお借りしたいと無理なお願いをし、シナジーIIiも一緒にモニター
させていただきました(更に甘えて、プリとメインを接続する為にXLRの
オーディオケーブルも一緒にお願いしたところ、なんとPADのイスタル
までお貸し頂き、ちょっとビックリしましたが・・・)。

私の現用機は、以下のとおりです。かなりライブなリビングに設置しており、
主としてクラッシックを楽しんでおります。

スピーカー		ウィルソンベネッシュ	ARC
プリメインアンプ	ゴールドムンド		SRI2 Evo.
CDトランスポート	エソテリック		P−70
DAC			エソテリック		D−70
オーディオケーブル	PAD			ISTARU
スピーカーケーブル	PAD			ISTARU
ラック			クァドラスパーイヤー	Q4D

急なお願いであったいもかかわらず、迅速にご対応いただき出荷可能との
ご連絡があった翌日には、我が家の玄関に巨大なジュラルミンのケースが
3個とPADケーブルの段ボールが積み上げられておりました。

やっとの思いで設置を終え、通電を開始することと約2時間、試聴を開始
しました。本当は、色々なソースを網羅的に聞くべきなのでしょうが、
「歌」特に、ソプラノに偏った試聴となりました。それと言うのも、カラス
の没後25年の影響か、カラスの録音のリマスター版がEMIレーベルで
沢山発売されており、ちょっと試しにと聞いてみたところ、40年近く前
の録音とはとても思えないほど生々しい肉声を聞くことができたので、
1ヵ月ほど、そればっかり聞いていたからです。

通電後2時間目に試聴を開始した際には、「ゴールドムンドとあんまり変わり
栄えがしないな」「やっぱり高いアンプを使うなら、スピーカーもそれなりの
値段のものにしないと、あかんかなー」と感じたわけですが、アンプが暖まる
につれてどんどん良くなり、返却するまでの1週間弱の間、モデル12とシナ
ジーが作り出す音の世界に魅了されてしまいました。ちょっとした理由から、
思いの外早く返却することとなったため、じっくりと聴き込むことははできま
せんでしたが、自分なりにジェフのアンプの傾向(ゴールドムンドのSRI2
プリメインと比べた場合のものに過ぎませんが・・)を知ることができました。
以下は、簡単なインプレッションです。

○ 「MARIA CALLAS SINGS GREAT ARIAS FROM FENCH OPERAS」(TOCE-55476)

フランスオペラのアリア集です。マリアカラス(ソプラノ)、フランス
国立放送局管弦楽団、ジュルジュ・プレートル(指揮)という布陣で、
1961年の録音です。

特に、5〜7トラック目の「サムソンとデリラ」のアリアが絶品です。
ゴールドムンドの場合、高域に少しキャラクターが乗っているような感
じでしたが、ジェフの場合は、本当にプレーンで色づけが全くないとい
う印象を受けました。古い録音ではありますが、オケとソプラノの分離
もよく、各パートも明瞭に聞こえます。ゴールドムンドの場合は、オケ
とソプラノの前後関係が今一つハッキリしない印象ですが、ジェフの場
合は、オケをバックにカラスがすっと立っている様が分かるようでした。

先日、同じシリーズのCDをHALIのノーチラスで聞かせていただい
た際の奥行き感には到底及びませんでしたが、我が家のARC(「アー
ク」と呼びます。本当に小さいスピーカーで、18センチウーファーと
トゥイターの2ウェイです)でも、「こんなに奥行きが出るんだ」と感
じました。

このアリアには、ソプラノにはちょっときついような低音がありますが、
カラスは、ここでこそ本領発揮!と言わんばかりの歌いっぷりで、聴か
せます。ゴールドムンドの場合、高域のキャラクターのせいか、そこの
ところが少し軽い感じになりますが、ジェフの場合、カラス特有の低域
のねっとりした様子が良く描写されているように思いました。

仕事の都合があり、試聴期間中にもかかわらず深夜の帰宅が続いており
充分な時間が取れなかった訳ですが、毎日、夜中に帰ってきて、ジェフ
のペア(モノパワーですのでトリオと言うべきか)が奏でる、ねっとり
としたカラスの熱唱を聴き眠りについておりました。

○ 「FAURE REQUIEM」(7243 5 66946 2 0)

クリュイタンス(指揮)、パリ音楽院管弦楽団、フィッシャーディスカ
ウ(バリトン)、ロスアンヘレス(ソプラノ)、1962年の名演です。

これまで、この演奏は、LP、CDのいずれで持っておりましたが、演
奏のすばらしさとは裏腹に、もこもことした録音で、「やっぱり古い録
音は良くないな」と思っておりました。ところが、アートリマスター版
のCDを聴いてビックリ。上下のレンジが飛躍的に伸びているばかりか、
オケの分離も素晴らしく、「これまでのLP、CDは一体何だったんだ
ろう」と考え込まざるを得ないほどの変貌ぶりでした。

この中でも、今回は、4曲目「Pie Jesu」を中心に試聴しました。冒頭、
オルガンが静かな和音を奏でる中で、ロスアンヘレスが、すっと立ち上
がってソロを歌います。なんと、ジェフローランドでドライブするAR
Cからは、どしっとしたオルガンの低音が聞こえてくるではないですか。

「本当に18センチのウーファーですかと」聴きたくなる程で、ジェフ
のドライブ力に驚かされました。ゴールドムンドの場合も雰囲気は悪く
ないですが、オルガンの低音は軽い感じで、今一つしっかりとウーファ
ーをグリップしていない印象です。ホールの広がりの表現は、圧倒的に
ジェフの勝ちでした。良く、評論家の先生方が、「聴感上のSN比の良
さ」という表現を使っているのを目にしますが、この広がり感の表現こ
そ、先生方のおっしゃる「聴感上のSN比の良さ」のことかなと、少し
得心した次第です。

この他、シュワルツコフ(ソプラノ)の歌う、リヒャルトシュトラウスの
歌曲集(セル、ロンドンシンフォニー他伴奏)のアートリマスター版で
も試聴しましたが、広がりと定位感、低音の沈み込み、弦楽合奏のしな
やかさのいずれについても、ジェフの勝ちという結果となりました。

SRI2プリメインは70万円、片やジェフはセットで375万円です
ので、違いが無い方がおかしいわけですが、それでも違いを見せつけら
れると、値段の壁を乗り越えようとする欲求がむくむくと沸いてくる
ことも事実です。

「5倍の投資をする程の価値があるのか」などと、経済合理性に根ざし
た質問を自らに投げかけて、暴走をくい止めているのが現状ですが、
さて、いつまで我慢できるでしょうか。いっそのこと、色々と試聴を
させていただいて、関心を分散させるというのが、最も良い自衛方法
かもしれません。

ということで、今回は、「試聴」=「ローン残高の増加」にはならず、
何とか踏みとどまっております。

川又様、大場商事様、シーエスフィールド様、貴重な機会をお与え
いただき有り難うございました。
以上

          -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

I・S 様ありがとうございました。
http://www.dynamicaudio.co.jp/audio/5555/7f/fan/hf_moni0125.html
「試聴」=「ローン残高の増加」が一時流行語になりましたが、これ
からまだひと波乱ありそうですね(^^ゞ 



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