《HAL's Monitor Report》


No.0019 - 2000/08/21

東京都板橋区在住 AFUTURA 様

 モニター対象製品 PAD デジタルドミナス / ACドミナス

東京都板橋区在住のAFUTURAです。

 ダイナミックオーディオ 川又様、そしてシーエス・フィールド様、高価なPADの ケーブルを3週間にわたりご借用いただきまして誠にありがとうございました。

試聴システムです。
 スピーカー: AE2シグネチュア
 パワーアンプ: エアー V1
 プリアンプ: エアー K1
 DAC: ワディア15i
 ヴォイシングイコライザー: アキュフェーズ DG28
 CDトランスポート:エソテリックP2s
 ケーブル類: オーディオクエストダイアモンド3、ベルテックDGX-702、他

 以下に知人へのメールとして記しましたのが、日々のドミナスのフレッシュな 感想を書いたつもりです。
 長文ですが、どうぞお付き合いを。

2000/07/15「PAD来たる(その1)」
 おはよう。
 突然ですが、PAD(Purist Audio Design)、知ってるでしょ。あの液体ジャケット をまとったアメリカのケーブルメーカーですよ。
 雑誌等の評判もよいので 興味はありました。ただ、国内定価がお高いんですよね。 勿論 エントリークラスもあるわけですが、自分の性格上、無理して手が届く程度の 価格帯ならばその最上クラスを見極めたい、ということもありなかなか機会に恵まれ ませんでした。
 こんな書き方をすると、「買った」と思われるかもしれませんけど、買ってはいな いんです。この度、ダイナミックオーディオ サウンドパーク・ダイナさんのご厚意で、お借り することができたのです。PADの最高級クラス、デジタルドミナス(1m)1本、ACドミナス(1m and 1.5m)各1本、なんと合計1,118,000円ですよ!
 しかも届いたモノは使い回し品ではなく、代理店であるシーエス・フィールドさん から直送の新品でした。ちょっとビックリです。
 それにPAD試聴の話をさせていただいてから、我が家にモノが届くまでの時間が短 く、なおビックリでした。メールを出したのが7/9、届いたのが7/12ですからねえ。商売人かくあるべし、でしょうか。

 ただ、こういうときに限って一週間も出張なんですよねえ(そんなに早くモノが来 るとは思っていなかった)。妻から電話で「大きな箱が届いている」といわれてから気に なって気になって仕方がありませんでした。帰ってきたのは今日(7/15)なわけで、ケーブ ル達はまだ箱の中です・・・。

 液体ジャケットをまとっているという印象から、妙に重いケーブルを想像していま したが、箱がずいぶん軽いのに驚きました。デジタルケーブルもACケーブルも、です。
 これから開封、エージング、そして試聴となるわけですが、レンタル期間は3週間 もありますので、ずいぶん楽しめそう。
 ご存じのように我が家の使用機器は定価は高いですが、中古や店頭品や個人売買で 揃えたものが多いのです。ともすると機械本体よりも高くつく、このケーブル達、さ てさて・・・その効果は如何に。
 では、追報をまて!

2000/07/16「PAD来たる(その2)」  こんばんは。早速 PAD(Purist Audio Design)の続報だ。
 開封してみましたよ、ケーブル。新品だということで、箱の中に 色々詰め物がし てあるのかと思ったらホントにケーブルだけしか入っていませんでした(電源ケーブルには3P-2P の変換プラグも入っています)。ずいぶん大ざっぱな詰め方の割に 宅配便は「易損品」扱いに なっており、ちょっと笑えますね。
 見た目より軽いと書きましたけど、ケーブルは太くそして柔らかいです。取り扱い は思ったよりも楽そうですが、地面を這うACケーブルはいいとしてもデジタルドミナス1mで も1kg以上の重さがあります。RCAプラグへの負荷、ちょっと心配ですね。
 太い液体中入部分は実測で円周104mmもあります。ということは直径約33mm!  これは目立ちます。ケーブルがあるんだ、と主張したい向きにはピッタリです。
 あと、PADは液体中入部分をその長さとして提示しているので、1mのデジタルドミ ナスは実測1.2m、1.5mのACドミナスは実測1.9mはあります(プラグ部分は除く)。わかりに くい長さ表示ですよね。なんで実測長提示にしないんでしょう。

