《HAL's Monitor Report》


No.0069 - 2001/06/05

神奈川県秦野市在住 S.S様

モニター対象製品:PAD
         MIZUNOSEI(Bi-Wire SPC) 1.5m
         MIZUNOSEI(RCA) 1.0m
         HDI(RCA) 1.0m
         MAXIMUS(Bi-wire SPC 1.5m
         システムエンハンサーRev.B

「大蛇(PAD)、降臨」

1.自己紹介

 はじめまして、神奈川県秦野市在住のS.Sと申します。
 オーディオ歴は、15年になります。オーディオ・音楽に目覚めたのは中学生になったときに、親にラジカセを買ってもらったのがきっかけでした。当時はCDが出たばかりでもちろんCDラジカセ、CDミニコンポ等は高価で私のラジカセは所謂ラジオ+カセットのタイプでした。その後、親父がCDプレーヤーなるものを私のために買ってくれるということになり、はじめはS社のポータブルCDを買ってラジカセのAUX端子につないで聴こうと思っていましたが、ポータブルCDを赤と白の端子につなぐ方法を知らなかったために、ポータブルCDが該当からはずれ必然的に単品コンポを選択することになりました。私と親父は当時ベストセラー価格帯(59,800円)のK社のDP-990Dを選択しました。

 その後、親父が居間用にアンプをK社のKA-990D、スピーカーをD社のDS-77EX買いました。必然的にDP-990Dは居間に行ってしまったのでした。そのために私のラジカセはS社のドデカホーンというCDラジカセにバージョンアップしたのでした。
 これらとの出会いが私をオーディオの沼に足を突っ込ませるきっかけになったのでした。

2.PADとの出会い

 PADとのはじめての出会いは、電源ケーブルを買ってさらに音をよくしてみよう!!と思い、入ったショップで見つけた、PAD ACコロッサスという大蛇でした(^^)もちろんPAD自体は、超高級ケーブルとして昔からしっており、水が入っていてすごそうだということは知っていましが、見て見ぬふりをしていました。
 エントリーモデルで価格も妥当で、これだったらすぐに買えると思いさっそく購入。
 帰宅し、そのケーブルをアンプの電源に装着して、PAD社推奨のバーンイン時間がが済んだ頃、んっ??この変化は??耳を疑いました、正直電源ケーブルでここまで音に変化があるとは思っておりませんでした。
 そしてPAD本社のHPやシーエスフィールド様のHPを見てPADの哲学や思想等を読んで、すっかりジム・オッド氏の作るケーブルのとりこになっていたのでした。
 すぐに私のオーディオ思考回路にスイッチが入りました、もしRCAとSPケーブルをPADにしたらどんなすばらしい世界が待っているんだろうと。早速、HALの川又様へ連絡し、PADのケーブルの試聴をお願い致しました、すると2日後にシーエスフィールド様から4匹の大蛇と金色のディスクが届いたのでした。

3.使用機器:CD: LUX D-500X'sII
       AMP:同 L-580
       SP:DIATONE DS-205
       インターコネクト:RSCリファレンスG2
       SPケーブル:RSCプライムBiwire
       コンセットボックス:
       千曲 CPS-22-CL(AMP用)
       CSE H66CL(CD用)
       電源ケーブル:
       PAD ACコロッサス(直付けを改造してAMP用に)
       壁コンから千曲 CSE L7R
       壁コンからCSE CSE L10
       壁コン:ナショナルのHグレードの一番安い奴
4.試聴ディスク:古内東子 TOKO-best selection
         柿原朱美 マーメイド・キス
         ミーシャ マ−べラス
         マライヤキャリー 1's
         セリーヌディオン THESE ARE SPECIAL TIMES
         リッキーリージョーンズ POP POP
 これら試聴ディスクはいわゆる、雑誌等で推奨ディスクとかになっている物ではありませんが、どのディスクでも、ボーカリストの微妙な息遣いや透明感の高い声、伸びやかな声が感じられますし、また比較的録音状態が良いと思われるので試聴対象にしました。

5.試聴記

 あせる気持ちを押さえて、とりあえず届いた大蛇のうち、MIZUNOSEI RCA、SPケーブルをシステムにセットアップ。やはり水が入っているのか、ずしりと重い、そのときジム・オッド氏のオーディオに対する熱意までもが手から伝わってきた気がしました。
 セットアップ直後はもちろん、良い音がするわけもなく、なんだか全体にざらざらとしており、バーンインまでの辛抱だろうと思いましたが、ところどころの楽器の響きとかでその時点で、すでにPADの片鱗は感じられました。時間もなかったので、ここでシステムエンハンサーのお世話になりました。指定のバーンインが終わると、どうでしょう。

