《HAL's Hearing Report》


No.0151 - 2004/5/22

ペンネーム 徳島 DDY 様より


「徳島から上京した甲斐がありました!! いいですね〜NEO!! 」

本日ダイナ5555にお邪魔して1時間30分程試聴させていただきました。
ありがとうございました。

あれはまだ「センティネル」が現役としてあった頃なので3年程も前だろうか、
木曜日で川又氏の休日5555を訪問した。

目的は数千万に達すると思われるセットで「センティネル」とオリジナル 
ノーチラスを聴くことであった。

出張の都合で木曜日になった訳だが、川又氏不在のためか先客はおらず上遠野氏
が接客してくださった。価格上「センティネル」はオリジナルノーチラスの倍近
くしていたと記憶しているが、その際発せられた音はノーチラスの圧勝であった。

で、私の目標はアヴァロンではなくB&Wになった訳ですね。

しかし皆さんご存知のようにオリジナルノーチラスを鳴らすにはパワーアンプ
が4セット,当然ケーブルも4セットいる訳で、それだけである程度と言うか、
たとえばジェフのモデル12とドミナスで組むと大変な金額となってしまいます。

これは非現実的ですねー。(勿論、私としてはということでそうじゃないクラス
の方もいる訳ですが。)

そこで、取り合えずジェフの12を1セット、CDプレーヤーはワディア861を川又
さんと上遠野さんにお世話になりスピーカーはJBLのままで我慢していた訳です。

そうこうしてるうちに、ノーチラス801が登場し悩んでるうちにシグネチャー
800も登場しました。
実際シグネチャー800は購入直前までいきましたが、やっぱりオリジナルノーチ
ラスが頭から離れない訳です。
  
悩みながら2年も経ちましたが、今年の3月に5555にちょっとお邪魔して
クライオB2を購入しました。その際川又さんに「スピーカーが踏ん切り着かない
んですよー」と相談しましたところ「スピーカーはじっくり時間をかけて探した方
がいいですよ」とのお言葉をいただきました。

かくしてその数日後に-☆-H.A.L.'s Circle Review-☆-No.0894が届いたわけです。
そうMOSQUITO NEOが悩める小羊=私の前に閃光のごとく現れたんです。

そこで本日私はMOSQUITO NEO VS Signature 800ということで試聴させていただき
ましたので、ここに皆様にご報告致します。

私が持ち込んだCDはロック・ポップス系ばかりでしたので最初は川又さんが日頃
試聴に使われているCDで比較試聴が始まりました。

その1 「THE DIALOGUE」から WITH BASS

猪俣猛(ds)さん、荒川康男(b)さんは、前田憲男(p)さんとともに一昨年、尺八
で人間国宝の山本 邦山氏の徳島でのコンサートに来ていただいたご縁で、リハ後
お食事をご一緒しながら大変楽しい時間を過ごさせていただいた方々である。

昨夜は山本 邦山先生と久しぶりに会食し今日はこのお二方のCDでスピーカー
対決になるとは何ともご縁が深いなどと考えに耽っているうちにSignature 800の
演奏が始まった。

やっぱりいい音なんです。
今手持ちのスピカーとは次元が違います。無問題、あっという間に終わりました。

で、いよいよ次はMOSQUITO NEOの登場です。席を移ってMOSQUITO NEOの真ん中に
陣取り演奏が始まりました。

「えっ、ええー」という感じでしたね。

「さっき聴いたのはこの曲か?」とも思いましたし、実際聴き終わった後に
川又さんに「一応お尋ねしますが同じ曲ですよね」と尋ねてしまいました。

「そりゃそーですよ」と言う川又さんでしたが、あなたの思惑通り両者の違いが
もう分かりましたよ ? ?  。

そして私は買うならMOSQUITO NEOと決めてしまいました。
勿論心の中で、ですが。
   
しかし、これではレポートになっていないので私の貧しいボキャブラリーで私なりに
両者の違いを表現します。

昔、日本にはサムライがいてその中で偉い人はお殿様であった訳ですね。
お殿様は上段に座って横に太刀持ちが控えています。そのお刀は白い柄で金の
装飾が施されている美術品としても一級の一太刀です。

もちろん切れ味もいいのでしょう。これがSignature 800とします。いいものです。

けれどMOSQUITO NEOでの猪俣さんのドラムは違ってました。タムやスネアを行き
来するスティックと両手があたかも目の前で残像を伴って高速に移動している!

