《HAL's Hearing Report》


No.0157 - 2004/6/18

東京都 F 様より


Neoの音をはじめて聴いて正直吃驚してしまいました。一つはその音に、そしてもう
一つは新興のメーカーにこんな音のスピーカーが造れてしまうことに。

新進気鋭のメーカーが先進的な理論と製作者としての思い入れに基づいてその材質や
構造に前衛的な手法を凝らすことはよくあることだと思いますが、そのことと出てく
る音が十分に説得力があるかどうかとは別の問題です。結果的には自己満足、ひとり
よがりに終わってしまう例も多々あるようです。しかしこのメーカーはそのような次
元の問題はとうに超えてしまっているようですね。

今思い出しても細部にわたる個別の印象は沢山思い浮かびますが、冗漫になるのを避
けるためにここではそれらは省略することとして、なるべく普遍性のある言葉で、し
かも荒っぽくても良いからできうる限り簡潔に私の印象を述べるとするならば、それ
は次の2点に集約されます。

(1)「骨格が見えるような」低音、しかもそれが「軽やかに」出てくること。こう
いう経験は記憶にありません。
(2)陳腐な表現ですみませんが「鮮明な音」、そしてこれがよくある、聴き手が落
ち着かなくなるような鮮明さではなく、「気持ちがよくなるような鮮明さ」なので
す。
そこがポイントです。

従って、例えばオーケストラ曲の、音場全体に広がる楽器群の生々しさ(生に近いと
いう意味ではありません、コンサートで聴く実際のオーケストラの個々の楽器はこん
なに鮮明には聴こえないですから)がもたらすオーデイオ的快感は特筆に値します。

少し話はそれますが、

私が川又さんの所でノーチラスS800を最高のシステムで聴かせてもらう度に「これ以
上いったい何を望むことがあろうか?」と心底思うのですが、そこにたまたまオリジ
ナルノーチラスが稼動していて比較試聴してしまうと、そう思ったはなから「決定的
な音の格の違い」を感じてしまうのです。

しかし、オリジナルノーチラスは、音の濁りの原因となる(1)ネットワークの支
配、
(2)分割振動の支配、(3)バッフル効果の支配、(4)バスレフポートの支配から
全て逃れている「特別なスピーカー」なのですからこれは無理もない話です。
冒頭で述べた前衛という意味でも、ノーチラスは近年のオーデイオシーンにおいて
「前衛の極地」と評すべきスピーカーです。

そしてそういった意味ではNeoもS800と同じで、「普通のスピーカー」のカテゴリー
に属します。しかし上で集約した特色が全面に押し出されることにより、指向する音
のベクトルがオリジナルノーチラスとは微妙に異なってきます。従ってそのベクトル
が自分の指向、嗜好と合致すればNeoは「オリジナルノーチラスを超えることはない
までも決してひけはとらない」という感じ方もあって然るべきですね。そういう人も
結構いると思います。

以前どなたかのレポートにNeoとS800の比較がありましたが、オリジナルを基準とし
た場合、オリジナルと同じ土俵で勝負するS800と、違う土俵で勝負するNeoとを比較
するのは少しS800が可哀想な気がします。

で、私はどうかというと、Neoの凄みは十分に承知しつつも、オリジナルノーチラス
だけが出すことのできる「真に澄みわたった音空間」の感触をどうしても忘れること
ができないようです。買える、買えないとは別次元のこととして。

どうにも厄介な話しです。

            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

川又より

F 様ありがとうございました。また、厄介な選択肢をお聴かせしてしまい
申し訳ございませんでした(^^ゞ しかし、ご指摘はごもっともなことであり
私もNautilusは不変の存在として考えているものであり、安易にNEOがその
すべてに置き換わるなどとは考えておりません。

でも、今回のように聴く人に与える印象はNautilusにないものを有している
という実際面での説得力であり、これは他のスピーカーではないことです。
音質的に率直、かつ的確な評価をされるF様にひとしおの評価を頂き、私も
ほっとしました。相変わらず聴く人を唸らせるNEOの演奏はこれからも続き
ます。未体験の方はどうぞ足を運んでくださいませ



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