 最初の印象は、想像どおり、すっ、すごい。なにがすごい?
 まずボーカルのバックで流れている各楽器の音の余韻や微小音の響き、音の消え際、これらがかなりハッキリと変わりました、聞えていなかった微妙な音の変化が分かるようになったのです。そして音場がスピーカーの外側まで自然に、軽やかに広がり思わずにやりと。最初の印象として、若干低音が軽いかな−と、しかしこれは、低音の聞こえ方の違いだということが分かりました。今までは低音の分解能が低く、低音が塊で聞こえていたために量感が感じられていたのが、低音の分解能が上がったことによって、低音の量感が少なくなったように感じるようです。これはセッティングの問題でスピーカーの壁からの距離、セッティング等を見なおせば良いと思います。 肝心のボーカルは、唇の濡れ具合もわかるかのような、色気、つや、伸びやかさ、透明感、等が出てきて、左右スピーカーの中央付近にふんわりと浮かび上がるボーカリストの音像、定位感、こういう感じが好きな人にとってはとても魅力的な音だと感じました、さすがPADと思い知らされました。 今まで自分が聞いていたのは、機器の本来もっている音、再生できる限界の音ではなく、ケーブルの特性や外界の有害なノイズ等によってフィルタリングされた音だったんだな−とそこで感じました。これがエントリーモデルの音??、そうするとその上位モデルはどんな音がするんだろう??

 そんな、気持ちを簡単に押さえられるわけはありませんでした。2匹の大蛇が箱の中で口を開けて待っているのです。
 RCAをMIZUNOSEIからHDIにスピーカーケーブルをMIZUNOSEIからMAXIMUSへ。そして再度システムエンハンサーのお世話に。

 期待の瞬間でした、お気に入りの上記試聴CDをセットしプレイボタンを押し、ボリュームをいつもの11時付近にセット、音が出た瞬間……
「………」
 言葉も出てきませんでした、すごいとかいう簡単な単語で表現するにはジム・オッド氏に申し訳ないのですが、明らかに次元が異なっておりました。
 MIZUNOSEIとの明確な違い、それは空間表現の次元が2次元から3次元へ広がったかのような感覚でした。これは普通、ケーブルの変更で得られる音の変化ではないと思います、少なくとも今までの自分のオーディオ経験では考えられませんでした。
 スピーカーの上下、前後、左右へ音が広がり、スピーカーのユニットから耳までも自然と音が広がり、そして無理のないボーカルの自然さ、リスニングルーム自体が広くなったかのよう錯覚までも覚えました。
 この音を一度経験してしまった耳はもうあとには戻れなくなっていました。そしてここで改めて、システムの限界の高さを知らされることになりました。

 次にそれぞれを組み合わせてみてはどうだろうと思い。RCAをHDIのままで、スピーカーケーブルをMIZUNOSEIに変更してみて、試聴。
 相性、組み合わせの難しさを感じました、すこし音が窮屈な感じがします、音が伸びきっていない、そして高音がちょっときつい、雑な感じがするなど。音が空間に漂う感じも想像どおり、かなり薄くなります。 どうも自分のシステムでは、相性は良くないようです。

 そしてRCAをMIZUNOSEI、スピーカーケーブルをMIZUNOSEIに変更して再度試聴。
 出てきた音は、これはこれでなかなか捨てがたいものがあります。この組み合わせでは、スピーカーケーブルの支配力の方が私のシステムでは強いようです。HDI程の開放感はありませんが、ボーカルリストのリアルな息使いも十分に伝わってきますし、空間への広がり感もHDI程の開放感はないにしてもこれだけ聴いていれば、十分です。これだけ聴いていれば……

6.個別の単体評価

MIZUNOSEI RCA:
 抜群のコストパフォーマンス、PADの哲学を知るエントリーモデルとして万人に勧められます。謳い文句にあるような、ボーカリストのみずみずしさ、リアルさ、そして微小音の綺麗な響き等、あなたのシステムを満足させるでしょう。あえて欠点を見つけるとすると、中・高域に比べ、低域のパンチが足りない事ぐらいです。
 このMIZUNOSEIで物足りないと思う人は、システムの出す音が、MIZUNOSEIの能力を超えてるのではないかと想像できます。その上を目指してください。
 CDやアンプとしては、国産の一体型ハイエンドモデルにバランス的に合うと思います。

MIZUNOSEI SPC:
 これも抜群のコストパフォーマンス、PADの哲学を知るエントリーモデルとして万人に勧められます。謳い文句にあるような、ボーカリストのみずみずしさ、リアルさ、そして微小音の綺麗な響き等、そして空間表現も変化します。お使いになっているケーブルの値段システム構成で考えて妥当ならば、まずこのMIZUNOSEIをお勧め致します。
 アンプでは、国産の一体型ハイエンドモデルや海外のエントリーモデル、スピーカーとしては、海外製品のエントリーモデルなどと相性が良さそうな気がします。