 XLOのバーンインCDで約9時間のバーンインを行ってから試聴することとします。 PADはエージングに時間がかかるらしいからです(メーカー推奨は150時間!)。 ケーブルのバーンインというのはあまり信じていないのですが、こういうところは使 い回し品の方がいいですね。手間が省けて。
 でも、バーンインもそうですけど、新品の高額ケーブルの試聴はすんごい気を使い ます。こんなによじって大丈夫なのかとか、無理な引き回しをしているんじゃないかとか、 うっかり液体ジャケットを踏んでビビるとか(^^)。最後のは冗談だとしても、一本30万円 オーバーですからねえ。神経すり減ります。プラグのクリーニングしていいかどうか悩みまし たもの。(小心者の私は結局液剤を塗るのは止めました。)
 おっと、またこんな時間。
 では、全然本題に入らないけれど、追報をまて!

2000/07/17「PAD来たる(その3)」
 おはよう。PAD(Purist Audio Design)の続報だ。迷惑でも送り続けてやる!
 今世紀最後の皆既月食は途中から雲間に隠れてしまいました。メールを打ち、月食 を眺めながら、清原のホームランを堪能する、忙しい夕べでした。
 試聴に際し、丁度ホームページ上で知り合った方が訪問して下さったんですよ。 これはラッキーです。他人様の意見を参考にしちゃいましょう。 とりあえず、定電圧電源を使っていない、壁コンセント直結のデジタル系(CDトラン スポート P2s、DAC Wadia15i、イコライザー CD28)の方が効きそうです。1.5mのACドミナス をタップUN-AC1Singleにつなぎましょう。タップに差したデジタル系のACケーブルを一斉に交 換したような感触が味わえるでしょうか。
 ACドミナスは柔らかくて使いやすいとはいえ、軽いタップを浮かすくらいの重さは あります。通常位置からずれまくりましたが、ジルコンサンドで重しをし、なんとか場所を固定。

 比較対照はカルダスのゴールデンパワーコード(2m)、厚手の音が特徴です。
 お客さんの持っていらした 島田歌穂のユーミンの作品のカバー曲「翳りゆく部 屋」で試聴。
 鳴り出して、顔を見合わせました。良く言われるPADは「余韻が伸びる」というの がわかったような気がします。エアーのアンプとマーク・レビンソンのアンプを比較試聴したと きのようです(勿論 ホールトーンの再現に優れていたのはレビンソン。私が選んだのはエアーで すけどね)。
 私はスピーカー左寄りで聴いていたのですが、ヴォーカルの密度感が向上し、エ コー感が大分豊かになっています。センターで聴いていたお客さんは定位のフォーカスイメー ジが容易になったのではないでしょうか。広がりがあるが芯もある、定位のイメージ が広がった、というようなことをおっしゃっていました。(差はあるけど、月日が経ったら慣れちゃうんじゃな いか、という指摘もありましたけどね。)
 私は一瞬、音色が暗くなったかのような印象を持ちましたけど、そうではないみた いです。同じ音量でもカルダスよりもPADの方がうるさくない、刺激的でないのです。なんな んでしょうね、これは。
 電源ケーブルを替えたところで、音を出すのはスピーカーなわけですから、この変 化は不思議です。交流の微細な変化をこのアバウトなスピーカーという機械が追随する???
 ま、理屈はさておき、とりあえず好印象なことは確か。
 海外定価は別として、高いなりのことはあります。ケーブルの差がでにくい我が家 で(私はこれはいいことだと思っています)この変化は異例でした。
 エージングが進むのが楽しみですが、平日は出社しているわけで、その間のエージ ングは難しいですよね。これじゃあ PADの推奨する150時間のエージングが終わる頃、返却 期限になっちゃうよ。どうする? アンプにも使ってみたいし、デジタルケーブルも試して みないとなあ。
 では、結論は長そうだけれど、追報をまて!

