《HAL's Monitor Report》


No.0040 - 2000/11/24

横浜市  H・F 様

モニター対象製品:村田製作所 ES103

 川又さんのところにうかがったとき「これモニターしてみませんか?」と渡されたのが村田製作所のES103でした。実は、僕はスーパーツィーターには前から興味があったのです。ソニーの製品が出たときも、タンノイの製品が出たときも「どーしよーかなー」と迷ったあげく結局購入には至りませんでした。スーパーツィーターを試聴させてくれるところも、まして、モニターさせてくれるようなSHOPもなかったからでしょうか?

 このとき川又さんのところで聴かせてもらったES103は、僕の感覚ではどちらかというと、付けないほうがよいと言う感じでした。弦にのったツヤが若干人工的に感じたからでしょうか?それとも、ノーチラスに20万円のスーパーツィーターをつけてもいいはずはないと言う先入観でしょうか?ともあれ、モニターさせていただくことになり、ES103のオリジナルキャリングケース(ジュラルミン製カメラケースのミニチュア版のようなもの)をぶらさげて帰路についたのでした。

 まずは位置決めからです。
 僕のスピーカー(エグルストンワークス・アンドラ)の上部はツィーターを囲んでピラミッドの頭頂部をカットしたような形で、10cm×10cmくらいの平らな部分があり、ここにES103を置いてみます。これがピッタンコ、こりゃいい、と思ったのもつかの間ES103のスロート部がアンドラのディナウディオ・シルクドームツィーターへオーバーハングするように出てしまいます。しかも、アンドラのバッフル面は少し傾斜しているため、ツィーターとES103が干渉するような気がしてあまりよくありません。このまま音を出してみると、CDプレーヤーの癖でしょうか、あまり上等とはいえない輝きがあって、ツィーターともうまくつながらない感じです。

 そこで、川又さんのアドバイスどおりES103をバッフル面から後退させるべく、スピーカー頭頂部と部屋の後ろの窓との間に合板で橋を作って、試行錯誤の結果バッフル面から40cmほど後退させたツィーターライン上の位置にセットすることでようやく落ち着きました。左右にも広げてみたかったのですが、なにせベニヤの上に乗ってる状態でできませんでした。

 では、試聴してみます。

1.BACHでバイオリンのチェック
・バイオリンとチェンバロのためのソナタ BWV1020 グルミュオー&ジャコテット
   フィリップス80'アナログ録音

ES103なしの状態
 バイオリンはウォームな音像で、ざっくりしたエッジです。チェンバロはオンマイクで、すこし後退した位置にしっかり浮かびます。グルミュオーにしては新しい録音のほうですが、独特のトロッとしたバイオリンの質感を感じさせて特に大きな不満なしといったところです。

ES103をつなぐと
 バイオリンの音像は、エッジが磨かれバックグラウンドのエコーと自然につながる感じで高域は少し切れ込んでツヤが出てきます。チェンバロは響きのいい小さなステージにあるようなエコー感を伴い、少し音量が小さくなったかなと思うくらいです。全体的に録音が新しくなったような、ディジタルリマスタリングしたような感じがします。

2.ベートーベンでピアノとオーケストラのチェック ・ピアノ協奏曲第5番 皇帝Op.73  ポリーニ ベーム&ウィーンフィル    グラモフォン78'アナログ録音

ES103なしの状態
 これもまた、ちょっと古めのアナログ録音です。最近の録音にはあまりない、ピアノはオンマイクでがっちりとした音です。ベーム&ウィーンフィルも骨太で堂々としていて、ちょっとドライな音です。こういうかっちりとした録音は最近ないのでお気に入りです。

ES103をつなぐと
 ピアノは少し輝きが増し、ホール感が出てきます。弦はES103をつなぐ前のちょっと無骨な感じがなめらかでしなやか、チェロ・コントラバスがやわらかく、良いホールの特等席で聞いているようなそんな感じで、ウーンいいかも。金管もうるさくなくなり、もっと音量を上げたくなります。結局第1楽章から第3楽章まで全部聞いてしまいました。