HDI RCA:
 抜群のコストパフォーマンス、とは言えない価格帯で、価格満足度としては90%ぐらいでしょうか。MIZUNOSEIとの違いは、開放感、無理のない高域、低域への音の伸びやかさ。軽やかな鳴り方にあります。小音量で、バックグランドミュージックとして聞く方には特にお勧めです。
 ただし、システムとの相性はあるようです、私の使っているCDプレイヤーにはかなり効果がありましたが、知り合いのD社DCD-S1でテストしてみたところ逆に音が薄く感じられました、CDとプリ間用に設計されたという事もあり、DACや、フィルター特性等の相性の違いなのかもしれませんね。 これは、試聴出来る機会があったら、試聴して自分のシステムに合うか見極めた方が良さそうです。 もしかしたらシステムによっては、同価格帯のAQUEOUSの方があなたを満足させるかもしれません。
 想像からして、少し古めの高級CDプレイヤーやDACを使っているシステムに効果を発揮しそうです。

MAXIMUS SPC:
 ここまでくると、コストパフォーマンスうんぬんの話しが出来なくなってきますね。普通に考えたら、国産の高級CDプレイヤーやSACDプレイヤー、アンプまでも手に入る値段です。一般人の常識を遥かに超越した値段ですよね。(^^) ただし性能はかなり高いです。仮に、これら高級コンポーネントを買ってこの音が得られるでしょうか?おそらくそう簡単には、得られない次元の音だと思います。実際私のシステムでは得られてはいませんでしたし。
 このケーブルを使うと間違いなくセパレートクラスのコンポーネント・海外製の高級ブランドのシステムでないと出てこないと思われる、音の軽やかさ、高低域の音の伸び、上下、前後、左右に広がるリアルな音場感、奥行き方向への広がりまでもが感じられます、すこし大げさ過ぎるかもしれませんが、分かる人にはこの違いは明確に分かると思います。
 抜群の空間表現、音が拡散する感じ、コンサートホールの空気感は、感動に値します、きっとあなたの第6感(オーディオマニア心?)を刺激する事でしょう。そしてあなたのシステム本来のすばらしさを再認識させられる事になると思います。 特にライブ関係のソフトやボーカルソロ等を聴くと明確に差が分かると思います。
 エントリーモデルクラスとの違いはこの空間表現になるのではないでしょうか。逆にその空間表現等に現状で満足と感じている人はエントリークラスで十分だとも言えます。この音を得るためにはセパレートクラスのコンポーネントを購入するか、一体型高級コンポーネントに、このケーブルを追加する必要がるのではないでしょうか(ちょっと非現実的かもしれませんが、マニアにはこの感覚は分かると思います)、もちろんルームコンディションやコンポーネントのセッティングの見直し、電源周りの改善等でもこのケーブルで得られる感覚の近くまで追い込む事は出来るかもしれませんが、それにかかる金額も、このケーブルに近いコストはかかるのではないかと思います。
 セパレートクラスのコンポーネントを購入して、コンポーネントに比べて性能の低いケーブルを使えば、やはりセパレートクラスの本来の性能は生かせない訳ですし、難しい選択ですね。
 基本的にお金に余裕がある人、PAD(ジム・オッド氏)の哲学に感銘を受けている人などには、私はお勧め致します。後先考えてもケーブルは使いまわしがききますし。
 これでも満足の行かない人は、耳が肥え過ぎているか、使用機器もス−パーグレードなんだと思います。そういう人は迷わずに、PROTEUS、DOMINUSクラスに逝ってしまって下さい。(^^;ご愁傷様です。
 システム的には、国産のハイエンドセパレートコンポーネント(A社やL社、T社など)、海外製品のセパレートモデル、スピーカーでも各ブランドのトップモデル、モニター系スピーカーなどと相性が良さそうな気がします。あまり下位のモデルと組み合わせると逆にシステムの粗や密度の薄さなどが目立ってくるなどの副作用もみられるかもしれません。

システムエンハンサー:
 幸な事に、送られてきているケーブルが、バーンインの行われていないケーブルだったので、CDプレイヤーにて、リピートモードで連続再生して各ケーブルの音の変化を確認する事が出来ました。 基本的には、音の角が取れてきて、耳馴染みが良く、聞きやすくなるなどの効果があるようです。バーンインを早めたいせっかちな人や、月一度メンテナンスをするんだぞーと意気込みのあるひとには、良い商品だと思います。CDソフトが20枚近く買える値段なので財布と要相談ですね。