2000/07/19「PAD来たる(その4)」
 おはよう。
 エージングがやっぱり気になって、ACドミナスとデジタルドミナスをつないだP2s を回しっぱなしにして、2日間 出かけていました。これでもまだ48時間なわけですから、目標150時 間は遠いねえ。
 PADのシステムエンハンサーCDを使えばいいのかな。勧めてくれる人が多いのです が、効果あるんでしょうかね。手持ちのXLOのCDもそうですが、私はピーガーピーガーと いう音が耳に(あるいは脳に)エージングをかけるのではないかとの疑いが今ひとつ払拭でき ません。

 今日はあまり時間もないので、いつものディスクをかいつまんで聴いてみましょうか。
 デジタル系への供給に使っているタップ UN-AC1SingleにつないだACドミナス (1.5m)のみを残し、後はいつものケーブルに戻しました。 試聴ディスクは古内東子「TOKO best selection」から(2)誰よりも好きなのに、 (6)うそつき、(9)逢いたいから、(14)星空、をチョイス。 思えばPADをつないでから初めてスピーカー中央で(きちんと)自分のソフトを聴きました。
 音楽が流れ出したとたん、「えっ、今まで聴いていたのは一体何だったんだ」と いった衝撃を・・・受けませんでした(^^)。ああ、よかった。これで根底が覆る ようなら、それこそ「今までは・・・」ということになりますもんね。システムが自分色に染まっていれば、そんなに大きな変 化はないはず。でも、一昨日も感じた好ましい方向への変化というか、可能性の片鱗は十分に感じられます。
 それは一体何か!
 続きは明日にします。すんごい眠くなってきた・・・・・・・。

2000/07/22「PAD来たる(その5)」
 PAD(Purist Audio Design) ACドミナスの感想だったね。
 実はあれから何回か手持ちのCDを聴いたのですが、また出張に出てしまい(こうい うときに限って休日も含めて、だ)、書きそびれてしまいました。最近は24時間、XLOのバー ンインCDを回しっぱなしにしていますので、エージングも進んできたかもしれません。それでも まだバーンインタイムは80時間程度。長いねえ、先は。
 ケーブル未エージング時の音と比べることはもうできませんが、気持ち 左右への 展開が容易になったかな、音像に芯ができたかなという感じは受けています。

 そうそう、古内東子「TOKO best selection」での試聴結果ですね。比較対象はカ ルダスのゴールデンパワーコード。安い品じゃないんですよ、これだって。
 PADは余韻が増した感じがする、というのは前も書きました。それは古内を聴いて も変わりません。大体余韻感が少ないと、音がしまっている、スピード感がある、立 ち上がりがいい、あるいは音に芯があると錯覚しがちですよね。PADで聴くと、ピアノがモアッと感じたり、口 元が大きく感じたりしたこともないわけじゃありません。妻も最初の感想はそのようなものでした。
 カルダスはPADと比べると直接音重視(といっていいのか?)のせいか、シンバル の金属感とか、締まったスネアとかわかりやすくて結構心地いいんです。そのもの その瞬間の音がするからです。その差は音楽が根底から覆るほどではありませんが、それは私がクラシック のようなホールトーンのたっぷり入った、間接音を重視するCDをあまり楽しまないせいかもしれません。
 6曲目「うそつき」は非常に奥行き感が感じられる録音なのですが、PADはその楽 器間が広がり、演奏空間が大きくなったようです。そしてカルダスに比べ多めの倍音 が切ない歌詞に合わせるように、古内の色香を増大させています。また、イントロの ギターの旨みたっぷりなこと! 当然スタジオ録音なのでしょうが、ホール録音のよ うに錯覚するほどです。
 もう一曲、9曲目「逢いたいから」はシンバルから曲が始まります。そのたった数 秒の音の広がりが、オーディオ用語で言う「全然違う」のです。PADのほうが音叉を 叩いたような余韻があります。当然その空間が広がったようです。
 ケーブルが余韻を足すことはない、とケーブルをお借りしたダイナミックオーディ オの川又氏もおっしゃっていますが、私もそれには同感です。ということは、好むと 好まざるとに関わらず、CDの正確な再生ということになると・・・それはPADの方に 思います。
 まるで間接音を否定したような嗜好のエアーやAEを使っている立場からすると、 少々複雑な心境です。

2000/07/23「PAD来たる(その6)」  ダイナミックオーディオからのレンタル期間は3週間、ずいぶん余裕だと思ってい たら、アッという間に時間がなくなってきました。
 そうそう、常用しているプリアンプのエアー K1にちょっと異常発生(何もこんな 時にねえ)。久しぶりにDAC Wadia15iをパワーアンプ エアー V1と直結するシステム となりました。スピーカーの角度の見直しやDG28を使った微調整をやり直した結果・ ・・プリに慣れてしまったため操作感は今いちですが、その他は絶好調です。皮肉な もんです。