3.ジャズボーカル
・小林 桂 「So nice」よりYOU WERE MEANT FOR ME, ON GREEN DOLPHIN STREET
   東芝EMI 99'録音

 独特のウィスパリングボイスとでもいうのでしょうか?ハイトーンで女の人かなとも思ってしまいます。このCDは川又さんに聞かせてもらって、久しぶりにジャズを聞いてみようかという気になり、さっそく買いに行きました。川又さんのところではゴールドムントのアンプとノーチラスで、「これがゴールドムント??」というほど実に渋い、いい音を出していました。

ES103なしの状態
 これは後でわかったことなのですが、自家製ラックのオーバーダンピングのせいで結構デッドです。ピアノは川又さんのところほど渋い音にはならず、「マッキントッシュもっとがんばれ!」と言いたくなります。

ES103をつなぐと
 デッドだった小林 桂のボーカルのバックグランドに自然なエコーがつき、少し軽い感じになりました。アルトサックス、ミュートトランペットともに軽いライヴ感を伴っていい感じ、シンバルは強調されるよりむしろ弱くなったかなと思うほど、繊細な音になります。ピアノは音にツヤがのります。

まとめると、 ES103をつなぐと、

・音像エッジがなめらかでバックグランドエコーと自然につながる
・ライヴ感が出る
・弦は高域は繊細、中低域はやわらかくなる
・ソロ楽器にはツヤが乗る

などの効果があるように思います。

 前のレポートにレベルが高いというコメントがありましたが、レベルが高いというよりは普通のネットワークように−6dB/octのようなクロスオーバーポイントからの減衰がなく、公称15kHzのクロスオーバーから10kHzまではそんなにレベルが変わらないんじゃないかという感じです。ソロ楽器に乗るツヤはこの辺が影響しているように思います。ちょっとコンデンサーを入れてみたくなってしまいますが、これは買った人のお楽しみ。そういう意味でネットワークのないこのスーパーツィーターは上質のフイルムコンデンサーをいれて自分なりにチューニングするというマニアックな楽しみも残っているわけです。 またセッティング位置は重要なファクターで川又さん発案のマイクスタンドは必須アイテムです!ぜひマイクスタンドアダプターは市販していただきたいと思います。

 この試聴のあと、最初に川又さんのところに伺った用件のゾーセカスのラックが届き、さっそくセッティングをしました。結果は激変と言ってもいいくらい自然なライヴ感が出て、部屋の響きが上質なものへと変わりました。女性ボーカルなどもう最高!といいたくなるほどよくなります。ウーン、高いだけのことはありますねー!いままでの自作ラックがオーバーダンピングだったことを痛感しました。

 ゾーセカスとES103の組み合わせも基本的には前述の効果に変わりがないのですが、ES103をつないだときの変化が自然で違和感がありません。このへんのところは、ゾーセカスのエージングが終わったところでもう一度つないで見たくなります。それじゃ、ゾーセカスとES103のどちらを先に選択するか?と聞かれたら、先に買うならゾーセカスと言ってしまいます。いづれにしても、川又さんおすすめのゾーセカス、ES103のようなアイテムにより効果的で上質なチューニングが可能になることがわかりました。こうなるとACドミナスも聞いてみたくなってしまいます。  

試聴機器
CDプレーヤー デンオンDCD−S1
プリアンプ    アキュフェーズC290V
パワーアンプ  マッキントシュMC500
SP        エグルストンワークス・アンドラ     
インターコネクト アクロテック6N XLR
SPケーブル   オルトフォン8N(アンドラ)、
         モニターPC銀コーティングOFC(ES103)
ラック          自作(25mm合板数枚をブチルゴムで張り合わせたもの)

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