全体の印象を表とグラフにまとめてみました。

表1.各製品の組み合わせと音質特性       
RCA+Speaker Cable低域低域分解能中域中域分解能高域高域分解能S/N感余韻感立体感空間表現力合計オリジナル比
Spase&Times+Spase&Times5555555555501
MIZUNOSEI+Spase&Times4.566666.56665.558.51.17
HDI+Spase&Times5.56.566.56.576.56.56.5661.51.27
Spase&Times+MIZUNOSEI4.566.566.56.56766.561.51.23
MIZUNOSEI+MIZUNOSEI4.56.57.577.5777.57768.51.37
HDI+MIZUNOSEI5.56.577.5887.587.57.5731.46
Spase&Times+MAXIMUS7887.57.5888.57877.51.55
MIZUNOSEI+MAXIMUS6.58988.598.598.58.583.51.67
HDI+MAXIMUS7.58.58.58.599.59.59.59.510901.8

低域/中域/高域:これらは、それぞれの音域の品位、質感、量感等。聴感的に音が良いなーと感じる主要素。
低域/中域/高域分解能:それぞれの音域の解像度。聴感的にスピード感、歯切れの良さ、各楽器の分離感等につながる要素。
S/N感:全域のS/N感。聴感的に音の静けさ、透明感、軽やかさ等につながる要素。
余韻感:全域の余韻感。聴感的に微弱音の余韻、各楽器のリアルさ等につながる要素。
立体感:全域の立体感。聴感的に微弱音の立体感、前後の奥行き感等につながる要素。
空間表現力:全域の空間表現力。聴感的に音の広がり、臨場感、空間、空気感等につながる要素。
オリジナルの組み合わせを5(基準)として、10を満点として、それぞれの項目で、主観的に感じた割合を各項目の点数とした。
オリジナル比は、オリジナルと比較(合計/オリジナル)して、満足度を示す。

図1.各製品の組み合わせと音質特性

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7.総評

 PADのエントリーモデルと中級クラス(まだ中級……)を比較試聴させて頂いたわけですが、やはりPADの基本性能のすばらしさを改めて再認識させられる結果となりました。そして値段が上がればそれに伴い性能も上がっていく事が分かりました。そして、製品のもつ本来の音、現行CDフォーマットでもこれだけのすばらしい音が聴けるということを再認識させられました。
 PADのケーブル類を使いさえすれば、当分は現行CDでも私の耳では十分な気がします。

 皆さんも、雑誌の評価等をうのみして、ケーブル等を買って失敗した経験がいろいろあるかと思います。私もそうです、なのであまり鵜呑みにはしないでください。適当に流してください。そんな変化感じなかったぞーと訴えられても後で、責任とれませんので(^^;

 今回私が感じたこれらの試聴・評価結果は、私のシステム環境、ルームコンディション(部屋の構造、室温、湿度…etc)、試聴CD、その時の体調等により得られたものですし、かなり主観的な評価になっておりますし、ブラインド試聴をしてまとめたわけでもないです。また音質特性の比較に使ったパラメータ等も適切ではないかもしれません。そしてPADを使って聴いているという先入観、満足感も少なからず影響していることも事実でしょう。よって皆様のシステムでも同様の変化が得られる、感じられるかどうかは分かりません。おそらく似たような傾向は見られると思いますが。

 しかし趣味の世界なんて、所詮そんなものです、一般人には分からない、自己満足の世界ですから。
 でもこのなんとなく好きとか臨場感がすごい、音が空間を漂う感覚に魅力を感じるとかいう曖昧な感覚、第6感に訴えてくる感覚、測定器では測定しきれない感覚こそが趣味の世界には、重要だと思います。そういった感覚を提供してくれるのがPADを代表する、ハイエンドオーディオの世界だと思っております。
 一度このPADを試してみては如何ですか?きっとあなたを更にオーディオの深みにはめることになり、同時にオーディオマニアとしての喜び、感動を再び感じる事ができることになるでしょう。 そして今まで聞いていたソフトを聴きなおしてみたくなり、聴き直すことで、いろいろな再発見が出来るはずです。今、私はこれに嵌っています。
 長文になりましたが最後までお付き合い頂きありがとうございました。皆様のオーディオ人生の手助けに少しでもなれれば幸です。

8.謝辞

 最後になりましたが、このようなすばらしい企画をされているダイナミックオーディオ、川又店長様に感謝させていただきたいと思います。
 そしてシーエス・フィールド様、このような高価なPAD社ケーブルを3週間にわたりご借用いただきまして誠にありがとうございました。
 心よりお礼申し上げます。


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