 さてさて、今日は デジタルドミナス(RCA、1m)のレポートをしましょう。
 試聴機器周りはいつもと一緒です。違うのはプリがないのと、デジタル系にはレン タル中のAC ドミナスを使ったタップから給電していること。大違いですか?
 我が家ではデジタルドミナスを(1) CDトランスポートのP2SとイコライザーのDG28 の間に使うパターンと(2) DG28とWadia15i間に使う二つのパターンが考えられるので すが、Wadiaに接続するためにはRCA - BNC変換のプラグが必要なこと、今使用中のベ ルテック製ケーブルDGX-702が気に入ってること、P2S - DG28間の方が位置関係から してケーブルの抜き差しが楽なことから、(1) のパターンで固定試聴する事としました。
 実は経験上デジタルケーブルの差違は(2) パターンの方が良く出るのですが、さて さてPADはどうでしょう。
 ここ(1) で使用中のデジタルケーブルはD-60(Illuminati製)。あまり一般性のな い比較対照になっちゃったなあ。
 ちなみにこのケーブル、オーディオアクセサリー誌では福田雅光氏が「音質は純粋 高解像度系のニュートラル基調で整い、表情は繊細にスッキリと描き出し、締まりを 効かせ、音像は陰影を明確に表現する。(中略)レンジが広く、音場空間は透き通っ たように拡大、抜けのよさ、遠近描写力に大きな魅力がある。」と評しています。こ れでもか、という誉め言葉の連打ですね。
 この評論は別として、私は当然気に入っています。我が家のシステムの最上流 (ん、ACが最上流か?)を任せているわけですし。
 1mのデジタルドミナスは実測1.2m(プラグ除く)というのは前に書きました。D-60 はケーブル長60cm、それでも十分に足りているので、狭いラックの裏側でPADは余り まくり。無理な曲げ方をしているのではないかと冷や冷やします。

 話変わりますけど、ケーブルってピッタリの長さで買ったらいいのか、余裕を見た 方がいいのか悩みません? 特に高額ケーブルはそうはないですか。私はピッタリが好きなので、 どのケーブルもあまり引き回しに余裕がありません(プリアンプの電源ケーブルなん て自作の20cmだし、プリ−パワー間のバランスケーブルも特注品50cm)。おかげで後 で汎用性がなくなり、痛い目にあったりします。
 デジタル ドミナスは50cmあたり56,000円也。通常1mからの商品とわかってはいま すが、この余り、すごい気になります。(そんなことは買うと決めてから悩むことだよな)
 おっと、また前振りだけで終わってしまった。続報を待て!

2000/07/31「PAD来たる(その7)」
 デジタルドミナス(RCA、1m)のプラグは肉厚の同社オリジナルプラグです。見た 目も信頼性高そうだし、外見は好印象。
 ただ、実際プラグに抜き差ししてみると、最近の「接点」関連アクセサリーをあざ 笑うかのような やけに軽い差し心地。高額商品だけに意外です。ロック式に慣れて いるせいもありますが、ケーブル本体も重いし大丈夫なんでしょうか。(実際は別に 問題ありませんでした)