バスドラムの音は乾いていて、キックの瞬間すら視覚的に表現しているではない
ですか!そこにかぶさる荒川さんのウッドベース。

弦を押さえる指がMOSQUITO NEOのちょっと上で素早くそして音楽的正確さでもって
躍動し、フロアからすーっと持ち上がった位置でウッドベースならではの潤いある
低音がなっている。

殿様の御刀に対してMOSQUITO NEOはもっとソリッドな感じ、あたかも空中から音
を切り出しギュッギュと並べていくような感じなのです。

思えば古来よりの世界最高の武具と言われる日本刀である。カミソリの切れ味と
鉈の強靭さを併せ持つと言われる世界最高の剣である。鞘からすらり抜き払われ
ればしずくが滴り落ちるかのような切れ味を持つ,丹下左善の名刀「濡れ燕」。
そして対する相手の刀を折るのではなく叩き切る、子連れ狼 拝一刀の「胴太貫」
のような力強さ。その両者を兼ね備えているのがMOSQUITO NEOなのだ。

   評価:MOSQUITO NEOの圧勝


その2 アンネ・ソフィー・フォン・オッターによるヘンデル(細かいことはわ
かりません)私はクラシックは全く聴かないのだが、川又さんがこれも聴いてみ
てくださいということで拝聴しました。

ここではオーケストラのたくさんの楽器が、MOSQUITO NEOによってよりはっきり
と個々の存在を主張し、かといって出しゃばりもせず、なんだかさわやかに聴か
せてくれました。
  
   評価:MOSQUITO NEOの勝ち


その3 大貫妙子の“attraction”から5トラック目の「四季」

これは皆さんもよく聴かれていると思います。私もオーディオ関係で何かいじると
この曲で確かめるようにしています。この勝負はなかなか甲乙つけがたかった。

ここで一番の聴き所はやはり大貫妙子のボーカルである。Signature 800では大貫
さんは真ん中に立ちその口元も表現されている。すっとはかなげに立ちその他の
楽器にとけ込んで、優しい感じで歌ってくれる。

対してMOSQUITO NEOでの大貫さんはその存在を主張し、真ん中の上の方で大きく
手を広げ各楽器を支配するかのように一段高いところから圧倒するように歌って
いる。特に音圧の高まっていく「さようならと さようならと」の部分ではがば
っと上から抱え込んだような、彼女自身がなんだか大きく強く大きくなったよう
な印象である。

言ってしまえばデフォルメされたようなのだ。
大貫妙子の繊細な感じはSignature 800の方が表現できている? よって

   評価:引き分け


ここまで聴いてもう1時間以上が過ぎてしまった。
あっという間でびっくりした訳である。
残された時間がわずかとなったためここからはMOSQUITO NEOで持参したCDを聴い
ていくこととした。

1曲目 リトル・フィート 「ウェイティング フォー コロンブス」より
Fat Man In The Bathtub

これはもうLP時代から何百回と聴いてきたライブアルバムです。
最初に客の歓声が入ってますが、その声が団子じゃなくて、それぞれを際立たせ
ていることにびっくり。

特に声のでかい奴は、もじゃもじゃ頭でサングラス口髭はやしてるのではないか
と想像させられるようなリアルさ。

そしてカッカッカッとリズムを取るドラムスティックの音が乾いている。
それに続くギターのカッティングの音とさらにはベースのうねり。
パワーが満ちあふれて歴史上最高のライブアルバムの一枚と思っているこのCD・・
アリーナに飲み込まれてい行くような錯覚すら憶えました。

2曲目 リッキー・リー・ジョーンズ 「ポップ ポップ」より
My One And Only Love

リッキー・リー・ジョーンズはこの3月久々の来日を果たし素晴らしいコンサート
をしていってくれた。彼女は時にささやくような、時に低い声でヴィブラートを
効かせるような歌唱法だが、この曲の最後でMy One And Only Loveと歌うこの
Loveの発声で彼女の口腔が大きく広がりあたかもその中で声を震わせるような
パートがある。

MOSQUITO NEOではこの口腔の広がりが3次元的に眼前に繰り広げられるのである。
(安いスピーカーではぺたっと平坦です)先のコンサートでは前から3列目の左
から10番目辺りにシートをとれた私だが、リッキーは左肩を前に出し、体を斜
めに開いて歌うのでちょうど私の方に向かって歌ってくれているような大変ラッ
キーな席でした。そして今日、その時の興奮が戻ってきたのでした。

3曲目 デビッド・バーン  「ルック イントゥー ジ アイボール」より
U.B.JESUS

この曲は野太い太鼓の音で始まるのだがこれが安いセットだと間延びしてボーン
ボーンという感じになってしまう。これはカーステレオ等で聴く時に分かるのだが、
MOSQUITO NEOで聴くと太鼓の音が間延びせずくっきりとした輪郭で一音一音が互い
に干渉せず、それでいて短時間の間に空気を強く響かせている。

続いてデビッドのボーカルが始まり、次にストリングスとともにコーラスが始まる。
このコーラス、一人一人が立ち位置を主張しデビッドのボーカルに決して主従の関
係となっていないのである。

さらにはお恥ずかしいことだがこのコーラスの中に男性がいることにも初めて気づ
かされました。そして最後のストリングスとバスドラムとタムの盛り上がりから
一転ブレイクしての、その後の余韻もまた、ただの無音になるのではなく弦の幽か
な響きを感じさせるものでありました。

以上で私の試聴は終了です。
この時点でオリジナル ノーチラスに代わるものとしてSignature 800 ではなく
MOSQUITO NEOが第一候補として躍り出ると言う皮肉な結果になった訳ですが、実は
MOSQUITO NEOの方がSignature 800より高価なわけです。

うーん悩みが増幅されてしまったような、でももう戻れないようなそんな嬉しい
ながらも困ってしまった私です。

   それでは今後ともよろしくお願いします。



HAL's Hearing Report