 一括して書きますが、試聴は同じ条件で、何度も繰り返して行っています。
 まずはいつものJPOPS 古内東子「TOKO best selection」から6曲目「うそつき」をチョイス。
 聴き比べてみるとD-60は、全体的にちょっと硬質でエッジが立ったはっきりとした 音です。それに対しデジタルドミナスは奥行き感に優れ、ボーカルが浮き出ていなが ら交じり合う感じがあります。ぬめっとした口元というのは適切な表現ではないかも しれませんが、余韻がグラデーションを付けて空間に溶け込んでいくというのは快感 です。でもこれって人工のエコーですよね。リズム楽器はD-60に比べると柔らかいで すね。好みが割れそうなところです。
 ピアノトリオからビル・エバンス・トリオの「ワルツ・フォー・デヴィ」の1曲目 「マイ・フーリッシュ・ハート」(XRCD盤)を試聴。
 ビル・エバンスのピアノの音色だけとってもずいぶん違いますね。D-60は強い音は 強く、弱い音は弱くしているようなイメージ。直接的な半面、ピアノが軽く感じられ ます。デジタルドミナスはピアノが曇ったかと思うくらいの音が空間を埋めます。音 色は全体的に柔らかですが、シンバルのロールは逆に鮮やかです。打撃音の解像度が 高まるというのはそうそうあることではありません。情報量の増大を感じます。
 次はDai Niiokaのアコースティックギターアルバム「Algum」の2曲目「ShadowyKey」。
 D-60を聴く分には(入門用ギターのようですけど)エッジがきいて好みです。ビル ・エバンスのピアノと同じイメージ。鋭さが一種の生っぽさを感じさせます。しかし デジタルドミナスに変えると・・・珍しく「うわっ」と声が出ました。音色の数が違 います。ボディアタックの打音は鋭くありませんが、癖になる音です。なにせ空間に 響くのですから。
 ここまで聴いてPADには大会場でのライブが合いそうだと思い、マイルス・デイビ スの最晩年のライブ盤「ライブ・アラウンド・ザ・ワールド」からマイケル・ジャク ソンが歌った「ヒューマン・ネイチャー」をチョイス。とある試聴会で朝沼予史宏氏 が紹介し、その演奏に感激、即座にCDショップに走った1枚です。私の聴く唯一のマ イルスのCDと言っても過言じゃありません。
 拍手とざわめきの中にその存在を味わえるのはデジタルドミナスでしょう。マイル スのトランペットが優しく刺さります。その広がりは見事、キーボードもさざ波のよ うです。PADはノイズレベルが下がったような感じを受けるといいますが、それを一 番感じたのはこのCDでした。それに対し、常用のD-60は各楽器に強調感があります。 デジタルドミナスの後では不自然な感じさえ受けるのです。
 もう一度ポップスに戻りましょう。ただし今度は洋楽、最近リマスタリングされた スティーリー・ダンの「彩(エイジャ)」から1曲目の「ブラック・カウ」です。 ディスコ調のファンクナンバーなのですが、この曲、なぜかヴォーカルのエコーが右 スピーカーに抜けていきます。不思議なリミックスです。
 D-60では全体的にちょっと平面的。デジタルドミナスはそれが改善され、且つス ピーカーの外側にまでステージが広がったかのよう。ヴィクター・フェルドマンのエ レキ・ピアノは弾む感じで、聴いていて楽しいのはこちらですね。
 おまけとして、オーディオチェックCDから生録した「SL」の通過音を聴いてみまし た。自然音ですので楽曲よりも的確にその差が理解できるかと思います。空に鳥が鳴 き、SLが右から近づいて来て左に走り去る・・・そういった録音です。
 鳥の鳴く高さや目の前を走り去るSLの音そのものに両ケーブルの差違は見いだせま せん。ただ、SLの近づいてくる雰囲気というか予兆のようなものをPADは感じさせま す。妻に「その場にいるように感じるのはどっち?」という簡単な質問をしたとこ ろ、指名したのはPADでした。「風を感じるPAD」かっこいいです。
 しかし、今回は誉めまくりですね。

2000/08/03「PAD来たる(その8)」  大体メールを書いているときは勢いがありますので、あとあと読み返すと「言い過 ぎた!」と反省することも少なくありません。前回のデジタルドミナスの感想も二日 経ってから読み返してみると・・・まあ、筆の滑りがないわけじゃありませんけど、 感想に偽りはありません。ケーブル一本の変化としては立派なものでしょう。
 ただいくら改善しようとも、値段に抵抗は、あります。正直な話。デジタル ドミ ナス (RCA) 1m 370,000円ですからねえ。CDトランスポートのP2Sは中古で24万円で 買ったのに! ケーブルがないと音は出せませんが、よく考えればただの一パーツだよ。
 私は経験上、ケーブルの音の変化の大きさは、デジタルケーブル > 電源ケーブ > インターコネクトケーブル > スピーカーケーブル だと勝手に思っています。 確かにデジタル系にAC ドミナスを使ったときより効果があったようです。刷り込み があったんですかね。まあ、自分が良ければそれでいいのですが。
 でも上の順、よく見れば 差し替え試聴の楽な順番だね。値段の安くすむ順という 気もしますけど^^。

 レンタルしたのはAC ドミナス 2本とデジタルドミナス 1本。全ての機器での組み 合わせを試せるわけもありません。今までデジタル系にのみACドミナスを使用してい たので、パワーアンプ エアー V1でAC ドミナスを試してみましょう。定電圧電源 FP500をスルーにしたほうが差がわかりやすいかもしれません。その他のケーブルは 通常通り。デジタル系にドミナスは使用しないことにします。
 そうそう、比較対照はV1の附属ケーブル。価格差は多分100倍以上あるでしょう ね。ケーブルの差を出しにくいエアー V1、さてACドミナスはどうでしょう。
 試聴曲は一貫してJPOPS 古内東子「TOKO best selection」から6曲目「うそつき」。
 附属ケーブルの方がトーンが明るい、そしてベース音の張り出しがよくアグレッシ ブな感じがします。AC ドミナス使用時はデジタル系に使用した時やデジタルドミナ ス使用時の変化と同じです。
 ただ、デジタルドミナスを使用した時と比べるとその差は小さく、値段を考えると これはNo!と言わざるを得ません。妻など「かわらない」とはっきり言っています。
 ビル・エバンス・トリオの「ワルツ・フォー・デヴィ」の1曲目「マイ・フーリッ シュ・ハート」(XRCD盤)を試聴。
 古内東子よりはわかりやすい変化です。附属ケーブルは やはり明るい感じではっ きりしたものがあります。それに対し、ACドミナスは音色が丸く柔らかです。聴きよ うによっては沈んだ感じに取られるかもしれません。ただ、沈み込み陰影に飛んだ音 色がバックのざわめきと相まっていいムードを醸し出すのです。これはやはりデジタ ル ドミナス使用時の変化と同傾向でした。妻はこの2本のケーブルの違いを「シロ フォンを固いマレットで叩いたときと布を巻いて叩いたときのような差」と評してい ます。語彙の差を感じさせますね。
 しかし、この差も大きいとは言いがたいものです(価格差をどうしても考えてしま う)。気分的に附属ケーブルをちょっと変えてみたいと思っていたのですが、これで は引退できませんね。なんたって「附属」品なんですから。
 その後も日にちを変え、曲を変え、聴き直しましたが、やはりアンプへの効果は 思っていたよりも薄いよう。これ以上の追求は止めることにします。

 エアーのアンプは欧米のアンプにありがちな常時通電タイプです。一回一回電源を 入れ直す度に正面のインジケーターがウォームアップを示す「赤」になります。ビク ビク者の私としてはアンプのACケーブルテストは、アンプが壊れそうで結構気が気 じゃないのです。(スイッチが固くて、ON/OFF音がまた大きいんだ、これが)

2000/08/06「PAD来たる(その9)」
 忙しいね、全く。
 おかげで、PADはすっかり返却時期になってしまいました。やりたかったことの半 分くらいしかできなかったけど、新品は気を使うし、ちょっと借りておくには高額だ し、もういい頃合いなのでしょう。さようならPAD、ありがとうシーエス・フィール ド! (返却したということは、今回は購入に至らず、ですね。)

 しかし、実生活がこのメールにすっかり追い抜かれましたけど、ドミナスの感想は続きます。
 前回までにデジタル系一式(タップ)とパワーアンプ エアー V1にACドミナスを使った感想を書きました。
 タップに使ったのは高いケーブルが一本だけあった場合はテーブルタップに使うの が効果的と思い込んでいたのと、どうせ何本も買えるわけじゃないんだから、という 貧乏人精神からの発想です。
 ホントにそうなんでしょうか。CDトランスポート P2sにだけ、ACドミナスを使って みましょう。P2sも使用している方に聞けば「電源ケーブルで激変する」というので すが、試してみたモノが悪いのか、私にはそのような経験はありません。ワイアー・ ワールドのエレクトラ・リファレンスを使ってもピンとこないのですから、重症なの でしょう。
 P2sにACドミナス 1mを差し込みます。その他は通常の我が家で使用中のモノばかり。
 差した感じは緩くもなく、固くもなく。楽に抜き差しできるレベルです。デジタル ドミナスの時もそうでしたけど、ケーブル本体が重く垂れ下がっていてなんとなく不格好。
 そういえば、今 我が家のP2sに使用中の電源ケーブルはフルテックのプラグとアイ ンシュタインのスピーカーケーブルで自作した品。報告する対象としてはちょっと不 適切ですね。附属ケーブルでもいけないことはありませんが、どうも長すぎて余って しまうのです。

 試聴曲は今回は一貫してJPOPS 古内東子「TOKO best selection」から6曲目「うそつき」。
 妻にも同席してもらい試聴します。正直、自作ケーブルとACドミナスの間に極端な 差はありません。ただ、自作ケーブルの方が平面的、ACドミナスはステージの広さを 感じさせ、ひとつの音色を核として豊かな倍音の響きがあります。デジタル系に使用 した時と同じ変化です。
 ただ、言葉にするよりもその差は小さく、値段を考えるとこれもNo!ですね。
 ビル・エバンス・トリオの「ワルツ・フォー・デヴィ」の1曲目「マイ・フーリッ シュ・ハート」(XRCD盤)を試聴。
 自作ケーブルはいつもの音で極めて普通の感じがします。ただ、PADと比べると妙 にスッキリしているようです。それに対し、AC ドミナスはビル・エバンスのピアノ の余韻が次の音に被ってくるかのよう。やはり音色が丸く柔らかです。でもドラムの 質感がゆるくなってしまうような変化ではありません。解像度は向上しているのです。 しかし、この差もめちゃめちゃ大きいとは言いがたいですね。
 何度も試しましたが、1本だけACドミナスを使うならば、テーブルタップに使用す るのが良さそうです。それはドミナスの特徴がトータルで味わえるから。
 では、テーブルタップにも、P2sにもドミナスを使うとどうなるのか。相乗効果が あるのかというと、私はタップに1本でもいいような印象を受けました。
 ビル・エバンス・トリオは割と何を聴いてもわかりやすい変化をしますが、テーブ ルタップにドミナスを使用したその変化が、ACケーブルによる再生音の改善のピーク に近いと感じられたからです。勿論その他のソフトも程度の差はありますが、同様の 結果でした。

2000/08/06「PAD来たる(その10)」
 ああ長かった、このPADシリーズ。
 アンプの電源は入れっぱなしで暑いし、CDも回しっぱなしだし、おかげで平年は入 れないクーラーを付けているし、先月と今月の電気代が心配です。

 さて、PADの総括ね。
 PADのドミナスシリーズ、すごい立派な商品だと思うんですよ。
 何よりも我が家ではケーブルとしては過去最大の変化があったということ。いろい ろと書きましたけど、それもソフトや好みによりけりだし、それでもこのレベルにな ると違いはわかるのです。特にデジタルドミナス、素晴らしいと思いました。
 それにデジタル系のケーブルを替えても、アンプのケーブルを替えても、デジタル ケーブルを替えても同じような変化をするというのはすごいことだと思いません?  高価すぎて絶対に購入対象にならないだろうと思ったため借用対象としなかったXLR ケーブルやスピーカーケーブルもきっと同傾向なのでしょう。
 ドミナスを使うと、共通して余韻成分が聴こえてくるようになる、それを他のケー ブルと比較すると空間表現が拡大して情報量が増えるように感じるのです。高いお金 を出して購入した自分のシステムに、まだまだ潜在能力がこんなにもあったのかと教 えてくれるケーブルは貴重でしょう。恐るべしPAD!

 ここから先はもう個人の感覚と懐具合ですね。
 ドミナスの導入で今まで聴こえなかったものが聴こえてくる、それに元々のソフト から聴こえていなかった音があるという事実がわかっていながら、音楽を聴き続ける 時間は決して戻ってきません。ホントは時間よりも高いものはないのですけど、私も 含めた多くの人の場合、理想ばかりは追えない現実があります。
 とりあえず、デジタルドミナスは購入目標にしようと思います。エアーやAEという PADと反するようなシステム(?)を使っている自分が結構このケーブルにしびれて いるのです。
 PADにとってドミナスは最高ランクでプロテウスやコロッサスといったクラスがあ ることは十分承知していますが、どうやっても買えない価格差でもないし、他クラス を買って「もしドミナスなら」とチラリとでも考えるのもいやだしね。
 しかし、いい経験をさせてもらいました。改めてシーエス・フィールドとダイナ ミックオーディオには感謝感謝です。

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 長文にお付き合いいただきまして誠にありがとうございました。 我が家のセッティグ状況、リファレンスCD等につきましては以下に記してあります。 よろしければご参考までにどうぞ。

http://www.asahi-net.or.jp/~rv8h-ozk/


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